国鉄民営化は成功したが、郵政民営化は失敗した。その違いはどこにあるか?
──
かんぽの不正が、いまだに新聞紙面をにぎわせている。
新たに、次の報道が出た。
→ かんぽ22万件追加調査 6万人不利益か 改善計画を提出|【西日本新聞】
→ かんぽ生命 信頼回復に向け顧客の不利益解消が課題に | NHK
これとは別に、(ノルマで労働者が自腹を切る)自爆営業の話もある。
→ 「一方的なノルマ」「自爆多すぎ」 日本郵便経営陣に従業員訴え:朝日新聞
→ 郵便局、残る物販ノルマ 目安額・計画値が圧力、自爆営業も:朝日新聞
→ 郵便局員「みまもり」で自爆営業が横行 ノルマが中止に:朝日新聞
こういう問題が続出するのを見ると、「国鉄民営化は成功したが、郵政民営化は失敗した」と言える。では、両者の違いはどこにあるか?
──
国鉄民営化は、中曽根康弘首相の方針だった。これは成功した。
郵政民営化は、小泉純一郎首相の方針だった。これは失敗した。
では、その違いは? 柳の下に2匹目のどじょうがいなかったが、そのわけは?
首をひねって、あれこれ考えたすえ、私の結論はこうだ。
「国鉄は、地域で分割化した。その結果、非効率な経営をすると、その会社だけが損をして、倒産する危険が生じる。そのせいで、労働者も協力的になり、全社一丸で、会社の効率化をめざすことになった。おかげで、垂れ流しの赤字が縮小し、経営的に成功した」
「郵政省の事業は、地域で分割されず、業務で分割された。郵便はユニバーサルサービスが保たれ、金融や保険(かんぽを含む)も全国一律の体制が保たれた。そのせいで、地域別の(効率化をめざす)競争が起こらなかった。一方で、郵政と金融と保険を一体化する統合性は損なわれた」
──
上のことからすると、私の推奨は、こうなる。
「郵政を民営化するならば、地域別に分割するべきだ。一方で、郵政と金融と保険は、分離せずに、統合するべきだ」
そこで、私の提言は、こうなる。
「郵政と金融と保険の各社を、合併させる。その後に、地域別に分割する。東と西の二つぐらいに分割すればいいだろう」
これは地域に分割案だが、地域四分割でもいい。たとえば、「西日本(九州・四国・中国)、関西と東海、東日本、北海道」だ。
この場合、北海道だけは採算に乗りそうにないので、北海道だけは補助金を投入してもいい。他の三つは、補助金は不要だろう。
──
より根源的には、こう言える。
「郵政事業のユニバーサルサービスは、もともと採算に乗らない。昔ならばともかく、電子メールの発達した現在では、郵政事業のユニバーサルサービスは維持が困難だ。かろうじて、金融と保険の利益で、赤字を支えることぐらいだ。
ところが、金融と保険の分野では、事業内容に比べて、雇用人員があまりにも過剰である。この人件費を維持するためには、過大なノルマを課すしかない。かくて、違法なノルマがまかり通った。これが現状の違法ノルマの横行する理由だ」
逆に言えば、違法なノルマをなくすには、過剰な人員を削減するしかない。つまり、大幅な解雇というリストラだ。
そして、それが(今すぐには)できないのであれば、郵政民営化ということ自体が本質的に間違っていたとも言える。地域分割をするかわりに、事業の分割なんかをした郵政民営化が、根本的に間違っていたわけだ。
実を言えば、「地域分割をするかわりに、事業の分割なんかをした」というのは、「そうすれば、分割後の上場で莫大な利益が出る」と見込んだからだ。しかしそれは、捕らぬタヌキの皮算用だった。本質的には赤字事業なのに、黒字を出すようにと(勝手に)見込んだ。……そのせいで、無理な営業を強いられて、違法なノルマの横行に結びついた。
かくて、郵政民営化は、(かんぽを通じて)高齢者などに莫大な損害をもたらした。……国家による犯罪。国家による泥棒。自殺者もいくらか出たかもしれない。
──
思えば、郵政省は、もともとうまく事業を維持していた。国鉄のように国費を投入してもらうこともなく、きちんと事業を維持していた。
なのに、小泉純一郎首相が、「国鉄民営化を見習おう。柳の下の2匹目のドジョウを狙おう」と息巻いて、郵政民営化をゴリ押しした。反対者を「抵抗勢力」と呼んで、選挙区に「刺客」を送り込んだりした。こうして郵政民営化は実現したが、その結果は、現状の通りだ。国家による犯罪行為の横行。
まったくもって、ひどいものだ。
( ※ なお、対策は、先に示したとおり。)
[ 付記 ]
かんぽをやる企業は、名目的には民間企業だ。だが、実質的には、かんぽは国家のやっていることだ。経営者も、政府が任命する。
【 関連サイト 】
→ かんぽ不正、マスコミがなぜか報じない「郵便局の深すぎる闇」の正体
2020年02月02日
この記事へのコメント
小泉純一郎という男が、まともなヴィジョンを持っていなかった事が原因ですかね。
Posted by れじ at 2020年02月03日 01:24
コメントを書く
過去ログ