2019年08月21日

◆「いずも」空母化の記事

 護衛艦「いずも」空母化についての記事があったので、考察する。

 ──

 これは朝日新聞の記事。
  → いずも空母化、任務に影響は 防空強化「他に選択肢も」:朝日新聞

 なかなか良い記事なので、紹介がてら、考察する。
 記事の要旨は下記。
  ・ 広大な太平洋の防空能力の向上とパイロットの安全確保が目的。
  ・ 空母だけあっても、早期警戒機などの防衛がないと無意味。
  ・ 対潜哨戒機能が減って、逆効果。


 以下、詳しく論じよう。

 ──

 記事にはこうある。
 「いずも」型護衛艦の空母化について、日本政府は、広大な太平洋の防空能力の向上とパイロットの安全確保を理由に挙げる。
 念頭にあるのは、中国とロシアだ。特に中国は2017年以降、西太平洋への飛行を急増させ、同年8月には、紀伊半島の沖まで爆撃機が飛行した。この年、沖縄本島と宮古島の間を中国軍機が飛行したのは計18回にのぼった。
 防衛省によると、航空自衛隊の戦闘機を運用するために必要な2400メートル以上の滑走路がある飛行場は全国20カ所あるが、太平洋上には硫黄島(東京都)しかなく、「極めて脆弱(ぜいじゃく)な状況で、広大な空域で任務にあたるパイロットの安全確保を図ることも困難」(安倍晋三首相)。このため、「いずも」型を空母化し、洋上で戦闘機が発着艦できるようにする必要がある、というのが政府の説明だ。

 その目的ならば硫黄島の充実の方が有効だ、という反論が記事にある。まことにごもっとも。私もそう思ったので、そう言おうかと思ったら、すでに記事に書いてあるのでした。

 さらに言おう。
 そもそも、中国の航空機が硫黄島の方からやってくるはずがない。そんなに遠回りをするほどの航続距離がないからだ。中国本土から、硫黄島の当たりを経由して、日本本土まで来て、さらに帰還するとしたら、航続距離は 4000km にもなる。空荷の航続距離でさえこれだけの航続距離がある飛行機は珍しいし、まして、爆弾やミサイルを搭載した積載状態ではこんなに長距離を飛べる飛行機は少ない。爆撃機単独ならば何とかなりそうだが、いっしょに同行する戦闘機がなければ、爆撃機は飛んで火に入る夏の虫となって、みんな撃墜されてしまう。(身の動きが悪いからだ。)
 ちなみに、F35A の航続距離は 2200km で、F35B の航続距離は 1667km だ。戦闘行動半径はその半分程度。ならば中国軍機が 4000km の距離を超えて、太平洋側からやって来ることなど、ありえない。ありもしない怪物を信じて怯えるのでは、とんだドン・キホーテだ。バカげている。

 なお、中国の飛行機が、中国本土から来るのではなく、(太平洋上の)中国空母からやって来る可能性もある。しかし、その場合に必要なのは、次の二点だ。
  ・ 早期警戒機
  ・ 潜水艦

 特に潜水艦は有効で、こちらの潜水艦がある限りは、中国は空母を近づけることができない。(攻撃の意思をもって近づいたら、潜水艦に撃沈されてしまう。)
 というわけで、中国の空母の心配をする必要もないのだ。(近づけないので。)
 そもそも、中国が空母から戦闘爆撃機を発進させたら、米国の空母から攻撃機が中国の空母に向かうので、中国の空母はあっという間に撃沈されてしまう。だから、中国が空母を日本に向けるはずがないのだ。(やれば、空母は飛んで火に入る夏の虫。)

 軍事的に言って、中国がわざわざ遠回りをして太平洋から攻撃してくるはずがない。あまりにもバカげている。そんなバカげたことを想定しているとしたら、日本の自衛隊の作戦本部は、どうしようもないアホぞろいだというしかないね。
 ありもしない太平洋方面の攻撃に対処するあまり、肝心の主力攻撃への対策が手抜きされてしまうからだ。これじゃ、桶狭間の戦いで信長に負けた今川義元だ。「頭隠して尻隠さず」どころか「尻隠して頭隠さず」という感じで、首をちょん切られてしまう感じだ。間抜けぶりにもほどがある。

 では、どうすればいいか? 空母を琉球諸島の方面に回せばいいか? いや、それもダメだ。それも「尻隠して頭隠さず」という感じで、首をちょん切られてしまう感じだ。

 正しくは、肝心な部分を守ることだ。つまり、こうだ。
 「琉球諸島の空港と、本土の空港に、F35A という最高性能の戦闘機を配備する。護衛艦には、対潜哨戒ヘリを搭載して、敵の潜水艦を徹底的に排除する」

 これならば、本土への防衛力は最高度に高まる。

 一方、ダメなのは、こうだ。
 「琉球諸島周辺や硫黄島周辺に、空母を派遣する。搭載するのは、F35B という1ランク落ちた戦闘機」

 これだと、空母はあっても、(ヘリ空母のいずもがなくなったので)対潜哨戒機がない。だから、敵の潜水艦が来たら、空母(いずも)はあっさり撃沈される。F35B は、空母といっしょに、海の藻屑となる。日本の防空能力が一挙に低下するので、その段階でようやく中国の空母がえっちらこっちらと日本の本土に近づいて、もともと数の少ない日本の防空体制を壊滅させる。日本は対抗したくても、F35A はもともと数が足りないし、F35B は空母といっしょに海の藻屑となったし、F4 は退役したし、F15 と F2 は老朽化して稼働率も低いし、どうにも対抗できない。そこへ、圧倒的に数の多い中国のステルス戦闘爆撃機が押し寄せて、物量作戦による数の優位で、日本の各都市を爆撃する。そのときの言い分。
 「しめしめ。日本の本土を焦土にすることができた。これというのも、日本が本土防衛をないがしろにして、空母ばかりを優先したおかげだ。尻ばかりを優先して、頭をないがしろにしたおかげだ。日本がヘリ空母の空母化という自殺行為をしたおかげで、あっさりと日本を焦土とすることができた。最大の功労者は、日本の自衛隊だな」
 「しかし、うまく作戦は成功した。これというのも、日本の防衛省内に工作員を送り込んで、いずもの空母化を推進した成果だ。日本人は軍事音痴だから、空母化を推進すれば、それで強くなると思いがちだ。工作の作戦は大成功!」

 ──

 結論。

 根源的には、「空母は、攻撃用の兵器であって、防衛用の兵器ではない」と言える。
 なのに、最強の防衛兵器(ヘリ空母)を削減して、攻撃用の空母にするなんて、愚の骨頂と言える。
 どうしても攻撃用の兵器がほしいのであれば、最強の防衛兵器(ヘリ空母)を削減せずに、攻撃用の兵器を追加するべきだ。
 また、それにともなって、日本の軍隊の目的を「専守防衛」から、「防衛と攻撃の双方」に変更するべきだ。もちろん、憲法も改正するべきだ。
 さらには、軍事費を倍増する必要があるので、消費税を大幅にアップするべきだ。当面、攻撃用の兵器を大幅に購入するために、消費税を 15% に上げるべきだろう。
( ※ 増税にともなって日本の経済規模が縮小するので、その分を含めて、大幅に増税して、日本を軍事国家にするべきだ。)

 ま、そこまで計画を立てて、空母を導入するというのなら、まだわかる。しかし、そこまで計画を立てずに、単に「空母を導入すれば、日本は強くなる」と思い込むとしたら、それは、中国の工作員の狙い通りで、日本の防衛力を弱体化する道だ、というしかない。

 《 加筆 》

 「防衛用の空母」なんてことを言っている人もいる。( JSF
 しかし、防衛用であれば、空母なんかよりは、不沈空母の方がずっと有効だ。つまり、硫黄島や、琉球諸島の空港だ。これらの空港は、不沈空母として、圧倒的に高性能である。(どれほど魚雷を受けても沈没しないからだ。)
 日本には多くの離島がある。これらを不沈空母として利用するのが最も賢明なのだ。なのに、「防衛用の空母を」なんて唱えるのは、黄金を捨てて黄銅を得るようなものだ。バカげている。



 [ 付記 ]
 いかにもバカげたことのようであるが、たった一つ、論理が通る解釈もある。こうだ。
 「いずもを空母化するが、同時に、いずもを護衛するヘリ空母も帯同させる。同時に、対潜哨戒機も行動させて、艦隊としての行動を取らせる。こうして強力な艦隊を構成する」

 これならば筋道が立つ。ただし、その用途が目的だ。この艦隊の用途は何か? 
 日本近辺を守るのであれば、この艦隊は矛盾する。なぜなら、日本近辺を守るのであれば、航空機は本土の空港に置く方が有利だからだ。(戦闘機も F35A を使える。)
 上の方針が有利なのはただ一つ。次の場合だ。
 「艦隊を日本国外に派遣して、海外での軍事活動に活動させるため」
 たとえば、中東領域での米軍の活動に参加して、米軍の艦隊を守る。
 このような目的のためであれば、いずもの空母化は非常に合理的な方針だと言える。

 しかも、次の記事もある。
  → 護衛艦「いずも」、最初の利用は米軍機 日本側が伝える:朝日新聞
 事実上の空母に改修される海上自衛隊最大の「いずも」型護衛艦をめぐり、日本側が今年3月、米軍首脳に対し、米軍機が先行利用する見通しを伝えていたことがわかった。航空自衛隊への戦闘機F35Bの配備に先立って空母化を進め、米軍との連携を強化する方針を示した形だ。

 米軍の先行利用と言っているが、先行利用どころか、そもそも「いずも」というのは、米軍に奉仕するために空母化されるのだ。F35B を搭載するかどうかに関係なく、いずもそのものが全体として米軍に奉仕するためにあるのだ。(そうしてこそ、空母化の意味がある。それ以外には、空母化の意味はない。)

 つまり、いずも空母化の目的は、「日本の本土の防衛能力を犠牲にして、米軍の能力に奉仕する」ということなのだ。端的に言えば、「売国」なのである。日本人の生命を犠牲にして、本土防衛を犠牲にして、ひたすら米国のために奉仕する。……それが、いずも空母化の意味なのである。

 で、そういうことであれば、中国にとって何も損することはない。むしろ、日本を侵略するためには、中国にとって好都合となる。だから中国としては、たとえ工作員を派遣してでも、何としても「いずも空母化」を推進したいのである。そして、それが実現した暁には、疎かになった本土防衛力の隙を突いて、いつでも日本を焦土にすることができるようになるのだ。

 ※ その間、いずもは中東で米軍のために働いている。



 【 追記 】
 新たな記事。
 米海兵隊トップのバーガー総司令官は21日、東京都内で記者会見し、事実上空母に改修される海上自衛隊の「いずも」型護衛艦に関し、米軍戦闘機 F35B の同艦での運用に強い期待感を示した。
( → 「いずも」の活用期待 中国に対抗強調 米海兵隊トップ:朝日新聞

 いずもの空母化に米海兵隊・総司令官は大歓迎、というわけだ。これで本項に示したことが裏付けられた、とも言える。つまり、いずもの空母化は、日本よりも米軍に奉仕するためにあるのだ。

posted by 管理人 at 21:00| Comment(1) |  戦争・軍備 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 補足情報。
 朝日新聞 2019年9月4日 の記事。以下、一部抜粋。

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  ある海自幹部は「ヘリと固定翼は全く違う。担い手をどう育てるのか見当がつかない」。別の幹部は「戦闘機に労力を割く分、哨戒ヘリの練度が落ちて対潜水艦の能力が損なわれ、中途半端になる」と懸念する。

  https://www.asahi.com/articles/DA3S14165232.html

 ──

 感想:
 パイロットは海自で独自養成するようだが、海自にはその養成能力がない。とすれば、空自で養成するべきだが、それだと「空自で運用も」となりがちだ。まずい。
 やはり F35A型だけを陸上基地で空自で運用するのがベストだろう。海自独自の F35B は不適だ。
Posted by 管理人 at 2019年10月08日 20:10
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