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これは NHK のサイエンスゼロ 2020-01-26 で放送されたもの。番組の詳細は下記で紹介されている。
→ マラリアを根絶可能なワクチンを日本人研究者が開発。臨床試験参加者30人全員経過良好!! 感染流行地コンゴで結果を出し実用化へ
要旨は次の通り。
通常のワクチンは、ウイルスを破壊して無毒した、ウイルスの残骸などを使う。これは自然由来のものだ。
一方、新たに人工ワクチンともいうべきもの(これは私の勝手な比喩だが)ができた。それは、既存のウイルスが「殻と中身」でできていることにもとづいて、殻だけを利用するものだ。
ウイルスの中身である遺伝子を除くと、ウイルスの病原性はなくなる。残りの殻には、あとから勝手に(免疫反応の)抗原を付けることができる。ここで、マラリアの抗原を殻に取り付けると、外から見た感じはマラリアそのものに見えるので、人体の免疫組織が活動して、抗原に対する抗体を作成する。かくて、それを注射したあとでは、人体はマラリアを攻撃する能力を獲得する。これが免疫機能だ。
こうして人体には「マラリアを攻撃する」という免疫機能が備わる。それが備わるのは、注射してから3週間後ぐらいだ。そのときに本物のマラリア原虫を人体に入れると(つまりマラリアの蚊に食われると)、マラリア原虫は、体内で免疫機能によって攻撃されるので、死に絶える。かくて、人はマラリアに感染しなくなる。
かくて、ワクチンができたことになる。
以上のことが、人体実験で確認された。5人ぐらいの人にワクチンを注射したあとで、確実にマラリアの蚊に食われさせて、マラリア原虫を体内に入れた。その後、調べると、まったく発症していなかったことが確認された。直後から、三カ月後まで、何度調べても、誰一人として発症していない。ワクチン成功!
今後は、現地(コンゴ共和国)で、大規模な臨床試験をやる予定だという。
この VLP という技術は、通常のワクチンとは違って、人工ワクチンともいうべきものだが、それが画期的な成果をもたらせる技術だということで、研究所でも学界でも最高レベルの評価を得たという。(賞をもらったりした。)
今後、マラリアの撲滅が実現すれば、ノーベル賞も夢ではないだろう。(私見だが。)
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というところまでは、番組の紹介だ。
ここで私が思ったことがある。
「 VLP につける抗原を変えれば、さまざまな感染症(ウィルス由来)に対抗できるということなのだから、新型コロナウイルスにも有効なのでは?」
そうですよね? 番組の放送は 2020-01-26 だったので、世間はまだ騒ぎ始めたばかりだった。しかし、今となっては、新型コロナウイルスの感染は大規模になったと判明したので、上記のワクチン技術も役立つことになりそうだ。
今のところはマラリア撲滅に努力して、アフリカに出向いたりしているようだが、研究者には、自分の領分でワクチン開発をすることを要望したい。
臨床試験なんかは、自分の領分ではないのだから、他人に任せていい。他人でもできる。というか、他人の方が上手にできる。
それよりは自分の領分で、マラリア以外のワクチンの開発に専念してもらいたいものだ。それはこの人だけにしかできないのだから。
特に、新型コロナウイルスに対抗するワクチンの開発を望みたい。
( ※ コロナウイルスだけでなく、他の多くの感染症にも有効だとも言える。人工ワクチンの構造はそのままで、抗原だけを変えれば、多様な感染症に有効となるからだ。その意味では、万能の方法と言えなくもない。人類史上最高となるかも。)
【 関連サイト 】
NHK の番組紹介のページは、冒頭に示した通り。
他に、下記の参考ページがある。
→ VLP Therapeutics Founder&CEO 赤畑 渉 - BCN+R(インタビュー)
→ VLP Therapeutics CEO 赤畑 渉 氏インタビュー(PDF)
→ 【アメリカで起業】マラリアやデングなど、VLPワクチンで世界人口の半分を救える開発を
【 追記 】
情報をいくらか訂正する。
「臨床試験をこれから実施する」というふうに述べたが、それは、現時点(再放送時)のことではなく、1年前(初放送痔)のことだった。したがって、現時点では、臨床試験はすでに実施済みであるはずだ。詳しい情報は下記にある。(2019年3月 5日)
5月から30人に候補薬を3回ずつ投与し、感染時に速やかに治療できる体制を整えた上で、蚊を使って実際に感染を防げるか調べる。年内には結果が得られる見通し。
( → マラリアワクチンの臨床試験 開始 - 化学業界の話題 )
結果はすでに得られているはずだ。今は論文をまとめている最中かも。近いうちに結論が報告されるはずだ。
ただし、会社のホームページでは、まだ何の報告もない。
→ VLP Therapeutics ? Imagine: Vaccines Without Borders
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なお、上の記事にも書いてあるように、次のことがある。
1つのVLP上に480個の外来抗原を、高度な対称性と密度を保ちつつ提示することができる。そのため、免疫個体において、B細胞による抗原認識が効率よく行われ、抗原特異的抗体の産生量を非常に高める特徴を持つ。
外来抗原ををたくさんもつ。これは従来のワクチンの 10倍ぐらいに当たるそうだ。そのせいで、抗体がこれをマラリアであると認識する率が非常に高まるそうだ。だからこそワクチン効果が高く出る。( NHK の番組による。)
なお、殻に抗原を付けるという方法は、前から知られていた。ただし、殻そのものが壊れやすいので、そのまま使っても効果が出なかった。
そこで、赤畑博士は、頑丈な殻をもつウイルスを探して、特定の1種のウイルスだけが特別に頑丈な殻をもつことをうまく探し当てた。かくして、壊れない殻を見つけたので、以後の研究が進んだ。
ここには「ひらめき」みたいなものがあって、独自の研究成果を得たわけだ。
iPS 細胞の山中さんもそうだが、特別な成果を出す研究者は、特別な「ひらめき」をもつからこそ、そういう特別な成果を出せたのだと言える。
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