2019年10月17日

◆ 渓谷での水害(2019)

 今回の台風 19号では、渓谷の小さい河川での水害がちょっと目に付いた。

 ──

 水害というと、鬼怒川氾濫みたいな大規模な洪水が思い浮かぶ。今回も、千曲川氾濫や、阿武隈川氾濫があった。

 それとは別に、渓谷の小さい河川での水害にしばしば起こる。今回は、次の2件がちょっと目に付いた。

 (1) 地上絵

 地面に「水 食料」と書いて、上空に救援を訴えた、という例がある。





 どこかと思って調べたら、ここだった。





 見ればわかるように、このすぐ北側を川が流れている。
 この地域は全体として、渓谷にある。(図を縮小するとわかる。)

 (2) 道の崩落

 川沿いの道が崩落した、という例が東京の西多摩であった。(西多摩郡日の出町大久野)
 東京都日の出町の大久野(おおぐの)地区。多摩川の支流が増水した影響で、町中心部につながる唯一の道路が崩落した。車両が通行できず、上流に住む約200人の住民は崩れかけた道路脇の畑などを歩いて行き来している。
( → 100人の物資、歩いて運ぶ 東京・日の出 台風19号:朝日新聞デジタル

 どこかと思って調べたら、ここだった。





 ここもやはり、そばを小さな川が流れている。(図の左側だ。)
 で、図で示した道路の部分が、丸ごと崩落して、自動車が通れなくなったのだ。(かなり大規模な崩落である。)

 ここも、周囲は山だらけなので、ここもまた渓谷だと言える。(深い渓谷ではないが。)





 ──

 ともあれ、(1)(2) では、「山だらけの山中における谷川の流れる地域で水害が発生した」と言える。

 これと似た例は、以前もあった。本項でも扱ったことがある。
  → 2016年 台風 10号の被害: Open ブログ

 これも渓谷での被害だ。特に、この例はひどくて、川のそばの河川敷に家があって、その家が増水した川水に飲まれて水没した。かなり悲惨であった。

 ──

 ともあれ、台風が来ると、以上のように「渓谷での水害」という被害が発生する。そのあとで「水害が大変だあ」というふうに報道される。台風が来るたびに、毎度毎度という感じで、「渓谷での水害」が報道される。(特に、山間部に台風が来た場合はそうだ。)

 しかし、よく考えれば、こんなところ(山中の谷川のそば)なんて、もともと水害が発生しやすいところである。こんな危険なところには人は住むべきではあるまい。
 実際、今回の事例を見ても、そう遠くないところに、平地はたっぷりと余っている。田畑になる土地はいっぱいあるのだ。(西多摩の例でも、すぐ東のあたりには、田畑や空地がいっぱいある。「東京だから空地はあるまい」ということはないのだ。東京でも西のハズレには、空地はいっぱいあるのだ。広大と言えるほどではないが。)





 というわけで、「こんな危険なところには人は住むべきではあるまい」というのが結論となるのだが、実は、この件については、前に論じたことがある。
  → 川沿いの危険地は居住制限せよ: Open ブログ
  → 2016年 台風 10号の被害: Open ブログ
  → 豪雨の被害を減らすには: Open ブログ

 とはいえ、「居住制限」というのは、かなりきつい表現だ。実際には「強権発動」というわけではないのだが、そういうニュアンスを感じる人も多い。それで、感情的に反発する人もいるようだ。(別項でそういうコメントが来た。)

 また、「強権発動」というほどではないにせよ、何らかの制限を課することは、財産権の侵害になりそうだ。かといって、強い措置で追い出さないと、いつまでたっても危険な場所に居着く人が多いので、危険性の問題を解決できない。
 あちらが立てば、こちらが立たず。困った。

 ──
 
 そこで、困ったときの Openブログ。うまい案を出そう。こうだ。
 「渓谷保険をつくって、それに強制加入させる」


 渓谷保険というのは、水害保険の特別版だ。特に水害の起こりやすい渓谷に限って、水害が起こった場合への補償をする。ここには、道路の崩落の修理というような公共事業の分も含まれる。保険の事業主体は、民間会社ではなく、政府である。
 なお、補償には、生活維持のための住宅費(家賃補助)の支給は含まれるが、建物の再建のための資金の支給は含まれない。危険なところに建てた家については、まったく補償されない。

 ここで大事なのは、「補償する」ことではなくて、「高い保険料を取ること」である。そのことによって、危険な土地から追い出すことを狙いとする。
 ここでは、「居住制限」という強権措置を取るかわりに、高い料金を取ることで、「居住制限」に似た効果を出すわけだ。

 ──

 すると反論が出そうだ。
 「そんなに高い料金を取って追い出すなんて、生存権の侵害だ! 僻地に住むような貧しい人から高い料金を取るなんて、人でなしだ!」

 それはごもっとも。そこで、保険料としては、高い料金を取ると言っても、年3万円程度とする。これなら、町に住むときの家賃の半月分ぐらいであるにすぎない。このくらいの金額であるならば、追い出す効果は(金銭的には)ほとんどないだろう。(年収 200万円のうちの3万円なんて、微々たるものだ。)
 しかしながら、(金銭的でなく)心理的には、「課税される」という課税感・重税感がある。「他人は取られないのに、自分ばかりが取られて、損をする!」という感じだ。それゆえ、心理的には、住民を追い出す効果はあるのだ。
 そして、その重税感は、「ここは住んでは行けない土地だ」という意識を植え付ける効果がある。金銭的にはたいして効果がなくとも、「ここは危険だ」「ここに住むと罰される」という心理的効果をもたらす。
 こういう心理的効果こそが大事なのだ。そのことで、危険を意識させて、「危険から遠ざかろうとする」という効果が生じる。つまり、安全に導くような心理的効果がある。それこそが大事なのだ。
 
 というわけで、「渓谷保険をつくって、それに強制加入させる」というのを、私の提案としておこう。

 ※ なお、これはただの罰金ではない。被災者に対する補償もなされるから、住民が一方的に損するわけではない。今回のような台風では、まともなサービスが受けられるようになる。ただし、通常は、そのサービスは行政の側からの持ち出しとなる。それを、「自分の払う保険金でまかなう」というふうにするだけだ。



 [ 付記 ]
 金額は「年3万円程度」と言ったが、危険度でランク付けするといいだろう。渓谷の河川敷や中州などは、危険度が非常に高いので、保険料も最高度に高くするといい。この場合には、年額 10万円ぐらいを徴収してもよさそうだ。

 ※ 強制的にでも追い出す措置も必要かもしれない。こんなところに住むのは自殺行為も同然だからだ。
 ※ ただし、岩手でそういう水害事故があったあとでは、そんな危険なところに住んでいる人は、もはやいなくなったかもしれない。今回の台風で、そういう被害が起こったとは聞かないからだ。(事前にちゃんと避難したせいかもしれないが。)



 【 追記 】
 本項とよく似た趣旨の話を、財務省が訴えている。特に渓谷に限ったわけでなく、災害の危険のある土地の利用規制をすべきだ、という趣旨。(財政上の観点から。)
 《 「土地利用の規制強化を」 財務省、豪雨災害防止へ強調 》
 相次ぐ豪雨災害を受け、財務省は17日に開いた財政制度等審議会で、浸水や土砂崩れなどのリスクがある土地の利用規制を強める必要性を強調した。財源が限られるなか、規模や頻度が増す災害に堤防やダムの増強だけで対応することには限界がある、と指摘。リスクがある場所に住むことを避ける土地利用を訴えた。
 治水についても、施設の増強だけでなく、災害危険区域の指定や防災集団移転を視野に、土地利用の規制強化で被害を防ぐ必要があるとした。
( → 朝日新聞



 【 追記2 】
 現地の人が自発的に集団移転することを考えている事例もある。
 宮城県大崎市鹿島台・志田谷地地区は、決壊した堤防から流れ込んだ吉田川の水が引かず、1週間が過ぎても一部が水没したままだ。
 元は沼だった場所を干拓した約220世帯の農業集落。1986年8月の水害や、古くは48年9月のアイオン台風でも吉田川が氾濫(はんらん)し、水に覆われた。今回は13日朝、約6キロ上流で堤防が決壊し、志田谷地地区に水がたまる形に。深さは最大2メートル以上だったという。
 板垣章浩さん(52)は「堤防が整備され、今度は大丈夫と思っていた。予想以上の雨が降るのだから、集団移転を考えた方がいい」と話す。後継ぎがおらず、これを機に転出を決めた人もいるという。
( → 水没したままの街、小舟で行き来 「命あるだけで幸せ」 [台風19号]:朝日新聞

 現場はここだ。





 典型的な(狭い)渓谷とは違うが、二つの山地に挟まれた細長い低地だということで、渓谷と似たような状況にある。しかも、川のそばに多くの住居がある。
 一方で、すぐ南側には、リアス海岸みたいになった山地があって、そこには高台もあるから、そこにいれば水害を受けることもない。
 これはちょうど、三陸の津波を浴びた海岸のそばに似ている。
 だから、さっさと水辺を離れて、近くの高台に移転すればいいだけのことだ。ただし、高台に移転すると、田畑まで自動車で5分ほど移動する必要がある。毎日、通勤時間が5分ほど余計にかかる。それが、田舎の人にとっては、ものすごく面倒臭い。(通勤に1時間をかける都会人にとっては「何言っているんだ」と呆れはてるところ。)
 ともあれ、こういう理由で、田舎の人はものぐさがるから、危険な川のそばに暮らして、水害を受けるハメになる。
 そこで本サイトが、「危険な土地には住むな」と勧告するわけだ。(ただし上記では、本サイトが言わなくても、自分たちでも気づいているようだ。)

posted by 管理人 at 22:46| Comment(3) |  地震・自然災害2 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
すごい意見ですね。

少なくともゼロイチ思考の人間にはできない案ですし、
総合的な思考ができない人間にもできない案ですね。

インドの天然痘の撲滅に貢献した日本人、
たしかプロジェクトXで取り上げられたと思いますが、
のことを思い出しました。

現実は単純ではないので、
教条的な対応ではうまくいかないことも多々ありますよね。
Posted by サク at 2019年10月18日 00:10
 最後に 【 追記 】 を加筆しました。
 財務省の方針の紹介。土地利用の規制強化を、と。
Posted by 管理人 at 2019年10月18日 13:10
 最後に 【 追記2 】 を加筆しました。
Posted by 管理人 at 2019年10月22日 13:53
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