2020年01月17日

◆ スキーバス事故・4年後

 軽井沢のスキーバス事故から、4年たった。現状では、どうなっているか?

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 軽井沢のスキーバス事故から、4年たった。











 あれだけ悲惨な事故があったので、現状では対策が十分になされているか? それを検証する記事があった。
  → バスの安全軽視、変わらぬ実態 軽井沢、転落事故から4年:朝日新聞

 事故の原因は過剰な安値競争にあったと認定したので、安全対策として、過剰な安値競争を防ぐために、(もともと制定済みの)下限料金を遵守させようとして、契約書に加減料金を明示させるようにした。しかし、「仏作って魂入れず」のような状況になっているそうだ。
 当時、安全コストを軽視した過剰な価格競争が横行しており、国の調査委員会は「安全軽視の経営が事故の背景」と指摘した。
 国土交通省は事故後、旅行会社と契約した運賃に加え、下限額を契約書にあたる「運送引受書」に記載するよう義務づけた。昨年8月には、長年の業界の慣行とされるバス会社が集客を代行した旅行会社に払う「集客手数料」の記載も義務化された。表面上は、下限額を下回る契約はすぐにわかる形になった。
 しかし、国交省によると、手数料などを差し引いた実際の運賃がバス会社の安全コストを脅かす安値だと認定しない限りは処分の対象にはならないという。基準があいまいで、個別にコスト計算するのが「想像以上に大変」(国交省の担当者)といい、実態把握は難しいのが現状だ。

 その結果、現状では、下限額以下の料金がまかり通ってる。つまり、対策は有名無実化している。

 では、どうしてこういうことになったか? 会社側が赤字覚悟で低料金を受け入れるからだ。
 長野県内のあるバス会社は「下限の3、4割の運賃でもバスを動かしたい」と話す。人件費やバスの維持費をまかなうため、収支がギリギリでも仕事を取りたいという。

 この意味はわかりにくいかもしれないので、解説しよう。
 経済学的には、費用(コスト)には、「固定費用」(定額)と「限界費用」(比例分)との2種類がある。
 固定費用は、月給、固定資産税、保険料など、売上げに関係なく一定額の分だ。
 限界費用は、残業手当、乗務手当て、ガソリン代、高速道路大など、業務に比例して増える分だ。
 現実の費用は、固定費用と限界費用の双方を加えた額だ。

 ここで、「限界費用が 10万円で、料金が 13万円」という仕事が回ってきたとする。この場合、仕事を引き受ければ、経費よりも売上げの方が3万円だけ多いので、差し引きすれば、利益が出る。だから、何もしないで設備や人員を遊ばせるよりは、仕事を引き受けた方がいい。
 しかし、そんなに安値だと、固定費の分をまかなえない。本来ならば、固定費の分として、5万円ぐらいをまかなう必要があるのに、それができない。つまり、本来ならば 15万円以上の売上げがなければ赤字になってしまうのだ。なのに、15万円でなく 13万円で引き受ければ、事業としては2万円の赤字が発生する。
 それでも、何もしないで設備や人員を遊ばせるよりはマシなので、2万円の赤字を覚悟で、赤字の仕事を引き受けることがある。(仕事の量が不足している場合には。)

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 ここまで見れば、問題の本質がわかる。それは「過当競争」である。
 「過当競争」のせいで、価格は異常なほど安値になる。そのせいで、安全性のためにかける経費をかけられなくなる。かくて、安全性が損なわれる。……これが、スキーバス事故が起こった原因である。そのことは、4年前にも述べた。
  → スキーバス事故の補足情報: Open ブログ (iii)

 そういうひどい状況が、以後も続いているということは、1年ほど前にも言及した。
  → 規制緩和による過当競争: Open ブログ

 そこでも指摘されているが、こういう過当競争が起こったのは、小泉行革による「規制緩和」である。それまでの「許可制」だった制度が、「届け出制」になったことで、多数の業者が業界に参入した。そのせいで、まともな利益を出せなくなったので、利益を出すためというよりは、赤字を減らすために、異常な低価格による取引がまかり通るようになった。同時に、安全性にかけるコストは大幅に削減されて、安全性が損なわれた。

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 では、どうすればいいか? 市場原理を否定すればいいのか?
 それには、「イエス」と答えていいだろう。市場原理が成立するのは、あくまで正常な競争がある場合だ。不況下では、それが成立しないことがある。かくて、過当競争が起こって、安全性無視がまかり通り、人命が奪われる。
 結局、鉄道のような公共交通に許認可制が導入されているように、観光バスについても(例外的に)許認可制を導入するべきだろう。
 ここでは、「安全性の確保」が何よりも最優先とされる。そのために、「安全性を削って価格を下げる」ということを厳禁にするべきだ。安全性を公的にチェックする体制も確保しておいて、少しでも違反があれば業務停止とするべきだ。(許可から不許可にする。許認可制の下で。)

 ここでは、「市場原理で最適化される」ということは、成立しないのである。なぜなら、観光バスのような公共交通では、「価格を下げること」よりも「安全性を高めること」の方が優先されることだ。
 ここを理解しないまま、「価格を下げることがすべてに優先する」という方針で、「市場原理で価格を下げさせる」という方針を取ったのが小泉行革だった。
 このような「規制緩和」こそが諸悪の根源だった(安全性を低下させる原因だった)、と認識するべきだろう。



 【 関連項目 】

 規制緩和と安全性の問題については、下記項目で。(上掲)
  → 規制緩和による過当競争: Open ブログ
 
posted by 管理人 at 19:00| Comment(0) | 安全・事故 | 更新情報をチェックする
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