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自動車の自動ブレーキは、正面にある物体との衝突を回避する。その物体は、「今まさしく正面にある」ような物体だ。
一方、「今はそこに存在しないが将来はそこに存在する」ような物体も考えられる。
たとえば、交差点の右方から(赤信号無視で)突入してくる車 B だ。
← B
↑
A
この場合、現時点では、交差点には何もない。だが、数秒後には、自分 A も、右方の車 B も、ともに交差点に来るので、双方が衝突する。
だから、「今は何もないが、将来は衝突するだろう」ということを予測して、衝突回避のために、あらかじめ自動ブレーキを作動させることが好ましい。
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このような事例は、実際にあるか? ある。先の大津市の保育園児の事故だ。本サイトでも言及した。
→ 交差点の事故で園児死亡: Open ブログ
この事例では、上で述べた想定とは少し違っている。右方の車 B と交差するという点では同じなのだが、その車は、直進してきたのではなく、右折してきた。
つまり、「対向車線の車が右折して、直進してきた車と衝突した」という形で、事故が起こった。
大津署によると、右折しようとした新立容疑者の乗用車が対向車線を直進してきた下山容疑者の軽乗用車と接触し、ぶつかった弾みで、軽乗用車が園児らの列に突っ込んだ。
— ぽい使徒 (@spxr5pe9) 2019年5月8日
事故を目撃した通行人の男性(69)によると、「車が歩道に乗り上げ、園児らに突っ込んだ」と語った。 pic.twitter.com/4XE468Lc8h
この事故では、右折してきた車だけが悪くて、直進してきた車は悪くはない(刑事責任がない)というふうに処分が決まった。
大津市の交差点で直進車と右折車がぶつかり、信号待ちをしていた保育園児ら16人が巻き添えで死傷した事故で、大津地検は14日、自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致死傷)の疑いで書類送検された直進車を運転していた女性(62)を嫌疑不十分で不起訴処分にした。園児の列に突っ込んだのは直進車だったが、事故の主因は右折車にあり、刑事責任を問える過失は認められない、と判断した。
( → 大津の園児事故、直進女性不起訴 地検「過失認めがたい」:朝日新聞 )
なるほど。人間には過失がなかった。しかし、この事故では、自動ブレーキを働かせることは十分に可能であったはずだ。もし自動ブレーキに将来を予想する機能があれば、の話だが。
すると、反論が来るかもしれない。
「そんな将来を予想する機能( AI 機能)を開発するのは、すごく大変だ」
と。しかし、違う。
開発するのは容易である。なぜなら、同等の機能は、「対歩行者の衝突回避」機能という形で、すでに部分的に実現しているからだ。
横から歩いてくる歩行者についてなら、将来の衝突を予測して、衝突を回避することができる。それはすでにある技術である。
とすれば、同様のことは、横から進んでくる自動車についても可能であるはずだ。
いや、可能であるどころか、すでに一部では実現しているはずだ。自動運転技術の開発の途上で、この程度のことはすでに技術開発がなされているはずだ。
とすれば、あとは、それを実装することだ。そして、そのためには、「将来の衝突の予測と回避」ということを、公的な衝突試験において導入すればいいのだ。
結局、それが本項の結論である。
横から来る自動車について、将来の衝突を予測して、衝突を回避すること。そのような技術を開発するべきだ、といいたいところだが、そのような技術はすでに開発されているはずだ。もしかしたら一部では実装されているかもしれない。だから、その実装を普及させることが大切だ。そして、そのためには、公的な試験にそれを組み込むことが必要なのだ。
メーカーがどれほど優れた技術を開発しても、それが世間に周知されていないと、技術は普及しない。新しい技術については、開発するだけでなく、理解した上で、普及させる制度を整えることが大切なのだ。
そして、そのためには、どのような技術が開発されているかを教え、かつ、どのような技術が社会的に必要とされているかを教えるという、そういう先導者の声が大切だ。
その声は、ここにある。
( ※ 本項で述べたことは、広い意味の「自動運転技術」の一部である。ただし、運転する機能ではなく、停止する機能だ。その意味では、「自動ブレーキ」機能の一部であるとも言える。)
[ 付記1 ]
現在の対歩行者衝突実験の動画がある。
これは、「将来の衝突を AI で予測する」というタイプではなくて、単に「検出対象を検知する画角が広い」というぐらいのことでしかない。
旧タイプの自動ブレーキでは、「検出対象を検知する画角が狭い」というふうになっていたので、横から飛び出す歩行を検知できないまま、正面で衝突する……というふうになっていた。
しかし最近の自動ブレーキでは、検出対象を検知する画角が広い」というふうになっているので、結果的には、将来の衝突を予測できるようになりつつある。
上の動画では、予測の量が小さいのだが、メーカーのテストでは、もっと予測の量を大きくしても大丈夫であることもあるようだ。
ただ、右方から直進する(歩行者でなく)自動車まで検知するには、現在のシステムでは不十分であり、右方の画角を大きく広げたセンサーが必要となる。
そのようなシステムは、かなり価格が上がるが、今秋に発売予定のスカイラインの自動運転機能には、そのような機能が搭載されている可能性が高い。(実際、単眼カメラの画角がとても広い。)

日産の自動運転車については、下記項目を参照。
→ 日産の新しい自動運転車: Open ブログ
[ 付記2 ]
「衝突を回避する」と言ったが、完全な回避は難しいかもしれない。特に、右折車に対しては、間に合わないかもしれない。だとしても、直進する車に自動ブレーキがかかれば、速度が大幅に下がるので、事故の規模が軽減されただろう。
特に、大津市の例では、直進する車が(衝突の直前から)ずっとブレーキをかけていれば、早めに停止していた可能性が十分にある。そうなれば、保育園児のいるところに達することもなかったので、あれほどの大惨事は避けられただろう。
さらに言えば、大津市の例では、直進する車だけでなく、右折する車にも(予測型の)自動ブレーキが搭載されていれば、右折する車に自動ブレーキがかかるので、衝突そのものが回避されただろう。この場合にはたぶん、衝突は完全に回避されたはずだ。
【 関連サイト 】
→ JNCAP|予防安全性能アセスメント
新たに多くの車種についてのテスト結果が掲載されている。
また、夜間の対歩行者の衝突回避テストもなされている。
ただし、歩行者の下半身は、白っぽいズボンなので、ヘッドライトで容易に検出が可能となっている。赤外線カメラの機能の有無は、チェックされていない。(どうせ搭載されていないから、試験をすれば、全社が不合格になるせいだろうが。……あえて満点を取りやすくした、甘いテストとなっている。)
【 関連項目 】
もっと厳しいテストにするべきだ、という話は、別項で述べた。
→ 自動ブレーキと夜間歩行者: Open ブログ
ここでは、次のようなテスト対象が考えられている。
・ 夜間の歩行者(白ズボン以外)
・ 横断歩道を歩行中の歩行者 (先行車は停止中)
・ 薄暮で西日に向かっている自動車
・ トンネルの出口に向かっている自動車
これらのテストをすれば、現在の自動ブレーキ車は、ほとんどが零点しか取れないだろう。
