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これまで「遊水地を作れ」と提言してきた。それは水没の被害を防ぐためだ。
一方、人間の手を掛けずとも、「天然の遊水地」ともいうべきものがある。ただしそれは、水没の被害を減らすどころか、かえって増やす。つまり、逆効果だ。
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まずは実例を示そう。
前に「新横浜の遊水地」というものを紹介した。そのついでに、そこのそばには「横浜市営地下鉄の車両基地」がある、と紹介した。
→ 台風で新幹線が水没: Open ブログ
これはどこにあるかというと、下記にある。
この地図のあたりを衛星写真で見てみる。
空撮画像における緑の部分(葉っぱ色の領域)は、ただの緑地ではなくて、(標高の高い)丘陵部だろう、と推定される。そこで、ストリートビューで調べると、まさしくそこは(標高の高い)丘陵部だと確認できる。
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すると次のことがわかる。
「このあたりは天然の遊水地になっている。なぜなら、鶴見川とその支流が東と南を走っているが、西と北には丘陵部が壁のようになっているからだ。鶴見川および支流で氾濫した水は、沿岸にあふれて注ぐが、その水は、西と北にある丘陵部(壁の部分)に遮られて、外に逃げて行かない。したがって、この丘陵部が天然の土堤となるので、この天然の土堤に囲まれた地域は、氾濫と同時に、水没する。いわば遊水地のように」
このことを確認するために、ハザードマップを見る。するとまさしくこの地域が水没するとわかる。(西側と北側の丘陵部に囲まれた部分だけが水没する。)
→ 横浜市・港北区 ハザードマップ
これは、江戸川区の地盤沈下した地域が水没するのに似ている。氾濫した水がここに流れ込むと、外部に流出することができないので、この地域の水深がやたらと深まってしまうのだ。
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困った。どうする? そこで、困ったときの Openブログ。とりあえずは、一案を出そう。こうだ。
「江戸川の水を、江戸川区でなく千葉側に氾濫させたように、鶴見川の水を、北側・西側でなく、南側・東側に氾濫させればいい」
つまり、(河口を前に見て)左岸でなく右岸の方を低くして、右岸の川で氾濫させればいい。
これで済みそうだと思えたが、そう簡単ではないとわかった。ハザードマップを見ればわかるように、右岸の側の一部も水深が深まるのである。というのは、右岸の側も、南側の一部に丘陵部があって、このあたりが「天然の遊水地」になっているからだ。
困った。どうする? そこで、いろいろ頭を絞って、ひねり出した案が、こうだ。
「上記の二つの地域(どちらも天然の遊水地である地域)を除いて、それ以外の場所で、越水させればいい」
上の画像で白くなっている地域が該当する。また、その東側にも、白くなっている地域がある。(大きなハザードマップからわかる。)
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実は、この地域のすぐ上流側には、新横浜の遊水地がある。(2番目の図で左下の「新横浜公園」とある箇所。)こういう遊水地があるのだから、上記の「天然の遊水地」が実際に洪水被害を受ける危険は、あまり大きくない。
その一方で、津波が来たときには、津波が鶴見川の河口から逆流して押し寄せて、この地域が水没すると見込まれている。その場合にも、堤防からの氾濫があるかもしれない。(東日本大震災のときの大川小学校のように。)
これらの被害を一般的に防ぐには、上記の方針を取ればいい。つまり、ハザードマップで白くなっている地域に越水させるように、その部分の堤防を少し低めにしておけばいいのだ。
それはちょうど、「江戸川の水を千葉の側に越水させる」というのと同様である。そうすれば、被害の最大化を防ぐことができる。
とりあえずは、これを結論としておこう。
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なお、「天然の遊水地」は、上記の地域だけに限られるわけではない。上記の地域は、ほんの一例にすぎない。日本の各地で、「天然の遊水地」となっている地域があるだろう。
川から少し離れたところに丘陵地が連なっている……というような場所は、日本にはいくつもあるだろうと推定される。(いちいち事例を探したりはしないが。)
そういう場所では、上記のような危険があるわけだ。そこで、「危険な場所の危険を防ぐために、別の安全な場所で越水させる」という方法が成立するわけだ。
( ※ 全体における被害の最大化を防ぐために。)
なお、ちょっと調べたところでは、多摩川の中流部に、次の場所が見つかった。天然の遊水地と言ってもよさそうなところだ。