2020年03月06日

◆ 同性婚と憲法

 「同性婚を認めないのは憲法違反だ」と訴える訴訟がある。これをどう考えるか?

  ※ 法律の話です。(医学は関係ありません。)


 ──

 朝日新聞の記事がある。
 婚姻を認めないのは憲法違反だとして、同性カップル13組が一斉に国に損害賠償を求めた「結婚の自由をすべての人に」訴訟で、公務員の女性と、会社員のトランスジェンダー男性のカップルが近く、東京地裁に追加提訴する。
( → 同性婚訴訟、私たちも トランスジェンダー男性ら提訴へ:朝日新聞 2020年2月14日 )

 言っていることはよくわかるのだが、これと法律問題とは別のことだ。「あるべき姿」をすべて憲法があらかじめ予定していることはありえないし、そこは立法府の裁量に委ねられることが多い。憲法で決まるのはよほどの場合に限られる。この問題を、立法でなく司法で争うというのは、筋悪だ。当然、敗訴が予想される。
 とはいえ、「敗訴が予想される」という予想だけでは、話は詰まらない。もっと根源的に考えよう。

 ──

 同性婚については、前に述べたことがある。「結婚」よりも(養子にも似た)「家族制度の拡張」という形で、別の形の制度を整えるべきだ、という主張。
  → 同性婚よりも養子制度: Open ブログ

 ここではコメント欄で、次のように述べた。
 同性愛は子供を生まない。この意味では社会に貢献していないし、生命の系譜を続けることにも貢献していない。

 これは重要なことだ。
 結婚制度を優遇することは、「父親が子供を養育する」ということを支援する意味合いがある。

 ちなみに、中南米では、「結婚制度がろくに機能していないので、母親のほとんどは未婚の母だ」というふうになっている国もある。そのあげく、シングル・マザーのもとで、子供は貧困に喘ぐことになる。一方で、男の方は、次々と女を乗り換えて、養育の負担を免れて、遊び放題となる。「浮気の公認」みたいなものだ。
  → チリ、メキシコの婚外子の比率

 結婚制度を支援しないと、未婚の母の子供となった児童の境遇が悪化する。だからこそ、結婚制度を優遇する必要がある。
 ところが、同性婚は、子供を産まない。となると、「子供を支援するために結婚制度を優遇する」という話の前提が成立しないことになる。
 それゆえ、「同性婚を異性婚と同様に優遇するべきだ」という主張は、(少なくとも法的・論理的には)成立しがたいのだ。優遇しないことには一定の根拠があるからだ。

 ──

 とはいえ、それは「同性婚を完全否定していい」ということにはならない。同性婚の人々にも、何らかの権利を与えるべきだろう。ただしそれは、「同性婚と完全に一致する」必要はない。相続税であれ、配偶者控除であれ、同性婚の半分ぐらいの優遇であっても満足すべきだろう。
( ※ たとえば、相続制の配偶者控除の半分の額が認定される。)

 そして、そのようなことを法的に認めさせることの理由は、「基本的人権の保障」および「法的な平等」であればいい。
 そしてまた、その目的は、「結婚の自由」ではなくて、「異性婚に準ずる形の権利保障」だけでいい。異性婚を 10 とするならば、それに等しい 10 を要求するのでなく、7か8ぐらいで我慢するべきだ。……そういう形であれば、伝統的な家族制度の信奉者も、「自分たちの制度が侵されるわけではないな。単に別の制度ができるだけだ」と感じて、安心できるだろうし、それゆえ、特に反対しなくなるだろう。

 同性婚の主張者は、あまりにも主張が過激すぎる。「子供を養育する」という社会的に貢献をなすことなしに、自分たちの権利ばかりを声高に主張する。義務を無視して、権利だけを主張する。……これでは、保守的な人々の反発を食うばかりだし、一歩先に進むこともできないだろう。
 物事は、いきなり三歩先に進もうとするべきではない。一歩下がって、二歩進む、というふうにするべきだ。漸進的に進むべきだ。そうでないと、反発を食らって、一歩も進めなくなってしまいがちだ。
 頭と戦略は、使いようなのである。「押しても駄目なら、引いてみな」ということだ。



 【 補説 】
 核心となることはすでに述べた。このあと具体的な細目を論じよう。次の二点だ。
  ・ 相続税の控除
  ・ 配偶者控除


 この二つは、下記記事で論じられたことがある。
  → (18 私たちも投票します)認められぬ同性婚、なぜ切ない? AKBと学ぶ:朝日新聞2016/01/18
 
 なるほど。異性婚の夫婦には、「相続税の控除」「所得税の配偶者控除」という優遇がある。だから同性婚にもそれを認めてほしい、という気持ちはわかる。
 しかし、若干の優遇を認めるのならともかく、異性婚と同等の優遇を求めるのはおかしい。

 (1) 相続税の控除

 相続税の控除は、普通は、「夫が多額の資産を残して死んだあとで、妻と子供を優遇する」という意味だ。しかし、同性婚の場合にはこれが成立しがたい。
 夫婦ならば、「一方だけが多く稼いで、あまり稼がない配偶者に資産を残す」というふうになるが、同性婚の場合には、そういう意味はない。共稼ぎだからだ。もともと双方が自立できているので、自立できない妻の場合とは違う。つまり、多額の相続の必要性がない。
 さらに、相続税の本来の意味は、子供への相続だ。しかし、同性婚の場合には、二人の子供はいない。(養子がいることもあるが、養子への相続なんてどうでもいいことだ。赤の他人への相続と同様だ。優遇する意味もない。)
 結局、同性婚の相続税では、優遇するべき相手がいない。だから、相続税の控除を特段に設ける必要も薄い。(せいぜい異性婚の配偶者の半分ぐらいでいい。)

 (2) 所得税の配偶者控除

 所得税の配偶者控除は、配偶者の所得が 103万円以下の場合に成立する。しかし同性婚ならば、一方が働いて、一方が家事をする、というのは不自然だ。対等であるのが当然だ。ならば、配偶者控除そのものが無意味だ。

 ──

 結局、同性婚では、法的には最大の意味である「相続税控除と配偶者控除」の意味がないのだ。経済的・税的には、特に必要性はないのだ。
 とすれば、現在の結婚制度のような枠組みはまったく必要ないと言える。ただのパートナーシップで十分だろう。
 つまり、同性婚は、結婚という制度とは別の制度として、認めれば十分だ。「夫婦」というよりは「同性の家族」としての関係さえ認めればいい。
 そして、そのためには、「結婚」とか「同性婚」とかいう言葉で、「結婚制度を侵害する」という印象をもたらすべきではない。「新家族制度」というような、もっと曖昧な言葉で呼ぶべきだ。
 こういうふうに、結婚制度の枠外で、形式的な安定性を与えれば十分だろう。そうすれば、同性婚の反対者にも受け入れやすい。



 [ 付記1 ]
 同性婚で相続の控除を認めると、これを悪用する人が出てくるだろう。ただの他人なのに、形式的に同性婚をしたことにして、多額の相続税(贈与税)の納付を免れる……という形だ。
 本来ならば税率が 50%ぐらいになる相続税を納めるべきところを、同性婚の形式を悪用することで、無税で相続する……というふうに。
 だからこそ、相続税については、控除をあまり認めない方がいいのだ。
 仮に認めるとしても、結婚年数に応じた額にするべきだろう。「1週間だけ同性婚をしたおかげで、相続税の納税を数十億円も免れる」というような悪用を防ぐべきだ。
( ※ 異性婚の場合だと、配偶者の納税は無税であることが多い。)

 [ 付記2 ]
 他に問題があるとしたら、「同性婚をしたあとで別れた(離婚した)ときの、養子の親権をどうするか」というような問題が考えられる。親権の移管・相続という問題だ。
 しかしこれは、「共同親権」という形で対応するのが筋だろう。現在の単独親権は廃止して、共同親権を導入するべきだ。
 つまり、話の方向性が違う。同性婚で話題にすることではない。

 [ 付記3 ]
 同性婚ではないが、「異性婚をしたあとで、夫が女性に性別変更をして、事実上の同性婚にしたがる」という事例があった。これについて、裁判所は性別変更を認めなかった。娘がいることが阻害要因となったらしい。
 「未成年の子がいない」ことを性別変更の要件とする性同一性障害特例法について、「(会社員の)権利が一定限度で制限されるとしても立法府の裁量の範囲内」とし、憲法に違反しないと判断した。
( → 9歳の子がいる会社員の性別変更却下 「差別といえぬ」:朝日新聞

 性別変更を認めないというのは、一見、人権侵害に思える。だが、人権は侵害されていないはずだ。普段は女性として生きることができるからだ。単に法的には男のままになる、というだけのことだ。
 この事例は、ひどい人権侵害だとは言えないだろう。この人は、これまでずっと男として生きてきたし、妻との間に子をもうけた。男として人生の大部分を生きてきたあとで、途中で気が変わっただけだ。
 私が思うに、この人は真の性同一性障害ではない。「心が女であるのに体が男である」というのではない。心は「男と女の中間である」のだろう。このあとまた、「女でなくて男に戻りたい」と思うようになるかもしれない。(そういう実例は多い。)
 残るのは、法的な問題だけだ。そして、法的には、このような人は「同性婚の枠組みで受け入れる」というのが妥当だろう。つまり、本項の本文で述べた「新家族制度」として、結婚に準じた新家族制度という枠組みで受け入れればいい。
 その意味では、この人の事例は、本項で提案された制度(結婚に変わる新家族制度)の対象となるので、どうせ婚の話題の一例となる。
 ただ、この例では、同性婚には珍しく「実子がいる」という形になる。この場合には、異性婚と同様に、実子は相続税で優遇されてしかるべきだろう。

 [ 付記4 ]
 性転換して女性になった「元男性」が、スポーツで圧倒的に有利になるので、女性の側がそれを「不公平だ」と訴える裁判が提訴された。
  → トランスジェンダーの選手の出場は不公平 米で女子高生が提訴 | NHKニュース
 これは、ごもっとも。同性婚をするようなトランスジェンダーを優遇していたら、女性が不利になってしまった……というのだから、本末転倒だとも言える。

 ただ、この問題を探ると、歴史的な事情がある。
 本来ならば「性染色体で区別する」というのが、最も科学的な方法だろう。トランスジェンダーは、性染色体では男性なのだから、男性としてスポーツに出場するべきだ。そうわかる。
 ところが、かつてはまさしくその方針が取られていたのだが、その後、「染色体チェックは人権侵害だ」という批判が出たせいで、それができなくなってしまった。そういう経緯がある。これでは科学否定も同然だが。
  → 第10話 オリンピック史に汚点を残すセックスチェック - とってもDEEPなオリンピック

 まあ、私としては、「染色体チェック」に戻すのが最も科学的で合理的だと思うのだが、それだとトランスジェンダーが文句を言い出すので、実現が困難であるらしい。
 こういうのは、科学よりも別の問題となってしまうので、私としては何とも言いがたい。

 [ 付記5 ]
 直接の関係はないが、「夫婦別姓」という話題もある。最近、次の報道が出た。
  → 高裁でも「選択的夫婦別姓」認められず サイボウズ青野社長ら「最高裁に行く。ゴールは立法」 - 弁護士ドットコム

 「選択的夫婦別姓が認められないのは違憲だ」と主張したが、却下された。
 これは、一件残念なことではあるが、やむを得ない。「別姓の権利」を主張しても、その権利は憲法では認められていないのだからで、法的な理屈から言って、棄却は当然だろう。
 それよりはむしろ、「別姓論者に、結婚の権利を認めよ」と要求するべきだった。それならば憲法の下で認められた権利(方の下の平等)であるから、「別姓論者に、結婚をさせないのは、違憲である。別姓論者にも、結婚を認めよ」という判決が出た可能性は十分にあるだろう。

 この件は、前に論じたことがある。
  → 夫婦別姓の禁止に合憲判決: Open ブログ

 また、代案として「副姓」というのを提案したこともある。
  → 夫婦別姓の2案: Open ブログ
  例 山田太郎 + 鈴木花子 → 山田鈴木花子

  山田太郎さんと結婚した鈴木花子さんは、山田花子にするかわりに、山田鈴木花子になる。ここで、姓は「山田」であり、名前は「鈴木花子」である。名前が「花子」から「鈴木花子」に改名される。同時に、姓は「鈴木」から「山田」に改姓される。日常生活や法的には、「鈴木花子」で通る。
 公的書類の新規申請は「山田鈴木花子」であるが、民間の既存の契約書類などは、結婚前のまま(鈴木花子)でいいものとする。……この点は、法律で宣言しておくとよさそうだ。
 
 [ 付記6 ]
 以上の文章を書き終えたあとで、新たに続報が出た。「同性カップルの不貞に賠償命令」という判決の話。
 同性カップル間で不貞行為があった場合にも、異性間の内縁関係と同じ権利が認められるかが争われた訴訟の控訴審判決が4日、東京高裁であった。秋吉仁美裁判長は「同性間でも婚姻に準ずる関係として法律上保護されるべきだ」と述べ、不貞行為をした側に110万円の損害賠償を命じた一審・宇都宮地裁真岡支部判決を支持し、双方の控訴を棄却した。
 白木弁護士は、一審が賠償額の算定にあたり「男女間の法律婚や内縁関係とは差異がある」としたのに対し、高裁が性別を考慮しなかった点も評価。
( → 同性カップル事実婚、賠償額も異性婚と差なし 高裁判決:朝日新聞

 これは「同性婚を異性婚と同様のものと見なす」と考えて、「性的な貞操義務をもつ」ということを意味する……と思えそうだ。記事の趣旨もそうだ。しかし、それはおかしい。
  ・ 一審では差を認めた。
  ・ 二審では、差を否定したのではなく、言及しなかっただけ。ただし賠償額は一審と同じ。
  ・ 賠償額は相場の半額以下。

 以上の点から見ると、「性的な貞操義務をもつ」ということは成立しそうにない。

 なお、相場はこうだ。
不倫(不貞行為)の慰謝料相場】
  ・ 離婚、別居する場合・・・・・ 200〜300万円
  ・ 離婚、別居しない場合・・・ 50〜100万円
( → まさか自分の家庭で・・不倫の慰謝料相場と増額・減額を左右する7つの要因とは

 今回は、訴訟するようになったので、明らかに関係は破綻している。となれば、前者の「 200〜300万円 」が異性婚の相場だ。なのに 110万円なのだから、異性婚の半額以下と見なせる。

 それでも賠償金をもらえたのは、家族関係があったからだと見なせる。
  ・ 14年に米国で結婚。(同性婚)
  ・ 7年間の同居
  ・ マンションの購入(共同購入)

 という実績があった。これに対する慰謝料だけがあったと見なせる。
 一方、性的な貞操義務があったとは(強くは)言えないようだ。そうでないと、「異性婚の半額以下」という判決が説明できない。

 結局、同性婚は、「異性婚のような、性的貞操義務は(ほぼ)認められない」と言えるだろう。



 【 追記 】
 既婚男性が女性に性転換したあとで、戸籍の性別を「女」に変更したいと望んだが、拒否された。これを「妥当だ」と見なす最高裁判決が下された。(原告敗訴)
 第二小法廷は決定理由で規定の趣旨について「結婚している人の性別変更を認めると、異性間のみの婚姻を認める現在の秩序に混乱を生じかねないという配慮に基づくもので、合理性がある」と指摘。幸福追求権や婚姻の自由を保障する憲法にも違反しないとした。
 性同一性障害と診断された京都市内の会社経営者が女性への性別適合手術を受け、昨年2月、妻と結婚したまま性別変更の審判を申し立てた。性別変更が認められれば、結果として同性婚が成立する内容の訴えだった。(
( → 最高裁「合理性ある」と判断 結婚中は性別変更できない要件:朝日新聞

 最高裁の判決は、わからなくもないが、トランスジェンダーの人権を保護しようとする近年の風潮には、合わない。「人権よりも法制度を重視する」というのは、時代遅れだ。
 かといって、法制度をないがしろにしろというのも、無理ぽい。困った。どうする?

 そこで、困ったときの Openブログ。うまい案を出そう。こうだ。
 「現行の法制度の枠外で、(行政的に)性別認定書を発行する。女性であることを認定する正式な行政書類だ。これを示すことで、一般社会では女性であるという扱いを受けることができる」
 つまり、たとえ法的に男性であっても、性別認定書を示すことで、実質的には女性として扱われる、というわけだ。企業や大学などが、戸籍を見て「男性だな」と思うかもしれないが、このとき性別認定書を呈示すれば、女性として扱われるわけだ。(たとえば女子大への入学など。)
 書類の発行は、住民票と同様に、安価な手数料で正式書類を発行すればいい。

 なお、これには当然ながら、男性器官の削除が含まれる。そいつが付いたまま、女湯に入るわけには行かないからだ。
( ※ 肉体的でなく心理的な点だけでは、認められない。)

posted by 管理人 at 22:31| Comment(1) | 一般(雑学)6 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 最後に 【 追記 】 を加筆しました。
 最高裁判決が新たに出たので、それについての解説など。
Posted by 管理人 at 2020年03月14日 10:43
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