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事件の続報がしばらく出なかったが、あれからずいぶん日がたってから、新たな事態が起こった。神奈川県が富士通リースに損害賠償の請求をする方針だという。
大量の個人情報を含む神奈川県庁のハードディスク(HDD)が転売された問題で、県は16日、HDDのリース元の富士通リース(東京都千代田区)に対し、損害賠償請求を含む法的措置をとる方向で検討に入ったと明らかにした。
( → 富士通リースに法的措置を検討 神奈川県、HDD流出で:朝日新聞 )
何を今さら、という感じである。
リース元の会社である富士通リースに最大の責任がある、というのは、本サイトでは最初に述べていたことだ。
ブロードリンク社に委託したのは、富士通リースだ。この会社に最大の責任があると言えるだろう。
( → HDD転売:原因と対策: Open ブログ )
「こいつが真犯人だ(主犯だ)」
と、名探偵は最初から指摘していたのである。
ところが、世間では、次のいずれかであった。
「犯罪の実行犯である犯人が悪い」
「犯罪を野放しにした、ずさんなブロードリンク社が悪い」
こういうふうに、末端の犯人ばかりを指摘していた。あるいは、「神奈川県が甘すぎる」というふうに、神奈川県の責任を問う声もあった。
ところがこれらはすべて、「疑わしい容疑者」であるにすぎず、「真犯人」(主犯)と言えるのは、富士通リースなのである。神奈川県が金を請求するとしたら、その相手は富士通リースなのだ。
このことに、事件発覚から何日もかかって、ようやく気づいたようだ。まったく遅すぎる。
※ 流出が起こったのは、B社がずさんだったかだが、こういうずさんな会社に業務を委託した富士通リースに責任がある、ということ。実際にやったのは、無責任な丸投げだけだった。
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あと、もう一つ。
神奈川県は、富士通リースに損害賠償を請求するとのことだ。(上記報道)
だが、損害賠償は(法的に)無理だろう。なぜなら、実害が発生していないからだ。情報は漏れたとしても、そのことで具体的に神奈川県に損害が発生したわけではない。
損をするのは、情報を流出させられた個人の集団である。これらの個人の集団が神奈川県に賠償金を請求したのであれば、それにかかる費用を富士通リースに請求することはできるかもしれない。しかし現実には、個人の集団が神奈川県に賠償金を請求したという事実はない。ゆえに、神奈川県には、実損が発生していない。
何かがあるとすれば、「信用の毀損」ぐらいだが、そんなもので求めることができる金額はタカが知れている。
要するに、「損害賠償の請求」というのは、悪手なのである。
では、どうすればいいか? いちいち法的手続きなんかをしないで、「違約金を払え」と後付けでの理屈で請求すればいい。このあとは、次の二通り。
・ 会社が支払いを受諾する。
・ 会社が支払いを拒否する。
前者(受諾)の場合には、違約金を受け取ればいい。解決。
後者(拒否)の場合には、「こんな会社は信用できないから、以後は指名停止」として、永久に指名停止すればいい。ついでに、東京都や他県や国とも協調して、富士通リースを永久追放すればいい。「悪徳企業」としてブラックリストに載せるわけだ。
これは、別に法律で決める必要はなく、内規(知事裁決など)で決めればいいから、簡単だ。
こうして富士通リースは官公庁から締め出しを食って、大損する。それでは困るので、音を上げて、違約金を払うだろう。もともと払って当然なのだから。(たとえば1億円)
かくて、問題は解決する。
一方、「損害賠償の請求」なんかをやったら、せいぜい 100万円ぐらいしか取れないだろうし、そのためにかかる弁護士費用は 500万円ぐらいになりそうだ。やればやるほど、金の無駄。
「法的措置」って、そういうことなんじゃないでしょうか。