2019年10月04日

◆ 本四架橋を一つに絞るなら

 本四架橋は三つもあって無駄だが、仮に一つに絞るなら、どれがよかったか?

 ──

 本四架橋(本州四国連絡橋)について、
 「三つのうちのどれが良かったか?」
 という話は、当時はさんざんなされたようだ。今となっては手遅れ(後の祭り)だが、現時点であらためて評価し直そう。
 というのは、「どれもが有益だ」という当時の予測はまったくの当てはずれで、「どれもが大失敗だった」ということが今では判明しているからだ。これを前提に、あらためて評価し直そう。


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( ※ なんで今になってこんな話題を取るかというと、「四国はダム不足だ」という話があって、「それは四国がダムに賭ける金を削って、本四架橋を三つも作ったからだ」という話に転じたからである。そのついでだ。)


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 まず、本四架橋が大失敗だったことは、次の朝日・社説でも論じられている。
  → (社説)本四架橋30年 負担の大きさ忘れるな:朝日新聞

 また、本サイトでも何度か論じた。

 → 本四架橋で過疎化: Open ブログ
 ※ 本四架橋で本州の人を呼べるかと思いきや、逆に四国民が関西に流出してしまった。過疎化が進むばかり。とんだ逆効果だ。(ストロー効果)

 → JR四国はすべて赤字: Open ブログ
 ※ これも似た趣旨。過疎化が進んだせいで、乗客が少なくて、JR四国は大赤字。

 → JR四国は全面廃線せよ: Open ブログ
 ※ これも似た趣旨。JR四国は大赤字なのだから、いっそのこと大幅に路線廃止した方がいい、という趣旨。(一部は残してもいいが。)

 以上から、三つも同時に建設したのは大失敗だった、とわかる。だから、本四架橋は三つもいらないのだが、かといって、一つもなしというのはかわいそうだ。
 では、どれか一つを残すとしたら、どれを残すべきか? 

 ──

 いきなり結論を言えば、こうなる。
 「明石・鳴門ルート(淡路島経由)に絞るべきだ。鉄道もまた、このルートに絞る」


 このルートはもともと最有力であったが、私の考える理由はこうだ。
 「このルートとは関西に直結するので、関西から放射状に延びるルートとなる。一方、児島・坂出ルート(瀬戸大橋)や、尾道・今治ルート(島々の連結)は、関西を中心と見たとき、環状ルートとなる」
 「一般に、放射状のルートは需要が大きいが、環状のルートは需要が小さい。ゆえに、放射状のルートである明石・鳴門ルート(淡路島経由)がよろしく、環状のルートである他の二つはよろしくない」


 わかりやすく関東の例で言うと、山手線から放射状に延びる鉄道はどれも大混雑だ。その一方、環状に結ぶ鉄道は閑散としている。たとえば、横浜線や、南武線がそうだ。(都心部に当たる、川崎や横浜の近辺だけを除くと、かなり閑散としている。)
 また、東京湾横断道路(アクアライン)も、環状線であるがゆえに、需要は少ない。当初の見込みを大幅に下回る需要しかない。

 以上のように「放射状の路線は混雑するが、環状の路線は閑散とする」という事実がある。つまり、人々は都心部と郊外とを往復するのであって、郊外同士で行き来することは少ないのだ。
 それゆえ、放射状ルートである明石・鳴門ルート(淡路島経由)だけが唯一の候補として選ばれる。

 ──

 なお、この選択に対しては、他の2ルートが黙っていないだろう。こんな反論もあるかもしれない。
 「広島から愛媛に行くとき、橋があればすぐだが、淡路島経由ではとんでもない遠回りになる。そんなことは許せん!」

 それも、ごもっとも。そこで、次のような補償策を取る。
  ・ 他の2ルートでは、フェリーを用意する。
   その料金は、補助金を投入して、格安料金とする。
   (時間はかかるが、料金は格安となる。)
  ・ 高松・松山間の鉄道料金を、大幅に下げる。(補助金で)
  ・ 徳島県内の鉄道料金を、大幅に上げる。
  ・ 徳島県については、住民税を大幅にアップする。


 つまり、金で差を付ける。徳島県は(交通面では)一番発展するが、その分、住民税や鉄道料金で高額の負担を強いられる。(それを条件に淡路島ルートとする。)

 なお、徳島県が「そんなのはイヤだ。金を払いたくない」と言ったら、淡路島ルートは取りやめだ。他の二つのなかから選ぶことになる。その二つのうち、「うちの県では住民税の大幅アップを受け入れます」と応じた方のルートに決めればいい。二つのルートが、どちらも応じなかったら、どのルートも建設しなければいい。
 ただ、現実には、どのルートでも「住民税の大幅アップ」を受け入れる可能性が高い。その場合には、淡路島のルートに決める。
 そして、その住民税をアップした分で、他の二つのルートでは「フェリー料金を大幅に下げる」「鉄道料金も大幅に下げる」という恩恵を受けるのである。
 また、二つのルートの方は、別に損するわけじゃない。徳島・淡路島の経由であろうと、関西とはほぼ最短距離で結ばれるのだから、本四架橋の恩恵は十分に得られるのだ。

 なるほど、(当初望んだ)対岸との最短ルートはできない。しかし、対岸との最短ルートは、環状ルートだから、もともとたいして需要は見込めないのである。
 たとえば、今治と尾道の交流なんて、ごく小規模なものだろう。それよりは、今治と広島や岡山をフェリーで結んで、その料金を半額にしてもらう方が、よほどありがたい。
 また、坂出と岡山の交流だって、そこそこ小規模なものだろう。それよりは、淡路島経由で関西と直接結ぶ方が、よほど交流の効果は大きい。現状のように瀬戸大橋線なんかに依存するよりは、淡路島経由の鉄道を建設して、大阪と松山を直通で結ぶ特急(または新幹線)を走らせる方がよほど効果的だ。その途中駅として高松があれば、その方が香川県にとってはよほどありがたかったはずだ。

 なお、仮に淡路島ルートで道路と鉄道がともに建設されたなら、最も利益を得るのは淡路島であったはずだ。この島は神戸の至近距離にあり、交通の便もよいということで、大いに発展しただろう。岡山や姫路よりも発展して、神戸に次ぐぐらいの大繁栄をするだろう。そして、その影響(波及)を受ける形で、徳島や香川も発展していくのである。こんな感じで。

   香川 < 徳島 < 淡路島 < 神戸 < 大阪

 右から左へ、という順で、どんどん繁栄が波及していく。そういう形で四国は発展したはずだ。(新幹線も通るかもしれない。)
 ただし現実には、そうならなかった。淡路島には鉄道がまったくないので、JR はここに鉄道を建設する気はまったくなかった。





 JR はそのかわりに、瀬戸大橋の路線を取った。こちらのルートならば、新設する線路の距離は小さいので、建設コストが少ないと見込まれたからだ。
 しかし現実には、瀬戸大橋に 4,900億円という超巨額の金がかかった。(鉄道部分のみで。自動車部分は別途。)……その金は、JR にはまったく負担できない。だから全費用を国に丸抱えしてもらった。JR の負担は、鉄道の路線の維持費だけであって、瀬戸大橋の負担はゼロ同然となった。……このことからしても、この鉄道路線が投資としては完全な失敗であったことがわかる。
 それだけではない。瀬戸大橋は、鉄橋なので、老朽化が早い。今後、維持・更新の費用が大幅にかかる。そのせいで赤字転落の懸念がある。その場合には、鉄道を維持できなくなって、瀬戸大橋線を路線廃止する必要があるかもしれない。あまりにも無理がたたっているのである。(出典は下記。)
  → JR四国の全路線収支と営業係数。黒字は瀬戸大橋線のみ | タビリス

 ──

 結論。

 本四架橋は、明石・鳴門ルート(淡路島経由)だけに絞るべきだった。鉄道もこのルートに建設するべきだった。香川と愛媛は、このルートで関西と鉄道で直結することで満足するべきだった。対岸との環状ルートは、もともと需要が少ないので、フェリーで我慢するべきだった。
 徳島県民は、自分たちの望みが叶うので、住民税の大幅アップを受け入れるべきだった。その金をもらって、香川と愛媛は、フェリーや鉄道の料金を下げてもらうことで満足するべきだった。
 以上のようにすれば、どの県民であっても利益と不利益がともに生じるが、いずれも差し引きでは利益の方が上回っていたはずだ。「損して得取れ」の形で、全員が(我欲を抑えることで)大幅に利益を得たはずだった。
 現実には、そうならなかった。全員が我欲を発揮して、全員が本四架橋を得た。そのせいで、全員が貧しくなった。しかも、全員がダム不足で渇水に悩むことになった。
 各県が自分の利益の最大化ばかりをめざしたせいで、全体の枠が小さくなった(パイが小さくなった)ので、結果的には、全員が損する形となった。
 これは経済学でいう《 合成の誤謬 》に相当する。



 [ 付記 ]
 瀬戸大橋はやたらと高コストだ。このことを説明する。
 この路線は、営業係数を見ると黒字路線だ。ただし黒字だといっても、橋の建設費(鉄道部の建設費用は4,900億円)は自分で出していない。JR が負担したのは、鉄道の維持にかかる費用だけだ。他の大部分は、国(一般会計)と、国鉄清算事業団が負担した。
  → 瀬戸大橋 - Wikipedia
  → 本四備讃線 - Wikipedia

 ここで、国鉄清算事業団というのは、要するに、JR東海の新幹線の利益を吸い上げる団体だ。つまり、JR東海の新幹線が莫大な黒字を出すので、その黒字を吸い上げて、本四架橋の償還に充てているわけだ。
( ※ これはいわば、他人の財布に手を突っ込んで、金を盗むのも同然だ。「地方民は都会民の金を盗んでもいい」という泥棒の論理。ま、合法的な泥棒だ。その泥棒の親玉が自民党だ。)
posted by 管理人 at 22:50| Comment(6) | 自動車・交通 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
>JR はそのかわりに、瀬戸大橋の路線を取った
→瀬戸大橋線が開通したのは、JRになる前JRの旧国鉄が、そのルートにした。なぜなら、並行するものとして、宇高連絡船(宇野ー高松)があり、その替わりという意味を持つ。その上当時の国鉄は、四国側の拠点は高松だからだ。

瀬戸大橋は、一応将来のことも考え、新幹線もとおれる規格にした。

いまとなれば、淡路経由が良いと思うが、そうならない現実があった。

ところで、3線も多い気がするが、豊後水道経由や
紀淡経路も未だに諦めていないと言うのがなんとも言えない。
Posted by 通りすがり at 2019年10月05日 16:43
 冒頭に書いてある通り、「当時はどれを選ぶべきだったか」ではなくて、「今の時点で評価すると、どれがベストか?」という、後出しジャンケンの話です。
Posted by 管理人 at 2019年10月05日 17:01
 宇高連絡船(宇野ー高松)があるからといって、淡路島ルートを取らない理由にはなりません。淡路島ルートを取ったあとで、宇高連絡船を維持すればいいだけです。
 その当時の拠点がどこであるかも、関係ないです。拠点なんか、いくらでも移していい。ただの国鉄社内の都合でしかない。
Posted by 管理人 at 2019年10月05日 17:10
 新幹線は、淡路島ルートのみが有効です。それならば四国の全人口が利用できるからです。(路線は徳島から四国西部までつながります。)

 一方、瀬戸大橋経由だと、四国の西部の人は利用できますが、四国の東部の人は利用しません。たとえば、徳島から瀬戸大橋を使うと、すごく迂回するので、金と時間の無駄遣い。それだったら、徳島から高速バスで淡路島ルートを取る方がいい。実際、今はこのルートの高速バスが主流です。客が多くて、ドル箱になっているそうだ。
Posted by 管理人 at 2019年10月05日 17:47
関係は薄いですが管理人様に強烈なホンコンマカオ架橋についても感想をいただきたいですね。
あれだけの力技をやってのける万里の長城の国の施政についても。。。
Posted by 確かに明石大橋にJRは欲しかった at 2019年10月05日 20:41
もともと、大鳴門橋は新幹線を通せる構造にしていましたが、明石海峡大橋が道路専用となったため、この設備が無駄となってしまいましたね。
Posted by 港北 at 2019年10月06日 22:04
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