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ゴーンの犯行の原因となった巨額損失は、リーマンショックで生じた評価損だ、と報道されている。
日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告(65)をめぐる特別背任事件で、リーマン・ショックで巨額の私的損失を抱えた前会長が、新生銀行から求められた担保は50億円にのぼり、これに対応するために、サウジアラビアの友人が保証した30億円の信用状とともにオマーンの友人から借りた約19億円を差し入れていたことが、東京地検特捜部の調べでわかった。
前会長は新生銀行と私的な投資契約を結んでいたが、リーマン・ショックで約18億5千万円の評価損が生じた2008年10月末、契約者を日産に移した。しかしこの契約の付け替えを証券取引等監視委員会が問題視したため、契約を自身に戻したいと新生銀に相談。
( → ゴーン前会長、発端は担保50億円 中東の友人から調達:朝日新聞 )
ここには「リーマンショック」および「評価損」という言葉がある。これからすると、次のように推察される。
「景気悪化が生じたので、手持ちの資産の評価額が下がった」
しかし、これはおかしい。たとえ資産の評価額が下がったとしても、20億円の黒字が 10億円の黒字に減るぐらいであって、赤字は発生しないからだ。
赤字が発生するとしたら、ただの評価損ではなくて、何らかの巨額投機があったと推察される。そして、そのような巨額投機があったとすれば、それは、倍率の高いレバレッジの効く投資、つまり、FX であったと推定される。
そして、FX であったとすれば、そこでは、株価の投機がなされたのではなく、為替(通貨)の投機があったはずだ。
ここまで考えて、私は次のように推測した。
「この当時には、ユーロが暴落するという大変動が生じた。そのせいで大損を食ったのでは?」
そう思って調べたところ、まさしくこの時期に急激なユーロ安が発生していると判明した。2008年7月18日から同年10月10日にかけて、極端な暴落が発生している。

リーマンショックは、同年9月15日に始まるから、それに先だって、ユーロの暴落が起こっているわけだ。この暴落は、リーマンショックによるものとは言いがたい。ユーロ危機が原因となるものだろう。
なお、ドル・円レートも、リーマンショック以後にかなりの変動が生じているので、ドルの投機でも大幅な損失は発生していただろう。(ドル安で。)……とはいえ、ユーロ危機のようなドル危機があったわけでもないので、ドル安の程度はユーロ安ほどではない。
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なお、上記は私の推測だ。その後、ネットでググってみたところ、ある程度、裏付けとなる情報を得た。
→ ゴーン氏を破滅させた「投機的預金取引」の全貌!
FX に似ているが、デリバティブ付きの「仕組み預金」というものを使ったそうだ。投機性はさらに高くて、自己資金なしで、新生銀行から借りた預金を元手とした。それにさらに3倍のレバレッジを利かせた。とてつもなく投機性が高い。
そのあと、ユーロではなくドルで投機をしたらしい。
となると、ユーロ安は関係ないのか? いや、当時のドル安は、ユーロ安に引きづられたところがあった。どちらかと言えば、ユーロ危機のときの「円の独歩高」であった。それにともなって、ドル・円のレートの変動も生じたと言える。
実際、このころは、ユーロ・ドルのレートはたいして変動していないのである。ユーロ安の影響ならばいくらかはあったが、リーマンショックの影響はほとんどなかった。リーマンショックは、経済には大きな影響を及ぼしたが、ユーロとドルの通貨レートには大きな影響を及ぼさなかったのである。
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とすれば、以上のことからして、次のように結論できるはずだ。
・ 損失は、資産の評価損でなく、投機の失敗で生じた。
・ 投機の対象は、株でなく、通貨であった。
・「円安」に賭けたのに、実際は大幅な「円高」になった。
・ 円高の理由は、リーマンショックでなく、ユーロ危機。
これらが真相であろう。
そして、そうとすれば、冒頭の朝日の記事は、てんで見当違いであったことになる。なぜなら、こういうふうに受け取れるからだ。
・ 損失は、資産の評価損で生じた。
・ 投機の対象は、株であった。
・「株高」に賭けたのに、実際は大幅な「株安」になった。
・ 株安の理由は、リーマンショック。
ところが、実際にはそうではなかった、と言えるわけだ。
