2019年06月12日

◆ 踏み間違い事故に都が補助金

 自動車のペダルの踏み間違いによる事故を防止するための装置を普及させるため、東京都が高額の補助金を出すという。

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 自動車のペダルの踏み間違いによる事故(誤発進・急発進の事故)が続出している。そこで、このような事故を防止するための装置を普及させるため、東京都が高額の補助金を出すという。
 高齢ドライバーによる交通事故が相次いでいることを受け、東京都の小池百合子知事は11日、アクセルとブレーキを踏み間違えた際に急発進を防ぐ装置の取り付け費用を9割程度補助する方針を表明した。都議会の代表質問で答弁した。高齢者が対象で、具体的な年齢や開始時期は今後決める。
( → 急発進防止装置、都が9割補助 高齢者事故で対策 :日本経済新聞

 ブレーキとアクセルの踏み間違いによる急発進を防ぐ装置を買った高齢者に、東京都は、購入・設置費の9割ほどを補助することを決めた。来年までの1年間程度に限った措置ではあるが、異例の高率補助で設置を促す狙いだ。
  購入・設置には3万〜9万円ほどかかるケースが多く、都の補助によって自己負担は3千〜9千円ほどになる見通しだ。今後、補助の対象者の年齢や受け付け開始の時期といった詳細を詰めていく。
( → アクセルの踏み間違い防止装置、都が購入費の9割補助へ:朝日新聞

 後付けの装置というと、先にデンソー製の商品がトヨタ車に付けられる、という話を紹介した。これは8万円。
  → 誤発進防止装置の義務化: Open ブログ

 一方、今回話題になっているのは、トヨタ車に限らず、度の車種にも取り付け可能なもので、32,399円(税込)だ。
  → ペダルの見張り番|AUTOBACS.COM

 これは私が前に提案していたものだ。アクセルペダルを急激に踏むのを検知して、そのときにはアクセルペダルの効果を無効化する。
  → 急発進事故の防止: Open ブログ
 ここでは、私が提案したのだが、実は私が提案するまでもなく、とっくに市販化されていたのだった。AUTOBACS 製だ。
 では、私が提案したものであるから、この装置は有益か? 

 実は、そうではない。私が提案したときは、新車に取り付けることを前提としていた。新車ならば、単にアクセルペダルのプログラムを書き換えるだけで済むから、コストゼロで対策ができる。
 一方、今回の AUTOBACS の製品は、中古車に後付けで装着する。当然、コストはゼロではない。32,399円(税込)もかかる。新車では無料で済むものが、中古車だとこんなにも高額のコストがかかるのだ。非常に効率が悪い。

 また、効果も不十分だ。たとえペダルの踏み間違いの防止ができるとしても、自動ブレーキは装着されない。もともと自動ブレーキが装着されていない(もしくは古い時代の自動ブレーキであって性能が劣悪である)場合には、「自動ブレーキが効かない」という大問題は放置されたままである。これでは意図的な暴走事故は防げない。たとえば、福岡の暴走事故。
  → 福岡の暴走事故にはどうする?: Open ブログ
 このような事故は、ペダルの踏み間違いではなく、意図的な暴走事故だから、AUTOBACS の装置では防止できないのだ。これを防止するには、自動ブレーキがどうしても必要なのである。

 また、AUTOBACS の製品は、あくまで急発進の大事故を防ぐだけだ。急発進にはならない形の誤発進については、防げるとは限らない。「ブレーキを急に踏む」という形の急発進は防止できるだろうが、「ブレーキをゆっくり踏む」という形の誤発進は防止できそうにない。大惨事は避けられるだろうが、小惨事は避けられないかもしれない。特に、そのとき、目の前に歩行者がいれば、歩行者が死ぬかもしれない。

 要するに、AUTOBACS の製品は、あくまで機能が限定されたものであって、ソナーやカメラやレーダーを使うような本格的な装置にはとうてい及ばないのだ。
 にもかかわらず、こんな中途半端な製品を、東京都は「9割補助」というふうな、「ほとんど無料配布」に近い形で普及させようとする。なぜ、そんな馬鹿げたことをするのか?
 東京都の小池百合子知事が視察した。
 場所は東京湾岸、東雲の A PIT AUTOBACS SHINONOME(旧スーパーオートバックス東京ベイ東雲)。小池都知事は10日、オートバックスが販売する急発進防止装置や、スバルの運転支援システム「アイサイト」を視察した。知事は現場をおとずれるとすぐにデモカーに乗ってその技術を体感。
 この日、小池都知事をまねいて行われたプログラムは、後付け急発進防止装置を搭載したミニバンでのタッチ&トライと、スバル・アイサイトによるAT誤発進抑制制御/AT誤後進抑制制御の体験。
( → 東京都、急発進防止装置の購入費用の9割を補助へ…小池知事「ペダル踏み間違い対策は緊急課題」 | レスポンス(Response.jp)

 オートバックスの施設に出向いて、ドライビングのパフォーマンスをして、「私はこんなにやっていますよ」と報道陣に向けてアピールする。そのアピールに協力してくれたオートバックスの商品を大々的に売り出す。それに協力する形で、費用の9割を税金で支出する。
 これはもう、ほとんど汚職だな。悪代官が、取り入った商人の商品を、莫大な金で購入する。その原資は税金で、というわけだ。

 ──

 こう聞くと、疑問に思う人もいそうだ。
 「たとえオートバックスがボロ儲けするとしても、この装置を普及させることは良いことでは?」

 ま、その疑問はわからなくもない。しかし、だとしても、物事には限度というものがある。「9割補助」という「ほとんど無償供与」なんていう形にするべきではない。行政による補助ならば、せいぜい1〜2割程度にするべきだろう。
( ※ なぜなら、9割補助だと、特定のメーカーにばかり多大な金をプレゼントするようなものだからだ。行政とメーカーの癒着。……小池都知事のパフォーマンスからして、いかにもオートバックスと癒着している感じだ。)
 
 さらに根源的なことがある。「こんなことをいくらやっても無駄だ。焼け石に水だ。大海の水をバケツで汲むようなものだ」ということだ。
 なぜか? 事故の防止を狙いとするのであれば、大量の自動車を対象とする必要があるからだ。その数はおよそ 50万台だ。
 この数字の根拠は、下記だ。
  →  出典
 これによると、東京都の自動車の保有台数は 300万台あまり。とすれば、高齢者の自動車はおよそ 50万台となる。そのすべてを対象とするべきなのだ。
 ところが、東京都の方針では、たいした台数は目標となっていないはずだ。9割補助で1年間限りということからして、せいぜい1万台ぐらいを目標としているのだろう。こんなことでは、50万台のうちの1万台だから、気休めぐらいの効果しかない。残りの 49万台は放置されたままだ。

 とにかく、事故の防止を狙いとするのであれば、台数が大事だ。50万台規模の台数を実現するべきだ。(ひるがえって、「政策をやりました」なんていうパフォーマンスなんかは、まったく必要ない。)
 さて。50万台規模の台数を実現するには、どうしたらいいか? 1年間に 50万台の装置を生産して、その装置を中古車に装着すればいいか? いや、そんなことはとうてい不可能だ。(1年間に 50万台なんて、やるための設備も人もない。)
 これほどの規模の台数を処理するには、中古の後付けではとうてい無理だ。とすれば、新車でやるしかない。新車への買い換えを促進する形で、安全な車への買い換えを進めればいいのだ。
 これなら、次のようなメリットがある。
  ・ 大量の処理が可能
  ・ 低コストで装着が可能
  ・ 機能も十分である (ソナーなどがある)
  ・ 自動ブレーキも装着される

 あらゆる問題が一挙に解決される。
 ひるがえって、東京都のように、後付けでやると、多くの問題が発生する。
  ・ 大量の処理が不可能 (少量しかできない)
  ・ 低コストで装着が不可能 (高コストになる)
  ・ 機能は不十分である (ソナーなどがない)
  ・ 自動ブレーキは装着されない


 さらに、別の問題がある。中古だと、自動車の耐用年数が短いので、同じ機械を購入しても、償却するための年数が短くなる。つまり、1年あたりのコストが高くなる。この意味でも、コスパが悪い。
 また、装着についても、新車ならば最初から組み立て工程に入っているから問題ないのに、中古車だと新規に取り外しと取り付けの手間がかかる。余分の手間がかかるので、余分の取り付け費がかかる。無駄。
 というわけで、中古車への後付けは、無駄ばかりである。こんなことのために多額の税金を投入しているのは、金をドブに捨てるのに近い。あまりにも馬鹿げている。

 ──

 では、どうすればいいか? 中古車よりも新車の購入の方がいいとして、そのためにはどうすればいいか? 「新車の購入費に補助金を出す」という形だと、対象の台数があまりにも多いので、費用が巨額になってしまいそうだ。それだと手元不如意になりかねない。東京都の財布が音を上げる。

 そこで、困ったときの Openブログ。新車への安全装置普及を促進するために、費用はゼロで済む方法を示そう。こうだ。
 「対象は高齢者に絞った上で、装置の購入者には補助金を出し、装置の非購入者には課徴金を課す。特に、中古車の保有者に、課徴金を課す」


 具体的には、こうだ。
 「75歳以上の自動車保有者には、1台あたり、年3万円ぐらいの課徴金を課す。ただし、その自動車には自動ブレーキと誤発進防止装置の双方が装着されている場合には、課徴金を免除する」
 「一方で、装置の双方を装着している新車を購入した場合には、5万円ぐらいの補助金をもらえる」


 東京都としては、補助金の形で払う支出もあるが、課徴金の形で受け取る収入もあるから、両者が相殺し合う形となる。差し引きすれば、費用はほぼゼロで済む。

 ここで、疑問が出るだろう。
 「装置の双方(自動ブレーキと誤発進防止装置の双方)を装着していることを、どうやって確認するんだ? 東京都全体の自動車を、1台1台、調べて回るのか? そんなのは、すごく大変だぞ! 無理やんけ」
 
 いやいや。そこは手抜かりない。こうだ。
 「車検または定期点検のときに、装置の双方の有無を調べればいい。自動車の型式の登録証を見ながら、装置の有無を調べれば、プロの整備士ならば一発でわかる。たぶん、5秒×2 の計 10秒でわかる」

 つまり、ユーザーの車庫を一つ一つ調べる必要はないのだ。車検または定期点検のときに、プロの整備士が一目見ただけで調べてしまうのだ。このとき、「装置未登載なので、課徴金が3万円かかります」というふうにして、請求すればいいのだ。

 こういうふうにすると、気の短いドライバーは憤激するだろうが、耳打ちすれば収まるはずだ。
 「新車に変えると、5万円をもらえますよ。その上、今後はずっと、3万円を取られませんよ」
 すると、怒ったドライバーはニタニタ笑って、「じゃ、5万円もらおうっと」というふうに転じるはずだ。

 買う車は、何がいいか? 今ならば、軽自動車の日産デイズがお買い得だ。(自動ブレーキも誤発進防止装置もある。)
 ただし、もうちょっと待つと、ホンダの N-WGN が出る。こちらは、日産のデイズみたいな手抜き商品ではないので、あれこれと不満が出ることもなく済みそうだ。
  → フルモデルチェンジするホンダ「N-WGN」、ホームページで先行公開

 なお、日産デイズは、いろいろと機能が手抜きされている。
  ・ リアシートはすごく貧弱
  ・ CVT は副変速機がなくなった
  ・ 足回りも貧弱 (旋回性能が弱い)


  ※ 最後の点は、ベストカーの最新号で報告されている。
    他の二点は、ググれば見つかる。



 【 関連項目 】

 → ITで安全を推進せよ: Open ブログ



 【 関連動画 】



posted by 管理人 at 22:02| Comment(3) | 自動車・交通 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
オートバックスの製品が誤動作、故障したときに、車に与える影響が、新聞記事だけでは分からない。ドライブレコーダは後付けしたが、この製品は補助金がでても、不安で採用はしないでしょう。
Posted by senjyu at 2019年06月13日 14:24
 いつも拝読させて頂いております。南堂さんの洞察力には、常々
敬意を抱いております。しかし、本項の記述が少々気になりました
ので、1点だけ指摘させて頂きます。

>実は、そうではない。私が提案したときは、新車に取り付けるこ
>とを前提としていた。新車ならば、単にアクセルペダルのプログ
>ラムを書き換えるだけで済むから、コストゼロで対策ができる。

 こういった「物体を生産しなければコストはゼロである」という
考えは、いわゆる「デジタル土方」の存在を助長するものではない
でしょうか?

 「プログラムを書き換える」のなら、プログラマの方が"労働"を
して、"価値"を産み出したということです。これを"コストゼロ"と
言われてしまっては、プログラマの方々は、憤懣やるかたないでし
ょう。

 どうも、すみません。IT業界とはさして関係ない人間なのですが
昭和の時代からコンピュータを扱ってきていたので、細かいことが
気になりました。今後もOpenBlogの更新を楽しみにしております。
Posted by 生涯一教師 at 2019年06月14日 20:59
 コスト・ゼロは、一種の比喩的な表現だと思ってください。ソフトの開発費や、そのための人件費が必要なのは、当然のことです。そういうことはわかった上での話。
 いちいち注釈すると長くなるから、注釈しないだけ。どうせ誰だってすぐにわかることなんだし。「言わずもがな」ということ。

 別に、開発する労働者の人件費を払わなくていいと言っているわけじゃないです。そんなふうに誤読する人はいないでしょう。
Posted by 管理人 at 2019年06月14日 22:15
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