2019年11月14日

◆ 不動産の手数料の不合理

 不動産の手数料が奇怪なので、話題になっている。
 
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 次の記事が話題になった。ちょっと常識に反する感じなので。
 賃貸住宅を借りる際、業者に支払う仲介手数料。1カ月分を支払うケースが多いが、実は 0.5カ月分が原則だ。この支払いが争われた訴訟で東京地裁が 8月、「借り主の承諾がなかった」として仲介業者に取りすぎた 0.5カ月分の返還を命じる判決を出した。
 根拠となったのは国の告示だ。仲介手数料は「借り主と貸主から家賃 0.5カ月分ずつで、合わせて1カ月分が上限」との原則を示した上で、「仲介依頼の成立までに借り主の承諾があれば、内訳を変え、借り主から1カ月分もらってもよい」と定めている。
 このため裁判では、東急側が「借り主から1カ月分もらう」との承諾を得ていたかが争点となった。
 判決は、1カ月分を請求するには「仲介依頼の前に承諾を得ている必要がある」と指摘。仲介が成立したのは 10日と認定し、それまでに男性の承諾がないので無効と判断した。
( → 1カ月分は取りすぎ 賃貸の仲介手数料、業者に返還命令:朝日新聞

 この問題はちょっとわかりにくいところがある。
 通常、礼金として1カ月を払うのだから、0.5カ月で済ませようというのは、借り手のわがままのように見える。もともと「礼金1カ月」という条件で契約したはずなのに、あとで「イヤだ」というのはわがままだと見える。
 しかし、実はそうではないのだ。
 
 記事の全文を読むとわかるが、次のことがある。
 不動産関係者によると、仲介業の実務では、貸主と借り主の間に複数の業者が入る「共同仲介」が主流だという。流れはこうだ。
 貸主から物件を任された「物元(ぶつもと)業者」が業者専用のデータベースや自社のホームページに物件情報を登録▽その情報を、客に接する「客付(きゃくづけ)業者」が検索し、客に提示▽客が気に入った物件があれば、客付業者から物元業者に連絡が入る。
 手数料は「貸主と借り主から各 0.5カ月分で計1カ月分」が原則だが、仲介した2社が分け合うと、1社あたり 0.5カ月分しかもらえないことになる。
 「これではやっていけない」。都内で不動産会社を営む男性はこう語る。共同仲介では割に合わないため、客付業者は借り主から1カ月分を、物元業者は貸主から広告宣伝費として1カ月分を、それぞれもらうことになるのだという。

 礼金が1カ月かと思ったら、貸し手と借り手の双方から1カ月を取るので、合計2カ月分も取っているのだ。取り過ぎ!
 本来ならば(というか昔ならば)、1件の不動産業者が、貸し手と借り手の双方を仲介するから、そこで礼金1カ月を取れば済んだはずだ。
 ところが今のネット時代では、貸し手の不動産業者と、借り手の不動産業者の、双方が介在するので、利益を折半する必要がある。そこで手数料を合計2カ月分も取ってしまうわけだ。
 で、それではよろしくないということで、冒頭の判決になったわけだ。

 ──

 ただし、こういうことは、借り手にとっては都合が悪い。だから、不動産業者は、こういうことを隠しておく。手数料については何も表示しないままにして、いざ契約という段階になって、「1カ月分の手数料を頂きます」と言って、契約書を見せる。
 つまり、借り手は、いろいろと物件を比較する段階で、手数料の料金を聞かされていない。借り手は「手数料について承諾していたのに、あとでイヤだと言って変更した」のではないのだ。もともと手数料については何も聞かされていなかったのだ。このことは、朝日の記事にも示されている。次のように。
 判決などによると、男性は 2012年末に東急の案内で3件ほどの物件を内覧した上で、翌年1月8日までに契約する意思を担当者に伝達。10日には、担当者から契約の締結日を20日にするとの連絡を受けていた。20日に東急側と結んだ入居申込書には、仲介手数料として「家賃1カ月分の 24万円を支払う」と記載されていた。
 判決は、1カ月分を請求するには「仲介依頼の前に承諾を得ている必要がある」と指摘。仲介が成立したのは 10日と認定し、それまでに男性の承諾がないので無効と判断した。

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 では、この問題をどう扱えばいいのか? 話の要点をうまく指摘しよう。
 この問題の根源は、手数料をきちんと表示していないことだ。そのせいで、正常な市場原理(価格による競争)が働かないのだ。
 本来ならば、手数料をきちんと表示するべきだ。そうすれば、「手数料の安い業者を選ぶ」という選択がなされるので、市場において「手数料の値下げ合戦」が起こる。その結果、競争力の強い大手だけが生き残り、大半の不動産業者はつぶれる。競争相手が少なくなるので、生き残った業者は、少数の人手で多数の物件を扱えるようになり、業務の効率化が進む。と同時に、手数料はますます下がっていく。
 こうして、「手数料の表示」を通じて、
  ・ 業者の淘汰
  ・ 業務の効率化
  ・ 手数料の引き下げ

 という3点が同時に進んでいく。これが、あるべき姿だ。

 現実には、そうなっていない。「手数料の不表示」を通じて、
  ・ 業者がやたらとたくさん存在する
  ・ 業務が非効率である
  ・ 手数料が高い

 という3点が持続する。これが、現在の姿だ。

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 ここまで理解すれば、現状がどうしてメチャクチャな状況になっているかもわかるし、また、「今後はどうするべきか」もわかる。

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 今の不動産業界は、賃貸であれ、不動産売買であれ、公定基準の上限に張りついていて、やたらと高額の手数料を取るようになっている。そのせいで、やたらと無駄に多い業者が存続している。かくて業者は、「土地を売ってくれ」というような宣伝メールを、やたらとたくさん送りつけてくる。(私の家には毎日、「土地を売ってくれ」という宣伝メールが来る。さまざまな業者から。うるさくて仕方ない。)
 こんなことに無駄な宣伝費をかけるのも、不動産業界が無駄に多額の利益を得るようになっているからだ。そして、それというのも、手数料の引き下げ競争が起こらないからだ。そのまた理由は、手数料の表示をしないという形で、市場競争の原理が働いていないからなのである。
 
 これが、冒頭の記事の底にある、本質だ。
( ※ 手数料の競争がないから、手数料は高止まりしていて、利用者はやたらと多額の手数料をふんだくられる。……違法なほどにも。)
posted by 管理人 at 23:04| Comment(0) | 一般(雑学)6 | 更新情報をチェックする
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