瞬きには特別な効果がある……という新見解が出た。
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詳しくは下記記事を読んでほしい。(内容が豊富なので、簡単にはまとめることができないので。)
→ 「まばたきの意外な役割」(視点・論点)| NHK
たとえば、こういう例がある。
・ まばたきをしているときには、精神がくつろいでいる。
・ まばたきをしていないときには、精神が集中している。
このことから、「まばたきには精神をくつろがせるような効果がある」と主張する。
しかし、これは因果関係が逆だろう。つまり、真相はこうだ。
・ 精神が集中しているときには、まばたきをしていない。
・ 精神がくつろいでいるときには、まばたきをしている。
精神が集中しているときには、対象に注目しているので、情報を逃すまいとして、ずっと目を開いている。
しかし、その緊張した時間のあとで、くつろいだ時間が来る。そのときには、ずっと目を開いている必要もないので、これまで我慢していたまばたきをするようになる。
このことは、映画を見ているときも同様で、クライマックスのときには精神が集中しているので、画面を見逃すまいとして、しきりに見つめ続けて、瞬きもしない。やがてクライマックスが終わって、平穏なシーンになると、画面をいくらか見逃しても大丈夫なので、これまで我慢していたまばたきをするようになる。
ここでは、精神の集中が先に「原因」としてあって、そこから、まばたきという「結果」が生じる。
ところが、上記記事ではそれを逆にとらえて、「まばたきが精神のくつろぎをもたらす」というふうに認識する。しかし、これはあまりにも不自然であり、因果関係が逆だろう。
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一般に、生理的現象では、一つの根源から複数の結果が生じる。たとえば、交感神経または副交感神経が働くと、それにともなっていくつかの結果が生じる。その一覧表は、下記ページにある。
→ 自律神経の主な機能と体の反応(一覧)
ここでは、
原因 → 複数の結果
という対応関係がある。
このとき、複数の結果同士を見ると、それぞれが同時に発生するので、複数の結果に「因果関係がある」というふうに誤認しやすい。
たとえば、副交感神経が働くと、次のことが同時に生じる。
・ 瞳孔は、縮小する。
・ 涙腺では、血管が拡張し、涙が増える。
・ 心臓では、心拍数が減る。
このことから、次のように結論しがちだ。
「瞳孔が縮小すると、涙が出て、心拍数が減る」
なるほど。確かに三つの現象には相関関係がある。しかしこれらには因果関係はない。三つの現象には、「副交感神経が働く」という共通の原因があるのであって、三つの現象のそれぞれの間には因果関係などはないのだ。ところが、三つの現象が同時に起こることから、「これらの現象には因果関係がある」と思いがちだ。
冒頭の記事も、そういう勘違いに陥っている。
まばたきが何かをもたらすのではない。「精神の緊張/緩和」というのが根源としてあって、そこから波及する形でいくつかの結果が同時に起こるだけだ。
冒頭の記事はそこを勘違いしている。なのに、たいていの人はそのことを理解できていないようだ。「まばたきには特別な効果がある」というふうに誤認してる。
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※ 元の記事がそうだから、それを信じているだけだが。
※ 詐欺師が嘘をつくと、多くの人がだまされる、というのに似ている。
[ 余談 ]
だまされた例。
ジャパンライフの会長は、「安倍首相から、桜を見る会に招待されました。私は安倍首相と仲良しです。信頼しください」と言った。すると多くの人が、それを信じて、二千万円とかの多額の金を払った。
→ 「首相の招待状」を信用、戻らない2千万円 桜を見る会:朝日新聞
→ 受付票の「60」首相推薦枠? ジャパンライフ元会長宛て 桜を見る会:朝日新聞
詐欺師が嘘をつくと、多くの人がだまされる、というわけ。
2019年11月29日
過去ログ
NHKの元記事では「まばたきをしているときには、精神がくつろいでいる。」とは明言していません。また、因果関係については、研究途中の(確信を伴わない)仮説を、一般読者に分かりやすいように、述べただけだと私は読み取りました。実験を進めていけば、仮説が修正されることもあるでしょう。
よって、「冒頭の記事も、そういう勘違いに陥っている。」とは全く思いません。
「まばたきが何かをもたらすのではない。」とのことですが、「まばたきが何かをもたらす」方向の因果関係はゼロではない可能性はあると思います。どちらの向きが主かはともかく、双方向の因果関係がありうるのではないか、と思います。
それはそうです。長い文章を簡単な2語に要約しただけです。正確には元の文章に戻ればいいだけの話。
> 「まばたきが何かをもたらす」方向の因果関係はゼロではない可能性はあると思います。
それはそうだけど、「双方向の因果関係がありうる」とはなりません。
精神がくつろぐ → まばたきが生じる → 別の結果が生じる(例:涙で潤う)
というふうに、二段階の因果関係があるだけだ。別の結果の原因にはなるが、元の原因を引き起こしはしない。つまり、逆順にはならない。
結果が何であるかについては、未確定の余地もありそうだが、因果関係自体は、この記事の核心なのだから、修正はされまい。
で、その核心を否定しているのが、本項だ。
要するに、まばたきに「意外な役割」なんかない。元記事で「意外な役割」と思える現象は、「まばたきによって引き起こされるもの」ではなく、両者の根源となる「精神のくつろぎ」によって引き起こされるものだ。
元記事はその解釈を誤っており、勘違いしている……というのが、本項の趣旨だ。