2019年08月22日

◆ 象牙市場を閉鎖するべきか?

 象牙の密漁が止まらないので、市場取引を全面禁止するべきだ、という意見がある。妥当か?

 ──

 象牙の密漁が止まらないので、市場取引を規制する、という方針はすでにあった。しかし、それでも密漁が止まらないので、いっそ市場取引を全面禁止するべきだ、という意見が強まった。ただし、激変緩和措置らしく、当面は折衷的な案で、「強い規制」にとどめている。
 絶滅のおそれのある野生動植物の国際取引を規制するワシントン条約の締約国会議で、アフリカゾウの象牙取引をめぐる議論が 21日、あった。深刻な密猟被害を訴えるアフリカの国々が各国国内市場の完全閉鎖を提案。米国は「国内市場は違法取引に関与していない」と主張する日本などの国に対して、より強い説明責任を課す修正案を出し、こちらが委員会で合意された。日本は反対しなかった。
( → 象牙取引、日本に厳しい目線 迫られる市場の完全閉鎖:朝日新聞

 これまでの賛否両論は、次の二つだ。
  ・ 密漁がひどすぎるので、規制を大幅に強化するべきだ。
  ・ 国内取引で許容されるのは、昔からあったものだけだ。
   新規の輸入品はないから、市場は密漁に関係しない。


 後者は、もっともらしい理屈だが、実は尻抜けであることが記事に記されている。
 6月までは「○△さんが申請する象牙2本を、85年ごろ見ました」といった第三者の証言を添えて申請すればよかった。規制が緩いといった批判を背景に、7月から要件が厳格化され、輸出入の書類などがない場合は放射性炭素年代測定を行い、第三者の証言が正しいか自己負担で証明が必要になった。環境省は17年から厳格化直前まで登録キャンペーンを展開し、昨年の登録は2616本。今年7月以降はわずか3本だ。 

 嘘の証言をする人を仕立て上げるだけで、いくらでも密輸入のやり放題。それを規制したら、とたんに登録はゼロ同然となった。以前の登録がいかに尻抜けであったか、歴然とするね。
 要するにこれまでは、「きちんと規制しています」と言いながら、実際には大量の密輸入がなされていた、ということだ。

 象牙加工業者は、こう語る。
 長い象牙は登録されたものを使う。
 「不正な素材など使うはずがない。『悪い商売』と決めつけず、事実に即した議論をしてほしい」

 彼らは「登録されたものだけを使う」ということで、自分が善意であることを主唱する。なるほど、彼らは善意であろう。しかしその「登録されたもの」というのが、実は虚偽登録されたものであって、実際は密輸入品だったのだ。つまり、彼らは善意ではあっても、だまされたのだ。そして、だまされることで、象牙密猟に関与していることになる。(密漁をする業者に金を払うことで。)

 ──

 ここまで見ると、問題の本質がわかる。こうだ。
 「市場取引それ自体が悪いのではない。虚偽の登録がまかり通っていることが問題だ。そして、規制の強化によって、虚偽の登録がなくなれば、問題はほぼ解決する」


 さらには、次のように言える。
 「密輸入がなくなれば、もともと新たに登録されるような象牙はなくなって当然だ。登録制度が始まった当初ならば、登録漏れもあっただろうが、長い年月にわたって登録制度が続けば、もはや新規に登録する象牙が出てくるはずがない。ゆえに、象牙の新規登録はやめるべきだ」

 ここから、次のように結論できる。
 「新規に登録する分についてのみ、登録停止という形で、禁止すればいい。一方、過去において登録された分については、市場取引を認めてもいい」


 この場合、過去の登録分だけが残されているから、象牙を使用するにつれて、残りの在庫はどんどん減っていく。何年かたてば、激減するだろう。将来的には、市場は自動的に消滅するだろう。

 というわけで、次の結論を得る。
 「象牙の新規登録をやめるべきだ。一方、過去に登録された象牙については、市場取引をしてもいい。これによって密輸入はなくなり、また、市場取引は段階的に縮小していくことになる」


( ※ 市場を即時閉鎖する必要はない、ということ。ただし、現状の強化された規制が続くことが前提。)
posted by 管理人 at 20:00| Comment(0) | エネルギー・環境2 | 更新情報をチェックする
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