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この火災では、死んだ理由よりは、助かった理由の方が大事だ、と思っていた。助かった人は、どうして助かったのか? 伝えられたような爆燃現象があったとすれば、全員が一挙に死んでも不思議ではないのに、半数の命が助かった。どうして助かったのか?
これについて参考となる情報が見つかった。
今回の事件で現場のスタジオの中にいて、出火後に避難した男性社員が、NHKの取材に応じ、当時の状況を証言しました。
男性は、アニメーションの風景や背景を制作する担当で、当時は建物の2階で作業していました。
男性によりますと、1階で誰かが言い争うような声がしたあと、女性の悲鳴が聞こえ、突然「ドーン」という大きな爆発音がしたということです。
2階に上がってきた男性社員が「火事だ」と叫び、近くにいた女性社員が非常ベルを押しましたが、まもなく、らせん階段からきのこ雲のような煙が上がって来たといいます。
煙は墨汁のような黒さで、あっという間に近くにあるものも見えなくなり、呼吸が苦しくなったということです。
男性がほかの社員とともに2階にあるベランダに避難すると、後ろから熱風が吹きつけ、あちこちから「助けて」という声が聞こえたといいます。
ベランダにいると「大丈夫だ。飛び降りろ」という声が聞こえたため、ほかの社員とともに1階に飛び降り、着地した際に腕にけがをしましたが、消防に救助され病院に搬送されたということです。
男性は、「現場では『助けてください』と叫ぶ声がたくさん聞こえた。2階から飛び降りてけがをするか、死ぬかの選択だったが、その時、飛び降りることができなかった社員もいた」と話していました。
( → アニメ会社放火 「けがするか 死ぬかの選択」避難男性が証言 | NHK )
これと、次の間取り図を参考にする。

出典:朝日新聞
さらに、現場の写真も見る。

出典:朝日新聞
これらから、次のことがわかる。
・ 2階のベランダに出た人は、飛び降りて、助かった。
・ 2階のベランダは、中央部だけにあった。
・ 玄関とは逆側の部屋(端の部屋)には、ベランダがなかった。
・ その部屋では、大量の死者が出た。
ここから、次のことが結論できる。
「ベランダは、非常口のかわりになる。ベランダのある部屋からは、脱出できたので、助かった。ベランダのない部屋は、脱出できなかったので、死亡した」
先の項目では「非常口が大事だ」と述べたが、非常口がなくても、ベランダがあれば、助かったのだ。
逆に言えば、ベランダであれ非常口であれ、とにかく脱出するための出口があることが大切だ、と言える。
私が先に「非常口が大事だ」と述べたことに対しては、疑いの声があったかもしれない。「非常口があってもなくても、どっちみち爆燃現象で全員が死亡するのでは?」というふうに。
しかし、そうではなかったのだ。ベランダという非常口のある部屋にいた人は、ほぼ全員が助かったのだ。飛び降りることで、ケガをして重症になったかもしれないが、それでも命は助かったことになる。
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なお、以上のことから教訓を得るなら、次のように言える。
「屋外の非常階段の設置ができないようであれば、せめてベランダへの出口を設置するべきだ。そうすれば、ベランダが非常口のかわりになる」
このことを、(端から端までの)全面に要求するべきだろう。京アニの場合は、全面ではなく、中央部だけにベランダがあった。だから、中央部の部屋にいた人は助かり、端の部屋にいた人は死んでしまった。
ベランダが両端まで伸びていれば……と惜しまれる。
[ 付記1 ]
ベランダがあっても、3階だと、飛び降りるのに躊躇するだろう。かといって、ハシゴを設置するのでは、泥棒が昇ってくるの怖い。脱出シュートがあると便利そうだが、いちいち用意するのに手間取りそうで、いざというときには間に合わない。
では、どうすればいいか? 私のお薦めは、こうだ。
「縄ばしごを用意しておいて、金属ケースにでも入れておく。いざというときには、それを取り出して、下にぶら下げればいい」
これで助かるだろう。できれば、縄ばしごを何本も用意しておくといい。置く場所も、数カ所に分散することが望ましい。
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この商品は高性能なのでお薦めだ。
「最大荷重:(約)450kg。大人4人 同時にこの梯子に乗っても大丈夫です」
とのことだ。
似た商品が他にあるが、そちらは大人1人までしか耐えられないので、不適だ。
[ 付記2 ]
このような縄ばしごを購入して設置したら、あとはときどき、縄ばしごを使う訓練をするといいだろう。避難訓練の一環で。
実際に縄ばしごを使って下に降りるのは、危険度が高いので、必要ない。とりあえずは、
・ 縄ばしごの箱を開けて、縄ばしごを取り出す。
・ 縄ばしごをベランダに装着して、地上まで垂らす。
という2段階を訓練するといい。できれば全員がやるといい。
使い方を覚えておけば、いざというときに役立つ。一刻を争うときに、助かる人員が1〜3名ぐらい増えるかもしれない。それは大いなる効果である。
だからこそ避難訓練のときには、縄ばしごの利用を試行しておくべきなのだ。
※ 縄ばしごが必要なのは、階段が煙のせいで使えなくなっている可能性があるからだ。煙が噴き上がっているときに、そこに突っ込めば、一酸化炭素中毒で死ぬ。そういうときにはむしろベランダに逃げるべきなのだ。
得意先の工場に避難器具が設置してある。操作法が書いてあるのだがよく理解できなかった。
現場の数名に聞くと誰も理解も操作もできない。(訓練はしてなく設置だけのようだ)
平時でさえ操作できないなら、煙の中や停電した夜間では無理である。
迫る煙や炎から逃れ地上へ降りるにはロープ1本あればいい。(滑り止めに結び目を付けてもいい)
ロープは慣れないと降りられないとか、体重を支えきれず途中で落下するとかの批判は出る。
しかし逃げる者は必死で、中層ビルであっても飛び降りるほどの精神状態なのでロープがあれば使う。
力尽きて途中落下しても、その時点で位置エネルギーは減じてるので被害は減る。また落下位置が限定されるのでその場所に緩衝材も置ける。
なぜハシゴでなくロープかと言うと、煙と炎の中でパニくった者は思考力がなくなり、シンプルでないと活用できないからだ。
他には低価格なため導入がしやすいこと。太いタイプでも消火器1本分。
もちろん避難ハシゴの方が緊急時の実効性が高い。そのコストと設置場所等で躊躇して導入しないより、そのハードルの低いロープもあるとの提案。
因みに建物ではないが、私の車にはロープを常設してある。溺れた者の救助や泥棒拘束、泥地脱出、牽引等の多目的に使うため。
細いものだと、1000円ぐらいで買えるものもありますが、太さ1センチ以下なので、握ることはまず困難。その上、耐熱温度が 150度なので、火事ではすぐに燃えて切れてしまいます。
太いものもありますが、合成繊維製だとコストアップする。綿製だと、何とかなりそう。
以上のすべてをクリアしたとしても、一度に1人しか使えないので、同時に4人が使える縄ばしごに比べると、効率が悪い。
さらに、縄ばしごならば Γ 型のフックをかけるだけで済むのに、ロープだと、結ぶ場所(柱)を探す手間がかかる。通常、そんな柱みたいなものはないので、うろうろしているうちに、間に合わなくなるだけだ。
本文で記したように、「縄ばしごを用意して、避難訓練で練習する」というのが、最もコスパが高い方法でしょう。
マンションはこの考え方を採用していて、ベランダに避難梯子を設けて階下に降りる方式を採用しています。
年に1回の点検を見てると使い方は簡単そうです。
(1) 南面は2階の全面にベランダがある。ベランダの下には柱が伸びている。体を乗り出してから、柱を伝って地上に達することができる。(猿みたいに。)……誰でもできるとは限らないが、少なくとも私はできる。他の人は、私が下で受け止めれば大丈夫。
(2) 北面は2階の窓の下に、庇(ひさし)がある。庇に乗ったあとは、その先にブロック塀があるから、そこに載ればいい。そのあとは、地上に飛び降りればいい。(隣家の庭。)
こうして見ると、庇って、有効ですね。「庇は便利だ」と提案しておこう。これを「南堂庇」方式という。
(ダジャレ)