2019年07月12日

◆ かんぽ生命の不正

 かんぽ生命の不正問題は誰の責任なのか? 

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 これは、誰もが考えるらしくて、次の記事もある。
  → かんぽ生命の不正問題は一体誰の責任なのか |東洋経済オンライン
 ここでは、次のようにまとめられている。
 おそらく今回の不祥事も、日本郵政グループの中の処分はこのような枠組みで進み、不正な営業行為をした郵便局員がいちばん重い処分を受けることになると私は予想しています。

 一方で、経営実務論ではまったく別の捉え方をすることがあります。現場の営業が9万件のレベルで不正を行ったという場合はそのような仕組みを作った側にもっと重い責任があるという考え方です。つまり経営者がいちばん悪く、営業ノルマの仕組みを設計した人がその次に悪いと考えるのです。
 日本郵便ではゆうちょ銀行では現場での組織単位のノルマがきつくなる一方で、契約インセンティブを勘定にいれないとやっていけないほど現場の給与が抑えられるような仕組みになっていたといいます。
 契約者に不利益となる解約や新契約をすすめる現場職員が多数出てきた。それが数人ではなく数万件レベルで起きたという事実をもって、そのような仕組みを設計した側の責任のほうが重い。経営実務論ではそう考えるのです。

 言っていることはごもっともだが、「経営者が悪い」と言っても、どの経営者が悪いのかがはっきりしない。理屈で言えば、「歴代の経営者がみんな悪い」ということになりそうだが、そういう「全員が悪い」という話では、原因は特定個人ではなく制度的なものになるから、「この人が悪い」というふうに個人責任の形に帰することはできない。
 そもそも、「全員責任は無責任」という説もある。(ちょっと違うか。)

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 そこで、「いつからこうなった」と思って調べてみたら、実は最初のころからだ、とわかった。そして、その原因は、「歩合給でなく固定給であること」らしいと判明した。
  → 日本郵政 異常なノルマ(赤旗転載)

 つまり、民間保険会社では、歩合給の比率が高いのだが、かんぽ生命では固定給の割合が高くて、歩合給の割合が低い。だから、固定給に相当する額を稼げるように、ノルマを課することになる……というわけだ。
 ここで、歩合給の割合が高ければ、固定給の額は少ないので、成績が悪くても、給料を下げてしまうことができる。しかるに、固定給の割合が高いと、契約を取れない社員にまで高い固定給を払わなくてはならない。それでは会社の持ち出しになる。だから、否応なしにノルマを課する……というわけだ。

 ちなみに、民間の生保レディの場合だと、歩合給は次の例のようになる。
  → 保険外交員の歩合はいくら? ( 保険 ) - Yahoo!ブログ
  → 生保レディの歩合給 -ぶっちゃけ、契約に対してどのくらい給料に反映す

 こういう事情があるのだとすれば、「否応なしにノルマを課する」というのは、「固定給が高い」ということとは一体化していることになるので、やむを得ない面もあるとわかる。

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 これをどう評価するか?
 過大なノルマを課するのは、特定の経営者の経営方針によるのではない、とわかる。この会社の原則(固定給を高めにする)ということ自体から来ている、とわかる。
 そして、それは、最初の「郵政民営化」の時点で決まっていたことだ。公務員には、歩合給でなく固定給がある。それを踏襲する限り、民営化しても固定給になる。その結果、ノルマは必然的になる。
 とすれば、「郵政民営化」を決めた小泉首相(当時)に責任の根源があるのであって、歴代の経営者には特に責任がなかった( or あまり大きな責任はなかった)ことになる。
 ま、経営者をまったく免責するわけではないにせよ、本丸は「郵政民営化」をした小泉首相にあった、と言えそうだ。

 ──

 では、解決策は、どうすればいいか? 郵政民営化を取り消して、ふたたび郵政事業の国営化をすればいいのか? ……そうかもしれないが、それも難しそうだ。
 そこで、じっくり考えてみる。

 そもそも、保険の勧誘というのは、あまり利益にならない。当初は勧誘が成功したとしても、そのうち保険勧誘の対象となる人がいなくなる。
  ・ すでに加入している
  ・ 加入するだけの所得がない
  ・ どうしても加入したくない

 こういう人ばかりになる。いわば、「金鉱を採掘し尽くした」という状況だ。金鉱が残っていないのに、しきりに採掘しても、もはや金鉱は取り出せない。そういう虚しい状況にある。
 にもかかわらず、ノルマによって、強制的に金を採掘しようとする。となると、何らかのインチキをするしかない。……それが、今回の問題の発生の構造だろう。

 ──

 こういうふうに「金鉱を採掘し尽くした」という状況では、もはや「保険の勧誘」という方式そのものが無効化しつつある。とすれば、ここではもはや事業が成立しなくなっているのだ。つまり、黒字が発生しない。とすると、どこかに犠牲を強いるしかない。
  ・ 顧客に損をさせる (今回の不正問題の構造そのもの)
  ・ 労働者の給料を下げる (固定給をやめて、無能には無給)
  ・ 経営体(会社)が黒字を諦める。


 そのどれがいいか? 
 1番目は、今回に問題になってので、絶対にダメだ。
 2番目は、できれば問題解決だが、大量の失業者が発生する。
 3番目は、国営化(またはそれと同等のこと)となる。解決策になりそうだが、実現は難しい。

 困った。どうすればいい? 

 ──

 そこで、困ったときの Openブログ。何とか実現可能な案を出そう。こうだ。
 「国営化は無理だとしても、民営化をやめる。株式の民間公開はやめて、株式を国家で保有する。国営会社ならぬ国有会社とする。配当金はごく小額とする。市場に出た株は、市場価格(かなり低額)で買い上げる」


 こうして国有会社としたあとは、ノルマを廃止する。営業成績が悪い社員は、解雇するかわりに、配転する。郵便事業や、介護事業や、保育事業など。……こういう状況だと、かなり多くの赤字が出そうだが、数十年をかけて、社員を減らせば、あとは歩合給が主体の優秀な社員だけが少し残るようになる。(無能な営業職員は、みんな定年退職する。)
 かくて、ノルマが廃止されるので、不正問題は一挙に解決する。余剰人員をかかえる問題が残るが、時間をかければ全員を定年退職させることが可能だ。
 企業体には、黒字のかわりに(少額の)赤字が残るが、営利企業ではないということにすれば、特に問題はあるまい。

 要するに、「郵政民営化をすれば、莫大な株式売却益が出るぞ」という、捕らぬタヌキの皮算用がまずかった。そんな皮算用をしたせいで、「多額の利益の計上」が要請されて、そのあげく、「過大なノルマによる顧客への不正」が発生した。
 だから、そういう「捕らぬタヌキの皮算用」をやめればいいのだ。「郵政民営化をしても、莫大な企業利益は発生しないし、莫大な株式売却益も出ない」というふうに理解すればいいのだ。つまり、「濡れ手で粟」を諦めればいいのだ。
 結局、諸悪の根源は、「郵政民営化でタナボタの利益」なんていうことを夢想した小泉首相(とその支持者)のご都合主義な妄想にあった、と言えるだろう。
 「市場原理を取り入れれば、何もかもうまく行く」
 というのは、保守的な政治家の考えそうなことだが、それでいつも失敗している。小泉純一郎であれ、小池都知事であれ、こういう傾向が強い。そのせいで、国民や市民は(政治家の計算違いのせいで)犠牲を強いられる。
 そういうふうにまとめることができそうだ。



 【 追記 】
 朝日新聞の社説では、「経営責任を問え」というふうに主張している。
かんぽ生命と日本郵便の両社社長は顧客に不利益を与えたことを陳謝し、改善策を公表した。
 だが、現場を荒廃させた経営の責任も問われるべきだ。
( → (社説)かんぽ生命 顧客への重大な背信だ:朝日新聞

 ここでも、経営者の個人責任に帰そうとしている。「経営者さえまともであれば問題は起こらなかった」という立場だ。
 だが、経営者がまともなら、不正は起こらなかっただろうが、ノルマの未達による莫大な赤字が発生する。莫大な固定給を支払わなければならないからだ。
 かといって、歩合給を主体にすれば、給料が激減して、退職・失業する人が多大に出る。
 つまり、「あちらが立てば、こちらが立たず」だ。
 朝日新聞は、そのことを理解できていない。「経営を正常化すれば、莫大な赤字が発生する。もしくは、大量の失業が発生する」ということを理解していない。
 もともと巨大な赤字構造があって、その赤字をどこが負担するべきか、という問題なのに、「ノルマの強制をなくせばそれで解決する」と思い込んでいる。もともとの赤字構造という巨大な物を認識できていない。あまりにも視野が狭い。

 ま、これは、朝日新聞に限ったことではなく、多くの人々に共通することだ。だからこそ、本項では、その本質を指摘しておいた。

posted by 管理人 at 22:47| Comment(3) | 一般(雑学)6 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 最後に 【 追記 】 を加筆しました。
 朝日新聞の社説についての言及。余談みたいな話。
Posted by 管理人 at 2019年07月13日 10:15
 かんぽの不正勧誘が、また話題になっている。今回は、「あまりにもひどすぎる」という事例。
  → https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190726-00010002-nishinp-bus_all

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 もう、こうなったら、小泉純一郎・元首相が顔を出して、「民営化は完全な失敗でした。間違いでした」と頭を下げるべきだな。
Posted by 管理人 at 2019年07月26日 23:06
>もう、こうなったら、小泉純一郎・元首相が顔を出して、「民営化は完全な失敗でした。間違いでした」と頭を下げるべきだな。

歴代内閣で
「国鉄」
「電電公社」
と成功したので「オレは郵政でアピールだ!」と考えたのでしょうね。

もともと「簡易」保険の名称の通り、ろくに商店もないような昭和の
田舎町で生活保障の手法の一つとしての保険を補う為に創設されたもの
ですから、独立させて弱肉強食の市場原理の中に放り込めば破綻する
のは当たり前のような気もします。

当の民間保険会社自身が戦後未亡人を使い捨ての営業マンにして
件数をかき集めてきたり、現在でいえば「保険見直し」と
称してユーザーの将来の受益を(それとわからせずに)バッサリと
削り落としている「闇」を持っておりますから、きちんとしたモデリ
ングをせずに強制的な民営化を進めた小泉元首相と竹中氏の罪は小さ
くないですね。

ちなみに民営化時に鳴り物入りで導入が図られた「トヨダ自動車から
の合理化コンサルティング」、郵便業務の現場ではもはやほとんど残
っていません。業務のほとんどを正社員で緻密な生産管理と一体で回
している自動車製造と、不特定多数かつ膨大な配送物を大半が非正規
雇用の人間で回している実質的な運送業ではもともと接点があろう
はずがない。

郵政事業は両氏のていの良い人柱にされた感すらしますね。

反原発で政界返り咲きを狙う前に、まずこのけじめをしっかりつけて
ほしいですね。
Posted by 参考になります。 at 2019年07月30日 08:05
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