2019年05月28日

◆ 石炭発電をどう規制するか?

 石炭火力発電所を規制するべきだが、うまく規制できていないようだ。では、どうすればいい?

 ── 

 石炭発電については、政府が規制の方針を打ち出した。また、金融界も不支援の方針を打ち出した。こうして規制は着々と進行しているように見えた。( 2019年03月29日 )
 ところがその後、経団連などの産業界がこれに猛反発した。( 2019年04月24日 )
 以上は、前に言及したとおり。下記のコメント欄で。(上の日付は、コメントの日付)
  → 炭素税と石炭発電: Open ブログ

 ──

 その後、5月23日の朝日新聞・社説で、この問題を論じている。
 石炭火力発電所の環境アセスメントに厳しい姿勢で臨む方針を、環境省が決めた。二酸化炭素(CO2)の排出量を削減する道筋を描けない場合、新増設計画の中止を求める。
 この発表の後、山口県で計画中の石炭火力から大阪ガスが撤退を表明したり、三菱UFJフィナンシャル・グループが新設の石炭火力に融資しない原則を決めたりした。
 石炭火力は、最新鋭のものでも天然ガス火力の2倍のCO2を出す。厳しい地球温暖化対策が求められているいま、新増設に歯止めをかけるのは当然だ。発電所の許認可権を握る経済産業省は、環境省と足並みをそろえてもらいたい。
 すでにアセスがすんだ案件についても考える必要がある。
 福島の原発事故の後、石炭火力の新増設計画が相次ぎ、環境NGOの気候ネットワークによると25基の計画が残っている。ほとんどがアセスの手続きを終え、事業者が断念しない限り動き出すことになる。
 事業者が石炭火力に頼るのはコストが安いからだ。転換を促すには、炭素税や排出量取引のようなカーボンプライシングを本格的に導入し、CO2排出に伴う社会的コストを価格に反映させる仕組みが欠かせない。
 政府は先月、「今世紀後半のできるだけ早い時期に脱炭素社会の実現をめざす」という温暖化対策の長期戦略案を示した。石炭火力の全廃方針は産業界の反対で盛り込まれていないが、新増設をやめ、既存施設も減らしていく必要がある。
( → (社説)石炭火力発電 依存するのはやめよ:朝日新聞

 言っていることは間違っていないのだが、言いたいことを言っているだけであって、論理が通っていない。これでは、エコ信者のヒステリックな叫び声と同じであって、説得力がない。そこで、ここにきちんと論理を通して示そう。

 ──

 最後にはこうある。
 石炭火力の全廃方針は産業界の反対で盛り込まれていないが、新増設をやめ、既存施設も減らしていく必要がある。

 これは「石炭火力の数を減らす」という方針だ。しかし、これ方向性としてはいいが、方法としては正しくない。
 「石炭火力の数を減らす」という方向性は、それでいい。環境の面から、それは妥当だ。
 しかしながら、それを国が強引に促すというのは、自由経済の原理からして、妥当ではない。たとえば、「石炭発電を一律に禁止する」というのは、あまりにも強引すぎて、自由経済に反する。(国が勝手に操作する共産主義じゃあるまいし。)

 では、この双方に、どう折り合いを付けるか? それは、「アメとムチ」という経済政策だ。
  ・ 良いことをする企業には、アメを与える。(補助金)
  ・ 悪いことをする企業には、ムチを与える。(罰金)

 この方法に従うなら、後者の方法として、「炭素税」というものが考えられる。
 つまり、炭素税を導入するのは、「環境保護のために有益だから」というような環境保護論者の発想だけでなく、「経済的な手法で企業活動を方向付ける」という経済学的な発想があるわけだ。ここを見失ってはならない。
  ※ 環境保護における「経済的手法」と称される。

 ここでは、次の発想がある。
 「石炭発電を減らすためには、国が強制的に数を操作するのではなく、国は金銭的な損得の制度だけを整えて、あとの行動は企業の方針に任せる」


 国がやるべきことは、企業に何らかの行動を促すような「制度」を整えることだけだ。そして、その制度の中で、企業が実際に何をなすかは、企業に任せるべきなのだ。
 つまり、国が強引に企業活動を操作する(石炭発電所を廃止する)のではなく、企業活動はあくまで企業に任せるべきなのだ。
 これが基本原則となる。(朝日の社説は、そこをきちんと理解していない。)

 ──

 では、制度を整えるとして、どういうふうに制度を整えるべきか?
 いきなり結論を言えば、こうなる。
 「石炭発電は、コスト安がメリットなのだから、そのメリットを打ち消すように、環境負荷の罰金をかければいい」


 ここで、「環境負荷の罰金」というものが、「炭素税」に相当する。(これは簡単だ。)

 では、炭素税をかけるとして、どのくらいの額にすればいいか? それは、
 「石炭発電のコスト安というメリットを打ち消す額」
 である。その額は、
 「石炭発電のコスト安」
 という額を調べればわかる。

 具体的に調べると、こうだ。(価格は、円/kWh )
  ・ 石炭発電は 約 13、LNG 発電は約 14
    → 原発のコストを考える|資源エネルギー庁
  ・ 最新型の石炭は 20% 安い(石炭消費量が少ない)
    → 石炭をガス化して高効率化 | NEDOプロジェクト
  ・ 最近の LNG の数値は 11.4
    → ガス火力発電の単価推移|新電力ネット

 大雑把に見て、以前でも、最新でも、「石炭は LNG より 2割安い」とわかる。

 ──

 とすれば、このコスト安を打ち消すように、罰金(炭素税)を課すればいいわけだ。
 具体的には、2.5円/kWh 程度で、石炭発電の優位性は消える。これではまだ並ぶだけだから、石炭発電を減らすには、3円/kWh 以上の罰金(炭素税)を課すればいいわけだ。

 これが正解だとわかる。

 ──

 そこで、残る問題は、こうだ。
 「3円/kWh 以上の炭素税を、石炭発電に課するには、どうすればいいか?」
 この問題は、次項で扱う。 



 【 関連サイト 】
 話は別になるが、次の関連情報がある。
  → 石炭火力、建設中止求め提訴 住民ら温暖化防止で 横須賀:朝日新聞

 趣旨は次の通り。
 旧来の石炭発電に比べて、新規の石炭発電にすると、炭酸ガスの排出が少なくなる。だから現状よりも改善すると見なして、政府は新規の石炭発電を許可した。
 しかし旧来の石炭発電はずっと停止していて、稼働していない。炭酸ガスの排出はゼロである。それに比べて、新規の石炭発電を解説したら、炭酸ガスは増えてしまう。政府の計算はおかしい。
 ……という趣旨。まあ、当然ですね。政府による数字のペテンを指摘しているわけだ。いかにも自民党政府らしいデタラメさ。
 とはいえ、これが裁判でどうなるかは、見通しが付かない。裁判所では、まともな科学で判断がなされることは少ないからだ。たいていは「政府が言っていることは(どれほど非科学的であっても)すべて正しい」というふうになるのが過去の例だ。特に、環境保護関連だと、そうなる。
 ま、独裁国家というのは、そういうものである。科学的な真偽よりは、政府の意向が優先する。民主主義国家とは違うのだ。

 朝日新聞以外では、次の記事もあるが、要領を得ない。
  → 東京新聞:石炭火力中止求め国提訴へ 横須賀「アセス不備、承認違法」

 [ 余談 ]
 なんで裁判所は政府の言いなりなのか? 「政府は民意を反映しているから、その方針をなるべく尊重するのが民主主義だ」という理屈を取るからだ。
 ところで、政府は民意を反映しているか? それについては、裁判所は「1票の格差は2倍以上あってもいい」(参院選では3倍未満であればいい)と判決する。こんなものはもちろん民主主義ではない。
 かくて、裁判所の論理は破綻する。民主主義だから政府は正しい、という方針なのに、実際には民主主義が成立していないからだ。というか、そういう現状を合憲としているという点で、裁判所は自己矛盾に陥っている。……これはもう、独裁国家も同然であろう。


posted by 管理人 at 22:00| Comment(1) | エネルギー・環境2 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 続報。
 政府が石炭火力の全廃の方針を取りやめて、環境規制の方針を弱めたそうだ。経団連の圧力を受けて、環境省の方針を転換させたわけ。

 以下、引用。

 ──

  《 消えた「石炭火力全廃」方針
   温暖化対策の非公式会合
   ようやく議事概要のみ公表(2019/06/01) 》
 朝日新聞が独自に入手した資料によると、2月に示された提言の座長案には当初、石炭火力の長期的な全廃方針が盛り込まれていたが、中西宏明・経団連会長ら産業界の委員が反対を表明。最終的な提言では、石炭火力への「依存度を可能な限り引き下げる」と後退した。
  https://www.asahi.com/articles/ASM5054MKM50ULFA02Z.html
Posted by 管理人 at 2019年06月01日 09:39
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