2019年09月27日

◆ 日米貿易協定が決着

 日米貿易協定が決着した。日本側の「完敗」という形。どうしてこうなった?

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 日米貿易協定が決着した。
  → 関税下げ、外食産業は期待 米産牛・豚・ワイン… 日米貿易協定合意:朝日新聞
  → 「トランプ氏の土俵で闘った」 貿易交渉、屈した日本:朝日新聞
  → 日米共同声明(全文) 日米貿易協定合意:朝日新聞
  → (社説)日米貿易合意 自由・公正に傷がつく:朝日新聞

 TPP に比べると、
  ・ 日本側は TPP と同等の譲歩。さらに輸入枠は追加。
  ・ 米国側は自動車でまったく譲歩しない。

 という形である。つまり、日本側は、「与えるだけ与えて、何も得られない」という形だ。give and take ならぬ give and give だ。両者は win-win ならぬ win-lose の形となり、日本は一方的な敗者となった。馬鹿丸出し、というふうだ。
 どうしてこうなった? 

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 日本側は、自動車業界から、「輸入規制(輸入枠や追加関税)を設けるのを止めることを最優先にしてほしい」という要望があったそうだ。で、とりあえずは輸入規制が儲けられなかったことで、「よかった。一応の成功だ」と見なしているそうだ。
 交渉関係者は振り返る。「いくつも案を練った。最終的に採用されたのは、日本が望んだベストではなかったが、『中の上』はとれた」

 昨春以降、トランプ米大統領がちらつかせてきた最大25%とされる追加関税に気をもんできた日本の自動車業界は、ひとまず胸をなで下ろす。日本自動車工業会の豊田章男会長(トヨタ自動車社長)は26日の記者会見で、「(追加関税が)回避の方向で議論が進んでいることは大変いいことだ」と語った。
( → 関税下げ、外食産業は期待 米産牛・豚・ワイン… 日米貿易協定合意:朝日新聞車への追加関税回避「大変いいこと」 豊田・自工会会長:朝日新聞

 つまり、完敗という状況を見て、「一応成功だ」というわけだ。まったく、頭がおかしいとしか言いようがない。
 どうしてこうなった? 

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 この謎は、ゲーム理論の考えを取り入れれば、簡単にわかる。つまり、日本は「ブラフに屈した」のである。
 トランプの方針は、常に決まっている。
 「最初に圧倒的に強い要求をした上で、そこから譲歩するという形で、最終的には中間点よりも自分に有利な位置で話をまとめる」

 つまり、「ブラフを出して、相手を怯えさせる」という方針だ。
 今回もそうだ。最初に「自動車の追加関税」という強手を打ち出して、日本を怯えさせた。その上で、中間点( TPP の合意点)よりも、自分に有利な位置で話をまとめた。
 これは要するに、「日本が相手のブラフに怯えて、まともな手を出せなかった」ということを意味する。つまり、交渉慣れしていないのである。外交能力がゼロだ、と言ってもいい。相手が強手を出したら、ただびくついて言うなりになるしかない。それが今回の「完敗」という結果だ。
 この結果で喜んでいる自動車業界もまた、馬鹿の見本というしかない。自分の側は、( TPP 交渉で約束して)得られるもののすべてを失った。なのに、「もっと多くを失わないで済んだ」と大喜びしている。……これほどの馬鹿は滅多にいないね。日本の産業史上でも最大クラスの馬鹿だ。

 ──

 では、どうすればよかったか? そこは、困ったときの Openブログ。正しい対策を示そう。こうだ。
 「相手がブラフを出したなら、自分からもブラフを出す。双方のブラフで相殺する」


 具体的には、こうだ。
 「米国が自動車の追加関税をブラフで示したら、日本からも農産物の追加関税をブラフで示す」

 つまり、相手が自動車の追加関税をブラフで示したら、こちらからも大豆やトウモロコシや牛肉の追加関税をブラフで示せばいいのだ。これで双方を相殺できる。かくて、相手のブラフを一蹴できる。

 目には目を。ブラフにはブラフを。……こんなことは、ゲームをやっているなら、当然のことだ。なのに、日本側には、その知恵がなかった。あまりにも素朴すぎる。カジノでポーカーでもやったら、ボロ負けするタイプだ。(こんな阿呆が日本にカジノを導入しようなんて考えているんだから、馬鹿丸出しとしか言いようがないが。)

 では、「ブラフにはブラフを」という方針を取れば済むか? いや、それでは、「対等になる」だけであって、「勝つ」ことはできない。「勝つ」には、別の方法が必要だ。
 実は、幸運なことに、今回は日本は圧倒的に有利な立場にあった。こうだ。
 「 TPP がすでに発効しているので、日本の牛肉市場では、欧州やニュージーランドが圧倒的に有利であって、米国は圧倒的に不利になっている。だから、米国としては何としても早急に貿易交渉をまとめる必要があった」

 こういう状況があった。とすれば、そういう米国の足元を見て、「交渉をなるべく遅らせる」という手を取れたのだ。
 「米国は譲歩するべきだ。米国が譲歩しない限り、交渉をまとめない。いつまでも現状維持とする」
 という方針だ。こういう方針を取ることで、日本は有利な条件を取ることができた。つまり、日本は TPP のときよりも有利な条件で話をまとめることができたのだ。そういう圧倒的に有利な状況にあったのだ。

 にもかかわらず、政府はその状況を利用できなかった。完勝できる状況にあったにもかかわらず、完敗した。
 これはひとえに、「日本には交渉力がまったくなかった」ということだ。「ゲーム理論のイロハも知らなかった」ということだ。日本の担当者は、テレビゲームは上手でも、ポーカーのような対人ゲームはすごく苦手なのだろう。だから、こういう交渉を得意として「ディール」なんて言葉を口に出すトランプ大統領に、完敗してしまったわけだ。「相手の手の上で踊らされる」という形で。
 トランプ大統領は、こう述べたこともあった。
 「私たちはとてもとても難しいポーカーゲームをやっている。手の内を見せたくはない」
( → トランプ大統領、「北朝鮮との対話で問題が解決するとは思わない」 : 東亜日報

 政治をポーカーゲームと同様のものだと見なしているわけだ。トランプ大統領だけに、トランプは得意なのだろう。
 で、そのことをまったく理解できない日本は、素人のゲームさばきをして、完敗してしまったわけだ。素人はポーカーゲームをやるべきじゃないんだが、そんなことも理解できないままやるという馬鹿さ加減だ。かくて、やってみたら、ブラフに屈して、大敗北。

 馬鹿は死ななきゃ治らない、というようなものかな。



 [ 付記 ]
 日本があまりにも素人っぽい判断をしたことに、米国の外交関係者も呆れているそうだ。
 ライトハイザー通商代表は交渉の最終合意後、記者団に「我々は農業の圧倒的大部分を手に入れた。(米側の)乗用車や自動車部品は含めなかった。我々が(関税削減などの譲歩で)支払った分は、日本よりもずっと少ない」と胸を張った。
 米通商代表部の元高官も朝日新聞の取材に「日本と交渉してきた私のような人間は、日本がこのレベルの譲歩をしたことを非常に驚いている。日本はトランプ氏の土俵の上で闘ってしまったからだ」と話した。
( → 「トランプ・リスク」残る 追加関税の回避、明記されず 貿易交渉:朝日新聞

 相手が呆れ返るほどにも、日本のボロ負けはひどかったわけだ。
 野球で言えば、戦力的には接戦が予想されたのに、日本がやたらと怯えて、エラーが続出した、という感じ。投手は自責点ゼロだが、野手のエラーで失点が 15点、という感じ。自滅。ひどいものだ。

( ※ 安倍首相のせいか、というと、そうでもないようだ。自動車業界を含めて、日本人全体が、ポーカーなどのゲーム能力をもたなかった、ということかな。テレビゲームばっかりやっているせいかもね。)
posted by 管理人 at 19:00| Comment(0) | 一般(雑学)6 | 更新情報をチェックする
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