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阿武隈川の決壊はひどいと述べたが、千曲川の決壊も劣らずにひどい。これはすでにテレビや新聞で大々的に報道されているとおり。
ネットにも動画があるので、掲載しよう。
千曲川も阿武隈川も、決壊はひどい。では、これを防ぐにはどうすればいいか?
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その答えは簡単だ。前にも何度も述べたとおりで、「遊水地を作ればいい」となる。
→ 堤防の決壊の対策(2019): Open ブログ
ここで問題だ。「遊水地を作ればいい」というのはわかっているが、多摩川では(そばに田畑がないので)それは不可能だった。では、千曲川や阿武隈川は、どうか? そばに広大な田畑はあるか?
直感的には、こう思える。
「どちらも田舎なんだから、田畑は呆れるほどあるだろう。特に、川のそばには田畑が多いはずだ。なぜなら、これまで何度も氾濫したことがあるので、そばには市街地は作りにくいからだ。当然、そばには田畑がいっぱいあるはずだ」
こう思って、Google マップの衛星写真で調べてみたら……
いやはや。千曲川も阿武隈川も、実に川の距離が長い。関東の川は、
山 → 平野 → 湾
というふうに、大雑把には直線みたいな感じで流れている。
ところが、千曲川と阿武隈川は違う。東西の湾に注ごうにも、途中で(南北に延びる)山脈に遮られてしまうので、東西の湾に注ぐことができない。そこで、南から北へと、山脈に沿って長々と距離をたどることになる。くねくね曲がりながら、非常に長い距離をたどる。しかも、その間に、結構標高の高い位置で長い距離をたどる。
( ※ 関東の山だと、山間部でたどる距離は短い。ちょっと走って、すぐに平野に達する。)
ともあれ、そういう長い距離を延々と衛星写真で調べていった。手間暇かけて。(あまりにも長いので、ここには掲載しきれない。)
で、その結果は? 予想通りだった。つまり、こうだ。
「千曲川と阿武隈川は、すごく長い距離を走るが、その長い距離のどこにおいても、そばに広大な田畑があるので、遊水地を作ることは可能である」
ここで「どこにおいても」と言ったが、「どこの堤防のそばでも」というわけではない。堤防のそばに民家が密集している市街地はある。しかしその場合も、数キロほど上流に移れば、必ず広大な田畑がある。だからそこに遊水池を作ることで、民家が密集している市街地を洪水から救うことはできるのだ。
こういうふうに、「数キロごとであれば、必ず広大な田畑が見つかる」という状況なので、どの平地部(盆地など)でも、必ず近くに遊水池を作ることができる。
かくて、「遊水池を作ることで氾濫を避ける」ということは、可能なのだ。
このことは、千曲川と阿武隈川に限らず、日本のすべての河川で成立するだろう。成立しないとしたら、東京・名古屋・関西の一部で、田畑が見つかりにくいことは考えられる。だが、このような大都市圏を除けば、日本中のすべてで、川のそばに広大な田畑を見出さすことができるだろうし、そこに遊水池を作ることができるはずだ。
こうして、「日本中の河川のすべてで氾濫を防ぐことができる」という結論になる。
( ※ 例外は大都市圏の一部のみ。)
[ 付記 ]
「広大な田畑があるとしても、地主がそこを譲ってくれないかもしれないぞ。地主に反対されたら、どうするんだ」
という反論 or 心配があるかもしれない。しかし、大丈夫。次の二点がある。
(1) 損得
遊水地を作ることの損得勘定を考えるといい。そうすれば、次のことがわかる。
「遊水地を作ることで最大の利益を得るのは、地主自身である」
仮に地主が反対するとしたら、「他人のために自分が犠牲になるのはまっぴらだ」ということだろう。しかし実は、遊水地を作ることで、地主は損するどころか、得をする。しかも、最大の得を得るのだ。
なぜか? 氾濫が起こったとき、最大の被害を受けるのは地主だからだ。田畑が水没することぐらいならまだ我慢できるだろうが、ついでにトラクターや農業機械や倉庫や住居まで水没する。これらの損失は莫大な金額になる。
「トラクターは水没したって、修理すればいいさ」
と思うかもしれないが、さにあらず。エンジンまで水没したトラクターは、もはや廃車にするしかない。また、修理の依頼が殺到するので、修理を頼んでも、修理が終わるのは1年後ぐらいになりかねない。その間、トラクターや機械を使えない。さらに、収穫した在庫品や、自分の住居も水没するので、そっちの損害も追加される。
ところが、遊水地があれば、これらの問題は一挙に解決する。大事なものは、遊水地の外側に出しておけばいいからだ。
たとえば、トラクターは、普段は遊水地の内側にあるが、台風が来たら、トラクターを退避すればいい。土堤の上に置いてもいいし、土堤の外側に置いてもいい。(土堤には斜面状の通路があるので、そこをたどって、遊水地の内側から外側に出す。)
「こんな斜面状の通路を上り下りするのは面倒だ」
と思うかもしれないが、その必要があるのは、台風が来るときだけだ。年に1〜3回ぐらいだけだ。あとはずっと遊水地の内側に置きっぱなしにしていい。何の面倒もない。
そもそも、土堤の高さは、せいぜい2〜4メートルぐらいだから、難儀するほどのことはないのだ。階段をちょっと登るぐらいの手まであるにすぎない。普通の人なら、自宅で1〜2回を上り下りすることは何度もあるのだから、その手間と同程度で、何ということもない。
ついでだが、今回は、「農業機械や在庫が水没して莫大な損害をこうむった」と嘆く農業関係者の声が多かった。
しかし、遊水地をつくってもらった地主なら、その心配はないわけだ。遊水地は、何よりも地主を救うのである。(だから土地の提供者は、どんどん出現する。断るのが大変なほどだろう。)
(2) 肥沃
「遊水地が水没したら、農産物に大被害が出る」
と心配するかもしれないが、大丈夫。もともとそのつもりでいれば、その場所は、稲作の田んぼか、リンゴ果樹園に出もしておけばいい。それなら、被害は1年限りで済む。
さらに、翌年以降は、氾濫した河川からもらった栄養分で、土壌が肥沃になる効果で、収量が増える。……こういうことは、昔から、川沿いの農地ではひんぱんに見られたことだ。
河川が氾濫することは、必ずしも悪いことだらけではないのだ。むしろそれを自然の恵みとして利用することもできるのだ。昔の人々は、そういうことをしていた。
同じことを、遊水地の地主は利用できる。
しかも、場合によっては、「遊水地の利用料」みたいな補償金をもらえるかもしれない。
また、そうでなくとも、一般に、農業には「台風保険」みたいなのがあって、台風による農産物被害には保険金が下りる。だから、農産物の被害には、あまり心配しなくていいのだ。
→ 災害による補償制度はあるか | 農業とお金の関係
( ※ とはいえ、遊水地となると、保険金は下りないかもね。その分、国から補償してもらえばいい。国は喜んで払ってくれるだろう。氾濫の被害よりも圧倒的に少ない額なのだから。)