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調べてみたのだが、今夏の電力量には直接的なデータがなかった。東京電力は最大供給力についてデータを示していない。(前は示していたのだが。)
需要量については、実績データを出している。
→ でんき予報|東京電力パワーグリッド株式会社
暑い日で 5500万kW だ。以前示した最大供給力は 6200万kW だったから、余裕はあることになる。実際、「逼迫」という予報を出したことはない。
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もっと詳しい情報は、昨年(2018)の状況を分析した記事だ。下記にある。
→ 東京新聞:猛暑こそ太陽光発電 最高気温更新でも安定
十分に余裕がある、という趣旨で述べられている。
また、「太陽光発電が役立ったので、原発はなくても大丈夫だった」とも書かれている。
だが、記事のグラフをよく見てほしい。

太陽光発電の発電量は、正午がピークで、時間がズレるほど発電量は減る。
需要は、午後はずっとピーク状態(ずっとエアコンが働きっぱなしの状態)で、ほとんど変動がない。
結果的に、正午ごろには太陽光発電が十分に役立っているのだが、その効果があるのも午後3時ごろまで。それ以後は太陽光発電の発電量が急減するので、火力発電の発電量が急増する。午後6時ごろには、火力発電がほとんどとなってしまう。
結局、「電力のピークを下げる」という意味では、太陽光発電はほとんど役立っていないことになる。
なるほど、「電力需要の高い昼間に発電量が増えるので、太陽光発電は需要の急増に適した優れた電力である」という主張はある。しかし、その主張は、虚偽とは言えないまでも、ほとんど成立しないのだ。なぜなら、電力需要は午後はずっとピーク状態が続くからである。
これはどうしてか? 実は、昔ならば、上の釈明は成立した。昔ならば、午後2時ごろだけが特別に暑かったので、午後2時ごろに電力需要のピークが来たからだ。
しかし近年は温暖化で猛暑続きだ。午前中から夕方まで、ずっと温度が高い。その間、ずっと冷房をつけっぱなしであることが多い。そのせいで、午前中から夕方までずっとピークが続く。こうなると、「午後2時ごろにピークがある」という想定は、もはや現実には成立しなくなってしまうわけだ。
結論。
太陽光発電は、昔ならば、需要のピークをまかなう効果があったので、有益だった。
現在では、需要のピークがずっと続くせいで、正午ごろだけ発電量が多い太陽光発電は、ただの不安定な電力であるにすぎなくなった。
現在の主力は、太陽光発電の電力減少を補えるような火力発電である。これが一刻の電力需要を支える基盤となる。
太陽光発電は、「できる範囲内で炭酸ガス発生を減らす」という意味を持つが、電力供給としてはあまりにも不安定なので、一刻の電力を支える基盤とはならない。
( ※ 仮に一国の電力を太陽光発電だけでまかなおうとしたら、朝や夕方や夜間は電力不足になって、大変なことになる。)
[ 補足 ]
グラフを見るとわかるが、下の方で、灰色の電力のピークは夕方にあるとわかる。これは、太陽光発電の不足した分を、水力発電で補っているからだ。
ただ、それでもまだ足りないので、需要の側に「電力使用を控えて」と要請しているそうだ。
事前に契約した企業への一時的な節電要請や、他の電力会社に電力を融通してもらう仕組みが整備されたことも、供給安定の要因に。日没以降も高温が予想された八月の一日と二日、東電は夕方にかけて大口顧客に節電を要請した。
( → 東京新聞:猛暑こそ太陽光発電 最高気温更新でも安定 )
これは「需給調整契約」というやつだ。本サイトでは前に何度か紹介して推奨したもの。
需給逼迫を解決する最善の策は、最大供給量を増やすことではなく、最大需要を減らすことだ。その方がずっと低コストで済む。
【 関連項目 】
→ 太陽光発電の不安定さ: Open ブログ
→ 太陽光発電の時変化: Open ブログ
→ 太陽光に蓄電池は不要: Open ブログ
→ 電力安定に蓄電池は必要ない: Open ブログ