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ソフトバンクが、子会社の SBドライブを通じて、自動運転バスを公道で実用化するそうだ。
→ SBドライブ、自動運転バスを公道で実用化 :日本経済新聞
しかし、自動車メーカーでもないソフトバンクが、こんなことをする意義があるのか? 疑問に思ったので、調べてみた。
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上記記事にはこうある。
ソフトバンク子会社のSBドライブ(東京・港)は27日、あらかじめルート設定した公道を自動運転で走るバスを実用化すると発表した。4月にも茨城県境町で、住民らを乗せて病院や銀行、郵便局や食品スーパーなどを通る往復約5キロメートルの区間で運行する。
SBドライブによると、公道で自律走行するバスを実用化する自治体は境町が国内初だという。車両は仏ナビヤ社の自動運転を想定して設計されたバス「ナビヤ アルマ」を使う。全地球測位システム(GPS)などで走行している位置を測定し、レーザースキャナーで障害物を検知する。
自動運転の技術レベルはドライバーが乗車する「レベル2」にあたる。バスにはハンドルがなく、運転用のコントローラーを持った運転手が乗り込む。巡回ルート内は原則、自動運転で走るが、車庫から巡回ルートまでは運転手が操作する。
自社技術ではなくて、仏ナビヤ社の技術を使うわけだ。
では、仏ナビヤ社の技術は、どのくらいのレベルか? 前に紹介したページで、技術力ランキングを見る。
→ ウーバーの自動運転車は危ない?数字が明かす真相
このランキングには掲載されていない。技術力は不明である。
そこで、とりあえずこの会社を調べてみる。
→ フランス「ナビヤ」がソフトバンクに自動運転バスを販売 | CCI France Japon
→ NAVYA ARMAは世界20カ国、116台が 導入済み
ベンチャーで、そこそこ頑張っているが、とうてい大手とは言えないようだ。
では、どうしてソフトバンクはこんな弱小メーカーの機械を使うことにしたのか? そう疑問に思ったが、実は、事実は違った。
ソフトバンクは、この会社とだけ提携しているのではなく、あちこちの会社と提携しているのだ。八方美人ふうに、提携先は多岐にわたる。
→ SBドライブ、バイドゥと自動運転バス活用の協業に合意
→ 全日本空輸(ANA)とSBドライブ、ビーワイディージャパン(BYD)1
→ 全日本空輸(ANA)とSBドライブ、ビーワイディージャパン(BYD)2
→ ソフトバンクとトヨタの“タッグ”
つまり、ナビヤのほかに、バイドゥ、BYD、トヨタとも組むわけだ。二股交際ならぬ、四股交際である。もっとあるかも。
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以上のことから、こう結論できる。
「ソフトバンクは、自動運転技術そのものには興味がない。自動運転技術は、外部から買えばいいと思っている。興味があるのは、自動運転技術を利用して、社会基盤(インフラ)としての自動運転車サービスを整備することだ」
まあ、名前からしてもわかるが、ソフトの銀行みたいなことを狙って、自動運転のソフトを使った社会基盤を作ろうとしているのだろう。そこが狙いだとわかる。
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こうして、ソフトバンクの狙いはわかった。これは孫正義の認識(経営判断)だろう。
一方、私は、同じようには考えない。かわりに、こう考える。
「自動運転で、最も大切なのは、自動度運転技術の開発そのものだ。ここで先端技術を開発することこそ、何よりも重視するべきだ。
一方で、自動度運転技術を応用して、バスなどの社会基盤を作ることには、ほとんど意味がない。そういうことは、自動運転技術が十分に開発されたあとで、ゆっくり動き出せば間に合う。換言すれば、今ここで大急ぎで進出したとしても、先行者利益などは何もない。むしろ、余分なものを背負うことで、邪魔な負担を背負いかねない」
似た話で言えば、CHAdeMO という( EV用の)充電規格がある。この規格で先行すれば、EV の普及で先行者利益を得られる……と思って、日本では各地に CHAdeMO の充電施設が設置された。
ところが、CHAdeMO は、低電圧であるがゆえに、「充電時間が長くかかり、回転率が下がり、コストが上昇する」という三重苦に苛まれることになった。先行して普及させたことが、大いなるデメリットとしてのしかかることになった。これは、(新技術の)高電圧の規格を採用したテスラに比べて、圧倒的に不利な立場に立たされたことを意味する。
→ 日産の EV は失敗: Open ブログ
ソフトバンクも同様のことになりかねない。低レベルの技術のまま、やたらと進出して、先行者利益を狙っても、あとから来た高性能の新技術に追い抜かれて、古い負債が莫大にのしかかるだけなのである。そういう馬鹿げた路線を、ソフトバンクはめざしている。
一般に、理系の技術者は「最先端の技術」をめざそうとする。文系の商売人は、「先んじて金儲けをしよう」とめざす。その違いが出た、とも言えるかも。(ただし、孫正義は理系なんだけどね。)
[ 余談 ]
ちなみに、軍事面で言うと、「戦闘機は最先端の最新技術のものがいい」という人もいるが、「莫大な金がかかっても低技術の国産機がいい」という人もいる。後者の発想から、超巨額の F2 戦闘機が開発された。防衛力を高めるよりは、三菱の金儲けが大事だったらしい。
ただ、大金を払っても、国産技術が得られるならば、まだマシだ。大金を払って、技術は得られないまま、単に米国に金を貢ぐだけ、というのでは最悪だ。
「アメリカの犬になることが最も大事。トランプのご機嫌取りが最も大事」という安倍首相こそ、最悪だと言える。