2020年01月28日

◆ 地方の路線バスの縮小

 地方の路線バスが次々と規模を縮小している。廃止になる路線も多い。どうすればいい?

 ──

 地方の路線バスが次々と規模を縮小している。次のグラフがある。


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出典:朝日新聞


 これへの対策として、新たな案が出た。
 「地域の各社がバスの運行を共同化して、路線の重複をなくしたりして、コストダウンを図ることで、赤字を解消する」
 というものだ。詳細は下記。
  → バス運転手、不足解消の切り札?熊本の5社、共同経営へ:朝日新聞

 では、これでうまく行くだろうか? 

 ──

 地方でも都市圏では、かろうじてバスの運行を維持できるだろう。しかし、過疎地で人口が急減しているような地域では、今後もどんどん人口の急減があるだろうから、路線の維持は困難になるだろう。……そういう見通しができる。
 では、どうするか? 

 すぐに思いつく案は、次のようなことだ。
  ・ 自治体が補助金を出す。
  ・ バスをマイクロバスにする。
  ・ 自動運転バスに任せる。(将来的に)

 
 ただし、このようなことは、誰でもすぐに思いつくことだ。できるならば、とっくにやっているだろう。できないとしたら、いろいろと事情があるからだろう。(たいして効果がない、という理由が最大だろう。)
 困った。どうする?

 ──

 そこで、とりあえず本質を考えよう。物事の根源に立ち返って考える。すると、こうわかる。
 「根源は僻地の人口急減にある。人口そのものが急減して、村が消滅の危機にあるのだ。ここでは、バス路線の維持そのものが、原理的に困難となっている。乗客がろくにいないのに、空気を運んでいるようなものだからだ」


 ならば、結論はこうなる。
 「村そのものを、なくせばいい。路線バスを維持するのではなく、村そのものをなくして、村人そのものをいなくさせればいい。それならば、路線バスそのものが必要でなくなる」


 ただし、口で言うのは優しいが、現実には難しい。特に、現時点では、出ていかない超高齢者が多いだろう。「この家で死にたい」と思うような超高齢者はたくさんいるはずだ。では、どうする? 
 私としては、こう提案する。
 「当面の高齢者は、そのまま在住させる。その上で、経過措置として、(路線バスに限らず)何らかの公共車両を用意する。オン・デマンド・タクシーなど。
 一方で、長期的には廃村にするという方針を取る。その方針の下で、超高齢者以外には、離村することを推奨する」


 若い人はどうせもう残っていないだろうが、60〜70歳ぐらいの老人は残っていそうだ。これらの老人については、なるべく早く離村することを推奨する。(たとえば、近場の人口密集地に移転する。)
 80歳以上の超高齢者は、どうせ出ていかないだろうから、そのまま居住を認める。そうすると、おおよそ 10年ぐらいで寿命を迎えるから、10年ぐらいで村人はいなくなり、自動的に廃村となる。こうして、問題そのものが消滅する。

 なお、近場の人口密集地には、空き家などを利用して、老人や超高齢者の移住を推奨する(招き寄せる)といいだろう。そのために、家賃補助をしてもいい。
 そして、そのための費用は、少数の人間に対する月額の援助(月1万円程度)ぐらいで済むから、たいして高額にはならない。路線バスを維持するために巨額の金を払うよりは、少ない額で済みそうだ。
 こうして、費用対効果の優れた方法として、「移住の促進」という案を提出しておこう。

 ──

 一方、別途、費用対効果の悪い方法もある。こうだ。
  ・ 路線バスの維持に巨額の金を投入する
  ・ 鉄道を維持する
  ・ 橋や電力や水道など、インフラの維持に金をかける
  ・ 都会民を招くIターンに、巨額の所得補償をする


 これらはいずれも、莫大な金がかかる。なぜか? 維持できそうにない僻地の村を、無理に維持しようとするからだ。もともと無理なことを、無理を承知で強引に実行しようとするからだ。(いわば、自然の摂理に反するように。)

 僻地で人がいなくなるのは、自然の摂理も同然だ。ならば、それに無理に逆らうべきではない。かわりに、その流れに沿いながら、流れにうまく乗って生き延びるような「最善の策」と導き出せばいい。
 それが私のお薦めだ。

 ──

 ともあれ、基本的な流れとして、「僻地の村は消滅しつつある」という傾向がある。とすれば、その流れに逆らわずに、いかに上手に軟着陸させるかに、知恵をめぐらせればいいだろう。



 [ 付記 ]
 地方の僻地が次々と廃村になりつつあるというのは、どうしようもない流れだ。そういう報道や記事も多い。すでに廃村になった土地を探る企画もある。
  → これぞ東京の秘境! 1972年に廃村になった奥多摩山中の「峰集落」へ行ってみた
  → 『限界』から『消滅』集落へ 高齢化・人口減の厳しい現実

 ど田舎だけでなく、横須賀にも(丘陵部に)廃村となった場所がある。田浦町だ。
  → 湘南田浦ニュータウン(廃村) - Togetter

 この記事は 2017年だが、その後に解体が進んでいるようだ。








 横須賀でさえこのありさまなのだから、ど田舎の限界集落となれば、もっとひどいことになるのは仕方ない。



 【 関連項目 】
 
 似た話題を論じたことがある。電力・水道・橋などのインフラを、僻地では維持する必要はない……という趣旨。
  → 電力自由化と過疎地: Open ブログ
posted by 管理人 at 22:42 | Comment(3) | 自動車・交通 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
リンク記事には最後にこう書いてありました。例の廃村は湘南田浦ニュータウンではなく、以前から存在しており、ニュータウンを造成するために買収して立ち退いた家屋だったようです。しかし計画が頓挫しニュータウンは作られることなく家屋だけ残った
Posted by gunts at 2020年01月29日 04:16
管理人さんの意見に強く同意です。
何故か、過疎の村(集落)を無理に延命させようとする意見が多いですね。
あと、廃屋が、地方だけでなく、都市でも激増してますが、何とかならないものかと…
Posted by 名無し at 2020年01月29日 14:06
管理人さまの主張と正反対の政策を国(国土交通省)が主導しています。下記リンク先を読むと、どうにかして過疎地の地域公共交通を維持しようともがいている様子がわかります。

国交省『地域公共交通確保維持改善事業』

https://onl.la/nymwE6D


国交省資料
『地域公共交通確保維持改善事業の概要』
https://onl.la/32syRdY
Posted by 反財務省 at 2022年01月26日 13:49
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