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京都や鎌倉では、外国人観光客が多すぎる「観光公害」(オーバーツーリズム)の問題が生じている。これへの対処として、
・ 京都ランド
・ 鎌倉ランド (前々項)
という案をすでに示してきた。
これらは、当該の地域の内部における解決策だ。
一方、それとは別に、「観光客を地方に分散させる」という方針もある。これについては、前に別項で論じた。
→ 観光業の問題: Open ブログ
ここでは、問題の解決のボトルネック(最大の阻害要因)を示した。それは、次のことだ。
「地方の旅館は、外国人観光客を受け入れる態勢ができていない」
その上で、この問題への解決策を提言した。(旅館を現状にあわせて改革すること、など。)
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一方、本項では、「ボトルネックの解消」とは別の問題を扱おう。こうだ。
「地方の各地の魅力を高める」
つまり、観光客に対する「吸引力」を高めることだ。これはこれで重要だ。
問題は、その方法だ。いかにして、そうするか? 何かうまい手があるか?
とりあえず、ネットで調べると、次の成功例が見つかった。
→ 外国人が殺到する城崎温泉、どうやって訪日観光客を36倍に伸ばしたか?
城崎温泉では、外国人観光客をたくさん招くことに成功した。その方法は? 特に奇を衒うようなことがあったわけではない。当然のことをやった。
・ 外国人向けへの発信。(ホームページなど)
・ 宿泊施設で、英語の対応力の向上。
・ 伝統的な日本的魅力の充実。
特に目立つことがあるとしたら、「七つの公共温泉(外湯)を用意して、それらの外湯を利用し放題にした」(サブスクリプションだ)ということぐらいだろう。
この権利を宿泊客に無料でプレゼントするということだが、無料とはいっても、宿泊料代に含まれているだけだ。
通常は、大人 1300円となる。
→ 城崎温泉観光協会|七つの外湯めぐり
これが、団体購入割引みたいになって、800円ぐらいになっているのだろう。が、ともあれ、その 800円ぐらいが宿泊に込みになって、販売されているわけだ。
それでも宿泊客は、「無料で温泉の入り放題だ。すごく、お得だ」と感じるので、観光客がどんどん押し寄せるらしい。
( ※ ちょっとインチキっぽい。ケータイ電話の「本体無料」というインチキ宣伝に似ている。)
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城崎温泉はともかく、それ以外でも、(ホテルでなく)日本旅館は外国人観光客に人気だ。そのランキングもある。
→ 外国人に人気の日本の旅館 ランキング 2019
まあ、せっかく日本に来たのだから、日本的情緒を味わいたい、というのは、もっともだ。
で、そうだとすれば、地方の各地の旅館も、外国人観光客で賑わっていていいはずだ。しかし、実際には、そうでもない。最近では、地方にも結構観光客が多く来るようになったようだが、それでも、混雑するのは有名観光地が多い。あまり有名でない観光地には観客があまり来ないところも多い。
たとえば、鬼怒川温泉は、すっかりさびれてしまったし、塩原温泉も同様だ。
→ 鬼怒川温泉の廃墟群が凄い!ここまで寂れてしまった理由とは?
→ 今の温泉はすげぇことになってる (塩原温泉)
では、これらの観光地にも、外国人観光客を招くには、どうすればいいか?
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そこで本項で提言しよう。こうだ。
「今の日本の温泉地の多くは、温泉施設そのものを目的としている。昔の団体旅行(慰安旅行)の名残で、大宴会場でどんちゃん騒ぎや宴会をしたりして、旅館内で楽しむことを前提としている。そして、それが、個人客を主体とする人々(外国人観光客や日本人)には、そぐわなくなった。
だから、これからは、旅館の外に出て時間を過ごすことを目的とするようにすればいい。具体的には、旅館の外部に、楽しめる場を設ければいい」
旅館の外部にある「楽しめる場」というと、従来の発想では、土産店ぐらいだっただろう。
しかし、城崎温泉では、「外湯の入り放題」というサブスクリプションサービスを提供した。これは一案だ。
これとそっくりなことをやって成功したのが、黒川温泉だ。やっていることは、城崎温泉とほぼ同様である。
→ 存亡の危機から、全国1〜2位に上りつめた黒川温泉
他に、熱海という成功例がある。
→ 「寂れた昭和の温泉地」熱海が蘇った根本理由
記事を読んでも、よくわかりにくいのだが、どうやら「観光客にとって魅力的な街づくり」というのが成功したらしい。
ただ、次の記事もヒントになる。
→ 旅館の夕食をなくすと寂れた温泉街がにぎわう? : 深読み : 読売新聞
一部抜粋しよう。
泊食分離が実現すると、日本ならではの宿泊体験ができる旅館と、街中で味わえる多彩な食文化の両方を楽しみたいという外国人旅行者らのニーズに対応できると見込まれている。
泊食分離を進め、旅館から夕食の調理・配膳・後片付けがなくなったことで、旅館で働く従業員の夜勤がなくなった。旅館の勤務形態も変わり、人材不足の解消や若者の創業支援にもつながっていく。
ここでは、旅館の外部にある料理店を楽しむ、という形で、宿泊客の満足度を高めているわけだ。
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「旅館の外部に楽しめる場を用意する」
という私の提言に合致する例として、
・ 入り放題の外湯
・ 街中の料理店
という二つがすでにある……と紹介した。
ただし、私の案は、この二つに留まらない。もっと広い範囲で「楽しめる場」を設置するべきだ、と考える。
その例を以下で示そう。
(1) ハイキングコース
どの温泉地にもお薦めできるのは、ハイキングコースだ。日本には、ハイキングや軽登山に適した場所が、すごくたくさんある。「日本の平野部は2割しかない」としばしば言われるが、逆に言えば、残りの8割は山地部だ。とすれば、ハイキングや軽登山に適した場所が、人家のそばにあることになる。
実は、これは、欧州人には体験しがたいことだ。というのは、欧州のほとんどは、平野部だからである。例外的に、スイスのような高山地帯もあるが、これはあまりにも高山過ぎて、ハイキングや軽登山には適さない。
ひるがえって、日本では、平野部のすぐそばに、丘陵や低めの山がある。これらはハイキングや軽登山に適しているので、多くの観光客を呼べるのだ。
そして、2〜3時間ぐらいのハイキングや軽登山を楽しんだあとは、宿に戻って、温泉に入ればいい。そうすれば、疲れが体を温泉で癒すことができるので、「ああ、極楽、極楽」と感じることができる。
ハイキングや軽登山こそ、日本ならではの、素晴らしい楽しみなのだ。そこでは自然との触れあいもある。
これと同趣旨のことは、下記サイトでも述べられている。
→ 実はインバウンドで人気 「ハイキング」の観光資源としての”チカラ”とは
→ 【コト消費】なぜ欧米人はトレッキングが好きなのか?
初心者向けには、「高尾山」というコースもあるが、これも大人気だ。
→ ミシュラン三つ星の秘密とは? 高尾山のスペシャリストが教える外国人オススメルート! | 旅道
一方、もっと本格的な登山をする人も出ている。
→ 既に個人旅行者は険しい登山コースに足を延ばす
東京や神奈川に住んでいる日本人ならば、丹沢や箱根で軽登山をするのもいいだろう。(日帰りも可能だが、宿泊して温泉に泊まるのが最高だ。)……やってみればわかるが、とても楽しめる。
というわけで、「ハイキングや軽登山で日中を過ごして、その後は温泉地で宿泊する」という旅行コースを、私はお薦めしたい。
(2) 北海道
北海道は、夏は観光客で賑わうが、冬は観光客不足になるようだ。冬の北海道に向かう格安飛行機の旅というのは、ずっと激安の価格になっているが、これは、客不足のせいだろう。冬の北海道は、海の幸が豊富で、とても魅力的なのに、観光客不足なのは、残念だ。
そこで、ここでも「楽しむ場」を用意するといいだろう。といっても、スキーやスケートは、初心者には何度眼高すぎる。初めて滑っても、すってんころりと尻餅をつくぐらいで、一日が終わってしまいそうだ。これでは、人気を呼ぶどころか、不人気となりそうだ。
そこで提案したいのが、これだ。
「スノーモービルで、白くて広い雪原を走りまくる」
これだと、特に運動神経がなくてもいいので、誰でも楽しめそうだ。ちょっとゲーム機の運転ゲームに似ているが、それよりもリアルな感覚があるので、圧倒的に生々しい体験を味わえる。
なお、具体的な情報は下記にある。
→ スノーモービルの免許やその取得方法、必要期間など
スノーモービルを運転するには、行動では免許が必要だが、私有地では免許は不要だ。
かかる費用は、1〜2時間で 7000円ぐらいのところもあるし、狭い場所に限定されるが 1500円ぐらいのところもある。安いのは、パワーのない原付であるようだ。広い場所を大パワーで疾走するとなると、それなりに高い料金になるようだ。
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動画もある。
というわけで、こういう体験サービスを提供することで、冬の北海道に客を呼べるだろう。実際、外国人向けのサイトもある。
→ Snowmobile Tour in HAKUBA | Hakuba Lion Adventure|白馬ライオンアドベンチャー|長野県 白馬村
そして観光客は、スノーモービルを楽しんだあとでは、北海道の「海の幸」に舌鼓を打てばいいだろう。
北海道では、スーパーで買っても、海の幸がおいしい。
→ 北海道のスーパーは魚介類がうまい :: デイリーポータルZ
なお、スノーモビルがお薦めなのは、北海道には雪の大雪原があるからだ。本州各地の山地の傾斜部と違って、平坦な土地の多い北海道では、スノーモービル体験が有効だろう。
※ スノーモービル体験は、北欧でもできるようだ。ただし北欧では、刺身のような生魚の料理を楽しむことはできないようだ。煮たり焼いたりした料理がほとんどだ。
→ フィンランドの sea food 夕食 - Google 検索
→ FINLAND sea-food dinner .fi - Google 検索
なお、フィンランドでも生魚を食べることはできるそうだが、そのためには、寿司店を探すしかないらしい。
→ ヘルシンキの寿司店
フィンランドで日本料理。……だったら、日本に旅行した方がよさそうだね。
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なお、他に「温泉」という魅力も付けることができそうだ。北海道の場合には、「雪見風呂」というのが可能だ。これが外国人に人気がある。
→ 札幌市内で秘湯気分!?外国人人気急上昇中の本格温泉に行ってみた】
これだけでなく、北海道各地に、「雪見風呂」を設けるとよさそうだ。
[ 付記 ]
日中は部屋に滞在しないとなると、そのための部屋も必要だろう。
現状の日本旅館は、「昼間は畳部屋で、夜は布団を敷く」というのがデフォルトだが、昼間は旅館にいないとなると、「洋間にしてベッドルームにする」というふうにするとよさそうだ。外側は日本旅館でも、部屋は洋間であっていいわけだ。
また、大宴会場は、廃止して、レストランにしてもいいが、外部の店で夕食を取ることにすれば、単に大宴会場を廃止するだけでもいいだろう。かわりに、普通の部屋を多数設置すればいいわけだ。
なお、布団を敷く手間が減ると、従業員を大幅に減らすことができそうだ。ベッドメーキングの手間はかかるが、長い時間をかけてやればいいので、特定の時間にそろってやる必要がない。従業員数は大幅に減らせるだろう。その分、コストダウンになる。
外国人客は、コストにうるさい人が多いので、ベッドにして、料金を下げる方が、外国人にとって好ましいだろう。
【 関連サイト 】
(A) 鎌倉
ハイキングの例として、鎌倉のハイキングコースを示そう。下記サイトで紹介されている。
→ 鎌倉のハイキングコースおすすめ6選!|YAMA HACK
これは、軽登山ではなくて、ただのハイキング。緩い傾斜があるだけだ。高齢者でも十分に歩いて行ける。疲労が翌日に残ることもないので、観光客にも適している。
ただし、そばに温泉があるわけではない。温泉の楽しみがあるわけではない。せいぜい、別の観光地に移って、ホテルの大風呂に入るぐらいだろう。ま、それでもいいか。(対して疲れているわけでもないので。)
なお、ハイキングをするときは、スマホの地図を見ながら進むといいだろう。現在地がわかれば、迷子にならずに済む。
(B) 鬼怒川温泉
鬼怒川温泉はどうか?
ハイキングの場所はある。
→ 日光鬼怒川温泉ハイキングコース |公式サイト
見たところ、いかにも貧弱だ。舗装路と平地が多くて、ハイキングっぽくない。自然のなかを巡るというよりは、ただの散歩コースみたいだ。これだったら、東京・世田谷の等々力渓谷 の方がマシだろう。
ただし、軽登山では、鬼怒沼がある。標高約2,030mを誇る天空湿原だ。実に素晴らしい。
→ 【鬼怒沼 登山】日本有数の天空湿原「鬼怒沼トレッキング」はどうしてすばらしいのか?
難度の低い軽登山なので、万人向けだ。それでいて、素晴らしい自然を楽しめる。
→ 画像一覧 - Google
鬼怒川温泉は、せっかくの登山路がすぐそばにあるのだから、それを生かすべきだろう。自然の恵み。
《 加筆 》
書いたあとで、地図を見たら、失敗に気づいた。
鬼怒川温泉から、鬼怒沼までは、自動車で2時間40分もかかる。名前は似ているが、両者はとても離れている。とても日帰りコースではないね。
調べ直すと、お薦めは、中禅寺湖の湖畔ハイキングだ。
→ 中禅寺湖の湖畔
ここで楽しんだあとで、鬼怒川温泉に向かうといいだろう。自動車で 51分で到達できる。(ただし、日光の東照宮のあたりにも旅館がたくさんあるので、観光地としては競合する。)
→ https://toyokeizai.net/articles/-/81117