2019年09月27日

◆「秋ナスは嫁に食わすな」とは?

 「秋ナスは嫁に食わすな」ということわざがある。その真意としては、二つの俗説があるが、いずれも駄目だ。

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 「秋ナスは嫁に食わすな」ということわざがある。その真意としては、二つの俗説がある。
  ・ 嫁いびりである (いやがらせ)
  ・ 体を冷やさないように、という意味。(嫁を大切に)

 この二つの俗説が有名だが、いずれも矛盾にぶつかる。

 第1に、「嫁いびり」だとしたら、秋ナスに限る必要がない。嫁いびりの方法は他にもいろいろとあるのに、どうして秋ナスに限るのか? まったく理屈にならない。

 第2に、「体を冷やさないように」というのもおかしい。
  ・ 9月ごろならまだ残暑だし、冷えを心配する必要はない。
  ・ 10月だって、冷えを心配する必要はない。
  ・ 冷えを起こすのは、ナスに限らない。キウリもある。
  ・ 若い嫁より、老人の方が冷えを心配するべきだ。
  ・ どっちにしろ、冷えの効果はごく小さい。

  
 もっともらしい話だと、次のような説もある。
「秋ナスは体を冷やし生理不順や婦人病の原因となりやすいので、大切な嫁に食べさせてはいけない」という戒めなのです。
( → 「秋ナスは嫁に食わすな」に秘められた戒めとは…?! 生理痛を楽にするための養生方法

 東洋医学の見方では茄子は体を冷やす食べ物に分類され、特に女性にとって体の冷えは健康によくないため、子供を生んでほしい嫁に茄子を食べさせすぎてはいけない、という戒め。
( → 秋茄子は嫁に食わすな - ウィクショナリー日本語版

 もっともらしいが、いかにもおおげさである。たかが秋ナスを食べたぐらいで、そんなに顕著な効果があるわけがない。特別な薬効があるわけでもないのだし。(どちらかと言えば無栄養と言える。)

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 そこで、困ったときの Openブログ。この問題を解決しよう。そして、その解決の方法は、いつも同じ。「論理的に考えること」である。
 では、論理的に考えると、どうなるか? 秋ナスの特徴は、客観的には、次の二点に集約される。
  ・ 栄養価はほとんどゼロである。
  ・ 値段は(夏のときに比べて)いくぶん高くなっている。

 まとめて言えば、こうだ。
 「栄養がないのに、値段は高くなっている。つまり、コスパが悪い」

 だったら、こんなものは食べない方が利口だ。それが合理的な結論だ。
 つまり、嫁であれ誰であれ、秋ナスは食べない方が合理的なのである。そしてそれは、「体を冷やすので良くない」なんていう迷信みたいな理由によるのではなくて、単に「コスパが悪い」というだけのことなのだ。

 ──

 ここで、次の疑問が生じる。
 「秋ナスは、誰もが食べない方がいいのに、どうして嫁だけに禁じるのか?」


 そうですねえ。疑問ですねえ。ただしそれも、簡単に回答が得られる。
 嫁は、妊娠・授乳・育児のいずれかをしているので、きちんと栄養を取る必要がある。なのに、栄養のないナスなんかを食べると、それだけで腹がふくれてしまいがちなので、栄養をまともに取れない。それはまずい。
 つまり、「ナスを食うな」というのは、「栄養をきちんと取れ」という意味なのだ。ナスを食わないことが大事なのではなく、ナスのかわりのもの(栄養のあるもの)を食うべきだ、ということだ。

 ではどうして、ことさら秋ナスにこだわるのか? それは、たぶん、秋ナスがおいしいからである。というのも、(秋ナスそのものが高品質だからではなく)、秋には食欲が増すからである。
 秋ナスの品質を見ると、夏ナスより かなり品質が落ちている。サイズも小さいし、実り方も弱い。品質的にはだいぶ落ちる。なのに、秋だというだけのことで、食欲が増すので、秋ナスを食べたくなってしまうのだ。
 で、そういうときに、「秋ナスなんかを食べないで、栄養のあるものをきちんと食べなさい」とお薦めしているのが、このことわざだ。
 しかも、その言葉で嫁を大切にしているように見せかけながら、主人としては高価な秋ナスを買わずに済ませよう(お金を節約しよう)というわけだ。嫁が大事というより、自分の財布が大事なんですね。(嫁も大切だけど。)

 これがつまり、「秋ナスは嫁に食わすな」の真意だ。
 ( ※ 身も蓋もない話。)



 [ 付記1 ]
 二つの俗説を示したが、他に「秋ナスにはタネがないので、子種がなくならないことを願って」というダジャレみたいな解釈もある。
 こんなダジャレは、ナスよりも、ダジャレの方が寒いね。

( ※ ナスはタネがないと言われることもあるが、目立たないだけで、タネはある。特に熟すとタネは目立つようになる。秋ナスでは、タネがなくなるどころかタネが増えるそうだ。詳しい話は → 解説

 
 [ 付記2 ]
 「秋」という言葉について、旧暦と新暦の違いを問題視する見解もある。旧暦の方が約1カ月遅れるのだ。新暦の9月は、旧暦の8月にあたる。
 しかし、近年では温暖化にともなって、残暑がいつまでも長く続くようになった。9月なら秋かと思ったら、いつまでたっても8月のような気温が続く。
 「秋来ぬと目にはさやかに見えねども 風の音にぞおどろかれぬる」
 これは八月のことなので、「え? 八月? まだ暑いし、秋は来ないでしょ?」と思いそうだが、八月は八月でも、旧暦八月だから、新暦9月の頃合いなのだ。だから、別におかしくはないのだが、近年ではどういうわけか、いつまでも暑いんですよね。
 というわけで、旧暦と新暦の違いは、あるにはあるが、あまり大きな影響を考えなくてもいいだろう。特に、このことわざに関する限りは。

 ※ 昔は新暦の8月15日ごろから涼しくなった。今では温暖化のせいで、新暦の9月15日ごろまで暑い。特に今年は、新暦の9月27日でもまだけっこう暑い。

posted by 管理人 at 22:02 | Comment(2) | 一般(雑学)6 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
秋ナスのほうが実がしまって美味しいと言われてます
皮にポリフェノール系の成分が含まれるので皮をすてるな
主成分はほとんどの水分とカリウム
それからきゅうりと同じで、夏ナスは本当に熟したらヘチマのように大きくなって食えないので
適当な大きさのものを収穫します
Posted by 田舎の老人 at 2019年09月28日 05:17
5月に植えた家庭菜園のナスですが、最初のうちは葉も繁って、実も柔らかい大きなやつが収穫できて喜んでました!
秋ナスを期待して、真夏に切り戻した株から出てきた新梢は、勢いがなく葉も花も実も小さかった・・・
もう疲れてるのかな? おまけに、皮が固くて味もいまいち、スーパーで売ってる秋ナスは、とっても美味しいけど高価だというのは知らなかった(大昔からスーパーってあった?でも、供給の少ない高品質秋ナスを栽培するプロは居たかも・・・)
Posted by 釣りバカさん at 2019年09月28日 08:09
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