熊が住宅地に出没したので、射殺された。これに対して、「餌付けすべし」という案もあるが。
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熊が住宅地に出没したので、射殺された。
→ 住宅街に出没繰り返すヒグマ射殺 札幌市、猟友会に依頼:朝日新聞
こうなったのは、熊が住宅地に出没して、危険だったからだ。上では「当初は人を避けていたが、最近は車が通っても逃げずに居座るようになっていた」と記されているが、次の記事もある。
→ 札幌住宅地にヒグマ、8日連続で出没 市が捕獲へ:朝日新聞
こういうふうに熊を射殺するのは、いかにもかわいそうだ。また、熊は絶滅の危機がいくらかあるとも言われている。無闇に殺すべきだとは言えない。
そこで、「熊を餌付けしよう」という発想が生じる。
ただし、通常の餌付けはまずい。
・ 人間の食べ物を与える
・ 人間の領域や人間そのものに近づく
ということに慣れさせてしまうと、餌を求めて、人間のいる領域に出没するようになり、人間が危険にさらされるからだ。
このことはしばしば指摘されている。下記。
→ ヒグマに餌をあげないで!違反者は氏名公表の罰則へ
→ 観光客が与えた1本のソーセージで悲しい最後となった熊の悲劇
ならば、通常の餌付けではなく、ドングリを人里に近い山中に置けばいい。それなら、住宅地に来るという問題はないはずだ……という発想も生じた。
しかしながら、これは次のページで批判された。このような餌付けも、やはり餌付けの一種なので、自然に反する形で熊を養うことになる。その弊害が生じる、というわけだ。
→ 野生のクマをなんとか助けたいと考える皆さんへ - 紺色のひと
→ 毎日新聞さん、熊森ドングリ運びはただの美談ですか? - 紺色のひと
では、かわりにどうするかというと、この人が唱えるのは「射殺」である。その理由は「人命を奪われる危険があるから」である。
→ 「クマがかわいそうだから殺さないで」と感じる皆さんへ - 紺色のひと
何だかもっともらしいが、論理としてはおかしい。「熊は危険だから何とかする」というのが前提となる。そのあとで、
・ 射殺
・ 餌付け
という二つの対策が出る。そして、
「餌付けにはいろいろと問題がある」(自然に反する)
という難点を示す。それはそれでいい。しかしそのあと、射殺を肯定する理由として、
「人命を奪われる危険があるから」
というのを持ち出すのは、論理としておかしい。なぜなら、その理由は、「餌付け」に対しても成立するからだ。この人の論理によれば、同じ理由で、「餌付けも正しい」となっていしまうので、自己矛盾となる。論理破綻。
この人が「餌付けよりも射殺の方が正しい」と主張するのならば、その理由を出すべきだが、その理由は出されていない。
むしろ、「熊は絶滅の恐れがあるので、なるべく射殺をしない方がいい」という逆の結論が出そうだ。
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なお、熊が絶滅の恐れがあるというのは、下記でわかる。
→ 絶滅のおそれのある地域個体群 熊 - Google 検索
つまり、「絶滅危惧種」と言うほど危機に瀕しているわけではないのだが、世界的に見ても生息数は多い方ではないので、「絶滅のおそれのある地域個体群」というふうに指定されている。(地域ごとに)
とはいえ、地域によっては十分な個体数があって、減るどころか増えている、という情報もある。この件は、本サイトでも前に論じた。
→ 野生動物は増えている: Open ブログ
こういうこともあるので、「個体数を管理せよ」という発想も生じている。つまり、絶滅に至らない範囲で、適切に駆除することで、被害をなくせ、という発想だ。
→ 北海道のヒグマも個体数調整を考えるべきだ - 松田裕之|論座
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さて。以上のすべてとは別に、私なりに、別の発想を出すことにする。これまでに述べたことは、「あちらが立てばこちらが立たず」というふうなので、議論がどん詰まりふうだ。そこで、困ったときの Openブログで、うまい案を出すわけだ。
(1) ドングリの増加策
熊が住宅地に出没するのは、森に食べ物が少なくなってきているからだ。その理由は、人間がやたらと杉林を植えたり、森林を田畑に変えたりしたせいで、ドングリがなくなってきていることだ。
ならば、森にドングリを増やせばいい。北海道では、(温帯の)ブナ林は無理だが、(亜寒帯の)ナラ林ならばできる。そこで、杉林を伐採して、コナラ、ミズナラなどのナラ林をつくればいい。そうすれば、ドングリが増えるので、熊は住宅地に出没しなくて済む。
(2) 夏の餌付け
ドングリのない夏の時期には、熊が果実やトウモロコシを求めて、住宅地のトウモロコシ畑にやって来るそうだ。
ならば、傷物の果実や果物を、里山のあたりの山林に捨てておけばいい。熊はそこで食べることができるので、わざわざ住宅地にまでやって来る危険を冒さないだろう。
これは、餌付けの一種ではあるが、期間も地域も数量も限定されている。「熊を助ける」というよりは、あくまで「人間の被害を減らす」ための策だ。
(3) 餌付けと檻
熊が餌付けに慣れたら、その時点で捕獲してしまってもいい。
・ 餌付け地点の直上から、檻が落下する
・ 檻の内部に、餌付けの食べ物を置く
という二通りが考えられる。いずれにせよ、熊が餌付けに慣れたのを利用して、捕獲することができる。猟銃を使わずに済むので安全だし、猟銃をする人が少なくなっている問題にも対処できる。
(4) 剥製の展示
死んだヒグマの剥製を展示しておくといいだろう。それも、生きている感じはしないで、明らかに死んでいるヒグマの皮だけという感じだ。大きな板に貼りつけて、その板を立てておいて、周りからよく見えるようにする。ちょっと、「十字架に磔(はりつけ)にされたキリストの死体」みたいな感じだ。
それを見た熊は、気持ち悪がって、その地域には近づかなくなるだろう。「自分もそうなりそうだ」ということを本能的に理解するからだ。
(5) 花火による攻撃
空中を高速で飛ぶ花火(ロケット花火)で、熊を攻撃するといいだろう。熊はびっくりして、逃げ出すはずだ。こうして、熊は住宅地に近づかなくなる。
なお、空気銃やエアガンやクロスボウなどを使って攻撃するのもいい。殺害ではなく、あくまで威嚇だが、これで熊に恐怖心を与えることはできる。射殺するまでもなく、威嚇するだけでも大きな効果を出せるのだ。
下記は、猿を威嚇するロケット花火の例。
→ サルの追い上げに使うロケット花火 - YouTube
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上の (1)〜(5) で、私なりの案を出しておいた。これは「うまい案」だと思えるが、あくまで机上の案だ。これで実際にうまく行くという保証はない。それでもまあ、試してみる価値はあるだろう。
なお、結論としては、「これでバッチリ解決」という名案を出しているわけではない。「これで、そこそこの解決はできるかも」という気弱な案を、恐る恐る出しているだけだ。うまく行くかどうかは、保証の限りではない。
[ 付記1 ]
参考だが、イノシシの獣害対策として、テレビでは次のような方式が推奨されていた。
・ 畑を電線で囲む。高さ 20cm 。イノシシの鼻の高さ。
イノシシが触れると、電流が流れて、びっくり退散。
・ 畑の周辺で、草刈りをする。そこでは姿が丸見えなので、
草刈りされた地域には出没しない。
この方式を取ったところ、あれほど悩まされていたイノシシの獣害が解決したそうだ。
とはいえ、この方式は、そのままでは熊には使えそうにない。
[ 付記2 ]
他に、鹿の対策もある。鹿については、ある会社の方法で、獣害を減らしているそうだ。(塩を含む部材を舐めさせたり。)
これは話が長くなりそうなので、ここでは論じない。
【 関連項目 】
イノシシその他の対策を、前に考えたことがある。
→ 獣害対策の方法: Open ブログ
2019年08月15日
過去ログ
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190815/k10012036951000.html
・ 熊は人家の食料を狙っている。
(すでに味を覚えてしまった)
・ 爆竹で追い払うことに成功した。
羆です。似て非なるものです。
危険性でも、「超危険」と「大いに危険」ぐらいの差があるが、どっちにしても危険であることは同じ。
射殺か餌付けか、というテーマで言うのなら、双方を特に区別する必要はない。片方だけに当てはまるわけではない。
 ̄ ̄
ヒグマに襲われたハンターが、ヒグマにかみつき反撃――。そんな事故が今年4月、北海道東部・知床半島の付け根付近で起きていた。
ヒグマは鋭い牙や大きな爪で、ハンターの顔や腕などを切り裂いたが、ハンターはヒグマの鼻先にかみついたり、首を絞めたりしてクマをひるませ、九死に一生を得ていた。
https://www.asahi.com/articles/ASM8H5T1CM8HIIPE01C.html
これは、餌を人里に近い山中においたらダメでしょ。
誘因しているだけ。
あとよその地域の動植物を安易に持ち込んではならない、というのが今の自然保護の基本的考え方。
なので、当該地域の餌が不足する中で、まとまった数のドングリなど餌を用意するのは困難でしょう。
>>この人が「餌付けよりも射殺の方が正しい」と主張するのならば、その理由を出すべきだが、その理由は出されていない。
(追記)の部分に出されているでしょ。
これは本来山奥にいる熊をおびきよせるリスクがあるので、一般的にはやらない方法です。
>>よその地域の動植物を安易に持ち込んではならない、というのが今の自然保護の基本的考え方。
この原則がある以上、どんぐりが不足している地域にたいして、どうやってどんぐりを入手するのでしょうか?
>>よその地域の動植物を安易に持ち込んではならない、というのが今の自然保護の基本的考え方。
補足ですが、以下の問題のためできた原則です。
2点目は人間の目に見えない影響であることがほとんどで、ある特定の寄生虫類、菌類の専門の研究者がめったにいないこともあり、深刻です。
・他地域の生物を移入することによって遺伝子レベルの地域性が破壊されていること
・移入される生物と一緒に運ばれる寄生虫類、菌類が移入先の生態系を知らないうちに破壊していることがわかってきたこと
これは、私の提案ではなく、他の(既存の)提案です。本項の提案とは違います。
> 一般的にはやらない方法です。
もちろん、普通にやる方法ではなく、期間も場所も限定された用途です。あくまで例外措置。
例外措置を一切禁止する、というふうにすると、特別な事態への対応が不可能になる。
原則は守るとしても、例外的な場合には原則を捨てる柔軟性が有効だ、ということ。
>>よその地域の動植物を安易に持ち込んではならない、というのが今の自然保護の基本的考え方。
だから、発芽不可能であるように、何らかの処理をしたものを使うといい。X線処理でもいいし、熱処理でもいい。60度で10分間処理すれば、もう発芽は不可能だろう。(詳細は実験で調べる。)