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(1) 世界の最新情報
(世界の)感染者数と死者数の統計データは、更新の遅いものが多い。そこで、更新の早いサイトを紹介する。日本を含めて、とても早い。
世界の最新データ。
→ https://www.worldometers.info/coronavirus/#countries
イタリア
→ https://www.worldometers.info/coronavirus/country/italy/
フランス
→ https://www.worldometers.info/coronavirus/country/france/
米国
→ https://www.worldometers.info/coronavirus/country/us/
- ※ 実は、上記の「世界の最新データ」には、各国語版があって、世界各国語の翻訳で読める。韓国語でも、タイ語でも。ただし日本語だけは「工事中」の扱いで、日本語版ができていない。翻訳のボランティアがいないせいらしい。
(2) 年齢と基礎疾患
年齢や基礎疾患が致死率に影響を及ぼす度合いを統計的に調べたデータがある。


出典:総説 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)
年齢のグラフは問題ないが、基礎疾患のグラフには疑問がある。これは年齢との交絡を考えてあるのだろうか?
たとえば、「高血圧の人/高血圧でない人」を比べると、前者には高齢者が多く、後者には高齢者以外が多い。そうなると、高血圧よりも年齢によって差が出てしまう。
これを避けるには、同じ年齢層(たとえば 60代だけ)で、「高血圧の人/高血圧でない人」を比べるべきだが、そうすると、結果は、年齢層ごとに異なる絶対値となる。たとえば、「前者は後者の3倍」というふうな相対値は得られるだろうが、絶対値は年齢層ごとに異なるはずだ。そうなると、単純な致死率は得られないはずだ。(むしろ、相対的な倍率を示す「寄与度」みたいな数値が出る。)
なのに、グラフでは単純な致死率を出している。とすると、このグラフは、あまり信用できないと見てよさそうだ。
そもそも、高血圧や癌が免疫力に影響するという医学的な根拠はなさそうだ。また、高血圧が問題ならば、高血圧の治療薬を飲むことで済むはずだ。また、癌が影響するとしたら、癌そのものよりも、抗癌剤による免疫力低下の方が影響するはずだ。
糖尿病のように、明らかに免疫力に影響する病気と違って、高血圧や癌が直接的に新型コロナの致死率に影響するとは考えにくい。
(3) 肥満
一方で、(高血圧をともなう)肥満は、免疫力に大きな影響をもつことが知られている。
肥満者では、感染症や種々の癌の発症率も高いことが報告されており、これには肥満によって生じる免疫機能の低下が関与していると推測されています。
( → 肥満と免疫 )
ここでは、高血圧が免疫力低下をもたらすのではなく、肥満が「高血圧」と「免疫力低下」という双方をもたらす。
したがって、単に「高血圧か/否か」を見れば、前者には肥満の人が多く含まれるので、「高血圧の人は免疫力の低い人が多い」という統計データが得られる。
しかし、高血圧のなかにも「肥満ではない」という人も多くいるので、それらの人だけを見れば、「特に免疫力の低下は見られない」というふうになる。この場合には、「高血圧は特に危険だ」とは言えないことになる。(¶)
同様のことは、「脳腫瘍」「乳がん」
一般的に言えば、免疫力低下をもたらす疾患(肥満など)にかかっているかどうかが問題なのであって、単純に「有病であるか否か」を見ても、あまり意味がないと言えるだろう。
(¶) 「高圧は特に危険だとは言えない」と上で述べたが、「高血圧は危険だ」という医学的な指摘がコメント欄に寄せられた。次の箇所。
> Posted by とおりがかり at 2020年03月11日 23:43
(¶¶) 「癌細胞そのものが免疫抑制機能をもっている」という指摘もあった。次の箇所。
> Posted by とおりがかり at 2020年03月12日 00:11
(4) 専門家会議の新指針
専門家会議の新指針が出た。
これまでに新型コロナウイルスの感染が確認されたケースに共通する点として「@換気の悪い密閉空間A人が密集していたB近距離での会話や発声が行われたという3つの条件が同時に重なった場」とし、このような場では、より多くの人が感染していたと考えられると説明。
そのような場所の具体例として、屋形船、スポーツジム、ライブハウス、展示商談会、懇親会などが挙げられていた。
( → 「満員電車」も条件が揃えば、感染要因に。政府の専門家会議が初めて言及【新型コロナ】 | ハフポスト )
これまでは、「換気」「密集」だけに着目していたのに、今度は「会話・発声」を加えた。一歩前進ではあるが、まだまだ駄目だ。
第1に、スポーツジムでは、換気と密集と会話は要因とならない。換気はいいし、密集していないし、会話もしない。では何があるかというと、激しい呼吸だ。ランニングマシーンなどで、激しい呼吸をする。このとき、激しい呼気から飛沫が飛び散ることがある。ここでは、「激しい呼吸」が要件なのだが、新指針には含まれていない。
第2に、屋形船では、食事こそが重要だ。会話しながら、飛沫が飛び散って、その飛沫が食事にかかるので、食事経由で感染する。ここでは、(会話しながらの)「食事」が要件なのだが、新指針には含まれていない。食事のかわりに、換気や密集などを重視している。見当違いと言うしかない。
専門家会議は、新指針を撤回して、全面的に書き換えるべきだろう。
さらに言えば、前回の「換気・密集」という点では、「会話」という最重要のものが抜けていた点を、きっちりと説明するべきだろう。それがないのでは、誠実さに欠ける。
(5) 超過死亡
昨シーズンのインフルエンザ超過死亡については、次の記述がある。
2018/19シーズンは3,276人であり, 直近5シーズンでは3番目と特別に大きな超過死亡が発生したわけではなかった。
( → 2018/19シーズンにおける超過死亡の評価 )
インフルエンザで 3,276人も死んでいるのだから、今春のコロナで 10人ぐらいが死んでも、ほとんど誤差の範囲だとも言える。
※ 米国の超過死亡は 1.4万人だ。( → 前項 )
(6) 休業補償
フリーランス向けの休業補償を実施すると政府が示した。
新型コロナウイルスの影響で一斉休校した措置として、政府が一定の要件を満たしたフリーランスや自営業の人に対して一日4100円の給付を検討していることが、関係者への取材で分かりました。
( → フリーランスや自営業に一日4100円の休業補償検討、新型コロナ対策で TBS NEWS )
こんなことをやったら、莫大な金が吹き飛ぶ。安倍首相の気まぐれ政策のせいで、国民が尻拭いをせざるを得なくなり、増税の危機だ。
しかも、これでは事業者は救われないので、倒産の危機だ。
新型コロナウイルスの感染拡大で、コンサートの中止・延期を迫られた音楽業界が危機感を募らせている。政府の自粛要請から2週間。ポップス、クラシックの分野でコンサートの企画運営にあたってきた業界のトップらは、「3月末ぐらいまでが限界」「文化がつぶれかねない」などと窮状を訴える。
( → もう食えない、3月末が限界 危機下で音楽は不要なのか [新型肺炎・コロナウイルス]:朝日新聞 )
室内のイベントぐらいは、マスクを条件に開催を認めるべきだろう。
※ 私がこれを書いたあとで、政府は逆の方針を出した。イベント中止(自粛)の継続、と。
→ 首相、大型イベント自粛継続を要請 「10日間程度」 専門家会議の見解踏襲 - 毎日新聞
(7) マスク転売禁止
政府が「マスク転売禁止」という方針を打ち出した。
新型コロナウイルスの感染拡大でマスクが買い占められ品薄が続く状況を防ごうと、政府は10日、国民生活安定緊急措置法の政令を改正し、マスクの転売を禁じることを閣議決定した。取得価格を超える価格での譲渡に罰則を科す。15日から施行する。
政府は高値での転売目的での買い占めが、市中のマスク不足につながっているとみている。
( → 15日からマスク高額転売に罰則 買い占め防止で対策:朝日新聞 )
倫理的に禁止するというのならばまだわかるが、「転売目的での買い占めが、市中のマスク不足につながっているとみている」というのは、とんだ見当違いだろう。
転売目的での買い占めがあったとしても、在庫を積み上げれば損するのだから、仕入れてすぐに売却するに決まっている。ならば、買った分だけ売るのだから、数量不足という問題が起こるはずがない。(価格には影響するが、数量には影響しないからだ。)
マスク不足を解決するには、(買える人の)数量を増やすしかない。そのためには、「小分け」をするしかない。100枚を1人に売るのと、50人に売るのとでは、買える人の数が 50倍も違うからだ。
「小分け」という根本解決策をとらず、「転売禁止」という無意味な策を取るのだから、政府のやることはまったく見当違いだと言える。
※ 小分けについては、別項で説明した。
→ 新型コロナウイルスの話題 9: Open ブログ の (4)
(8) 感染のなかった例
濃厚接触があっても感染のなかった例が報告された。
6日に新型コロナウイルスへの感染が判明した研修医の濃厚接触者として検査を受けていた相模原協同病院の同僚の医師や患者ら132人が全員、陰性だったことが分かりました。
男性研修医は先月21日、感染が確認されたJR東日本の50代の職員が相模原協同病院を受診した際に立ち会っていて、10日後からせきが出始め、その後に感染が確認されました。神奈川県相模原市によりますと、この研修医の濃厚接触者として同僚の医師や患者ら合わせて132人を検査したところ、今月8日までに全員が陰性だったことが分かりました。
( → テレ朝 / 別記事もある )
濃厚接触があっても、132人が全員、陰性だったわけだ。
これはどうしてかというと、ほぼ全員がマスクをしていたからだろう。病院という場からして、(患者を含めて)ほぼ全員がマスクをしていたはずだ。
年齢的にも、病院勤務の人は 60歳以下の人が大部分だろうから、その点でも有利だ。患者には 60歳以上の人が多かっただろうが、もとの感染源となる人がマスクをしていて、他の病院勤務者もマスクをしていれば、二次感染の危険は低かったはずだ。
ここでもわかるのは「マスクは重要だ」ということだ。
一方、マスクをしている人が少ないイタリアやフランスでは、二次感染が莫大になるのも当然というところか。
p.s.
ただし一方で、「看護師に院内感染があった」という事例が新たに報告された。兵庫県姫路市で。
→ 「院内感染の可能性極めて高い」姫路の病院で新たに2人
看護師だと、患者と接する機会も多いだろうし、看護師同士で会話することも多い。医師よりは感染の危険性が高そうだ。病院では、「マスクをしていれば大丈夫」とも限らないようだ。
ただ、この事例でも、感染者は2名だけだ。計 46人の検査を終え、今回の2人を除く 44人は陰性だった。
(9) 日本の評判
日本の状況はフランスでもよく知られているそうだ。現地滞在者の報告がある。
→ 滞仏日記「これは差別か? ユーモアか? それとも?」
一部抜粋。
日本がPCR検査を積極的にしてないことはここフランスでも知れ渡っている。
類似記事がある。
フランスの新聞でも日本では多くの人が検査拒否されているという報道が出ている。
( → 新型コロナウイルス感染拡大にも慌てないフランスの手腕 | ニューズウィーク日本版 )
(10) 検査の実態
検査の実態については、10日の 23時の TBS ニュースで調査報道がなされた。次の通り。
・ 先週の金曜日から、保険で検査ができるようになった。
・ 日本全体で検査体制を拡充した。1日 6000件の検査が可能。
・ 現実になされたのは、先週は1日 600件程度。週末は 100件程度。しかし 10日には 1300件まで増えた。それでも検査能力には遠く及ばない。
・ 各県では検査を絞っている。「 37.5度以上が4日間続く」という条件。結果的に、条件を満たす患者が少なくなり、検査の実施数が少ない。
・ 和歌山県だけは例外で、「 37.5度以上が4日間続く」という条件を設けず、「肺炎の疑いがあれば積極的に検査する」という方針。県の検査能力は1日 80件で、キャパが不足したので、隣の大阪府に1日 150件の検査を依頼した。
・ 結果的に、和歌山県だけは、感染者数の発生(発見)が非常に多かった。人口比では極端に多かった。2月21日の時点では、東京都の17人に次ぎ、和歌山県は 10人だった。(早期発見)
→ 新型コロナウイルス感染者数の推移:朝日新聞
・ しかしその後、早期発見の時期を過ぎると、和歌山県では、多くの検査をしても感染者の発生が少なくなった。その後は2人の発生で、計 12人。これは都道府県別では7位にまで下がった。累計でなく最近の値だけなら、もっと大幅に下がるだろう。
・ 和歌山県は、現在では、1日 500人近くの相談を受けて、1日 400人近くが検査対象となる。一方、東京都は、1日1万人以上の相談を受けて、1日 200人ほどしか検査対象とならない。(たとえ肺炎の疑いがあっても、発熱の条件を満たさないと、検査してもらえない。)
・ 和歌山県では、保健所の人員が不足しているらしくて、電話がつながらないことが多いそうだ。そこで、県が特別の相談窓口を設けて、そこで相談を受け付けることで、保健所の人員不足に退所する。こうすることで、なるべく広く検査を実施するようにしているそうだ。
・ 「和歌山県はきちんと検査してくれた上での報告なので安心できるが、他県は検査拒否した上での報告だから信用できない」と県民は言っているそうだ。
※ 記憶に基づいての再現メモなので、不正確なところがあるかもしれません。
p.s.
番組の公式サイトもある。
→ PCR検査、自治体で検査基準に違いも TBS NEWS(6分間のみ)
> 糖尿病のように、明らかに免疫力に影響する病気と違って、高血圧や癌が直接的に新型コロナの致死率に影響するとは考えにくい。
私も、「交絡を考えていない」「(糖尿病・肥満・がん治療の人以外は)直接影響しない」という論考に賛成です。下のリンクの記事(高血圧との関連)もミスリードの例です。TV解説の「専門家」も、「基礎疾患ガー」と馬鹿の一つ覚えのように繰り返すのではなく、このことも補足してほしいものです。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-03-10/Q6YA7YDWLU6E01
> → 新型コロナウイルス感染者数の推移:朝日新聞
参考までに、ご提示の都道府県別の感染者数を棒グラフにまとめたものが下のリンクです(日本地図の下にある)。
https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/
この指数関数的なプロファイルは、何か要因があるようにも感じます。もちろん「人口」でしょうが、北海道、和歌山、高知などはこれにあてはまりません。この3道県については、気温なのか(筆者の従前からの意見)、PCR検査数なのか(今回記事の言及)、人の行き来なのか(地理的に高速道路や高速鉄道が整備されず、大都市と飛行機で往来)、管理人さんの深堀りをお願いします。
和歌山は積極的検査。愛知と高知も多分そうだろう。(本来の数字が隠蔽されずに出ているだけだ。特に多いわけではない。)
積極的検査があれば、他県でも大幅に増えそうだ。
ちなみに、外国でも検査を抑制する方針の国がいくつかある。この件はあとで。
医者は体重が急減して風邪が何週間も続くと訴えて受診してきた患者さんをみるときは癌の可能性を考えます。
これらの癌では免疫力低下は考えられるので、これらの癌については話の範囲外となるように記述しています。
あらゆる癌について「癌は免疫力低下をもたらさない」と述べているわけではありません。「免疫力低下をもたらさないケースもある」というふうに述べているだけです。
なぜならコロナウイルスは肺のACE2という膜タンパク質から感染し、そのあとACE2の働きを弱めます。雑にいうなら高血圧症をさらに引き起こす方に働きます。
その結果、肺の毛細血管の血管透過性(=水が染み出す)をあげてARDSという非常に危険な状態にもっていきます。
今回の新型コロナウイルスの肺炎でもこれによって多くの方がなくなっています。解剖記録でも肺胞に水が非常に溜まっていたという所見が多いですね。
高血圧症の方はもともとこういう傾向をもっているので、新型コロナウイルス感染で重症化しやすいですよ。
これはこの前のSARSでも確かめられています。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/fpj/147/2/147_120/_pdf
ご指摘ありがとうございました。本文中でご指摘について言及しておきました。 (¶) の箇所。
それはともかくなんであれ癌細胞そのものが免疫抑制機能をもっている、ということをいっているんです。
だから今のまともな免疫療法ではない怪しい癌の「免疫療法」のときにはなしの枕として使われていたわけです。このことは事実ですからね。医者だろうが生物学者だろうが皆認める事実なので、つかみとしては格好です。そこから我田引水になっていくわけですが。
> 癌細胞そのものが免疫抑制機能をもっている、ということをいっているんです。
それはわかるし、それを否定するつもりもないけれど、私が言っているのは、
「癌細胞が局所の範囲内に限定化されていれば、その癌細胞の影響は全身には及ばない」
ということです。
※ 全身への転移がある場合は、この条件を満たさないので、対象外。