──
船舶が衝突して沈没した。原因を調べると、対向する船舶の一方だけが回避措置を取っていて、他方は直進したことで、事故が起こったようだ。
千葉県銚子市沖で貨物船同士が衝突し、3人が死亡、1人が行方不明になった事故で、沈没した千勝丸(499トン)が直前に右に旋回する回避措置をとっていた可能性があることが、航跡の分析でわかった。
衝突事故が起きたのは、5月26日午前2時10分ごろ。千勝丸は鹿島港(茨城県)から堺港(大阪府)に向け南下し、すみほう丸(499トン)は市川港(千葉県)から仙台港(宮城県)に向け北上していた。
2隻はすれ違おうとして衝突したとみられ、千勝丸は左舷を下側にして沈没した。国の運輸安全委員会によると、当時はいずれも2等航海士が当直をしていたという。
( → 沈没した千勝丸、衝突直前に回避措置か 銚子沖の事故:朝日新聞デジタル )
スマホ用・縦画像
双方が正面から接近する。このままでは正面衝突しそうだ。そこで千勝丸は、速度を半分に落としながら、右旋回した。しかし、すみほう丸はそのまま直進したあげく、前方で旋回している千勝丸の左腹に衝突した。かくて、千勝丸は沈没した。3人が死亡、1人が行方不明。
この自己の責任は、右旋回をしなかった すみほう丸にあるだろう。しかし、「誰に責任があるか」は問題ではない。どうしてこの事故が起こったのか? どうすれば再発を防げるのか? それを考えよう。
──
事故の時刻が午前2時10分なのだから、深夜である。真っ暗闇だ。都会と違って、光はほとんどない。すみほう丸は、2等航海士が当直をしていたというが、相手船舶に気づかなかったのだろう。そうとしか思えない。(まさか気づいていながら、わざとぶつけたのではあるまい。)
となると、事故の原因は、こうだ。
「衝突しそうな舟同士には、たがいに右旋回するルールがあるが、そのルールを一方だけが守った場合には、守った方が沈没する」
換言すれば、こうだ。
「このルールを、双方が守れば、事故は起こらない。しかし、一方だけがルールを守れば、ルールを守った方だけが大損する」
これは、「タカ・ハト・ゲーム」の原理そのものである。
・ 双方がハトになれば、双方が得をする。
・ 一方だけがハトになれば、ハトになった方が大損する。
・ 双方がタカになれば、双方の損失は最大化する。
(双方が正面衝突で大惨事。)
ここには、原理的な問題があることになる。
──
では、どうすれば解決するか? 「タカ・ハト・ゲーム」の原理に従うなら、こう言える。
「双方がハトになるのが最善なのだから、双方がハトになるように促すシステムを作ればいい」
では、それは具体的には何を意味するか? よく考えて、私はこう結論したい。
「双方に意思疎通がないのが根本原因である。一方がハトを取ったのであれば、その意思を相手に伝えるべきだ。そして、相手がそれを理解したことを確認するべきだ。その上で、対処を決めればいい」
具体的には、こうだ。
「千勝丸は、相手船舶を確認したあと、右旋回を決断した。この時点で、汽笛を大きく鳴らし、相手に光信号を発するべきだった。こうして右旋回の意図を伝えるわけだ。
その後、すみほう丸は、千勝丸から汽笛と光信号を受けたことを告げるために、了解の意を示す汽笛と光信号を発するべきだ。
それを受けた千勝丸は、双方が右旋回をする意図を確認したことになるので、実際に右旋回をすればいい。
一方、相手船舶からの汽笛と光信号を受けなければ、相手船舶はこちらの意図を理解していないと見なせる。その場合には、千勝丸は右旋回をするべきではない。相手船舶は直進してくるだろうと見なした上で、船首を相手船舶に向けたまま停止すればいい。」
最後の点について説明しよう。船首を相手船舶に向けたまま停止すればいいのは、なぜか? 次の理由だ。
・ 船首を向けたままなら、船首同士で衝突する。
・ 船首同士がぶつかったとき、頂点の一点でぶつかる可能性は少ない。
・ 頂点以外でぶつかるなら、すれ違う形になり、衝撃は少ない。
(沈没しないで、ともに被害は最小化される。)
・ 万一、頂点同士で衝突しても、頂点は頑丈であるから、大丈夫。
(船腹を打ち砕かれて沈没するようなことはない。)
以上で、解決策を示した。そのことの基本原理は、次のことだ。
「双方が右旋回をするというルールがあるのはいいが、ここでは双方の意思確認という手続きが抜けている。この手続きがないままでは、ルール自体が欠陥ルールとなっている」
要するに、今回の事故の原因は、ルール自体に欠陥があったことにある。そこで、ルールを改めて、「双方の意思確認」という手続きを加えればいいのだ。そして、「双方の意思確認」があった場合となかった場合で、対処を変えるべきである、というふうにルールを変更すればいいのだ。
[ 付記1 ]
「停止する」と述べたが、これは一案だ。
現実には、最善の策は、「停止しないで、回避行動を取ること」である。相手がこちらに気づいていないのであれば、「相手は直進する」と見なした上で、わずかな差ですれ違うのがベストとなる。そのためには、自分が右または左に移動する必要があるが、それは停止していてはできない。
ゆえに、「停止しないで、わずかに右または左に移動すること」が最善の回避策となる。
[ 付記2 ]
相手船舶から返信が来たあとでは、自分からも「返信を確認しました」という信号を発してもいい。
【 関連項目 】
機械で衝突を防止できる、という案を別項で示した。
→ 艦船の衝突防止にステレオカメラ: Open ブログ
ブログ主様の提言はネットワーク上でデータ送受信を確立する際の
手法「3ハンドシェイク」と同じですね。
今回のエントリーで思ったんですが、ひょっとして航海上の様々な
取り決めの中にも、経験的な慣習の方が優先されて構造的に全体を
見直す事がされていない事例が存在する可能性があるのかも、と感
じました。
結局双方の見張り不十分ですね。
船の灯火については厳密に射光範囲(角度)が決められており、正面から行き会う場合でも灯火の見え方でどちらに回避すればよいか判断できる。これに相手船の見える角度の変化を加えれば、ほぼ単独の操船で回避が可能である。
千勝丸から見た場合、
@最初は緑灯視認、赤灯視認不可(もしくは極めて光量低い状態)
これは相手船に対して本線が右舷側に位置していることになる。
A相手船の方位が340〜350°で方位変化は"ほぼ無し"
現進路維持した場合、衝突の可能性があると判断可能。
ゆえに、この場合、狭隘な航路筋でない限り、左舷側に回避するのが正しい。
結論、なぜ右舷側に回避しようとしたのか?????
輸送船おおすみの事故当時に〇〇な事ばかり言っていた、TVコメンテーターを思いだしたのは寿限無だけであろうか?
それは、記事の後半にも書いてある通りで、下記のことがあるからです。以下、引用。
──
海上衝突予防法によると、対面して進む船同士が衝突する恐れがある場合、それぞれが右に進路をとって回避しなければならない。
https://www.asahi.com/articles/ASM506G0RM50UTIL04L.html
──
これは船舶の航海で、初歩的な基本ルールなので、覚えておいてください。
──
> 左舷側に回避するのが正しい。
それは基本ルールとは逆なので、ダメです。やってはいけない、ということになっている。
> ほぼ単独の操船で回避が可能である。
通信も試みないで、各船が勝手なことをやったら、海上では衝突が頻発するでしょう。だからこそ、基本ルールがある。原則的には、基本ルールに従うべきです。単独行動は禁止です。
※ 本項で述べたのは、その例外となるような話。基本ルールの改定・修正。
航海灯 確認できなかったら正面から来ると考えて お互いに右転するんです 馬鹿がたまにいますから 怖いですけど
この事故 還暦過ぎのおじいちゃんが真夜中 ワッチですよ 多分 両船
実際の状況を想定できていない。
まず、千勝丸から見た場合、前方に船がおり、緑灯のみ視認の状態。
この状態では、相手船が横切り船か浅角度での行き違い船かは不明状態でここを見落として、
後から分かった航跡を見て行き違い船と断定するから話がおかしくなる。
この時点で、基本的に、対手船を右舷に見る船が回避義務がある。
すなわちすみほう丸に右舷への回避を行うのがルール。千勝丸は直進維持。
すみほう丸が右舷への回避を行った場合、千勝丸からは、時間経過とともに赤灯視認、
緑灯未視認へと変化する。
しかし、今回は千勝丸からいつまで待ってもすみほう丸の赤灯が見えない。
つまり、回避を行っていないとなる。
ここまで事態が進んた状態で千勝丸が緊急回避を行うならば、相手船の正面に
出る可能性のある右舷転舵は衝突の危険性を増す行為となるので、左舷転舵と
するのが普通。(寿限無が左舷転舵が正しいと言ったこの状態での行動を指す)
まさか、周りに他船が存在しない1対1の状況のみを考えていませんか?
実際の航行状況を少しは考えた方が良いと思いますよ?
浦賀水道とかの航路筋を実際に見てください。
周囲に複数の横切り船、追い越し船、行き違い船、大は10万トン〜小は数トン、漁労従事船、代船等の航行不自由船まで混在する状況で
複数の他船に対して、信号送信先をどう同特定するか
(相手船にどうやって自分に対する信号と判断させるのか)
自船に対する信号とどうやって判断するのか
信号送信元の船舶をどう特定するのか?
ただ、信号を垂れ流すだけなら汽笛による警告と同じです。
そんな細かな手続きの心配までしなくてもいい。「手続きの書式がわからないから、メールなんて全廃しよう」というのは、ただのイチャモン。
今は相互の意思疎通が必要だ、と述べている。ここで手続きがわからないから意思疎通は不要だ、というのは、論理がメチャクチャすぎる。
もうちょっと建設的に考えるなら、「意思疎通が必要だとして、そのための手続きはどうしたらいいでしょうか?」と疑問を提出すればいい。それならそれで、建設的な意見となる。
単に「自分には解決策がわからないから、否定する」というようなことばかり言っていると、鼻つまみ者になりますよ。誰からも相手にされなくなる。
四九九トンの船ならおそらく 備えてたとおもいますよ ただ 真夜中 ,視界制限、たぶんですが荷主からの早着オーダー 自動操舵のダイアルに手が伸びなかったんでしょうね 亡くなった船員さんを悼みます
寿限無さんのお考え どういったらいいかなー あなた 499総トンの船が1600tの貨物を積載したときの前進惰力 想像してみなさい 左転し始めるのは 14ノットで走ってれば船の長さの五倍はかかりますよ この事故なら300メートル以上かな
船舶の場合 左回頭はダメなんです 多分 コロンブスの時代には決まってたかも たまにこんな人がいるから 事故があるのかな
あらためて書きますが 一機1軸船は後進かけると右回頭しながら減速するんです
普通の貨物船はね
これが漁師さんだと話はちがいますよ 彼等には
法律、決まり、シーマンシップは無いですから 衝突の直前まで命賭けて回避操作するしかないのが現実です 船自体が軽いし、舵効きもいいから 彼等は平気で左転しますね 網 引いてるときは違いますよ
商船も漁船も老齢化 管理人さん どうする 辞めちゃあいいのかな
別に双方の意思確認が不要と言っているわけではないですよ。特定の状況でそれを行うのは別に問題ない。
問題はルールに組み込むという部分だ。
意思確認に時間を浪費するぐらいなら、さっさと回避行動をするのが先だと思っている。
>左回頭はダメなんです。
緊急回避レベルでの話をしているんですがね。いつも左回頭しろなんて言っていないんですが。
現実に今回の事故では右回頭で衝突しているわけです。
言い換えれば、相手船の新路上にわざわざ自船を運んでいるわけです。
ぶつかるのが分かっていて右回頭しろと?
>四九九トンの船ならおそらく 備えてたとおもいますよ
499トン(500トン未満)の船+内向貨物船 ・・・実際には微妙なクラスですね。
現状AISの設置義務はないし”高機能”レーダーの設置義務も無いクラスですよ。
(すみほう丸はAIS未搭載?)
このクラスに対してもレーダー性能向上義務化への法改正は行われているが、適用範囲は新造船もしくは
レーダー換装時時に限る。
・・・言い換えれば古いレーダーがこのクラスの貨物船では使用され続ける可能性が大なわけです。
・ 信号に回答を得る
・ 信号に回答を得ない
という二通りの場合を分けて考えるべしだ、というのが本文です。
信号に回答を得ない場合ならば、相手はこちらを認識していないので回避行動を取る気がない、とわかる。その場合には、すれ違いをめざすべきだ、と書いてある。
何しろ自動応答で済むもんじゃないのが問題なんですよ。
人の操作・判断が介在する以上それなりに時間がかかる訳で、まさか信号送ってから、1秒以内に応答がなければ回答なしと判断とか考えていないでしょう。
応答待ち時間をそれなりに取ったとして、その間直進するぐらいならまず舵輪を回せと言いたいわけですよ
ルール上は双方が右舷転舵ですよ。当たり前の話です。
k氏も誤解していますが、寿限無が上のコメントで左舷転舵と言っているのは、今回のケースで発生した”いつまでたっても”相手船が回避行動をしない状況で直進または右舷転舵では衝突する恐れのある場合の緊急避難です。
当然、左転舵の際は操船信号も発しているとの前提です。(短音2回)
実際に今回のケースでは、右舷転舵では相手船の進路上を横切る操船となり、実際に衝突しているわけです。
言い換えれば、直前まで直進している(いつまでも回避行動を取らない)相手船が、そのまま直進航路を進む確率と、突然回避行動を開始する確率とどちらを取りますかということです。
とか大見得切った割にはずいぶんトーンが下がりましたね
>とか大見得切った割にはずいぶんトーンが下がりましたね
これはブログ主の
>この手続きがないままでは、ルール自体が欠陥ルール
の”欠陥”の記述に対してです。
現在の航海ルールでは、お互いの意思確認を"行わなくても"ルールに従って回避行動を行えば基本的に
事故を防げるようになっている。「決して欠陥ではない」と言った意味合いです。
それだけでは事故は防げないので、相互通信を行える様にVHF Marine Radio(国際VHF)というものがあるのです。
意思確認作業を ”実施しなければならない行為”として衝突回避の行動ルールに組み込む必要はないと言っているんです。
”実施してもよい”ならば別に構いないと思いますよ。
それが”有意義な”ルール改正や装置義務化ならば賛成しますよ。
500トン以上の船舶へのAIS設置義務化、高機能レーダー搭載義務化については大変良い事だと思っていますし。出来れば設置義務を10トン以上に改正して欲しいぐらいです。
寿限無が問題としたのは、回避行動の前の意思確認の実施を”義務化”してはたして安全性は向上するのかといった部分です
全てのシーケンスが自動で行われ、意思確認行為によるタイムラグが回避運動の遅れに影響しないほど短時間で終了するのならば、”義務化”にも当然賛成しますが・・・
> 回避行動を行えば基本的に事故を防げるようになっている。
寿限無さんは、本項の話をまったく誤読していますね。
本項は「一方がルールに従わなければ」という場合の話です。
そりゃ、双方がルールに従えば、事故は起こりません。しかし(サボったり怠惰であったり間抜けであったりして気づかないせいで)、片方がルールを守らない場合がある。そこで、ルールを守らない場合についても考慮するべきだ、というのが本項の趣旨。
今のルールは「ルールを守れば安全だ」ということしか決めていない。「ルールを守らない場合には」ということを想定していない。そこが「欠陥だ」と言っているんです。
なのにあなたは「ルールに従えば安全だ」と言う。まったく見当違いのことを言っている。「ルールに従わない場合」を話しているときに、「ルールに従った場合」のことを話している。
人の言っていることをまったく理解しないで、自分の言い分ばかりを言うようでは、困ります。そういうのは普通、アスペとかコミュ障とか言われます。議論がまったく成立しない。別次元のことを話しているので、話がまったく噛み合わない。
> 意思確認の実施を”義務化”して
全然、違います。意思疎通の有無を確認するんです。
たとえば、今、あなたは私の言い分をまったく理解していない。私の方はあなたの意見を認識しているが、あなたの方は私の意見をまったく認識していない。あさっての方を向いているだけだ。ここでは意思疎通が成立していないんです。そういうことを確認するべきだ、ということ。
ここでは、毎度毎度、同じことが起こっている。
「私の意見を勝手に誤読して、見当違いの読み方をして、そういう誤読に基づいて、批判する反論を書く」
ということ。ありもしない怪物に向かって突き進むドン・キホーテと同じ。妄想に基づいた攻撃。通常、藁人形論法と呼ばれる。
本項のコメント欄では、きつく攻撃してくる人がいるが、いずれもこの手の藁人形論法だ。毎度毎度、誤読して攻撃する。
今回も、その一例が出ただけだ。
どっちでもいいんですけどね。
再掲しますが、
>その間直進するぐらいならまず舵輪を回せと言いたいわけですよ
です。