──
子宮頸がんワクチンの現状については、3カ月前(7月27日)に述べた。そこでは、次のように結論した。( 2015年の大規模調査で関連性が見出されなかったことから出た結論)
「以前は副反応があったが、名古屋スタディのなされた 2015年以降では副反応がなくなった」
「子宮頸がんワクチンは、以前は副反応をもたらす危険性があったが、2015年以降では危険性がなくなった」
( → 子宮頸がんワクチンの現状: Open ブログ )
つまり、それ以前と以後とで、ワクチンの中身が変わった、ということだ。
──
上のことによると、ワクチンについて「それ以後では無罪」ということが判明する。
では、「それ以前」については、どうなのか? これについては、次のような3通りの解釈が成立するだろう。
・ 以後は無罪だとわかったが、以前についてはまったく不明。
・ 以後は無罪なんだから、以前も無罪に決まっている。
・ 以後は無罪だけど、以前は有罪だったんだ。
そのうち、どれが正しいのだろう? 常識的に考えれば、「以後のことがわかったからといって、以前のことには影響が及ばないから、以前については不明なままだ」となりそうだ。
しかしそれでは、話が詰まらない。謎は謎として残される。ここは何とかして、名探偵にお出ましを願いたいところだ。
──
そこで困ったときの Openブログ。名探偵の推理を求めよう。医学的な謎を、名探偵はどう解決するか? 以下で示そう。
過去についての証拠は今さら新たに得られないが、過去においては「子宮頸がんワクチンで重篤な症状が出た」という報告がいくつかあった。これはもともとあった報告だ。
さて。2015年以降はどうか? 新たな報告は特に出されていないようだ。その意味で、新たな証拠が見つかったとは言えない。
しかし、である。「新たな報告は特に出されていない」ということ自体が、新たな証拠なのである。なぜか? 次のように考えられるからだ。
そもそも、「子宮頸がんワクチンで重篤な症状が出た」という方向が出たとき、それを否定する見解があった。その見解は、こうだ。
「重篤な症状は、子宮頸がんワクチンに由来するものではない。それは、思春期の少女にはもともと統計的に発生するものであって、子宮頸がんワクチンとは別の理由で発生するものだ」
なるほど。これはこれで、一つの見解である。しかし、この見解が正しいとすれば、2015年以降でも同様に発生していたはずだ。そして、「子宮頸がんワクチンのせいだ」とか、「インフルエンザワクチンのせいだ」とか、「(生理調節用の)ピルのせいだ」とか、そういう何らかの責任転嫁の形で、「こいつのせいでこうなった」と叫び声を上げていたはずだ。
しかし、現実には、そうなっていない。2015年以降では、「重篤な症状が起こった」と叫ぶ声は社会問題となるほど出ていない。これはつまり、「2015年以降では実際に、重篤な症状は起こっていないのだ」ということを意味するだろう。
そして、これをもたらす事実は、こうだ。
「実際に、子宮頸がんワクチンは改善された。それ以前とは違って、2015年以後の子宮頸がんワクチンは安全なものに変わった」
これを換言すれば、こうなる。
「改善される前は、子宮頸がんワクチンは安全なものではなかった。まさしく重篤な症状を発生させるものだった。だから、2015年以前では重篤な症状の報告が目立ち、2015年以後では重篤な症状が起こらなくなった」
このように考えるのが最も合理的だろう。
要するに、「 2015年以降では、なくなった」ということを見ることで、「 2015年以前では、あったのだ」と認定できる。「今では、ない」ことが、「過去では、あった」ということを(間接的に)証明する。そこには、「ない」という事実が「ある」のだ。
( ※ 「不思議の国のアリス」みたいな言い回しだが。→ 参考 )
ともあれ、以上のようにひねくれた理屈によって、「 2015年以前では、子宮頸がんワクチンには危険性があったのだ」と結論できるだろう。
[ 付記 ]
なお、どうしてこういうふうになったのかといえば、アジュバントの変化が強く疑われる。
たとえば、アジュバントの溶解が不十分で、一部には(溶けずに)粒子状のアルミが残っていたのだとすれば、それが脳に入ったときに、悪さをすることがありそうだ。
ところが、2015年以降のワクチンでは、アジュバントの溶解が十分で、すべてが溶けてしまっているので、脳に入って悪さをすることがなくなった……と考えられる。つまり、製法の改善が、副作用(副反応)を発生させなくなったわけだ。
なお、この重篤な被害が起こるのが、ごく限られた例外に限られているのは、大部分の人が脳内関門のおかげでアルミを排除できているからだ。
ところが、一部の人は脳内関門に何らかの欠陥があって(たとえば穴があいていて)、そのせいでアルミが脳に入り込んでしまった……と考えると、うまく説明できる。
以上のように考えれば、すべては整合的に説明できる。これなら、「名探偵の推理」と言ってもよさそうだ。
一方、「子宮頸がんワクチンはもともと安全なのだ。重篤な被害が起こるのは、子宮頸がんワクチンとは別の理由による」というようなワクチン弁護もあるが、それは、「 2015年以後には重篤な症状が報告されなくなっている」という事実と整合しないので、妥当ではない。こんな弁護は、ほとんど非科学的と言っていいだろう。
その結果を、これまでにいくつかの論稿にまとめておりますが、そのうちの最新のものである日本社会臨床学会の会誌「社会臨床雑誌」28巻3号p105-113(2021)に掲載された論文『HPVワクチン論争を再考する―推進派の主張の問題点を中心に』が、このたびJ-Stage上に公開されましたので、お知らせ申し上げます。
https://doi.org/10.24698/shakairinsho.28.3_105
をクリックすれば、画面の指示にしたがってPDF版を入手できます。
また、当該論文中に引用した、その他の本件での私の著作物もネット上に公開されておりますので、JAPAN SKEPTICSのHP等でお読みいただけます。
御参考になれば幸いです。