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独裁者の下で国家崩壊しているベネズエラでは、餓死者が続出している。
→ 給料は紙くず、餓死者も…:朝日新聞
→ 【ベネズエラ】給料つぎ込んでもチーズが買えない 餓死者も
インフレもハイパーレベルだ。
ベネズエラ中央銀行は12日、3種類の高額紙幣を導入すると発表した。最高額を一挙に100倍に引き上げる。同国は2018年8月にインフレ対策として通貨の単位を5ケタ切り下げるデノミを実施したが、年率81万%のハイパーインフレのなか、現状の紙幣では支払いに対応できないケースが増えていた。
決済にはデビットカードやネットバンキングを使ったキャッシュレス化が進んでいた。しかし足元では停電や通信環境の悪化により、再び紙幣の重要性が増しているという。
( → ベネズエラ、高額紙幣発行へ 最高額100倍に引き上げ:日本経済新聞 )
ハイパーインフレには電子マネーで対応できる……と思っていたら、停電続発で電子マネーが使えなくなってしまう、というオチ。まるで冗談だ。
どうしてこうなるかというと、国境封鎖で物資が流れ込まないからだ。
→ ベネズエラ、ブラジル国境閉鎖へ 支援物資入れない狙い:朝日新聞
最近になって、ようやく一部で国境封鎖の解除をしたが、商業物資の流入はなくて、人間の通行(および手荷物)が認められただけだ。
→ ベネズエラ、コロンビア北部での国境封鎖解除 ジョリーさん訪問 - 産経
→ ベネズエラ コロンビア国境の封鎖解除 物資の買い出しに人殺到 | NHK
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さて。こういうひどい状況を見て、何とかすべきだと思ったらしく、朝日新聞が社説を記している。
ベネズエラが深刻な人道危機に陥っている。栄養失調や医薬品不足で命を落とす子どもたち。停電が慢性化した市街地。
これだけ危機が深まっているというのに、国際的な緊急支援は現地に入ることすら難しい。マドゥロ大統領率いる政府が、大規模な危機の事実を正面から認めないからだ。
だが人道支援を阻むものは、現政権の独裁的な姿勢だけではない。政争の背後にある国際関係が厚い壁となっている。
米国はグアイド氏を支持し、体制転換の圧力を強めている。中国とロシアは現政権に肩入れしており、間接的な大国間のにらみ合いになっている。
武力介入の可能性も否定しないトランプ米政権の言動は危うい。一方、現政権の強権を黙認する中ロも無責任である。
2005年の国連サミットでは、「保護する責任」の概念が確認された。国家が国民を守る責任を果たさない場合は、国際社会がその義務を負う、とした画期的な原則だった。
だが今のベネズエラ問題を含め、近年、「保護する責任」の論議は低調だ。体制転換を認めるかや内政不干渉の原則などをめぐり、米欧と中ロの根源的な論争の出口が見えていない。
破綻(はたん)国家の悲劇を繰り返さないために、米中ロは非難の応酬をやめ、人道支援に絞った合意を導く手法を見いだすべきだ。
( → (社説)ベネズエラ 人道危機を覆い隠すな:朝日新聞 )
「米中ロは非難の応酬をやめ、人道支援に絞った合意を導く手法を見いだすべきだ」
と結論する。だが、そんな手法があるのだろうか?
一般的には、武力行使を使わない手法として、「経済封鎖」という手法がある。(経済制裁の一種)
だが、今回はこれが無効だ。なぜなら、ベネズエラの側(国境封鎖という形で)自分の側で経済封鎖をしているからだ。自分自身に経済封鎖をしている相手に、「経済封鎖をするぞ」という脅迫は無効となる。
とはいえ、自分自身に経済封鎖をするというのは、ほとんど狂気の沙汰である。(自殺に近い。)
では、どうしてベネズエラは、そういう馬鹿げたことをするのか?
それは、国家の崩壊を認めても、体制の崩壊を認めたくないからだ。「たとえ国民全員が死んだとしても、大統領自身は大統領の座から離れたくない」ということだ。
そして、それは、「自分の寿命の時期まで続けばいい」ということでもある。あと 20年ぐらいは、何とかして、大統領の座にしがみつきたい。そのためであれば、国民全員が餓死しようと知ったことではない、ということだ。
これが、一見バカげた、「自国を経済封鎖する」ということの目的だ。
そして、こういう状況であればこそ、「他国が経済封鎖をする」ということは無効となるわけだ。
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ベネズエラのような国には、経済封鎖(経済制裁)という手法は無効である。とすれば、残るは武力行使しかない。しかも、いったん経済封鎖をしたあとでは、経済的な体力が大幅に低下しているので、戦争遂行能力の大幅に低下している。他国が武力行使をすれば、あっさり勝利できる。(敵味方の被害がとても少ないまま、勝敗の決着が付く。)
経済封鎖のあとこそ、武力行使の最適の時期なのである。
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ところが、朝日のような平和主義者は、武力行使に反対する。あくまで平和的に(戦死者なしに)話し合いで解決しようとする。しかし、そのような状況を続けても、解決は永遠にありえないのだ。単に餓死者が続出するだけなのだ。
ここでは、次の二者択一となる。
・ 平和主義を取る (独裁者・餓死者を放置する)
・ 武力行使をする (独裁者・餓死者を解消する)
この二つのうち、一方しか取れない。
平和主義を取れば、戦死者を出さずに済むが、独裁体制は続いて、大量の餓死者が発生する。
武力行使をすれば、平和主義という理想の火は消えるが、現実レベルでは独裁者・餓死者という問題を解決できる。
この二つのいずれかであって、その双方を取る手はないのだ。なぜなら相手は、「自分を経済封鎖する」というバカげた方針をとる国だからだ。
「平和主義で、独裁者・餓死者を解消する」
というのは、最も好ましいことではあるが、その道を独裁者がふさいでしまったのだ。「国よりも自分一人を重視する」という方針(狂気の方針)を取ることで。
そして、狂人にはもはや理性的な判断はできないのだから、狂人とはいくら話し合いをしても無駄である。あとは、次の二つしかない。
・ 武力行使をせず、問題を放置する。
・ 武力行使をして、問題を解決する。
この二者択一こそ、真実(現実)だ。
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ところが、朝日新聞は、この真実(現実)を理解しない。二者択一だということを理解しない。そして、両立不可能な二つをともに追い求めている。「二兎を追うものは一兎をも得ず」を実行する阿呆のように。
日本には、二つの道が残されている。
・ 武力行使によって手を汚すことで、他国民の命を大量に救う。
・ 武力行使によって手を汚すことをせず、他国民を見殺しにする。
朝日新聞は、自己の理念に忠実であるならば、後者を選ぶべきだ。平和主義を標榜し、自分の手を汚すことを徹底的に拒むが、同時に、他国民が大量に餓死するのを見ながら見殺しにする。人道主義よりも、平和主義を優先する。……それこそ、いかにも朝日らしいことだ。勝手にその道を取るといいだろう。(お薦めはしないが。)
だが、その際、「自分は大量の命を見捨てたのであり、自分の理念のために大量の命を殺したも同然だ。自分のエゴイズムで大量殺害した悪魔も同然だ」ということを理解するべきだ。そして、そう理解した上で、「人道的」なんていう言葉は、二度と口にしないようにするべきだ。
[ 付記1 ]
「じゃあ、おまえはどうなんだ?」
と言われたら……
もちろん、朝日とは反対だ。
「自分の手を汚すが、大量の命を救うべきだ」
というふうに主張したい。
ベネズエラを攻撃する国際的な軍事組織(連合軍)を結成した上で、その一部として自衛隊が参加するのと認めるべきだ。
ただし、派遣された自衛隊の指揮権は、日本国でなく連合軍の指揮官に与えた方がいい。それなら、日本が軍事的に戦ったことにはならないので、憲法上の問題を回避できる。(異論はあるだろうが、論争中ということで、かろうじて回避できる。)
日本の首相には、「自衛隊の派遣を取りやめる」という選択肢はある。連合軍の指揮官が勝手なことをしたら、いつでも自衛隊を引き上げることができるわけだ。……こういう条件を設定できるので、自衛隊が無茶なことをすることもないだろう。たぶん、後方支援や兵站(補給)ぐらいだ。
[ 付記2 ]
「自衛隊員が死んだらどうするんだ」
という疑問が出そうだが、連合軍は陸上兵力を使うことはほとんどないはずだ。最初は敵の飛行機を破壊する。次に、制空権を握った状態で、敵の戦車や基地を破壊する。こうして敵の地上戦力を壊滅させたあとで、ようやく陸上戦力が投入される。
この時点では、敵の地上戦力は破壊されているので、陸上での戦闘が起こることもない。陸上戦力は、単に制圧のために投入されるだけだ。戦闘がないので、戦死者(※)もほとんど出ない。
※ 狭義の戦死者、の意。
うるさく問い詰める異論が出そうだ、とコメント欄に指摘あり。
人権屋さんのきれいごとが抱える矛盾を端的にご指摘されていて、非常に参考になりました。
本質に対するコメントではないので、不要でしたら削除してください。
@日本語の違和感
>平和主義を標榜し、・・・他国民が大量に餓死するのを見殺しにする
→「大量に餓死する他国民を見殺しにする」
A付記2について
戦死者がでない。と言い切るのは困難でしょう。例えば、制空権を掌握し、戦車等が壊滅した状態でイラク戦争の地上戦が展開されましたが、ゲリラ戦法で多少の戦死者は出ました。貴稿の指摘する本質に関係ない議論に発展しそうなので、言及は避けたほうがいいかと諌言いたします。
ピンポイントで独裁者だけ暗殺できるなら可です。
あなたの意見は、要するに、「小さな悪に関わるのがイヤだから、大きな悪を見過ごそう」ということ。
つまり、「独裁者を放置して、多数の弱い市民が餓死していくのを放置しよう。自分がおいしいものを食べて気楽に過ごせば、他人が大量に死ぬのはほったらかしにしておこう。見殺しにするのが最善だ」ということ。
それは独裁者が最も喜ぶ意見です。あなたはたぶん、ベネズエラの独裁者に表彰してもらえますよ。偉大なる協力者として。
同様に、北朝鮮や中国の独裁者も、あなたには拍手喝采です。「もっと言って。もっと、もっと」と称賛するでしょう。「トランプが中国や北朝鮮に制裁するのも止めてちょうだい。おれたちの味方になってね」と。
自分が一人も殺さないことで、独裁者が大量に殺すのを放置しながら、ケーキでも食べているんでしょう。楽しそうですね。
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なお、相手の軍人の被害は、やむを得ない。軍隊に所属していながら、「攻撃されたくない」というのは、自己矛盾。軍人というのは戦争をするためにいる。戦争に関わりたくないのなら、軍隊を脱するべき。逃亡でもなんでも。
※ Wikipedia で調べたら、ベネズエラは志願兵なので、いつでも好き勝手にやめることができる。軍隊をやめないのは、自分の自発的意思。つまり、もともと殺意のある人々だけ。
※ 自衛隊の海外派兵も、志願制です。行きたくない人は、行かなくてもいい。たいてい、親が「行くな」と頼むが、本人は「行く」と決める。