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クルーズ船の乗客が下船するのに先だって、18日、 WHO が船内の感染状況に懸念していた。
横浜港に停泊しているクルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号で新型コロナウイルスの感染が拡大していることをめぐり、世界保健機関(WHO)の緊急対応責任者マイク・ライアン氏は18日、「予想以上に感染が広がったことは明らかだ」とした。
( → クルーズ船内「予想以上の感染拡大」 WHOが見解:朝日新聞 )
政府は「下船を認める」という方針を出したが、船内で感染者が続出していることから、現状がのっぴきならない状況であることを、WHO も懸念していたわけだ。
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一方、感染症の専門家が、実際に乗船して調べた結果、クルーズ船では(まさしく)ひどい感染状態があったと判明した。
感染症を専門とする岩田健太郎・神戸大教授が、大型クルーズ船のダイヤモンド・プリンセス号内の様子を語る動画が波紋を呼んでいる。新型コロナウイルスの感染対策が不十分だと指摘する内容。
岩田さんは船内を歩いた感想を「それはひどいものでした」と表現。アフリカのエボラ出血熱や中国の重症急性呼吸器症候群(SARS)が流行している際の現場の話と比較し、「アフリカにいても中国にいてもこわくなかったが、ダイヤモンド・プリンセスの中はものすごい悲惨な状態で、心の底からこわいと思いました」と話している。そのうえで、自身が感染しても「しょうがないと本気で思いました」としている。
その理由について動画では、ウイルスがいるかもしれないゾーンと、安全なゾーンを区別してウイルスから身を守るのが鉄則というが、船内はこの区別がついていなかったと説明。「どこにウイルスがいるかわからない状態だった」と話す。また、マスクをつけていない乗員がいたり、熱の出ている人が自分の部屋から出て医務室に行くこともあったという。
( → 新型肺炎、船内の対策を神戸大教授が批判「悲惨な状態」:朝日新聞 )
上記の話は、動画の書き起こしから見つかる。
→ 動画の書き起こし
動画は下記。( 《 注 》 すでに削除された。項末参照 )
これは大きな話題を呼んだ。あちこちで記事になった。
→ 感染症専門家の衝撃告発「ダイヤモンド・プリンセスは新型ウイルス製造機」をどう見るか | Business Insider Japan
→ ダイヤモンド・プリンセス号に乗船した感染症専門医 「感染しても不思議じゃない悲惨な状況」
海外でも報道された。
→ Coronavirus: Diamond Princess exodus begins amid criticism over quarantine | The Guardian
→ Coronavirus: Passengers disembark from Diamond Princess in Japan - BBC News
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こういうふうに危険性がすでに指摘されていて、19日の朝にはネットで大いに話題になっていたのだが、その後、午後 11時過ぎに、政府はクルーズ船からの下船を実行した。
→ 新型ウイルス クルーズ船 乗客の下船始まる 約500人が下船へ | NHKニュース
1日 500人ずつで、21日まで続くそうだ。
こうして乗客が一般社会に拡散するわけだが、同時に、新型コロナウイルスも一般社会に拡散しそうだ。それを懸念する声は多い。
→ はてなブックマーク・コメント
一方、政府は「大丈夫だ」という立場だ。
加藤厚生労働大臣は、衆議院予算委員会で、下船した乗客の隔離の必要性を指摘され「国立感染症研究所からは、14日間しっかり管理され、検査が陰性で、最終的に健康確認されていれば公共交通機関を使ってもいいという示唆があり、最終的に判断した。……(中略)」と述べ、隔離は必要ないという認識を示しました。
( → 新型ウイルス クルーズ船 乗客の下船始まる 約500人が下船へ | NHKニュース )
しかし、政府が「大丈夫だ」と述べたことの根拠は、まったくデタラメだということが判明した。上記では「14日間しっかり管理され、検査が陰性で、最終的に健康確認されていれば」という話があるが、この条件がまったく守られていなかったのだ。
乗客の証言がある。下記。
「自分たちが感染源になるかもしれない。下船直前に再検査してほしかったのに」。十九日午前に下船した広島市の七十代男性と六十代女性の夫婦が検査で陰性とされたのは、十日以上前。船内ではその後も多数の感染が判明しており、夫婦は「本当に大丈夫なのか」と不安に駆られている。
夫婦は二月四日に、新型コロナウイルスの検査を受けた。三日後の七日に陰性の結果が出たが、一緒に旅行した五家族のうち三家族三人は陽性だった。
早い段階で陰性でも、再検査で陽性になるケースは出ている。「私たちも再検査したら陽性になるかもしれない。下船が始まってからでも再検査をして、結果が出るまでは隔離してほしい」と訴え続けたが、認められなかった。
( → 東京新聞:新型肺炎 クルーズ船下船の夫婦「再検査なら陽性かも」 検査は10日以上前:社会(TOKYO Web) )
タイトルに「検査は10日以上前」とある通りで、ずっと前に検査しただけだ。それ以後は検査していない。検査しないまま、勝手に「陰性だ」と決めつけて、乗客を解放したわけだ。
では、どうしてこういう馬鹿げたことが起こるのか? もちろん、安倍政権でお得意の「データの捏造」または「決めつけ」である。安倍政権では、証拠があっても「証拠はない」と強弁するのが通例だが、今回は、証拠がなくても「証拠はある」と強弁している。10日以上前に検査があっただけなのに、ずっと検査をしていて、「最新状況でも検査をして陰性でした」というふうに強弁している。……嘘つき内閣の本領発揮というところだ。
かくて、陰性ではない乗客(感染者?)が、大量に、一般社会に放たれる。1500人ぐらいの規模で。そのうち3分の1が感染者だとしても、500人が一挙に放たれる。
バイオテロだね。
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なお、感染の拡大という危険があることを、政府の国立感染症研究所は、英文でのみ広報した。
国立感染症研究所は、船内で検疫が行われ客室での待機が始まったあとも、感染が一部の乗客や乗員で広がったとみられると、研究所の英語版のウェブサイトで報告しました。
検疫期間の終了日に近づくにつれ、感染のほとんどは乗員や客室内の乗客どうしで起きたとみられるとしており、……
( → クルーズ船 客室待機後も感染広がったか 国立感染症研究所 | NHKニュース )
感染があったと見られると、公式に認めているわけだ。
ただし、である。英文で広報しているだけだ。
国立感染症研究所は、この報告を英語版のウェブサイトに掲載しましたが、19日午後6時の時点で日本語では掲載していません。
日本語では広報していない。これは、明らかな隠蔽だね。さすが、安倍政権。隠蔽が得意。
[ 余談 ]
ひどいありさまだが、これというのも、国民が安倍内閣を支持してくださったおかげです。
また、横浜市民が横浜市長を支持してくださったおかげです。
※ この船はカジノ船として、横浜市に来た。前に述べたとおり。
→ 新型コロナウイルスの話題 2: Open ブログ の (6)
なお、景気悪化を懸念する声もある。
→ 日本の不況は「ほぼ避けられない」 新型コロナウイルスの影響を各国メディアが報じる | ハフポスト
[ 付記1 ]
かくて、政府によるバイオテロで、日本は地獄のありさまだ。
そこで読者は言うかもしれない。
「困ったときの Openブログだろ。何とかしてくれ」
はい。では、うまい案を出そう。こうだ。
「下船した乗客を、すべてまとめて、東京五輪の選手村に収容する。(準備期間が必要なら、それまで数日、船内に留まってもらう。)」
どうせ選手村の建物はできていて、(内装以外は)すでにほぼ完成状態なのだから、そこに臨時で住んでもらえばいいのだ。1万人以上が住む場所があるので、スペースはたっぷりある。
ただ、この案は、私以外にも思いついた人がいそうなので、調べてみたら、すでに報道されていた。
→ 新型コロナ「隔離には五輪選手村を」想定はるかに超える発症例と患者増:東スポ
ただしここでは、次の悲観的意見がある。
選手村は五輪・パラリンピックで使用されるほか、大会後はマンションに転用され、賃貸・分譲される。新型コロナウイルスの隔離施設として使用されれば、終息の見通しも立たない中、どんな風評被害が残るか分からない。とても五輪大会組織委員会がゴーサインを出すはずもなさそうだが…。
風評被害の心配をしている。だが、こんなことは気にすることはない。
第1に、ウイルスの寿命は 10日間ぐらいであって、夏まで残るはずがない。また、たとえ残ったとしても、夏の暑さで壊れてしまう。心配はいらない。
第2に、組織委が反対しても、組織委は国の傘下にあるのだから、首相が「国家危機の事態だ」として命令すれば、組織委は逆らえない。(菅直人首相が浜岡原発を首相命令で止めたのと同様だ。こういうのには、誰も反対できない。)
第3に、どっちみちお台場のマンションは、格安で賃貸・分譲されるのだから、いやがる客は来なくてもいい。単に応募倍率が少し下がるだけのことだ。( ※ 応募倍率 5倍ぐらいの人気が、4倍ぐらいに下がるだけだ。)
というわけで、選手村を転用すれば、あっさり解決が付くのだ。
[ 付記2 ]
それとは別に、部分的な救いがある。感染者の一部については、(開業前の)藤田医大が引き受けてくれることになったのだ。
→ クルーズ船感染者、藤田医大に入所 同行者も受け入れへ:朝日新聞
政府がひどすぎるので、民間の一部が(見るに見かねて)自ら手を差し伸べてくれるのだ。
【 追記 】
20日の朝、岩田健太郎・医師の動画は削除された。理由は不明。単に通知とお詫びがあるのみ。
動画は削除しました。ご迷惑をおかけした方には心よりお詫び申し上げます。
— 岩田健太郎 (@georgebest1969) February 19, 2020
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これ以上この議論を続ける理由はなくなったと思います。
まあ、たしかに今さら公開しても「手遅れ」とは言える。下船の前に公開したのに、政府に無視されてしまったのだから。政府を動かす効果は、もはやなくなってしまった。残る効果は、政府批判の効果だけだが、それは政治的効果であって、医学的効果ではない。また、患者さんへ世間から攻撃が起こる懸念もある。
告知はすでに十分になされたし、書き起こしも残っているので、公開を続けても続けなくても、差はあまりあるまい。
あと、一部の医師から人格攻撃を受けたりしているので、そういう問題を懸念しているのかもしれない。
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さらに調べたところ、動画には一部、間違いが含まれていたようだ。「ゾーニングまったくなされていない」というような批判を含めて、主要な部分で間違い( or 勘違い)がいくつも含まれていたらしい。詳細は、下記にある。
→ 高山義浩 - 岩田 健太郎先生の動画(コメント欄にリンク)を拝見して
ただし、この人は過剰に現場を擁護しすぎている傾向がある。「現場の人は非常に頑張っている」「大量の乗客をきちんと処理するなんてもともと困難だ」というふうな。
しかし、それならそれで、「下船させて一般社会に解放するべきではない」という結論になるはずだ。ところが、それを語らない。むしろ、隠蔽している。
最終的に、「政府は感染しているらしい乗客を大量に解放する」という結果となったが、これが問題であることは、揺るぎがない。岩田健太郎・医師の訴えたことは、主要な点でいくつかの事実誤認が含まれていたようだが、「船内は危険な状況だった」「乗客は感染している疑いが強いまま社会に解放された」という大きな結論では間違っていないと言えるだろう。
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高山義浩・医師への批判もある。
ただの感想ですが、岩田先生のビデオは国際的に通用する論理で話をしていると思う。高山先生の記事は、国内向けの論理ばかりで疑問に思った。あと、後者は前者の信用を落とすための余計な文章が多くて、ちょっと残念に思った。
( → Masahiro Ono 小野 昌弘さんはTwitterを使っています 「 / Twitter )
次の意見もある。
彼の前に乗り込んだ東北大の医者がTVでゾーニングはされてたって反論してたが、それを超えて移動してるのは検疫官や職員と船員だけとも言ってて、それ反論じゃなくて裏付けじゃねぇかって思ったのでまあそうなんだろ
( → ayumunのコメント / はてなブックマーク )
彼の個人ブログを見ましたがCovidに関する記事は今月16日か17日以降で、それまで何のご意見も提言も出されていません。
ユーチューブ動画を全編見て、失礼ながら、個人的には信用できないと感じています。
> 主要三紙のオンライン版のトップから消えました。
そりゃ、当り前です。トップは最新記事(約3時間分)なので、半日前の古い記事はトップから消えます。
朝日新聞だと、記事そのものは残っているし、トップでも「アクセスランキング 2位」のところに掲載されています。 2020-02-19、20:45
> Covidに関する記事は今月16日か17日以降で、それまで何のご意見も提言も出されていません。
彼はそれまで、私とは違って、政府の方針を支持していました。政府寄りだったんですね。
ところが、乗船して、現場の実態を見たら、認識を大きく転換した、ということのようです。それはそれで、問題ない。
君子豹変す、みたいな感じでいい。間違った意見にずっとこだわるよりは、ずっとマシだ。
まあ、危険な船に自ら乗り込んで、自らウイルスに被曝する、という勇気は、称賛していい。私にはとてもできないことだ。(現場に出向くことの必要性は、理解していたが。次項に示してある通り。)
20日の朝、岩田健太郎・医師の動画は削除された。……という話。
高山義浩・医師の話も。
本来あるべき方向に向けてとにかく努力するけれど、できない部分はどうしてできないのかをはっきりさせることが必要。そうすれば何か別のところから解決策が出てくるかもしれない。
それを自分(や身内)の中だけで処理して「みんな頑張ってるんだから」というのでは、「なるようにしかならないんだから……しょうがないでしょう」と言っているに過ぎない。
特に、子供に感染し始めているのは大きいと思いますね。
北海道中富良野町とのことなので、中国人観光客がウイルスを持ち込んだのでしょうか?
東京オリンピックを気にしすぎたのと、中国人観光客のはした金に目がくらんだ安倍政権と二階幹事長(←中国大好き)の判断ミス(=中国人の入国を制限しなかったこと)が非常に大きいと思います。