2019年05月27日

◆ フィアット・ルノー 経営統合

 フィアットとルノーが経営統合に向かいつつあるようだ。その意義は?

 ──

 フィアットとルノーが経営統合に向かいつつある。
  → FCA、ルノーとの提携を27日にも発表か−統合につながる可能性 - Bloomberg
  → ルノーとフィアット・クライスラーが統合視野に提携交渉(Response.jp)
  → FCAがルノーに統合提案 きょうにも、世界販売首位:日本経済新聞

 最後の記事にあるように、この交渉はフィアットの側から申し入れたらしい。ルノーが日産に圧力をかけるためにフィアットに鞍替えした、というようなことではない。

 ──

 ……と書いたあとで、さらに続報が来た。統合は正式に提案され、日産もこれに一枚噛むことになるようだ。
 欧米自動車大手のフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)は27日、仏自動車大手ルノーに経営統合を提案したと発表した。統合比率は1対1と対等とし、統合による工場閉鎖は行わないという。年間販売台数はFCAとルノーで計 870万台になるとする(日産自動車と三菱自は含まない)。ルノーと連合を組む日産と三菱を加えると、年間販売は約 1500万台となり、独フォルクスワーゲンやトヨタ自動車の約1千万台を大きく引き離し世界トップとなる。
 FCAが公表した提案内容によると、統合が実現すれば、オランダに置かれる持ち株会社(統合会社)の傘下にルノーとFCAがぶら下がる形となる。両社の株主には統合会社の株式が配分される。
 統合会社の取締役は計 11人で、FCAとルノーから各4人、日産から1人を出す形になるという。
( → フィアット、ルノーに経営統合提案 世界トップの連合へ:朝日新聞

 FCAとルノーが対等で合体して、日産は加わらないが、役員だけは日産が1名を送る……ということらしい。ふうむ。なるほど。

 ──

 では、以上のことの意味は、何か? 今回の出来事は、何を意味するか? 以下で、私の見解を述べよう。

 実は、この提携は、何ら不思議ではない。私としては前から予想していた。この形の提携とは限らないが、次のことを必然と見なしていた。
 「フィアット・FCAは、年産 500万台規模であり、他の年産 1000万台のグループ( VW・日産・GM・トヨタ)からは大きく引き離されている。二番手グループ(フォード・ホンダ)でさえ、生き残りは不明なのに、フィアット・FCAは大きく取り残されている。このままでは次世代の電気自動車や自動運転車などの開発もままならない。将来の倒産の危機さえある。とすれば、どこかのグループと合体・提携するしかない」

 この時点では、提携先は不明だったが、とにかく、提携の必要性ははっきりとしていた。
 そして、その後、フィアットは提携先としてルノーを選んだわけだ。日産でなくルノーを選んだのは、相手の規模が大きすぎないので、主導権を維持できると踏んだのかもしれない。

 ともあれ、以上のように考えれば、今回の出来事はすっきりと理解できる。この件は、あくまでフィアットの都合であって、ルノーの都合ではない。
 ただ、ルノーとしては、「単独では生きられない」ということがフィアット以上に切羽詰まった懸案となっていたから、「渡りに船」と応じたのかもしれない。
 「日産に頼んでも、埒が明かないから、とりあえずはフィアットと合体しよう。日産とは、今のようにくっついた状態を続ければ、現状より悪くなることはない」
 というわけだ。

 ──

 ただ、日産から見れば、難点がないわけでもない。

 そもそも、フィアットがこの連携を求めたのは、ルノーが狙いではなく、日産の技術が狙いだ。特に、EV と自動運転が狙いだ。
 自動運転については先日、日産が世界最先端レベルの自動運転技術を公開した。だから、「それなら連携相手は日産にしよう。日産には世界最先端レベルの EV 技術もあるし、自動運転技術といっしょで一石二鳥だ」と思ったのかもしれない。こう考えれば、ちょうどこの時期に今回の出来事が起こったのも、納得できる。

 また、フィアットがルノーを相手にしたことは、「ルノーが日産の技術を持っているので、ルノーと合体すれば、日産の技術を簡単に取得できる」と思ったのかもしれない。
 つまり、日産を直接支配しようとすると、日産の規模が大きすぎるので、フィアットは飲み込まれてしまって、主導性を発揮できない。そこで、まずはルノーと合体することで、巨大な日産の支配から独立しよう、というわけだ。
 これはまあ、(小が大を飲む形で)ルノーが日産を飲み込もうとしているのとは逆で、フィアットは日産に飲み込まれまい(小が大に飲み込まれまい)とするわけだ。それそれで合理的な判断だと言えるだろう。

 なお、フィアットは、ルノー(というよりマクロン)と違ってバカではないので、強権で強引に支配しようという発想はないらしい。この意味では、平和主義のフィアットが一枚噛むことで、ルノーが日産にかける圧力は弱まるかもしれない。日産にとっては好都合だと言えるだろう。本サイトでこれまで懸念していた「ルノーによる日産支配」の問題は、一挙に解決に向かうかもしれない。

 一般的に言えば、こうだ。
 仲間がそれぞれ譲歩すれば、「ハト・ハト」の路線になるので、全員が win-win の関係になれる。
 逆に、一方が他方に対して強圧的に出れば、「タカ・ハト」の関係になるので、タカには都合がいいが、ハトには(一方的に食い物にされるという)不利が生じて、win-lose の関係になる。こうなると、ハトの側は「食い物にされまい」として、この関係を脱したがる。かくて、関係は破綻する。……これが現状のルノー・日産の関係に近い。
 マクロンという馬鹿大統領のせいで、ルノー・日産の関係は破綻しかけているが、フィアットが介入することで、意外な形で関係は安定化するかもしれない。三本足の鼎(かなえ)のように。

 ──

 ともあれ、日産にしてみれば、フィアットは提携相手として悪くない。GMやフォードよりはずっと好ましいだろう。(相手がデカすぎないので。)
 また、トヨタがマツダ・スズキとくっついて強大化している(年産 1400万台規模になっている)という状況では、グループの仲間を増やすのは有利な点だと言えるだろう。フィアットの連携は、日産としても悪くない話だ。技術開発費をフィアットにも負担してもらえるのであれば、EV や自動運転車の技術開発もいっそう進展するしね。



 [ 付記 ]
 関連情報だが、トヨタとマツダが提携を強化した。マツダが開発中のスカイアクティブエンジン(3リットル直6)を、将来のトヨタ車に載せるらしい。
( 出典は ベストカー 2019年 6/26 号 → Amazon

 日産もトヨタもグループ合計で年産 1400万台ぐらいの規模になると、ホンダの小ささがいっそう目立つ。独立路線がどこまで通用することやら。黒字を出していたときはまだいいが、最近は四輪事業の黒字が大幅に縮小しているので、先行きは楽観できない。ひょっとしたら GM と組むかもしれない。(フォードでは弱すぎるのでメリットがないからだ。また、GM とはすでに、小規模ながら業務提携している。)
posted by 管理人 at 22:01| Comment(0) | 自動車・交通 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

  ※ コメントが掲載されるまで、時間がかかることがあります。

過去ログ