──
迎撃ミサイルを都心に配備する訓練がなされた。
航空自衛隊は9日、東京・有明の東京臨海広域防災公園で、地対空誘導弾パトリオットミサイル(PAC3)の展開訓練を実施した。北朝鮮が弾道ミサイルの発射を繰り返しており、ミサイル防衛体制を再確認する狙いがある。河野太郎防衛相が視察した。自衛隊や在日米軍の施設外での展開訓練は2013年以来になる。
PAC3はイージス艦に搭載した海上配備型迎撃ミサイルが大気圏外で弾道ミサイルを迎撃できなかった場合、着弾前に撃ち落とす役割を担う。訓練では迎撃ミサイルの発射機やレーダーを積んだ車両が参加し、迎撃手順を確認した。
( → 空自、PAC3の展開訓練 北朝鮮の相次ぐミサイル発射で:日本経済新聞 )
具体的な場所は、下記だ。(東京臨海広域防災公園)
どうしてこの場所が選ばれたかというと、理由がある。
PAC-3による防護範囲は、速度がマッハ6強(2km/秒)程度となる短距離弾道ミサイル(SRBM)に対しては、発射機より左右に各35km、前に40km、後に10kmの扇状の範囲(ギターのピックの形状・フットプリント)を迎撃できるが(PAC-2GEM+の能力が大きい)、ノドンなど、日本において直面する可能性の高い準中距離弾道ミサイル(MRBM)攻撃(速度マッハ10=3.7km/秒)程度では、半径20kmの扇状の範囲にまで縮小する。
( → ミサイル防衛 - Wikipedia )
→ 参考図
上の説明からわかるように、(角度 90度ぐらいの)扇状の範囲が防護範囲となる。
そこで、今回の場所に PAC3 を配備すれば、「皇居を中心として、世田谷区−豊島区−台東区という曲線で囲まれた範囲を防護できる」というふうになる。こうして都市部をうまく守れる……という発想だ。
──
しかし、ここには決定的な難点がある。次のことだ。
「ミサイル防衛網は、敵ミサイルの最大の攻撃目標となる」
そもそも迎撃ミサイルは、敵にとって最も邪魔なものであるから、敵ミサイルの最大の攻撃目標となる。前に述べたとおり。(陸上イージスの話。)
→ 北朝鮮の新型ミサイルへの対策: Open ブログ
というわけで、PAC3 を配備すれば、そこが最大の攻撃目標となる。敵のミサイルが大量に襲いかかる。
そのあと、どうなるか?
防衛省は「敵ミサイルをすべて撃墜できる」という前提で発想している。(ミッドウェー開戦の前の日本軍と同様で、すべてが自分の勝手な想定通りになるという前提で発想する。)
ところが実際には、撃墜には漏れが発生する。その漏れたミサイルは、PAC3 の周辺に落ちる。たとえば、お台場だ。で、このあたりの被害がものすごいことになる。ビッグサイトやフジテレビなどにミサイルが落下して、次々と炎上する。
というわけで、こんな危険な場所(被害を大きくする場所)に PAC3 を配備するのは、愚の骨頂というものだ。
どうせなら、そばに人があまりいない場所を選ぶべきだ。
──
では、そんな場所はあるか? 次の二律背反が生じる。
・ 都心だと、人のいない場所は少ない。
・ 人のいない場所だと、都心から遠くなりすぎる。
(肝心の都心防衛ができなくなる。)
つまり、あちらが立てば、こちらが立たず。困った。
──
そこで、困ったときの Openブログ。うまい案を出そう。こうだ。
「今回の地点の東方2km(のやや南)にすればいい」
つまり、「若洲」というふうに称されている場所だ。その北西の角地あたりが適地となる。
ここならば、そばには人口密度の高い施設は少ないし、周辺の大半は海だから、ここを目指したミサイルが周辺に落ちたとしても、人的な被害は少なくて済む。
というわけで、この場所を敵地として推奨したい。
[ 付記1 ]
「 PAC3 は優秀だから撃墜漏れは起こらないぞ」
というふうに防衛省は想定しているのだろう。
しかし、撃墜漏れは必ず起こる。撃墜率が 100%ではない、ということも理由だが、もっと根源的な理由がある。 PAC3 は数が限られているので、敵のミサイルが大量に押し寄せて、飽和攻撃をしたら、ひとたまりもない、ということだ。
この意味で、 PAC3 は(量的に)必ず無力化される。そのとき、巻き添えを食う形で、周辺部ではミサイルの被害を受けるのである。
ただし、いくら被害を受けても、そこが海であれば、被害は最小化できる。……それが本項の発想だ。
一方、現状の防衛省は、逆の発想だ。つまり、こうだ。
「ビッグサイトやフジテレビがミサイルの被害を受けても、知ったこっちゃない。大切なのは、自分たちの PAC3 がどうなるか、ということだけだ。民家人の死者なんて、考慮する必要はない。勝手に死ね」
[ 付記2 ]
そもそも、都心防衛というのは、あまり考えなくていいのである。都心部を攻撃するのは、敵にとってはコスパが悪いからだ。
日本としては「都心部を攻撃されたら困る」と持っているのだろうが、そんなことを心配しているのは、政治家だけだろう。軍事的には、都心部は守る価値が少ない。守るべき箇所は、下記だ。(再掲)
・ 陸上イージス
・ ミサイル施設
・ 軍事用の航空機、航空施設
・ 軍事用の船舶
・ 原発
・ 火力、水力の発電所
・ 石油タンク、ガスタンク
・ 巨大な橋
( → 北朝鮮の新型ミサイルへの対策: Open ブログ )
だから、最適の方針は、陸上イージスや、敵基地攻撃用のミサイルを、上記の若洲に配備することだ。そうすれば、敵ミサイルはここを最優先の攻撃目標として、集中攻撃してくる。そのことで、都心部への攻撃を避けることができるのだ。
実は、この意味では、もっとよい適地がある。今回の配備した場所の南方4km ほどの埋め立て地だ。ここには、人がほとんどいない。だからここに、陸上イージスや、敵基地攻撃用のミサイルを、配備すればいい。そうすれば、それが「がを引き寄せる誘蛾灯」のような役割を果たして、敵ミサイルの攻撃を一身に引き受けるだろう。
なお、その敵ミサイルの攻撃を弱めるためには、この場所を守るための PAC3 を配備するといいだろう。その分、敵はいっそう多くのミサイルを撃ち込む必要があるから、この場所が誘蛾灯となる効果がいっそう高まる。その分、都市部への攻撃を減らすことができる。
敵ミサイルの攻撃を防ぐには、PAC3 なんかを配備して都心部を守ろうとするよりは、誘蛾灯となるようなミサイルを配備して、それが敵ミサイルの攻撃を一身に引き受ける方が、ずっと有効なのである。
これこそが軍事的な作戦というものだ。
※ なお、この場合には、PAC3 を配備する場所は、その領域の南東部である。(扇の要(かなめ)の位置)
[ 付記3 ]
敵ミサイルを引きつける誘蛾灯の役割を果たすには、陸上イージスのほかに、敵基地攻撃用のミサイルを配備するといい。
これは、「専守防衛」という国策には反するが、憲法には違反しない。その理由は、前に述べた。下記項目の最後。
→ 北朝鮮の新型ミサイルへの対策: Open ブログ