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列車が逆走して、車止めに衝突した、という事故があった。多大な被害が出たようだ。
自動運転が特徴の新交通システム「シーサイドライン」の新杉田駅(横浜市磯子区)で1日夜、列車が約 25メートル逆走して車止めに衝突し、乗客らが重軽傷を負った事故。
車内の乗客が混乱の様子を語った。
「列車が動き出した数秒後に、ものすごい衝撃で止まった」
前から2両目に乗っていた横浜市金沢区の会社員青木健一さん(46)は、当時をそう振り返る。見渡すと、前の車両には血だらけで倒れ、後ろの車両で顔から血を流している人もいた。
( → 子どもの泣き声、血だらけの人…シーサイドライン車内:朝日新聞 )
こんなにひどい被害が生じたとすれば、車止めはただのコンクリのかたまりだったのだろう。……そう思って、調べたら、まさしくそうだと判明した。
新杉田一番線にて車両が逆走!
— けいひん (@keihin_41T) 2019年6月1日
やばいって!!!!#拡散希望 pic.twitter.com/njUVu198P4
コンクリではなくて、鉄骨だったが、どっちにしろ同じことだ。ここには緩衝材がない。
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ひるがえって、車止めには緩衝材を付けるのが常道である。
たとえば、枕木のある緩衝地帯や、油圧ダンパーを使うことがある。
→ 車止め - Wikipedia
他にも、さまざまな緩衝装置が工夫されている。
→ 緩衝式車止め概説
見ればわかるが、いろいろあって、技術的に興味深い。先人はいろいろと知恵を絞っている。
( ※ 私が口出しする場面じゃないね。「困ったときの……」と言いたいところだが、「困っていません。間に合っています」と言われそうだ。 (^^); )
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ではなぜ、今回の駅には、それがなかったのか?
実は、この駅の車止めを詳しく見ると、ここに直接ぶつかるわけではなく、その前に「レールのない地帯」がある。
→ 終点 車止めシリーズ 横浜新都市交通 新杉田駅 - こてはし鉄道日記
つまり列車は、レールを走ったあと、レールの終端を乗り越えて、その先のコンクリ路面を暴走したあとで、最後の車止めにぶつかったわけだ。(いきなり車止めにぶつかったわけではない。)
で、この「レールのない地帯」があるから、それが緩衝装置のかわりになる、と思ったのだろう。
なるほど、その発想は、列車が低速であるときには成立する。しかし、列車が高速になると、もはや無効となる。
では、どうすればよかったか? せっかく「レールのない地帯」があったのだから、ここに適当な緩衝物をおいておけばよかった。ドラム缶でもいいし、金属の箱でもいい。そういうものをいっぱい置いて、詰め物のように使っておけば、たいしてコストもかけずに、緩衝装置にすることができただろう。
なのに、その発想がなかった。
ここでは「安全意識の欠落」が根源的な原因だったと言えるだろう。「フェイルセーフ」という発想が全くなかったわけだ。
同様の駅は、他にも多いはずだ。事故の再発が危ぶまれる。できれば全国一斉に、点検してもらいたいものだ。
【 追記・訂正 】
別項のコメント欄で指摘されたが、実際には油圧式ダンパーがあるそうだ。ググったら、すぐに見つかった。
運営会社によると、車止めは油圧式ダンパーで支えられており、元々の位置から最大で約1メートル動く。衝突時にブレーキはかかっておらず、車止めが衝撃を吸収したことで停車した。
( → 衝突後、1メートル移動 横浜シーサイドライン 車止めが衝撃を吸収 - 産経ニュース )
どうやら本項は、私の勘違いだったようだ。お詫びして、訂正します。
なお、本文中でリンクした記事・写真( 2011-09-12 )では、油圧式ダンパーは設置されていないようだ。とすると、この8年間のうちに、油圧式ダンパーが設置されたらしい。
ただし、ダンパーの機能は不足していたようだ。もっと強力なダンパーが必要だったようだ。
( ※ 油圧式と機械式の二重ダンパーにするべきだっただろう。)
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三上章彦社長は「逆走することは全く想定していなかった。早急に原因究明し、再発防止に努めていきたい」と話した。
三上社長は「詳細はわからないが、前に進む信号がうまく作動せずに逆走してしまった。電気系統なのか車両の問題なのか、早急に原因究明したい」と話した。
https://www.asahi.com/articles/ASM622RL8M62ULOB001.html
<引用(日経)>
シーサイドラインは前進時に不具合があれば自動停止するが、想定されていない逆走時は自動でブレーキがかかる仕組みはなく、司令所が手動で停止させる。司令所が異常を知ったのは車止め衝突後だった。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45599580T00C19A6CC0000/
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ハッキングされたかな。
と言うのは、今年の3月31日にご存じのように金沢八景駅が国道を跨ぐ形で延長された(京急直結のために国道ぶん路線延長)からでした。
当然制御機構はハード、ソフト両面に修正が掛けられたのは間違いないからでした。30年間無人運転無事故のシステムが2か月で事故!だからです。
それと此れは自動運転ではなくリモコン運転なので操作ミスということも十分ありえることです。逆走防止装置とか終点暴走防止装置はどうしたのでしょうか?
まさか付いてないなんて事ないですよね。
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一方、事故の原因については、だいたい判明したようだ。「断線が原因だ」とのこと。
以下、引用。
> 原因は進行方向の情報を伝えるケーブルが断線したことで、モーターを制御する装置の進行方向が切り替わらないまま発車したことによる。断線の原因は現在、調査中だという。
→ https://www.townnews.co.jp/0110/2019/09/05/496056.html
> シーサイドラインによると、5両編成の事故列車のうち1号車(衝突した側とは反対の先頭車両)で、列車の進行方向をモーターの制御装置に伝える2本の配線のうち1本が断線していたことが判明。列車が折り返して発車する際、進行方向が制御装置に正しく伝わらず、逆向きに走り出したとみられる。
→ https://toyokeizai.net/articles/-/299884
と、すぐ上のコメントで記したが、原因がようやくわかったらしい。原因は、作業のミスで、配線が摩耗しやすくなっていたこと。時間がたって、摩耗して、断線したらしい。
以下、引用。
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「ケーブルの断線は車両を製造する際の配線作業が適切に行われず、ケーブルが近くの金属に接触していて、絶縁体が振動によって摩耗する状態になっていたということです。」
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200227/k10012303761000.html
→ https://digital.asahi.com/articles/ASR6H3FP6R5XULOB00D.html