住宅金融公庫のフラット35を利用した不正が話題になっている。これは詐欺だ。
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あちこちで報道されているが、要旨は次の通り。
・ 中古マンションを、20〜30代の若者に販売する。
・ その費用を、フラット35から借りる。
・ 借りるときの条件は、自宅使用であることだ。
・ 実際は自宅使用でないのに、自宅使用だと申告。(不正)
・ 現実には、賃貸に回す。
・ 賃貸の家賃は保証される。(マンション販売業者から)
・ マンションの販売価格は 1000万円 (モデルケース)
・ マンションのリフォーム代が別途 1000万円。
・ リフォーム代は、別の銀行から融資を受ける。
・ 1年間は、契約通り、家賃を受け取れる。
・ 1年後に、家賃の受け取りが停止となる。
・ 業者を捜すと、すでに倒産している。
・ リフォームの状況を見ると、何もされていない。
・ リフォーム代は詐欺で取られたと気づく。
・ 借りた金を返せなくなり、自己破産する。
・ マンションの本来の価値は 600万円しかない。競売へ。
ここでは、複数の詐欺が同時に発生している。
・ マンションを本来価格よりも高値で売る。(差額が損)
・ リフォームをしないで金だけ取られる。(丸損)
どうしてこういう馬鹿なことが起こるかというと、自分では居住していないせいで、マンションの現況を理解できないからだ。
また、自分の足で調べることができないように、マンション業者は初めから遠隔地の客に販売する。たとえば、埼玉のマンションを、静岡の客に販売する。静岡の客は、いちいち埼玉まで出向いて調べないので、リフォームがなされていないということに気づかない。
また、「自宅向けの融資を、自宅向けだと不正申告して、賃貸用に使った」という後ろめたさもある。このせいで、だまされたと感じても、なかなか警察に届け出ようとしない。(仮に届け出れば、その時点で、自己破産になると判明する。人生、オジャンだ。)
こうして被害者が愚図愚図している間に、業者は荒稼ぎをして、会社をたたんで、トンズラする。
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この問題の核心は、どこにあるか? 次のことだ。
・ 賃貸用を自宅用だと不正申告したこと。
・ マンション業者が異常な高値で販売すること。
・ リフォーム業者が詐欺をすること。
・ 「家賃保証」という嘘に引っかかること。
(レオパレス21 の場合と同様だ。)
明らかにひどい嘘の詐欺なんだが、被害者はあっさり引っかかってだまされてしまう。その理由はいつも同じ。
「楽をして金儲けをしよう、と思っている。そのせいで、『楽をして金儲けができますよ』という嘘に引っかかる」
詐欺というのは、毎度毎度、そういうものだ。「儲かりますよ。お金を出してください」というと、欲張りな人は、「楽をしてお金が儲かるのか。うまい話だ」と思って、あっさり金を出す。
しかも今回は、被害者自身に不正をさせることで、後ろめたさを負わせて、発覚されにくくする。
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では、どうすればいいか?
根源的には、次のことが望ましい。
「返済できなければ、マンションを売却して、それで埋め合わせるのが原則だ。ところが現実には、融資額に比べて物件の価値が低すぎるので、埋め合わせができない。これは、マンションの販売価格が、最初から異常に高すぎたせいだ。ならば、融資の段階で、物件が異常に高すぎないか、チェックすればいい」
このことは、朝日の記事でも指摘されている。
ただし、そうしようとしても、実際にはできないそうだ。なぜなら、手間暇がかかりすぎて、人手をかけられないからだ。
→ (時時刻刻)つけ込む業者、審査に限界 フラット35:朝日新聞
では、どうすればいい? 私が提案することは、こうだ。
「フラット35の対象となるマンションは、新規マンションだけに限定して、中古マンションは除外する」
そもそも、中古マンションは、物件が1つずつ違うので、審査がものすごく面倒臭い。現物を見なくてはわからないこともある。また、取扱業者も零細業者が多くて、信用がない。いつ倒産するかもわかったもんじゃない。
一方、新規マンションなら、大量の物件が同一条件で一挙に提供されるから、審査は簡単だ。業者も大手だから、信用ができる。そもそも、市場で評価されるから、最初からまともな物件ばかりが出回っている。詐欺物件なんて、あるわけがない。(よほどの零細マンションならともかく。)
というわけで、対象を新規マンションに限定すれば、問題は起こらないのだ。
そもそも、フラット35は、35年間の超長期ローンなのだから、中古を対象とする方がおかしい。(中古は残存価値の期間が 35年に満たないことが多い。)
というわけで、次のようにすることが望ましい。
・ 住宅金融公庫の融資は、新規マンションに限定する。
・ 中古のマンションは、民間金融機関に任せる。
※ なお、戸建ては別だ。土地の価値なら、相場がわかるので、簡単に審査できる。だから、土地への融資は、住宅金融公庫でもできる。今回の問題は、あくまで中古マンションの場合に限定される。
2019年08月31日
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