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相も変わらず、いじめが絶えない。これに対しては教師の努力が望まれるが、教師が努力するどころか証拠湮滅をしていたという事例が報道された。
《 中3男子転落死 担任がいじめのメモをシュレッダー廃棄 》
岐阜市の中学3年の男子生徒がマンションから転落して死亡したことについて、岐阜市教育委員会は生徒が暴力を受けたり金銭を要求されたりしたという複数の情報が寄せられていることを明らかにしました。男子生徒の担任はいじめの内容が書かれたクラスメートからのメモをシュレッダーで処理していたとみられ、教育委員会は謝罪しました。
担任は同級生2人から話を聞いたり、男子生徒が「大丈夫」と言ったりしたため解決したと思い、メモをシュレッダーで処理していたとみられるということです。
3日、岐阜市のマンションの駐車場で中学3年の男子生徒が転落しているのが見つかり、死亡した問題では男子生徒の自宅からいじめを示唆する書き置きが見つかっています。
( → NHKニュース )
担任は「解決した」と思ったが、実際には生徒は転落死した(書き置きがあるので自殺らしい)。
解決していないのに、「解決した」と思い込んだらしい。しかしこれは嘘だろう。「解決した」と思ったのならば、資料を普通に保存しておけばいい。あるいは、単純に廃棄すればいい。「シュレッダーにかける」という行為の必然性がない。「シュレッダーにかける」という行為をしたのは、「それが重要な機密情報だ」という意識があったからだ。「証拠を隠滅してしまえば、証拠はなかったことになるだろう」という発想だ。
ところが、証拠となるメモを書いた生徒本人が証言したせいで、メモの存在が暴露された。こうして教師の証拠湮滅という行為が発覚した。
ここでの問題は何か? こうだ。
「いじめの解決には、教師はまったく役立たない。いじめが発覚すると、自分の評価が下がるので、いじめをなかったことにしたがるからだ」
要するに、「教師に解決してもらう」という方針では、いじめはまったく解決できないのだ。
では、どうする?
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そこで、困ったときの Openブログ。うまい案を出そう。こうだ。
(1) いじめを通報するサイトをつくる。(全国共通で。)
そこで得た情報を、自治体の担当部に自動通知する。
(2) 自治体では、いじめ担当の専門組織で対処する。
これは警察組織の一部。元・刑事を充てる。
以下、具体的に述べよう。
(1) いじめを通報するサイト
生徒がいじめを報告するべき相手は、担任ではないし、学校でもないし、自治体でもない。そのいずれも、生徒の匿名性が守られないからだ。(そのせいで「チクった」と批判されがちだ。)
そこで、匿名で報告できるようにする。そのことが大切だ。
具体的には? 全国共通で、「いじめを通報するサイト」をつくる。そこでは、次のような記入欄がある。
・ あなたの郵便番号 [ ]
・ あなたの住所(おおまかに) [ ]
・ その学校名 [ ]
・ その学級名 [ ]
・ 被害者の氏名 [ ]
・ 加害者の氏名 [ ]
・ 被害の内容(記述式) [ ]
自分の住所の郵便番号を記入すると、次の欄におおまかな住所が記述される。(例:東京都 新宿区 西新宿町)
そのあとは、学校名や学級名を具体的に記述する。
被害者名や加害者名も記入する。(複数記入も可)
被害の内容も、目撃と伝聞をなるべく区別して記述する。
以上の報告を受けたら、その報告を該当の地域に転送する。転送先は、次の各所。
・ 学校の校長
・ 警察 のいじめ担当・専門組織
・ 県 のいじめ担当部局
・ 市区町村 のいじめ担当部局
以後の処置(下記)を受けたあとは、校長が県や市区町村の担当部局に経過を報告する。
(2) いじめ担当の専門組織
いじめ担当の専門組織を設置する。これは警察の一部に置く。
なぜ教育部門ではなく、警察に置くか? それは、解決策が教育ではなくて、犯罪捜査だからだ。この解決策はあくまで犯罪捜査の方式で行う必要がある。
・ 加害者の取り調べをする。(参考:緊急取調室)
・ 犯人には、自白を求める。(自己の罪)
・ 共犯者には、裏切りを求める。(仲間の罪)
・ 証人には、証言を求める。
これらは、刑事犯罪の取調室の方式であるから、経験豊富な刑事がやることが望ましいのだ。(教師なんかにはそのためのノウハウがないから、できるわけがない。)
具体的には、次のようなことを言う。
・ 「仲間が自白するので、黙っていても無駄だ」
・ 「仲間が先に自白すると、黙っている罪は重くなる」
・ 「嘘をついても、嘘発見器にかければ、すぐバレる」
・ 「いじめの目撃者はいっぱいいるぞ。隠しても無駄だ」
・ 「自白すれば停学で済むが、自白しないと少年院送りだ」
こう言われたら、自白するしかないだろう。よほど悪質な犯人を除けば。……こうして、犯人を「完落ち」させることが可能だ。
さらに、目撃者にも、こう言う。
・ 目撃したことを正直に証言してください。
・ 自分の罪には黙秘権が成立するが、他人の罪には黙秘権が成立しない。
・ 黙っていれば、偽証・犯人隠匿・証拠湮滅などに相当する。
・ そのことは、学校に報告するので、内申書に記載される。
(いじめを隠すと、受験で不利になりますよ、の意。)
これは、目撃者からの証言集めだ。
以上のように、加害者からも目撃者からも、自白や証言をうまく集めることができる。こういうことは、あくまで警察組織を使うことでなされる。
※ 組織は県レベルで統一的に組織すればいい。県警レベル。
人員は、刑事の定年退職者を非常勤で雇用すればいい。
それなら、人件費も安上がりで済む。定年対策にもなる。
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さて。以上はすべて警察組織が行う。では、学校の出番はないのか? いや、ある。主導するのは警察組織だが、それを脇から補助するべきだ。次のように。
・ 警察の介入があったことを、朝礼で報告する。
・ 加害者の名前は出さないが、調査には協力しろ、と言う。
・ 有罪が決定したら、加害者の氏名を発表する。
・ 加害者には停学処分をする。
以上のすべては「見せしめ効果」だ。いじめをしたらこういうふうに罰されるということを、明らかにする。
現実には、少年院送りのような刑事罰を受けるわけではないのだが、教育罰を受ける。「停学処分」のような。また、学校内で吊し上げられる(さらしものになる)ような、「見せしめ」の効果もある。
こういうのを見たら、他の生徒は「ぶるぶる」と震えて、「自分はこういう目には遭いたくない」と思うだろう。かくて、いじめの再発はなくなる。一罰百戒。
※ 死刑囚の死刑を見せしめにするのに似ている。
ギロチンっぽい。(それほどひどくはないが。)
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なお、学校がやることは、処罰だけではない。教育もすることができる。
加害者は、取り調べを受ける前には、学校側の教師との面談を受ける。そのとき、教師は教育的なことを述べるのだ。次のように。
「正直に語れば、重い罪は受けないよ。だから、正直に語った方がいいよ。正直に語れば、きみの罪が軽くなるようにと、学校が嘆願してあげるよ」
ここでは、学校は「弁護士」としての役割を果たして、被告人たる加害者の側に寄り沿うわけだ。
これを受けて、加害者(犯人)が自白した場合には、反省文を書かせた上で、学校が「処罰の軽減」を求める嘆願書を提出する。
嘆願書を受けた専門組織は、本人が完全に反省している場合に限って、書類送検で済ませる。……このあと、検察は、
・ 嘆願書
・ 反省文
・ 停学処分があること
などを見た上で、「微罪処分」として、「起訴猶予」または「不起訴」にする。
原則として、司法警察員が犯罪の捜査をしたときは、速やかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない(刑事訴訟法246条本文)。ただし、検察官が指定した事件については例外的に送致しなくともよい(微罪処分。同条但し書)。
( → 書類送検 - Wikipedia )
上記3点のうち、一つでも満たされない場合には、書類送検では済ませない。身柄を送致したあとで、検察が起訴する。家庭裁判所の判決で、少年院に入れることになる。(起訴後は有罪率 99% らしい。)
ただし、こういう結果になることは、ごく稀だ。たいていは、上記3点があった段階で、微罪処分で済む。そして、この3点をなす段階で、学校側の働きが求められるわけだ。
「おまえはこんなにひどいことをしたんだから、きちんと反省して、罰を軽くしてもらおう」
というふうに説得するわけだ。ここにこそ、教育者の仕事が求められる。
一方で、犯罪者を追及することは、教育者の仕事ではない。それは警察組織がやるべきことだ。
ここを勘違いしてはならない。なのに、今の「いじめ問題の解決」の方法は、「すべてを学校に丸投げする」というものだ。これでは、解決策が「あさっての方向を向いている」としか言いようがない。
こういう方向違いの体制があるから、冒頭のような、「教師が証拠湮滅をする」という問題も起こるのだ。
本来ならば、証拠文書を保有するべきは、教師ではなくて、専門組織であるべきだった。それを教師に丸投げしている現行制度に、根本的な制度的欠陥があると言えるだろう。
[ 付記 ]
実は、この方法は、「いじめ」をなくすには有効だが、問題の根本解決には至っていない。
なぜなら、いじめの根源には、もっと大きな問題がひそんでいることが多いからだ。その多くは、「いじめっ子の家庭にある、家庭的な問題」である。たとえば、親による子供の虐待など。親から虐待を受けた子供が、他のクラスメートをいじめる、ということは多い。
また、金がないのでカツアゲする、というのも、家庭の貧困が原因であることが多い。
こういう問題については、警察組織では解決が付かない。自治体の厚生部門の組織との連携が必要となるだろう。
【 関連項目 】
→ いじめ対策・完全版: Open ブログ
「転向すれば、いじめから逃れられる」という案。
これは、学校や自治体に頼らずに、被害者の側が個別に自力対策する方法。
一方、本項は、学校や自治体が網羅的にいじめを撲滅する方法。
ダイナミックでピンポイントに作用すると思います。