2019年08月08日

◆ JDI が中国傘下に

 JDI の金融支援が決まった。結果的に、JDI は中国傘下になることになった。

 ──

 JDI の金融支援が決まった。
 経営再建中の液晶パネル大手ジャパンディスプレイ(JDI)は7日、800億円の金融支援の受け入れについて、中国・香港の企業連合と最終契約を結んだと発表した。大株主で官民ファンドのINCJ(旧産業革新機構)から新たに200億円を借り入れることも決まり、当面の資金繰りは一息つきそうだ。
( → JDIに800億円支援、中国・香港企業連合と最終契約:朝日新聞

 この結果、こうなった。
 取締役全9人のうち5人を中国・香港の企業連合から受け入れることでも合意した。
 JDIは中国・香港の企業連合と結んだ最終契約の内容や新しい取締役の人事について承認を得るため、8月29日をめどに開く予定だった臨時株主総会を9月27日に延期することも発表した。 
( → JDI支援、800億円契約 調達なお不透明 中国・香港企業連合:朝日新聞

 経営陣の過半数を中国・香港側に渡す、ということだ。実質的に身売りである。
 では、株の過半数を渡したのかというと、そうでもない。同じ記事には、こうある。
 JDIは 800億円の調達方法の変更も発表した。当初は(1)新株420億円分(2)株式に転換できる社債180億円分(3)必要に応じて転換社債200億円分、の順に発行する計画だった。新たな計画では、(2)の発行額を80億円に減らす代わりに(3)を300億円に増額する。INCJの追加支援などを受け、「財務状況などを踏まえて変更した」という

 中国・香港は、出した資金のうちの 420億円は新株だが、残りの 380億円は社債と転換社債である。それも、すぐには支払わないで、あとで支払うだけだ。
 つまり、株主としてリスクを引き受けることはないが、株主としての権利や利益だけは頂戴する、というわけだ。これは、「ハイリスク・ハイリターン」ではなく、「ローリスク・ハイリターン」だ。きわめて好都合な(自分勝手な)取引である。こんな自分勝手な条件を受け入れるしかないところまで、JDI は追い詰められているわけだ。ひどいものだ。

 なお、中国政府の影響も懸念される。
  JDIは新株420億円分と転換社債80億円分の資金調達を10月31日までに終え、残りの300億円分も来年8月28日までに調達したい考えだ。
 だが、ハーベストとオアシスの出資には「中国の政府当局からの介入がないこと」など複数の条件が付いている。実際に資金が振り込まれない可能性も残っており、「資金繰りが悪化することで事業継続が困難となる可能性がある」としている。 

 「中国の政府当局からの介入がないこと」を条件としているようだが、中国の企業はすべて中国政府の影響下にある。というか、中国の企業はすべて中国政府の所有物である。ゆえに、上のような条件は、最初からナンセンスだ。
 比喩で言うと、(現実には)ルノーの株の 15%は仏政府の所有だが、ルノーの株の 70%以上が仏政府の持ち分になった、というようなものだ。そのくらい、中国企業は中国政府の持ち物となっている。

 このことを典型的に示すのは、ファーウェイだ。ファーウェイは、創業者が最近になって作って急成長した企業なので、創業者が多くの株をもっていると推定されてきた。
 しかし、ファーウェイは、急成長の過程で政府資本を大量に取り入れたせいで、今では創業者の保有株式は 1.4%にすぎず、大部分が中国政府の持ち分となっている。
  → ファーウェイの所有者は誰? 米専門家「中国当局の可能性大」
  → ファーウェイCEOの持ち株比率はわずか1.4%。それでも統治できる仕組み
  → Huawei(ファーウェイ)の従業員持株制度のからくり ? SlofiA

 創業者の保有比率が高いと見なされているファーウェイでさえ、このありさまだ。となると、他の企業は、言わずもがな。ほとんどの企業が中国政府の所有物だと見なされる。
 となると、JDI に出資する企業もまた同じ。これらの中国企業が、当面は独立事業体のようにふるまうとしても、最終的には所有者である中国政府の意向に従うしかない。
 つまり、JDI は中国政府の所有物になってしまったのだ。(日産自動車がフランス政府の所有物になるようなものだ。)

 では、どうして、こうなったか? 実は、分水嶺となる時期はあった。
 「 JDI とシャープを合体しよう」
 とシャープが提案したときだ。このとき、この提案を受け入れていれば、JDI は鴻海(ホンハイ)の傘下になったはずだ。つまり、台湾企業の傘下になったはずだ。
 ところが JDI の経営者と経産省は、「日本企業が台湾企業の傘下になるなんて、とんでもない。国益に反する」と言って、この提案を蹴った。
 で、そのあとで、中国政府の傘下になってしまう、というていたらくだ。呆れるしかない。

 日本に敵対する国は、中国・ロシア・韓国・北朝鮮だ。
 日本に友好的な国は、米国と台湾だ。

 で、友好的な国の企業を蹴飛ばして、敵対的な国の政府傘下の企業に呑み込まれる。ひどいものだ。ま、ほとんど売国奴に近い。それが JDI の経営者だ。

( ※ JDI はたぶん、技術だけ盗まれて、最終的には倒産の憂き目に遭うだろう。)

posted by 管理人 at 23:30 | Comment(1) | コンピュータ_04 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 すぐまた新たな報道。
 JDI が大赤字を出して、債務超過となった。そのせいで中国の出資者が、金を出すかどうか迷い始めた模様。先行き不透明へ。
  https://mainichi.jp/articles/20190809/k00/00m/020/366000c
  https://www.asahi.com/articles/ASM89569QM89ULFA01K.html

 中国資本の協力を仰いでも、しょせんは倒産の日を少し先延ばしにするぐらいの効果しかなかったのかもね。
Posted by 管理人 at 2019年08月10日 18:20
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

  ※ コメントが掲載されるまで、時間がかかることがあります。

過去ログ