2019年05月23日

◆ 発進暴走事故は過失か?

 池袋の発進暴走事故は、過失として扱われている。しかしこれは、(罪の軽い)過失ではあるまい。故意に近いものとして、厳罰に処するべきだ。

 ──

 池袋の発進暴走事故があった。前にも言及したとおり。
  → 高齢者の暴走運転には?: Open ブログ

 この事故は、過失として扱われている。

 第1に、本人が「過失だ」と言い張っている。被害者へのお詫びの手紙の中の言葉を引用しよう。
 「自分の過失を責めるばかりです」

 これでお詫びをしているつもりなのだが、あくまで「過失だ」と言い張っており、責任感はほとんど皆無だ。

 第2に、警察がこれを「過失」だと見なしている。
 警視庁は、飯塚元院長がパニックになり、ブレーキと間違えてアクセルを強く踏み続けたとみて、自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致死傷)の疑いで裏付けを進めている。
( → ブレーキ踏んだ形跡なし 池袋暴走、事故車分析で判明:朝日新聞

 本人が言い張るだけでなく、警察までも、これを「過失」と見なしているわけだ。

 ──

 しかし私としては、これを「過失」だとは見なさない。ほとんど「故意」に近いと思う。
 なぜか? アクセルとブレーキを踏み間違えたこと自体は、過失だろう。しかし、そういう過失が起こることは、容易に予想された。ならば、そこには「未必の故意」があったと認定されるからだ。

 ではなぜ、そう言えるのか? それは、次の事実があるからだ。
 「本人はもともとブレーキを踏む能力がなかった」


 その能力は、「まったくなかった」というほどではなくとも、「ほとんどなかった」と言っていい。なぜなら、まともに歩く能力がなかったからだ。つまり、こうだ。
 「本人は、歩く際には、杖を使って、歩幅 10センチぐらいのすり足で歩くことしかできなかった」。

 このことは、NHK の動画で確認できる。
  → 池袋の母子死亡事故 87歳のドライバーから任意で聴取 | NHKニュース

 YouTube にもある。




 まともに歩くことさえできない。つまり、まともに膝を上げることすらできない。ならば、まともにブレーキをかける能力はないのだ。
 それにもかかわらず、運転した。ならば、この時点で、「危険運転」をすることになったのだから、この時点で、酒酔い運転などと同様に、「危険運転致死傷」の適用対象となるはずだ。

 ──

 にもかかわらず、警察はこれを「過失運転致死傷」として扱った。
 とすれば、ここには、法の未整備があることになる。

 では、法律のどこが問題なのか? 条項を調べると、似た例として、次のことは処罰対象となる。
 3. その進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為
( → Wikipedia
 
 下記に解説がある。
 この罪は、一般的に未熟運転致死傷罪と呼ばれることがあり、以下でも、そのように呼称したいと思います。
 ここでいう「進行を制御する技能を有しない」とは、ハンドルやブレーキ等の基本的な自動車操作の技能を有しないことをいいます。
( → 未熟運転致死傷罪とは | 刑事弁護士.JP

 この「進行を制御する技能を有しない」という点では、まさしく該当するから、今回の運転者は、「危険運転致死傷罪」の一類型としての「未熟運転致死傷罪」に該当すると見なせそうだ。
 しかしながらここでは、「未熟」という言葉で説明されているので、「いまだ能力をもたない」というふうに解釈される。
 一方で、今回の運転者は、「いまだ能力をもたない」のではなくて、「いったん能力をもったのに、その後に能力を喪失した」のである。「未熟」というよりは、「能力喪失」という言葉がふさわしい。
 従って、法を厳密に解釈するのであれば、今回の運転者は、「未熟運転致死傷罪」に該当しないと言えそうだ。(実質的にはともかく、形式的には。)

 では、かわりに「病気による能力喪失」には該当しないか? そう思って調べると、次の項目もある。
 病気運転致死傷罪
 政令に定める特定の疾患の影響により走行中に正常な運転に支障が生じるおそれを予め認識していながら自動車を運転し、その結果として当該疾患の影響により正常な運転が困難な状態に陥った場合
( → 危険運転致死傷罪とは?|弁護士が解説
 
 しかしながら、ここで列挙されている病気には、統合失調・てんかん・低血圧症など、意識の喪失をもたらすようなものばかりだ。手足の不具合という症状は含まれていない。
 したがって、これもまた、例の運転者を違法と見なすものではない。

 ──

 結局、この事件の問題は、「法の未整備」ということにある。
  ・ 能力の「未熟」は咎めるが、能力の「喪失」は咎めない。
  ・ 精神の「能力喪失」は咎めるが、身体の「能力喪失」は咎めない。

 こういう形で、「法の穴を突かれた」というふうになった。かくて、身体の「能力喪失」に該当する運転手が野放しにされた。「まともにブレーキを踏む能力もない運転手に、免許証を許している」という形で。

 ──

 ひどいものだ。とすれば、以後は、この点で法律を改正するべきだろう。
 「身体の能力喪失で、ブレーキを踏む能力をなくした」

 ということを、危険運転致死傷罪の要件とする、というふうに。
( ※ これを飲酒運転と同様に扱うわけだ。)

 なお、「身体の能力喪失」を判定するのがちょっと難しそうだが、これは、補則ふうにして、次のように規定するといいだろう。
 「運転する者は、自力で階段を上り下りする能力を有することを義務づける」


 そして、これを満たさない者(自力で階段を上り下りする能力を有しない者)は、「身体の能力喪失」に該当すると見なして、「危険運転致死傷罪」の処罰対象とするわけだ。

 実際、今回の運転手も、上記の法規定があれば、事故を起こさずに済んだはずだ。
( あの運転手は、「自力で階段を上り下りする能力を有しない」からだ。それは動画を見ればわかる。)

 ※ 「自力で階段を上り下りする能力」という点については、「すごくゆっくり階段を上り下りする」というのは、認めない。1段につき1秒以下を義務づける。10段で 10秒以下。

posted by 管理人 at 21:07| Comment(6) | 安全・事故 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
車椅子が必要な方が、手でブレーキかけれる特殊な車を運転した時に死傷させたら、直ちに危険運転に該当するとなると、厳しすぎるかもしれないです。
Posted by 京都の太ったおっさん at 2019年05月24日 06:22
> 手でブレーキかけれる特殊な車を

 それはもちろん話が別です。本件はあくまで、
 「手でブレーキかけれる特殊な車を使っていない場合」
 です。
 こんなことは、言うまでもないと思ったので、いちいち書かなかったが。

 例の事故を起こした人も、「手でブレーキかけれる特殊な車」を使えば、問題なかったのに。
Posted by 管理人 at 2019年05月24日 07:05
過去に免許更新をした際の講習会場が警察署(1階の窓口で申請する)の階段を降りた地下にあり、不便を感じたのですが、講習会時に「会場に来るために階段を降りれるかどうかで運動能力を見ている(能力がなければ更新しない)」との説明がありました。全国で統一基準があるかどうかは不明ですが。
Posted by アラ還オヤジ at 2019年05月24日 09:28
なるほど
そういえばうちの地域の警察署も二階で講習やります。
というかこれまで住んだ地域みんなそうでした。
警察の直轄部門じゃないから不便な二階にあるのかと思ってました。
Posted by 先生 at 2019年05月24日 10:28
法の不備を突いたのか。。。
カネかけてブレーンを何人か雇ったな。。。
うまく逃げ回ろうとしている。
Posted by 反財務省 at 2019年05月24日 10:33
> 結局、この事件の問題は、「法の未整備」ということにある。

極めてうがった見方をすれば、そこをあえて基準にすることで
「上級市民」を本来問われるべき重さよりはるかに軽い「微罪」
ですませよう、という忖度が働いている可能性がある、とも読め
ますかね。

かの東名あおり運転が「停車させているのであるから危険運転は
成立しない」と主張したのと逆パターンなのかとも勘ぐれます。


古いネタですけど、海軍乙事件にも関わらず栄転した福留中将
の事なんかが浮かんできますけど、まさかそんな体質が今も
引き継がれているわけでもないですよね。
Posted by 参考になります。 at 2019年05月24日 11:29
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