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コンビニの食品ロス(期限切れ食品の廃棄)がひどい。朝日の投書欄(11月07日・声欄)に、コンビニ店員の声が掲載されていた。一定時間ごとに、毎度毎度、大量の廃棄食品を出すので、自分の価値観と相容れなくなって、神経が不調になってしまったそうだ。
比喩的に言えば、いじめを強制させられるのに似ている。「悪いことだ」と信じていることを、否応なしに強制させれば、神経が不調になるのもやむを得ない。(極端に言えば、殺人やレイプを強制させられるようなものだ。それも、一日に何度も。)
ま、店員の神経は話の枠外におくとして、これほどにも大量の食品ロスがあるのは、あまりにも非効率だ。無駄の極み。
それでもこれが継続しているのは、「廃棄食品の損失はコンビニ店主の負担」とされていて、コンビニ統括会社の懐は痛まないからだ。
この件は、下記記事でも論じられている。
コンビニは従来、値引きに消極的だった。多くの本部は「商品のブランド力を維持する」などの理由で定価販売にこだわってきた。
本部が店主と結んでいるフランチャイズ契約では、廃棄費用の大半は店主にまわる。本部は「食品ロス」よりも販売機会を失う「機会ロス」を避けることに熱心で、多めの発注を店主に求めてきた。
( → コンビニ:3 食品ロス、どうやって減らすの?:朝日新聞 )
これでは困るので、コンビニ店主は自己の裁量で、(無料で捨てるかわりに)半値や3割引で販売しようとした。ところがそのことを、コンビニ統括会社は禁止した。これは独禁法違反に当たるので、公取委は是正させようとした。
最大手セブンによる値下げ販売の制限に対し、公正取引委員会は 2009年、独占禁止法違反にあたるとして排除措置命令を出したが、それでも値下げは広がらなかった。
( → コンビニ:3 食品ロス、どうやって減らすの?:朝日新聞 )
排除命令を出したのに、コンビニ統括会社は禁止したままなので(つまり公取委の命令を無視したので)、「値下げ禁止」という違法状態がまかり通っているわけだ。
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この問題を、どう考えるべきか? 私が思うに、この問題の本質は、次のことだ。
「コンビニの店主(オーナー)には、価格決定権がない。ならば、このような店主は、(たとえフランチャイズの契約を結んでいたとしても)独立した経営主とは見なされず、コンビニ統括会社の指揮下にある従業員と見なされる。ゆえに、コンビニの店主には、労働者としての団体交渉権(スト権を含む)が認められるべきだ」
現実には、どうか? そのことは、裁判で係争中である。
《 コンビニ店主「ただの話し合いでは変わらない」 団体交渉求め、裁判スタート 》
コンビニ加盟店オーナーに本部との団体交渉権を認めなかった今年3月の中央労働委員会命令。この命令の取り消しを求めて、「コンビニ加盟店ユニオン」が国を相手に東京地裁で裁判を起こしている。10月28日に第1回口頭弁論が開かれた。
( → (弁護士ドットコム) - Yahoo!ニュース )
中央労働委員会の裁定が「団体交渉権を認めない」ということだったので、裁判になっているわけだ。
一方、地方レベルでは、東京都では「認める」という裁定も出ている。
→ コンビニオーナーは「労働者」、 都労委がファミマに団交命令 (2015年4月28日)
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ここで、私の見解を言おう。
これは、現実的には裁判で争うしかないのかもしれないが、本来、立法の形で「団体交渉権を認める」というふうに法制化するべきだ。
そして、その理由は、「店主(オーナー)には価格決定権がない」ということだ。
そして、「店主(オーナー)には価格決定権がない」ということが、結果的には、「食品ロスが大量に出る」ということに結びつくのだ。
つまり、
・ 団体交渉権がない
・ 食品ロスが大量に出る
という二つのことは、密接に関係しているのである。そのいずれも、「コンビニ統括会社の非合理的なエゴがまかり通る」という形でなされているからだ。
逆に言えば、政府は、「食品ロスをなくす」というエコ活動を推進するためにも、「店主(オーナー)には価格決定権がない」という状況を改めるべきなのである。
価格決定権が与えられるようになれば、店の側でいくらでも自由に値引き販売ができるので、無料で捨てるよりは、半額で販売する方がいい。だからその方針が、どんどん推進されていくだろう。
《 加筆 》
なお、価格決定権が店主(オーナー)にはないのであれば、価格決定権をもつコンビニ統括会社が、(廃棄食品の)損失を負担するべきだろう。(当り前だ。値引きできないせいで廃棄食品が発生するのだから。)
現状のように、「価格決定権はコンビニ統括会社にあり、(廃棄食品の)損失の負担は店主(オーナー)がもつ」というのは、あまりにもメチャクチャすぎる。
このような契約は、公序良俗に反するものとして、契約を無効化するべきだ。この件は、裁判で解決するよりは、立法で解決するか、あるいは、公取委が「優越的地位の濫用」ということで処分するべきだ。
こういうふうにして、コンビニ統括会社のデタラメぶりを是正するべきだろう。
マスコミも、食品ロスについて話題にするとき、一番多いコンビニとかよりも、家庭の食品ロスを減らそうみたいな話題がほとんどで、それ以外のコンビニなどについては、ほとんど触れられていないというおかしさだった。
特におでんなんか売れそうもない真夏(8月頃から)に売り出し、大量廃棄している事実や、季節ものの大量発注による大量廃棄についてはほとんど話題にならない。さらに、ノルマを達成するため、大量発注大量仕入により、当然余剰分を大量廃棄するのを問題だと思わない神経もおかしいと思う。
最近であれば、本部社員が勝手に発注するという事例まで判明した。
だけど、食品ロスのこれらについて、マスコミも政府(環境省)も、警告することはしないから、減ることはない。
それなのに、家庭ばかり槍玉に上がっているのはおかしいと感じる。