2019年11月19日

◆ YahooとLINEの統合

 YahooとLINEの統合は、成功するだろうか?

 ──

 本人たちは自信があるようだ。壮大な抱負を抱いている。
  → ヤフー・LINE経営統合 会見「世界リードする企業に」 | NHKニュース
  → 「GAFAに次ぐ第三極に」ヤフー・LINE社長 :日本経済新聞
 米国の「GAFA(ガーファ)」(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)や中国の「BAT」(バイドゥ、アリババ、テンセント)と呼ばれる巨大IT企業の台頭で「優秀な人材、データが強いところに集約してしまう。(LINE、ヤフーの)2社が一緒になっても(GAFAなどとは)桁違いの差がついている」と述べ、「強い危機感があった。今が手を打つタイミングだった」と統合の背景を説明。ZHDの川辺社長は「(LINEとの)志は一つ。(GAFA、BATに次ぐ)世界の第三極になることで一致している」と語った。
( → ヤフーとLINEが統合合意 「スーパーアプリ」めざす:朝日新聞デジタル

 「統合して世界をリードするAI(人工知能)のテックカンパニーを目指す」(NHK)
 「(米『GAFA』などに次ぐ)世界の第三極になるということだ」(日経)
 なんて言っているが、私の評価は「自信過剰か自惚れに近い」となる。「先の見通しは超楽観主義で、誇大妄想を持っている」と言うしかない。
 なぜか? 会社にもともと実力がないからか? 違う。経営者が駄目だからだ。

 第三極というが、米国や中国と、日本のIT企業とは、どこが決定的に違うか? そこを理解するべきだ。
 その違いを教えよう。「優秀な人材」の有無だ。そして、「優秀な人材」の有無は、給料によって決まる。
 米国や中国の大規模IT企業が優れているのは、非常に高い給料を払っているからだ。いずれも年収 2000万円クラスだ。Google や Apple だけではない。中国のアリババやテンセントだって、1000〜1500万円ぐらいの給料を払っている。(物価の差を考えれば、米国企業と同程度だ。)
 一方、Yahoo の給料は年収 700万円ぐらい。
  → yahoo(ヤフー)年収給料や20〜65歳の年齢別・役職別年収推移|平均年収.jp
 同業他社と比べても、高い方ではないという。社員は「給料が安い」と嘆いているそうだ。
  → ヤフー(Yahoo)の年収・給与(給料)・ボーナス(賞与)|カイシャの評判

 これは、「給料を上げたいけれども、上げるための金が足りない」のではなく、「もともと給料を上げる気がない」ということだ。経営体質がそうなっている。
 とすれば、統合したところで、同じ経営が続くのだから、「給料を上げる気はない」という状態は継続する。当然、優秀な人材は来ない。

 優秀な人材が来ないと、どうなるか? Web サービスは劣化する。いつまでたっても改善しない。
 たとえば、Yahoo 地図は、( Google がゼンリンの採用をやめたあとでも)ゼンリンを使っているので、圧倒的に優位に立ったかと思いきや、使いにくいままだ。

 例として、Yahoo 地図で「渋谷」と入力すると、こうなる。
  → 「渋谷」の検索結果 - Yahoo!地図
 文字ばかりで、面倒臭い。しかも「渋谷区」をクリックすると、こうなる。
  → 東京都渋谷区 - Yahoo!地図
 文字ばかりがずらりと並んで、わけがわからない。
 画面の一番下に小さな地図が出てくるが、これを冒頭に置く方がまだマシだろう。
 また、最後に地図を表示しても、色づかいが悪いので、見にくい。(色弱の人のことも考えていないように思える。たぶん。)

 一方、Google マップで「渋谷」と入力すると、こうなる。
  → Google マップ 「渋谷」
 一発で渋谷の地図が表示される。さらに、入力欄もあるので、もっと詳しく入力することもできる。とても使いやすい。色づかいだって、Yahoo 地図みたいに見にくくはない。

 ──

 これほどにも使い勝手に差がある。つまり、ユーザーインターフェースに圧倒的な差がある。なぜか? 社員の優秀さに決定的な差があるからだ。Google の方は世界的にトップクラスの人材を集めているが、Yahoo の方は凡庸な社員をたくさん集めて残業させているだけだ。サービス収入を上げることを目的とせず、労働者の人件費を下げることを目的としている。つまり、人材については「安かろう、悪かろう」を目指している。……めざす方向が正反対だ。
 要するに、Yahoo の経営は、「先進国企業」として生きる道を選ばず、「途上国企業」として道を選んでいる。「安い人件費で対抗しよう」というふうに。……この点では、中国企業とは正反対だ。どっちが中国の企業だか、見まごうほどだ。

 ──

 結論。

 YahooとLINEが統合したことで、本人たちは「第三の極をめざす」と主張しているが、壮大なホラまたは妄想であるにすぎない。米国と中国の大企業は、世界最先端の企業として生きようとしているのに、Yahoo は最初から周回遅れの途上国の企業として生きようとしているからだ。そのことが、「給料を上げる気があるか」ということからわかる。
 もちろん、YahooとLINEがこれから給料を大幅アップさせる気があるなら、今後は急成長を望めるだろう。たとえば、韓国のサムスンのように。(この会社は韓国では突出して給料が高いので、韓国の最優秀の人材をごっそり奪い取って、世界トップレベルの企業となっている。)
 しかし、YahooとLINEが統合しても、経営方針は何も変わるまい。「統合して規模を大きくすれば、世界に伍することができる」と盲信している。自分自身が何も変わるつもりがない。というか、自分自身の誤りをまったく理解していない。
 愚かな経営者が経営を続ける限り、どれほど規模を大きくしても、成長することはありえず、現状維持がせいぜいだろう。(むしろ衰退する可能性が十分にある。「国内でトップ企業になったぞ」と自惚れて、あぐらをかいていれば、当然、衰退するだろう。)

 ※ そう言えば、並んでいる楽天も、ひどいものだ。悪評はネット界で鳴り響いている。
posted by 管理人 at 07:48 | Comment(2) | コンピュータ_04 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
>YahooとLINEが統合したことで、本人たちは「第三の極をめざす」と主張しているが、壮大なホラまたは妄想であるにすぎない。
言葉はきついが、大賛成です!
給料差もさることながら、今更GAFAと同じ道を追っかけても・・・
我が国には、もっと根本的な問題があります。
情報科学の教育体制そのものが欠如していますから・・・
Posted by yomoyama at 2019年11月19日 14:37
給与差はあまり関係ない気がします。それよりも働く環境面を整えることのほうが重要ではないかと思います
Posted by jump at 2019年11月19日 17:03
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

  ※ コメントが掲載されるまで、時間がかかることがあります。

過去ログ