2019年06月11日

◆ 入院後は患者の検査をしない

 大学病院などの大きな病院では、入院後は患者の検査をしないことが多い。ゆえに、合併症などがあっても見逃されやすい。

 ──

 まずは、話の取っかかりで、テレビ・ドラマの話。

 (1)
 「ラジエーションハウス」という医療ドラマでは、主人公がちょっと見て「変だな」と疑いを持った患者について、「ぜひ精密検査してください」と強硬にお願いすることで、通常の意思には見抜けなかった難治性の患者を早期発見する……という事例が何度か放送された。
 「患者のためにしきりに奮闘して、頭の固い医師の壁を破るすることで、患者の命を救う」
 というヒューマンドラマ。

 (2)
 「白い巨塔」という医療ドラマでは、入院した患者に疑問点が見つかったので、「( PET で)精密検査しましょう」と進言した新人医師に対して、「おまえはおれの診断に異を立てるのか」と大物教授が激怒して、精密検査を拒否した。そころがあとで、その患者に合併症が発見されて、患者は死んでしまった。「あのとき PET で精密検査しておけば助かったのに」と批判される羽目となった。

   ※ PET = Positron Emission Tomography

 ──

 ま、それはいいんですけどね。後者のドラマで、精密検査を拒否する理由として、次のことが示されていた。
 「入院後の患者については、PET の費用は病院の持ち出しとなる」

 これはつまり、「病院経営のためには、検査はなるべく減らす方がいい」ということだ。検査をやればやるほど、赤字になるからだ。

 これはちょっとにわかには信じがたいかもしれないが、そういう制度はある。うろ覚えだったので、ググって調べたら、次の制度だ。
  → 包括払い制度 - Wikipedia

 通常の治療では、薬剤費や診療費など、実際にかかったコストを病院は請求する。(患者と健保に)
 一方、包括払い制度では、病名ごとに(一定の)定額を病院は請求する。治療しようがしまいが、どっちみち同じ額を病院は受け取ることになる。ならば、なるべく治療しない方がお得だ。というわけで、病院はなるべく検査をしなくなるのだ。

 とすれば、こういう制度こそが、「白い巨塔」における医療ミスをもたらした根源だ、と言えそうだ。
 ドラマでは、大物教授の傲慢さが、( PET の検査を拒んだせいで)医療ミスをもたらした……というふうに説明されている。しかし、本当は、「包括払い制度」こそが問題の根源だった……と言えそうなのだ。

 意外なる視点。そして、そう気づいたあとで、「これはドラマではなくて現実の話だ」とわかるはずだ。「ドラマでは架空の患者が死んだが、現実世界では生身の人間が死ぬのだ」と。
 そして、そういうふうにして死ぬのは、あなたかもしれないし、あなたの家族かもしれない。「検査不足で死にました」という形。

 お悔やみ申し上げます。



 【 関連サイト 】

 包括払い制度の説明。
 当センターでは、国が推奨する医療費支払い制度である、包括医療費支払い制度方式(DPC)を採用しています。
 DPCとは従来の診療行為ごとの点数をもとに計算する「出来高払い方式」とは異なり、入院期間中に治療した病気の中で最も医療資源を投入した一疾患のみに厚生労働省が定めた1日当たりの定額の点数からなる包括評価部分(入院基本料、検査、投薬、注射、画像診断など)と、従来どおりの出来高評価部分(手術、胃カメラ、リハビリなど)を組み合わせて計算する方式です。
( → 包括医療費支払い制度(DPC)について|外来・入院のご案内|【公式】日本赤十字社 和歌山医療センター


 制度の採用率。過半数となっている。
疾病群別包括払い制度(DPC, Diagnosis Procedure Combination)とは、特定機能病院を対象に導入された、急性期入院医療を対象とした診療報酬の包括評価制度である。 日本の診療報酬は出来高払い方式をとってきたが、平成15年度よりDPC制度が導入された。平成24年時点では全一般病床の約53.1%を占めている。
( → 包括払い制度 - Wikipedia

posted by 管理人 at 23:51| Comment(0) | 医学・薬学 | 更新情報をチェックする
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