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生命の系統は、これまでは、次のような進化があったと考えられてきた。
古細菌(アーキア)→ バクテリア → 真核生物
ところが、実はそうではないらしい。
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これは NHK の「サイエンスZERO」(2020/02/16)で紹介されていた話だ。紹介しよう。
謎の生命体「CPR」を探しに、岐阜県の「瑞浪超新地層研究所」の地下300メートルの洞窟に潜入!見つかったのは、遺伝子をわずかしか持たず、私たち生物全体の共通祖先に極めて近いと見られる生物だった。呼吸をしない、エネルギーも作れない、しかし子孫は残す、こんな常識はずれの不思議な生態に迫る。さらに、今年1月に発表された「アーキアから真核生物への進化の謎に関わる大発見」について分かりやすく解説する。
( → サイエンスZERO「謎だらけの原始生命体」 - NHK )
要旨は次の通り。
地下の洞穴では、白亜紀という太古の岩石があり、そこには外部の水が1万年をかけて染みこんでくる。その水を採取すると、微小の生物が見つかった。これは CPR という。
普通の生命体には、1000個以上の遺伝子が必要で、大腸菌でさえ 4000個の遺伝子があるのだが、この CPR は、わずか 400ぐらいの遺伝子しかない。生命としての十分な活動ができているとは言いがたいらしい。本格的な生命ではなく、原始生命体とでも言うべきものだ。
その系統的な位置づけは、どうか?
まず現在、生命の系統は、次のように考えられているそうだ。
「大本となる何らかの共通祖先があって、そこから、バクテリアと、古細菌と、真核生物に分岐した」
その図式において、CPR は、バクテリアの祖先であって、バクテリアと共通祖先の中間に位置するものらしい。
さて。もう一つ、別の話がある。近年では、別の発見があった。古細菌の一部と、真核生物とに、共通性が見つかったそうだ。そのことから、「古細菌 → 真核生物」という進化の経路がはっきりしたらしい。
このことから、「バクテリア → 真核生物」という従来の進化の図式は否定されて、別の進化の順序が認定されたようだ。
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上では、二つの話を紹介した。
このうち、後者の件は、本年1月の新発見によるものだ。その詳細は、ネット上で見られる。
→ 産総研:真核生物誕生の鍵を握る微生物「アーキア」の培養に成功
この古細菌(アーキア)は、MK-D1株だ。これは普通の方法では培養も不可能であって、長らく正体が不明だったが、このたびようやく特殊な方法で培養することができた。それにともなって、いろいろと性質もわかった。
特に重要なのは、ただの球形の生命だと思われてきたのに、意外にも、成長するにともなって、まるで糸がほぐれるように、球形のものが、糸状または触手状の形態になることだ。
( ※ 顕微鏡写真が上記ページにある。)
ともあれ、「古細菌(アーキア) → 真核生物」という順序が判明した。また、「形がほぐれる」という特別な性質も判明した。この二つを組み合わせて、上記ページでは次の仮説を出している。
「古細菌(アーキア)は、形をほぐして、外にあるミトコンドリアを取り込んだ。そのことで、両者が合体した生命体となって、真核生物になった」
この発想自体は、おかしくはない。もともとは、マーギュリスの「細胞内共生説」で言われていたことだ。それを丸パクリしているにすぎない。
( ※ マーギュリスの「細胞内共生説」に言及しないで、独自の主張であるかのごとく紹介しているのは、学術的に不誠実ですね。)
ただし、単に丸パクリしているだけではなくて、追加で自説の部分もいくらか加えてある。
では、この追加された自説の部分は、妥当だろうか? 私の判断は、「否」である。
その理由は、私がすでに述べたことに矛盾するからだ。
→ 真核生物の起源: Open ブログ
→ 有糸分裂の起源: Open ブログ
真核生物の前には、有糸分裂があったはずだ。なぜなら、有糸分裂がないまま、真核生物だけがあれば、真核生物は分裂することができないので、増殖できない(子孫を生み出せない)からだ。(生命として矛盾する。)
この矛盾が、上記の仮説にも成立する。なるほど、産総研の仮説では、「核をもつ生物の誕生」を説明できる。しかしその生物は、「核をもつ」という形で「真核生物の条件」を(部分的に)満たしてはいるが、増殖する(子孫を生み出せる)という条件を満たしていないのだ。なぜなら、有糸分裂ができないからだ。(かといってバクテリアのように単純な分割もできない。)
真核生物が増殖するためには、有糸分裂をすることが必要であるが、その条件を、産総研の仮説のモデルは満たしていないのだ。ゆえに、この仮説は正しくない、と認定できる。それが私の見解だ。
[ 付記 ]
では、どういうふうに真核生物ができたか?
産総研の仮説では、「ミトコンドリアを取り込んだ」というふうに想定している。そこまではいい。マーギュリスの共生説とも合致する。
しかしその時点で、「核膜を有して、核を備えた」というのは、成立しないはずだ。その前にあらかじめ、「有糸分裂をする」という性質を備える必要がある。
そして、そのあとで、「核膜を有して、核を備えた」ということが実現したはずだ。それならば、論理的に整合する。
産総研の仮説は、たぶんこうだ。
アーキア → ミトコンドリア取り込み・核膜の保有 → 有糸分裂
しかしそれは論理的に成立しない。(増殖が不可能だ。)
だから、次の順であったはずだ。
アーキア → ミトコンドリア取り込み → 有糸分裂 → 核膜の保有
これならば、論理的に成立する。(増殖が可能だ。)
【 関連項目 】
本項の姉妹編とも言うべき項目がある。
→ 地下に微生物が大量存在?: Open ブログ
ここには、次の図もある。
詳しい話は、その項目を参照。