2020年01月17日

◆ ナイキのシューズ禁止?

 新記録を続出させているナイキの厚底シューズを、国際陸連が禁止しそうだ、と言われている。

 ──

 箱根の駅伝でもこの厚底シューズばかりになったが、そのせいもあって、新記録が続出した、と先に報道された。
  → シューズから見た2020箱根駅伝総括!ナイキ旋風吹き荒れる!
  → 箱根駅伝 ほとんどの選手が「ナイキの厚底シューズ」を履く驚くべき理由 | 文春

 一流選手に効果があるだけでなく、素人にも効果があるようだ。体験者の報告がある。
  → 私がサブスリーを達成できたのは「ナイキズームX ヴェイパーフライ ネクスト%」を履いたおかげ

 ところが、あまりにも新記録続出を問題視した国際陸連が、これを禁止しそうだ、という報道が出た。
  → ナイキ厚底シューズ 国際陸連が禁止か 複数英紙報じる…記録更新続々、箱根も席巻

 これに対しては、賛否両論がある。はてなでは、「技術発展を阻害するな」という批判もあるが、「価格が3万円と高すぎるので、やむを得ない」という容認論もある。
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 価格が高すぎるのには理由がある。材料が特別な素材で、大量生産ができないからだ。
 一部では問題視し規制を望む声も挙がる。理由に「不公平」を掲げる。このシューズは特殊な素材でつくられるため、大量生産ができない。世界陸連はレースで使用する靴は、「常識的に誰でも求めやすいもの」と規定する。これに該当しないと指摘する。
( → ナイキ厚底シューズ、規制の行方は 「靴は公平」反論も - :朝日新聞

 材料が特別な素材だということは、メーカーが公式に語っている。衝撃吸収剤は特殊な新素材を使っているし、反発材にはカーボンファイバーを使っている。(どちらも高価な素材だ。)
 ナイキ ズームエックス ヴェイパーフライ ネクスト%は、今まで見たことも感じたこともない速さだ。ズームエックスフォームとヴェイパーウィーブ素材の最も革新的な技術を組み合わせることで、最も軽く、反発性の高いシューズが生まれた。

 シューズ全面に敷かれたカーボンファイバープレートが、弾力をもらたし、レースを突き進めることを助ける。

( → ナイキ ヴェイパーフライから、最新のヴェイパーフライ ネクスト%が登場。. Nike.com JP

 ナイキ ズームX ヴェイパーフライ ネクスト%は、史上最軽量のデザインでスピードを実感。記録破りの速さをサポートします。足元のクッショニングを増強しながら、軽量化を実現。かつてないほどのエネルギーリターンと快適な履き心地を提供します。

 このシューズの革新性は、極めて高いエネルギーリターン率にあります。秘密はNikeで最も反発力に優れたNike ZoomXフォームに挟まれた、軽量のカーボンファイバー製プレート。これらのプレートとフォームが連動することで足を前に押し出す感覚が生まれ、走りにスピードを加えます。

nike.gif

( → 【NIKE公式】ナイキ ズームX ヴェイパーフライ ネクスト% ランニングシューズ.オンラインストア (通販サイト)

 カーボンファイバー製のプレートが、反発力を通じて、エネルギーリターンをもたらすわけだ。
 これは要するに、「シューズにバネの機能がある」ということだ。
 しかしながら、バネを備えたシューズは、規定によってもともと禁止されている。
 らせん状のスプリングや板バネのような構造物は禁止で、ドクター中松のジャンプシューズみたいなものは使えません。

問題になったのが、北京・ロンドンと続けてオリンピックとパラリンピックの両方に出場した両足義足の選手です。
競技義足を靴とみなすと、カーボンファイバーの板バネ構造も、底の厚さ(長さ)も完全に規定を反します。
( → 靴についてです。バネがついている靴とか、空気が入っている靴... - Yahoo!知恵袋

 ナイキのシューズは、形式的には、スプリングや板バネとは違うので、明白に「バネを使っている」とは言えない。
 しかしながら、機能そのものは「バネを使っている」というのと同様である。そのことはメーカー自身が説明しているとおりだ。
 とすれば、これは一種の「機械ドーピング」だと言える。
( ※ 機械ドーピングというと、自転車競技で、こっそりモーターを使って、電動自転車にして、まんまと優勝した……というインチキ選手が摘発されたことがある。 → 自転車界を震かんさせた「機械ドーピングとは!?」| NHK )

 また、次の例もある。
  → アディダス、靴底にバネのような機構が付けられたランニングシューズを発売

 ナイキのシューズもこれらと同様だ、という指摘は、2017年において示されていた。
 「われわれは規則の範囲内で選手たちに利益を与えている」とナイキのスクールミースターは言い、こう付け加えた。「違反のスプリングなどは使用していない」
 だが運動生理学者のタッカーは、ナイキはシューズがスプリングの働きをすると主張していることから、違反と見なされるべきだと考えている。
( → ナイキ「速く走れるマラソンシューズ」の衝撃

 つまり、ナイキが言っているのは、「この靴は、スプリングを使っているが、違反になる種類のスプリングは使っていない」というだけのことだ。要するに、一種の「規則逃れ」である。「規則の穴を突く」というやつだ。脱税をしたがる人が法律の穴を突こうとするのと同様だ。(脱法ドラッグみたいに。)
 とすれば、これに対しては、「規則の穴をふさぐ」という形で、ナイキの新型スプリングを禁止するのが妥当だろう。
 そう結論できる。



 [ 付記1 ]
 一方、「あらゆるバネを許容するべきだ」という見解もあるだろう。たとえば、「障害者にはバネ機能のある器具の利用を公式に認めて、健常者と同等の条件で走らせるべきだ」というふうに。
 だが、その場合、障害者の方が健常者よりも速くなってしまう、ということが見込まれている。(将来的に)
 「私の計算では、2068年に男子100メートルで義足選手が五輪選手を抜きます」
 義足アスリートの世界的な研究者、保原浩明は断言する。
 この傾向が続けば2068年に義足選手が追い抜く、というのだ。
( → vol1 義足が、拓いた 第2部 常識を超える力:朝日新聞

 ただし、これには条件がある。
 「障害者はバネ機能のある義足を使っていいが、健常者は使ってはいけない」
 ということだ。一種の不公平なハンディキャップである。

 では、健常者がバネ付きの義足を使ったら、どうなるか?
 私の推定では、短距離走の能力は、足の筋力に比例する。足の筋力は、障害者は大腿筋のみで決まるが、健常者はそれに加えて、下腿三頭筋(ふくらはぎの筋肉)がある。とすれば、その筋力をうまく利用できるような器具を使えば、健常者は大幅に記録をアップさせることができるだろう。たぶん、9秒00を切って、8秒 50 か、8秒00 ぐらいが期待できそうだ。器具の大きさも大きめにして、ちょっとした竹馬みたいな感じにするといいだろう。つまり、人間の身長が2メートル 50になったのと同じぐらいにまで、足の長さを延長するといいだろう。
 
 ただ、下腿三頭筋の筋肉をうまく使うには、くるぶしを可動させる機構が必要だ。そのためには、かかとが靴底から浮くことができるように、可動式の靴底が必要となるだろう。……ただ、そのことは、ナイキのヴェイパーフライで、すでに部分的には実現されているかもしれない。
( ※ 図を参照。この緑色のカーボンファイバー製のプレートが、少し動きそうだ。バネ機能で。)


nike.gif


 [ 付記2 ]
 こういう「道具を使った短距離走」という競技は、それはそれで、あっても構わないかもしれない。
 だが、その競技は、従来の競技と同じ枠で扱うべきではあるまい。やるなら、別の競技にするべきだ。別の競技だったら、「 100メートル 8秒00 」というような記録が出ても、マラソンで「1時間 30分」という記録が出ても、許容できる。

 なお、どうせなら、マラソンではローラースケートの使用を認めればいいだろう。あるいは、自転車の利用を認めてもいい。どっちも人力だけを使うのだから。仮に「器具を認めてもいい」というのなら、そこまでやっていいはずだ。……ただし、そうなると、スポーツとしての本来の意義はメチャクチャになってしまうが。



 【 関連サイト 】
 ナイキのカーボンファイバーのバネ機能は、特許で守られているらしい。「反発力、復元力」をもたらす特別な機能がある、という特許だ。
  → ナイキ ズーム シリーズの特許はこれかな?

posted by 管理人 at 19:05| Comment(1) | 一般(雑学)6 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
確かにフィン水泳みたいに別競技として成立させれば良いのですね。名前はバネ陸上ですか。
Posted by 権兵衛 at 2020年01月18日 06:10
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