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停電が長く続いたということで、政府の対応が批判されることもあるが、現地の対応のレベルで、いろいろと不備があったことが判明している。次の番組で特集されていた。
→ NHK クローズアップ現代( 2019-10-01 22:00〜 )
要点は次のことだ。
「大規模停電のあとで、東電の電源車が出動した。周辺地域から集めたものもあって、大量に集まった。それをどこに配備するかが問題だ。インフラや病院などの重要施設に配備するように、東電の側で派遣した。その際、自治体の意見を聞いた。ところが、それがうまく行かなかった。
中原病院は、当初は非常用電源(自家発電)で最小限の電源をまかなったが、エアコンにまでは回らないので、患者に熱中症の危険が出た。そこで東電に電源車の配備を要請したが、配備されなかった。かわりに東電は、停電中の避難所に電源車を配備した。ところが避難所には、避難している人は一人もいなかった。たまに立ち寄ってスマホに充電する人がいるぐらいで、電源車は不要の長物。その間、中原病院にはとうとう電源車は来ないままだった。
どうしてこうなったかというと、当初は非常用電源(自家発電)で最小限の電源をまかなったということで、「ここは大丈夫」と県が判定したからだ。そのままほったらかしになったらしい。そもそも県にはそれを担当する人員も組織もない。担当者がいないから無為無策だった、ということらしい。県の職員は、あれやこれやと対策に追われており、もともと担当者のいない仕事をやる人はいなかった、ということだ」
以上が要旨だ。これをまとめれば、こうなる。
「大規模の自然災害のときには、対策は県の職員の手には余る。あまりにも多くの仕事がのしかかり、しかもそれは専門外で未経験のことだ。できないのが当然なのであって、だからこそできなかった」
これは制度的な問題だと言える。決して県職員や知事が怠慢だったからではない。また、政府が怠慢だったからでもない。もともと制度的に、対応するような制度になっていなかったのである。
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番組では、他の問題も示されていた。
(1) 電線にビニールシートのような飛来物が引っかかると、風の抵抗が2倍ぐらいになって、電柱は倒れやすくなる。
( ※ だから、飛来物が飛ばないように、台風の前には飛びやすいものを隠しておくといい。)
(2) 倒木が電柱や電線にぶつかると、停電の危険がある。そこで、電柱のそばの樹木をあらかじめ伐採しておくといい。これで、倒木による停電を防げる。
(3) 九州では、もともと台風が来やすいので、電柱が倒れにくくなるように工夫してある。支柱やワイヤで、電柱をまわりから支えるのだ。これで倒れにくくなる。
(4) 電線が倒木に引っかかっていると、倒木の処理には感電の危険がある。だから倒木の処理には、電力会社の職員がやる必要がある。しかしそうなると、人員不足で、倒木の処理が進まない。そこで、あらかじめ電力会社と県とが協定を結んで、県の側が自発的に倒木の処理をしてもいい、という協定を結ぶといい。和歌山県では、そうしている。
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番組では、以上の4点のような個別の工夫が紹介されていた。
しかし、私としては問題点を感じる。それは、こうだ。
「自治体の側が個別にやっているのでは、その自治体だけの個別対策になってしまって、他の自治体には広がらない。日本全体の対策にはならない。九州が何をしようが、和歌山が何をしようが、日本全体での対策にはならない。個別の自治体がやる限りは、普及しないという根源的な問題が生じる」
結局、NHK はいろいろと問題点を指摘したのだが、解決策はあまりにも中途半端であって、まともな対策とはなっていない。せいぜい「自治体はしっかりしろ」と活を入れるぐらいだ。ま、精神棒みたいなものである。まともな実効性のある解決策となっていない。
困った。どうする?
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そこで、困ったときの Openブログ。うまい案を示そう。こうだ。
「防災対策は、自治体に任せずに、防災庁に任せる」
これで解決する。前にも述べたとおり。
自治体の職員は、自らの判断であれこれと対策をする必要はない。何をなすべきかは、防災庁の職員が指示をする。その指示に従って、事務作業をするだけでいいのだ。
つまり、頭が考える仕事は、防災庁が担う。そのあとの手足の部分(つまり実務)だけを、自治体職員がやればいい。
また、職員不足になる点については、近辺の自治体から応援となる職員を派遣すればいい。その職員が、電力トリアージのような臨時で重大な仕事をすればいい。千葉県の職員は、もっと重要度の低い日常的な仕事だけをやっていればいい。(非専門家として。)
→ 防災庁を設置せよ 2: Open ブログ
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なお、防災庁の職員は、新たに人員を配備するのではなく、他の部局との掛け持ちでいい。これなら人件費が増えないので、容易に設置できる……というふうに述べたことがある。(防災庁というより防災局になりそうだが。)
→ 防災庁をどう組織するか?: Open ブログ
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ともあれ、防災庁を設置して、対策を一元的に処理することが大切だ。個別の自治体レベルで(それぞれが重複する感じで)対策を練るべきではないのだ。
なのに政府は、「自治体レベルで処理すればいい。政府がやる必要はない。防災庁などは不要だ」という方針を立てた。(官房長官の発言)
→ 防災庁を政府が否定: Open ブログ
→ (熱中症)死者2名:千葉: Open ブログ
ここにこそ、最大の問題があるとわかる。
防災庁がいまだにないことが問題なのではない。防災庁の設置を頑なに拒んでいて、何が何でも防災庁を設置させまい、としている政府の方針が問題なのだ。
そして、政府がそういう方針を取っているのは、「現状では自治体に任せることで、万全の体制ができている」と信じているからだ。
これはまあ、裸の王様である。真実を見ることができず、虚構を見ている。防災庁のない日本というのは、裸の王様も同然で、身を守る衣服を何も着ていないのに等しい。なのに、立派な衣服を着ているから大丈夫だ、と思い込んでいるのである。
これは、福島原発事故の前に、「日本の原発の安全対策は万全だ」と信じていたのと同様である。いずれも、裸の王様だ。
こういう政府の方針が、「防災庁がなくても大丈夫」「安全対策なんか何もしなくても大丈夫」という愚かな立場を取らせるのである。
( ※ お馬鹿な安倍首相なんだからそうなるさ、ということか。)
※ 以下、NHK の番組とは別の話をする。
[ 付記 ]
電源車とは別に、小型の非常用発電機というものもある。その多くは、交通信号に使われたそうだ。ただし、使われなかったものも多い。
県の災害対策本部会議の資料などによると、県は県内13の防災倉庫に発電機を計468台備えている。今回の台風通過後に貸し出したのは、市町村には鋸南(きょなん)と神崎の2町で計6台だけ。県警向けが210台で、主に信号機を動かすために使われた。残り約250台は防災倉庫に眠った状態という。
( → 非常用発電機の半数超が活用されず 千葉県、倉庫に眠る:朝日新聞 )
交通信号用には、自動車バッテリーを使えばいい、というアイデアを出したこともある。別項。
→ 停電で交差点の信号が消えた: Open ブログ
ともあれ、こういう問題が起こるので、千葉以外の都市でも「他山の石」として、いざというときの対策を練っておくべきだ。
北海道地震(苫小牧)のときには、停電した都市では交通信号が使えないので大変だ、という事例が報道された。、
→ 停電時の交通信号: Open ブログ
今回の千葉の地震でも、交通信号の問題が報道された。
→ 停電で交差点の信号が消えた: Open ブログ
東日本大震災のときには、首都圏では、計画停電の影響は少なかったし、交通信号もほとんど影響がなかったが、三陸のあたりでは、停電にともなって交通信号も復旧しない事例が多かったようだ。
問題は、次の大震災だ。南海トラフ地震のときに、関西から関東に掛けての広い地域で、停電が起こると予想される。そのとき、交通信号への対処はどうなるか? ……そこが問題だ。特に、名古屋のあたりは心配だ。
そこで、対策として、非常用発電機や、自動車のバッテリーを用意しておけばいいわけだが。さて。どうなることやら。
本来ならば、防災庁が音頭を取って、あらかじめ十分に対処しておくべきなんだが。その防災庁そのものが設置されていないので、その先の対処も進まない。
日本の危機を導く最大の眼は、安倍政権だな。
【 補説 】
まったく別のことだが、食料の話。
台風で停電になったあとで、「冷蔵庫の食料が腐ったので捨てた」という事例が大量に報告された。( twitter )
マスコミや自治体は、「腐ったものを食べて腹痛になった人がいるので、冷蔵庫のものは捨ててください」と告知している。
しかし、捨てるべきではない。かわりに、熱処理して保存するべきだ。(塩分も入れる。)
北海道民は、北海道地震のときに、「肉はバーベキューにして食べたよ。だから、そうすればいいのに」というようなことを言っている。
→ 道民「千葉県民は停電で肉焼かないんですか?」 - Togetter
しかし、焼き肉は、あまり保存が利かない。焼いたらすぐに食べるしかない。放っておけば腐る。(夏だからだ。)
正しい策は、こうだ。
「肉と野菜をまとめて、醤油などの味付けをした上で、煮込む。中華系やカレーでもいい。煮込んだあとは、鍋を水につけたりして、なるべく早く冷やす。そのあとは、液体の上部表面に食品ラップをかぶせて、空気との接触を断つ」
これでまあ、かなり長く持つはずだ。三日ぐらいたつと、表面にカビみたいなものができるかもしれないが、それを取り除けば、表面よりも内部の部分はまだ食べられる。
いずれにせよ、食べる直前に、匂いを嗅ぐ。腐敗していないことを確認したあとで、加熱して、殺菌する。
この方法なら、三日ぐらいは十分に安全圏だ。冷蔵庫の生の肉や卵やバターなどは、これで調理食品に変わる。
冷凍庫のものはどうするか? まずはスマホで冷凍庫の食品を撮影する。その後は、冷凍庫の開閉をなるべくしないでおく。このことで、冷凍庫の食品が溶けるまで、1日〜2日ぐらいは腐敗の時期を遅らせることができる。
冷蔵庫の食品ならば、停電のあとですぐに加熱調理する必要があるが、冷凍庫のものは、冷凍品が解凍するまでの時間だけ、処理を遅らせることができる。停電から1日〜2日たつと、冷凍食品が解凍されて、5度ぐらいになっているので、その時点で、加熱調理すればいい。調理の仕方は、先と同様で、煮込めばいい。
以上の方法で、5日間ぐらいは冷蔵庫・冷凍庫の食品を食べることができる。何を食べたらいいかというと、価格の高いものが優先だ。高い牛肉を優先して、安い挽肉は後回しだ。最後に挽肉が残って、腐りかけて捨てることになったとしても、それはそれで諦めが付く。
なお、バターや醤油は(ほぼ)腐らないので、それだけ別に保存しておいてもいい。あとで、ごはんに掛けて、バター醤油で食べることもできる。(即席ラーメンの方がマシだろうけど。)
なお、野菜類は、塩を振り掛けて、ポリ袋に入れておけば、漬け物になるので、かなり長い時間にわたって、保存できる。(塩は多いほど、日持ちする。そこで、塩は多めに掛けておいて、食べる半日前に塩抜きするといい。)
牛乳は、紙パックのままだと(常温で)すぐに腐るので、ペットボトルなどに移し替えて、空気に触れないようにしておけば、いくらか日持ちする。飲む直前には加熱した方がいい。
牛乳には、ヨーグルトを掛けて混ぜておくと、発酵ヨーグルト(発酵乳)になるので、日持ちがするかもしれない。だけど、腐っているのと区別がしにくいので、安全度は低めだ。お薦めはしない。
果物ジュースは、焼酎などを入れて、アルコール度を 12% ぐらいにしておけば、かなり日持ちしそうだ。
なお、食品には、隣にワサビを添えて、ラップで密閉しておけば、ワサビのツンとくる臭いが、強い抗菌力を持つので、食品の腐敗を遅らせることができる。(お寿司が安全なのも、ワサビのおかげだ、とも言える。ワサビ抜きのお寿司は、安全度が下がる。)