──
炭素税を導入したいときに、
「強引に導入してしまえ」
と口で言うのは簡単だが、実行は難しい。今の政府は自民党政府だ。これは、国民のためにあるのではなく、企業のためにある。(つまり、献金してくれる相手のためにある。)
となると、企業の反対する炭素税を導入するのは、とても困難だということになる。いくらやりたくても、なかなか実現しないわけだ。困った。
──
そこで、困ったときの Openブログ。うまい案を出そう。
「現在、すでに同種のものが導入されているので、それを衣替えすればいい」
つまり、新たに炭素税を導入する必要はないのだ。同様のものがすでに導入されているので、それをちょこちょこっと制度改革する(そして名前を「炭素税」にする)だけでいい。これなら、ごく簡単だ。
そう聞くと、疑問に思う人が多いだろう。
「炭素税と同種のものが導入されているだと? そんなものがあるのか?」
答えよう。
それは、ある。それは、「再生エネ賦課金」だ。現在、1kWh あたり 2.95円が徴収されている。
再生可能エネルギーを普及させるために電気料金に上乗せされる賦課金について、経済産業省は22日、2019年度は18年度より約2%高い1キロワット時あたり2.95円と決めた。月260キロワット時使う一般的な家庭では、5月分から、今年度に比べて月あたり13円高い767円になる。年間では156円高くなり、9204円の負担となる。
再生エネは、固定価格買い取り制度(FIT)に基づいて、国が決めた価格で買い取るよう電力会社に義務付ける一方、その費用は賦課金として電気の利用者が支払う。太陽光の急速な普及につれて賦課金は毎年度増額されており、19年度は制度が始まった12年度の 0.22円から 13倍以上に膨らんで過去最高となる。
( → 再生エネ賦課金、19年度は2%増額へ 電気代に上乗せ:朝日新聞 )
固定価格買い取り制度(FIT)の導入時には、0.22円であって、たいした額ではなかったが、それがいつのまにか 13倍以上に膨らんでいる。払う額は、月あたり 767円である。
この高額の賦課金を、「炭素税」に衣替えすればいいのだ。
──
では、どう衣替えするか?
賦課金は、現状では、「あらゆる電源に平等にかかる」というふうになっている。再生エネは、補助金を得られるから、その分を差し引くと、「再生エネでないもの」のすべてに平等にかかっている。
そこで、次のように変更すればいい。
「賦課金は、炭酸ガスの排出量に比例してかかる」
この場合、おおざっぱに、次のようになる。( 円/kWh )
・ 石炭発電 …… 8円
・ 新型石炭発電 …… 6円
・ 旧型石油発電 …… 4円
・ 新型LNG 発電 …… 3円
・ 原子力発電 …… 0円
・ 再生エネ発電 …… 0円
(風力・太陽光・水力・ゴミ発電)
新型石炭発電は6円で、新型LNG 発電は3円。両者には3円の価格差が付く。このことで、新型石炭発電を導入することの価格的なメリットをなくすことができる。
かくて、前項で述べたこと(新型石炭発電を導入することの価格的なメリットをなくすこと)が実現する。めでたし、めでたし。
なお、上記の炭素税は、最終的なものではない。将来的には、この炭素税をさらに引き上げることを予想させておく。そのことで、「新型石炭発電の導入にはリスクがある」と予想させる。
具体的には、次の予定が好ましい。
・ 上記の炭素税は、今すぐ導入する。(再生エネ賦課金 の衣替え)
・ 2030 年を目途に、炭素税をさらに引き上げる。
最終的には、 2035年を目途に、石炭発電所を全廃させるといい。そうなるように、炭素税は上記事例の額の、2倍ぐらいに引き上げるといいだろう。
・ 初期 …… 新型石炭発電は6円で、新型LNG 発電は3円
・ 後期 …… 新型石炭発電は 12円で、新型LNG 発電は6円
こういう方式なら、「石炭発電所だけを狙い撃ちにした、不公平で恣意的な制度」ではなく、「あらゆる火力発電に同一原理でかかる、公正で合理的な制度」となるから、導入は比較的容易である。(理屈が通る。)
また、この時点では、古い石炭発電所はすでに(耐用年数や償却期間のかねあいもあって)すでに廃止されている。残っているのは、2020年以降に新規稼働した少数の発電所だけだ。そこにおいて 12円が課せられるのは、少数の新規事業者だけだ。
この際、従来からある大手電力会社には無関係だ。だから政治的な圧力がかかることも少ない。(少数の馬鹿が、馬鹿なことをやって、自滅する、というだけのことだ。こんな馬鹿会社のことは、無視していい。)
──
結論。
すでにある「再生エネ賦課金」を衣替えして、「炭素税」にすればいい。それなら、現状とほぼ同規模の額がかかるだけだから、国民も産業界も反対が少ない。容易に実現ができる。
さらに、炭素税について「将来的な増額」を予定しておくといい。2倍程度にアップする予定。
以上のようにすると、たいていの人や会社は損得がないのだが、ただ一つ、(今後の)石炭発電の新規事業者だけが大幅に損をする。設備を償却できないまま、赤字に転じるからだ。
こうなると、石炭発電の新規建設の予定者は、尻込みするようになるだろう。そして、それこそ、「思う壺」である。
石炭発電の新規建設を止めるには、別に、強権的な禁止措置は必要ないのである。「制度の衣替え(小さな変更)」と、「制度の将来についての予告」だけがあれば足りるのだ。
簡単に言えば、「知恵」さえあれば足りるのだ。
( ※ これは「北風と太陽」に似ているが、もっとうまい。「暴力と知恵」のような対比だ。比喩的に言えば、戦争をするかわりに、外交交渉だけで争いを解決するようなものだ。)
【 関連サイト 】
「ゴミ発電」が「再生エネ発電」に含まれることについては、疑問を持つ人が多いだろう。
これについては、「ゴミ発電はケミカルリサイクルと同じだ」というふうに説明される。要するに、その場では炭酸ガスを排出するが、一方で、他の発電(石炭発電など)の発電を肩代わりすることで、他の発電の発電量を減らすから、結果的には、炭酸ガスを減らす効果が出ているのである。
( ※ 発電しないで焼却した場合に比べて。)
( ※ ただし、発電効率の低さという問題があるから、1円/kWh ぐらいは炭素税をかけてもいいだろう。)
そうではなく、いずれCO2になるのならゴミ発電に炭素税をかけるべきではないと思います。