2019年10月24日

◆ 油断や楽観のせい(台風 19号)

 台風の被害は、油断や楽観のせいで生じた例が多い。

 ──
 
 今回の台風の被害を見ると、「油断や楽観があった」と思える例が多い。つまり、台風を甘く見たわけだ。
 その例は、次項で改めて述べる予定だが、とりあえず典型的な例を示すと、次の二つがある。

 (1) 新幹線の車両基地

 この問題については、本項でも論じた。
  → 台風で新幹線が水没: Open ブログ
 本日の朝日社説でも論じている。
 《 (社説)新幹線の水没 避けられた失敗に学ぶ 》
 適切な危機意識をもって動いていれば、この事態は十分に防げたのではないか。
 基地は千曲川と浅川という川に挟まれたところにあり、地元では浸水の恐れのある場所と認識されていた。長野市のハザードマップでは、一帯の浸水深は「5メートル以上」となっていた。
 それが8月の改定で「10〜20メートル未満」となり、危険度はより高まった。この警告に敏感に反応していれば、より高いところを走る本線上に車両を退避させるなどの措置がとれたと、防災の専門家らは指摘する。
 決して無理な話ではない。実際にJR東は今回、台風が来る前に栃木・那須塩原にある東北新幹線の車両基地の列車を退避させ、被害を免れている。
( → 朝日新聞

 ここでは明らかに「油断や楽観があった」とわかる。

 (2) エリンギのホクト

 この車両基地のそばに、エリンギ生産で有名なホクトの工場があり、大規模な被災を受けた、と本日の朝日・夕刊1面で大々的に論じている。
 《 ホクトのエリンギ450tが廃棄処分「想像以上の被害」 》
 台風19号の影響で千曲川の堤防が決壊するなどして浸水被害を受けた長野市北部。キノコ生産最大手のホクト(長野市南堀)の生産施設も水につかり、約450トンのエリンギが廃棄処分されることになった。キノコが欠かせない鍋シーズンを前に、復旧のめどがたたない状況だという。
 堤防の決壊場所から北へ約1.5キロに位置する「赤沼きのこセンター」(同市赤沼)。
 ホクトのエリンギは、全国シェアの約半分を占める。赤沼きのこセンターは、その6分の1にあたる年間約3千トンを出荷。全国に10カ所ある同社のエリンギの生産施設の中でも最大級だ。しかし、今回の台風で1階部分が水につかった。生育中だった140トンが泥まみれになり、まだ芽がでていない培養中のものも含めて、約450トンが被害にあった。
 赤沼きのこセンターは、2006年に完成。これまで07年の新潟県中越沖地震などで棚が倒れるなどの被害はあったが、水害は未経験だった。今回の台風では、風に注意して外に出していた物を片付けていたが、浸水被害は予想外だった。

hokuto.jpg

( → 朝日新聞

 ここでもやはり「油断や楽観があった」とわかる。 

 ──

 新幹線の例でも、ホクトの例でも、被害を受けた方は浸水被害を予想していなかった。
 しかしながら、浸水被害は明らかに予想できたのだ。
 第1に、史上最大級の台風が来るとニュースで何度も報じられていたこと。
 第2に、ハザードマップで危険が広報されていたこと。
 ハザードマップは下記にある。
  → 長野市 洪水ハザードマップ

 この図は地図を 45度傾けてあるので、見やすくない。そこで、北が上になるように補正すると、こうなる。


naganohazard.jpg


 浸水の場所と程度は、朝日の図(実測)におおむね一致する。
 つまり、新幹線の車両基地も、ホクトの工場も、被害はもともと予想されていたのである。にもかかわらず、何の対策もしなかった。
 なぜか? 人々がどうしようもない馬鹿であったからか? 知能指数が低すぎたからか? 違う。「油断や楽観があった」からである。

 このことは、この2例に限らない。日本中で広く見られた。
 実は、全員がそういうふうに「油断や楽観があった」わけではない。きちんと留意して、きちんと対策した人もいた。そういう人々は、被害に遭っていない。(たとえば、栃木・那須塩原にある東北新幹線の車両基地の例:上記) その一方で、留意もせず、対策もしなかった人々もいた。そういう人々が、今回は被害に遭ったわけだ。

 被害に遭った人々のすべてが「油断や楽観があった」とは限らない。きちんと留意して、きちんと対策したにもかかわらず、大きな被害を受けたという、不運な人々もいる。
 とはいえ、「きちんと対策しておけば、たとえ被害を受けても、被害の程度を最小化することができた」という事例はとても多いはずだ。
 そのことを教訓としてもらいたいものだ。

 災害そのものは避けられなくとも、災害による被災レベルを下げることは可能なのである。そして、それを怠ると、被災レベルが最大化してしまうのだ。(新幹線の例のように。)




  ※ 以下は、細かな話なので、読まなくてもいい。


 [ 付記 ]
 では、どうすればよかったか? もちろん、移転すればよかった。
 新幹線の車両基地の方は、水没を前提とした上で、「車両を別の場所に移す」という方針でもよかったかもしれない。しかしそれだとやはり、車両基地の大事な機械や部品が水没してしまうので、よろしくない。やはり、移転すべきだった。
 ホクトの方は、「キノコだけを別の場所に移す」という方針は取れないので、工場を移転するしかあるまい。

 では、移転するとして、どこに移転するか? 私の考えはこうだ。
 「どうせ田舎なんだから、田畑だらけだろうし、移転場所はいくらでも見つかる。その中から、ハザードマップで安全そうな場所を選べばいい」
 そう思って調べたら……

 長野のこのあたりは、地域全体が盆地みたいになっていて、川と山と小さな平地があるだけだ。関東平野みたいに、「選り取り見取りで、土地はいくらでもある」という具合には行かない。
 それでも、ハザードマップで安全そうな場所を選ぶことはできる。今回の浸水した地域の南西部がそうだ。





 この地図の左下にある「長野市立長野中高」や「長野工業高専」のあたりは、ハザードマップで白くなっていて、洪水被害が少ないとわかる。だからこのへん(および周辺部)に移転すればいいのだ。ホクトのような企業は。

 新幹線の場合は、もっと融通が利く。北陸新幹線の距離は長いので、その路線のそばのどこかであればいい。安全なところはいくらでも見つかるだろう。
 お薦めは、高崎だ。やたらと田畑がいっぱいあるので、その田畑のどこかに車両基地を作ればいい。このへんでは、上越新幹線とも分岐しているので、上越新幹線と北陸新幹線の車両基地を兼ねた車両基地を作ればいい。そばには太い川はないので、安全だ。

 とにかく、日本では、川のそばに安易に住む例が多い。たいていは、「川のそばは土地が安いので」というような理由だ。ここでは、安さに目が眩んで、危険を見失っているのである。
 洪水の危険というものを、もっと強く意識した方がいいだろう。

( ※ ちなみに、私は、多摩川の狛江の「洪水で土地が削られて、岸辺の家が土地もろとも流されていく」という映像を見て、記憶から離れなくなった。夢で何度もうなされたものだ。 → YouTube [1分20秒から] )



 【 追記 】( 2019-10-25 )
 新幹線の車両基地については、続報みたいな記事がある。25日の朝日朝刊。
 台風の状況に応じ、臨機応変に基地から列車を避難させることは難しい」とJR各社の担当者は口をそろえる。 運転士の手配や電気・信号の準備に加え、本線上で新幹線を動かすためには保安上の厳しいルールがあるためだ。今回の浸水を受け、JR東日本は長野市の基地で車両避難を決めてから、実際に 10編成すべてが出払うまでにかかる時間を計算した。すると、「7時間はかかる」との結果が出た。
( → 新幹線基地、思わぬ弱点 6割が浸水想定エリアに 全国25カ所中、15カ所:朝日新聞

 「難しい」というが、ちゃんと手順を定めておけば、あとはただの通常業務であるにすぎない。前もって訓練でもしておけばいいだけだ。
 7時間かかるというが、前夜の最終便が午前零時ごろ。次の日はずっと運休で、台風が来るのは夜になってから。退避のための時間は 24時間ぐらいある。余裕たっぷりだ。「7時間かかる」というのは弁解になっていない。
 しかも、7時間というのは「全部が出払うまで」の時間だ。全部でなくて部分だけなら、もっと短い時間で済む。
 要するに、JR東は「できないことの言い訳」をしているだけ。それで示しているのは「できない理由」ではなく、「やる気がないだけ」ということだ。まったく情けない。無能の弁解。

posted by 管理人 at 23:20| Comment(1) |  地震・自然災害 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 NHKの記事。

> 台風19号の浸水エリア ハザードマップの浸水想定と多くが一致

 https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191025/k10012148861000.html
Posted by 管理人 at 2019年10月26日 01:39
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