2019年10月05日

◆ 国鉄民営化は失敗した

 国鉄民営化は成功したと思われているが、失敗したと言うべきだろう。

 ──

 ただしこれは全否定ではなく部分否定である。つまり、「民営化をしない方が良かった」という意味ではなく、「民営化自体はなすべきだったが、やり方を間違えた」という意味だ。
 では、どこをどう間違えたかというと、「富の配分を間違えた」ということだ。

 国鉄民営化では、会社を地域別に分割して、大赤字を出す JR 北海道、JR 四国、JR 九州を作った。一方、大幅黒字を出す JR 東海も作った。その上で、この黒字を赤字事業の穴埋めに使う仕組みを作った。国鉄清算事業団が JR 東海の黒字を吸い上げて、その金で次のような無駄事業を開始した。
  ・ 本四架橋3本
  ・ 北海道新幹線

 これらはいずれも莫大な赤字を生み出した。とうてい事業として成立するはずがなかった。にもかかわらず、
   JR 東海 → 国鉄清算事業団 → 赤字事業

 という形で、赤字事業への資金注入が進んだ。
  ( ※ 前項の最後で示した通り。)

 この仕組みがあったということが、失敗の理由だ。
 この仕組みさえなければ、民営化は成功したと言えるだろう。多大な赤字の垂れ流しがなくなり、国民は大きな利益を得たと言えるだろう。
 実際には違った。国鉄在来線という事業の莫大な赤字はなくなったが、「本四架橋3本」「北海道新幹線」という莫大な赤字事業が残された。
 結局のところ、大きな赤字が別の大きな赤字に転化しただけだった。「大きな赤字をなくす」という所期の狙いは達成されなかった。
 これが「国鉄民営化は失敗した」という評価の説明だ。

 ──

 では、どうすればよかったか? 私は次の二点を提案したい。

 (1) 本四架橋は1本

 「本四架橋3本」というのをやめる。本四架橋は淡路島ルートだけにする。その上で、新幹線を大阪から松山まで通す。
 この場合、(新幹線込みで)莫大な事業費がかかるので、多額の資金を要する。その資金を、国鉄清算事業団がまかなえばいい。
 資金をまかなうところまでは、「本四架橋3本」というのと同様になるが、その後の結果が異なる。上記のようにした場合には、沿線では十分な発展が見込まれるので、発展した四国から、十分な資金回収ができる。鉄道の乗客も多くなるし、道路の利用者も多くなる。結果的に、大赤字はなくなって、小幅の赤字か黒字になるだろう。かくて、国鉄清算事業団は投じた資金の大部分を回収できる。事業全体では、大赤字にはならなくなる。(現状とは大違いだ。)

 (2) 首都圏への鉄道投資

 本四架橋に多額の資金を投入するのをやめて、首都圏の鉄道に投資するべきだ。特に、次の各路線は混雑率がひどい。
  メトロ・東西線
  横須賀線
  総武線
  東海道線
  都営・日暮里 舎人ライナー
  京浜東北線
  南武線
  埼京線
  中央線(快速)
  東急・田園都市線


 混雑率の出典は下記だ。
  → 首都圏の通勤地獄改善せず : 混雑率、東西線が最悪
  → 今年も最悪はあの路線..... 日本の通勤路線、混雑ワースト10
  → やはり1位は東西線、首都圏の鉄道「最新混雑率」 | 東洋経済
  → 都市鉄道の混雑率、最高は東京メトロ東西線の199%
  → 通勤ラッシュがキツイ時間帯・路線はここ!東京の満員電車

 どれもこれも、だいたい似たようなランキングを並べている。

 で、これらの混雑を解消するために、いろいろと提案がなされることもあるが、もっと抜本対策をするといい。つまり、こうだ。
 「新規の路線をどんどん建設することで、混雑率を下げる」


 これが最も効果的であることは、言うまでもない。たとえば、JR 東で言うなら、山手線では売上げの半分ぐらいが黒字という莫大な黒字を出しているのだから、その金で新線を建設することができる。混雑だらけの総武線のそばに、別の路線を建設すれば、総武線と東西線の混雑が一挙に改善できる。また、その路線は、乗客が莫大にいるのだから、収益性でも問題はない。
 だから、そういう路線をどんどん建設すればいいのだ。そうすれば、首都圏の交通事情は大幅に改善して、多くの人々が大きな利益を得る。しかも、そのために、国庫の投入などは必要ない。もともと黒字になると見込まれているし、たとえ黒字にならなくても山手線などの黒字で埋めることができるのだ。ここに金を投入するのが最善なのだ。

 にもかかわらず、それが実現されない。なぜか? 金がないからだ。正確に言えば、金はたっぷりとあるのだが、その金は、地方に持って行かれてしまうからだ。本四架橋の建設やら、赤字路線の穴埋めやら。こういう無駄事業のために、せっかくの金が使われてしまう。だから、本来なすべき事業がなされないのだ。何たる馬鹿馬鹿しさ! 
 ここを見れば、「国鉄民営化は失敗した」とはっきりわかるだろう。民営化したこと自体は悪くはなかったが、民営化の仕組みがまったく駄目だったのだ。それは大赤字をなくすシステムではなく、大赤字を消すかわりに別の大赤字を生み出すシステムだった。それは日本を改善するシステムではなく、都会の富を地方に移転するためのシステムであるにすぎなかった。それは要するに、「田舎が都会の富を盗み取る」という泥棒行為のシステムであるにすぎなかった。

 今日では、「都会の混雑はあまりにもひどい」と言われる。たとえば、下記のページだ。
  → 都民外の人が「満員電車の混み具合ヤバい」という文と共に画像が添えられるも「空いてる方」「ガラガラ」という意見

 東京民は慣れているので、大混雑にも耐えられる。しかしその混雑の度合いは、田舎民にはとうてい想像もできないほどの大混雑なのだ。
 そして、東京民がそれほどにも奴隷状態に置かれるのは、田舎民が東京民の富を奪い取るからだ。つまり、東京民が払った大幅な金を奪って、彼らが交雑解消のための路線を新規建設できなくなるようにして、その金で、本四架橋や北海道新幹線という壮大な無駄事業を開始して、そこから生み出される莫大な赤字の穴埋めのために金を投入する。
 ここでは、東京民は、田舎民に奉仕する奴隷状態になっていると言える。これは比喩ではなくて、まさしく本当に奴隷状態になっているのである。(満員電車の中で酷使されることで。)

 ただし、これは、「金持ちが奴隷を酷使する」という収奪行為とは違う。「田舎民が壮大な無駄遣いをして、田舎民と東京民がともに貧しくなる」という愚行があるだけだ。それは、win-lose というような一方的な利己主義ではなくて、 lose-lose という心中(共同自殺)みたいなものがあるだけだ。比喩で言えば、愚行によって、タイタニックの沈没みたいなことをやっているだけなのだ。誰かが得をするのではなく、誰もが損をする。
 ただし、この状況で、たった一つ、得をする部門がある。それは、自民党の代議士だ。

 というわけで、日本中の人が「国鉄民営化は失敗した」と嘆くべきときに、自民党の代議士だけは「国鉄民営化は成功した」とうそぶくのである。「国民は数兆円の損をしたけれど、俺様だけは数億円の利益を得たからな。しめしめ」と。



 [ 付記 ]
 「地方は恵まれていないので優遇するべきだ」
 という意見もあるだろう。それはそれでいいが、そのことは一般財源でまかなうべきだ。
 なのに、JR (国鉄)ばかりにそのことを押しつけるから、国全体の交通政策(鉄道政策)が歪んでしまう。国の無策を、鉄道利用者ばかりに押しつけられる。

 自動車の利用者ならば、道路税で多額の納税をした以上に、多額の道路建設費を受け取るし、道路利用については無料で利用できる。(鉄道利用者には信じられないぐらいの優遇だ。)
 なのに、鉄道の分野では、多額の納税をするだけでなく、地方民の優遇という責任外のことまで押しつけられる。そんなことは、鉄道利用者だけが負担するべきことではないのだが。

 かくて、一国の交通政策が歪む。そのせいで、東京では毎日、地獄のような奴隷待遇が待ち構えているのである。


posted by 管理人 at 22:43| Comment(5) | 自動車・交通 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
道路と鉄道の関係は難しいですね。

道路だけ、鉄道だけで考えるのでなく、総合的に考えないといけないですね。

交通問題だけでなく、より総合的に考えるのがより良いのでしょうが、
具体例をすぐには挙げられません。
考えてみます。
Posted by サク at 2019年10月05日 23:23
 最後に [ 付記 ] を加筆しました。
 タイムスタンプは 下記 ↓
Posted by 管理人 at 2019年10月05日 23:39
>「新規の路線をどんどん建設することで、混雑率を下げる」
→東京の場合、仮に新線を作ったところで、混雑緩和できるような生易しいものではない。東京圏に毎年数十万の規模で転入してくる。混雑緩和というなら、地方から東京圏に転入した人を、地方に戻すのが先決。そうすればかなり減る。

真面目にレスするのもおかしいと思うが、東京の中心部に新線を作れるようなところはほぼない(地上も地下も一杯)。ただし、地下鉄の場合、大江戸線よりさらに深くなるところなら別。それでは、混雑緩和ということにはほぼならない。



Posted by 通りすがり at 2019年10月07日 13:04
 たとえば、次の路線が建設可能。
  ・ 東京駅から東へ、八重洲通りの地下を走る。
   (東西線に並行する路線)
  ・ 国道 315号線の地下を走り、西端は秋葉原に接続。
   (総武線に並行する路線。)
  ・ 横浜グリーンライン・センター南駅から自由が丘まで至る路線。
    (自由が丘から直通で南北線を走る路線。
    港北ニュータウンの人口を吸収する路線。
    田園都市線に部分的に並行する。)

 以上のような路線を建設すれば、東西線・総武前・田園都市線の混雑を緩和できる。

 ちなみに、東横線は、複々線化や、相互乗り入れによって、混雑は大幅に緩和された。
 また、この 40年間に新規建設された地下鉄の路線はとても多い。
 これらの処置がなされていなかったと思うと、冷や汗を掻く感じだ。「対策は無理・無用」という無為無策だったら、いかに混雑がひどくなっていたことか。
 きちんと対策してくれた先人に感謝したい。

 ──

 ついでだが、皇居の下に地下鉄を通すと、状況は劇的に改善するだろう。


 ────────────────

 港北ニュータウンを出る地下鉄は、都心方向に向かわず、東西方向に向かっている。そのせいで都心と直結しない。
 これはどうしてかというと、北側は川崎市に入るからだ。そのせいで、地下鉄の事業主体である横浜市の管轄から外れてしまう。だから、横浜市営地下鉄としては、北に延ばせない。市境に沿って、東西に延びるだけだ。
 ここでは、事業主体の都合で、路線の最適化ができず、妙に歪んだ路線になってしまっている。かくて、港北ニュータウンの人々は、田園都市線の混雑に苦しむ。
 馬鹿げた都市計画(路線計画)の見本だ、と言えるだろう。同じ金を掛けて路線を作っても、まったく無駄な方向に路線を描いてしまう、という事例。
Posted by 管理人 at 2019年10月07日 13:40
 東西線は、メチャクチャに混雑しているくせに、東京駅と直通ではない。(大手町があるだけだ。)これでは不便だ。

 そこで、東西線の木場駅(あたり)と東京駅とを結ぶような新線を建設するといいだろう。そうすれば、東西線の乗客の半分ぐらいが新線に移行するだろうから、東西線の混雑率は、(都心のあたりでは)激減する。大いに効果があるだろう。
 なお、この路線が東西線と直通になるか、あるいは木場駅で乗り換えになるかは、どっちでもいいだろう。利便性では前者の方がいいが、建設が困難なら、無理することはない。どっちでも、効果は大差がない。(利便性の差があるだけだ。)

 ──

 なお、この新線は、東京駅から西側では、新宿まで直結するといい。そうすれば、「東京駅と新宿を結ぶ」という、非常に有力な路線ができる。
 現状では、そのような路線は存在しない。地下鉄で迂回するか、JR で迂回するか、どちらかだ。
 JR の「東京駅 − 新宿駅」という路線は、あるにはあるが、ひどい迂回路である。簡略図で見ると、まっすぐな直線で描かれているが、実際にはすごく遠回りをする迂回路だ。地図を見ればわかる。……人々はだまされているね。
Posted by 管理人 at 2019年10月07日 23:14
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