※ 最後に 【 追記・訂正 】 あり。
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「ケミカルリサイクルはサーマルリサイクルよりも環境に良い」
という俗信がある。だが、これは誤りだ……と先に示した。
→ 汚れたプラスチックの処理: Open ブログ
そこでは、次の趣旨で述べた。
ケミカルリサイクルだと、「汚れた原料の精製(純化)」という無駄なことのために、大量の燃料が使用される。そのせいで、最終的な製品になる率が低い。これだと、資源が有効利用される率がきわめて低いのだ。
さらに、次の趣旨も述べた。
「製鉄用の還元剤としてプラスチックが使われる。ここでは、鉄鉱石中の酸素と結びつくことで、炭酸ガスが発生するのだから、しょせんは、空気中の酸素と結びつくのと同じことだ。どっちにしても、炭酸ガスが発生する」
つまり、「サーマルリサイクルよりもケミカルリサイクルの方がエコである」という主張の前提として、「サーマルリサイクルは炭酸ガスを発生するが、ケミカルリサイクルは炭酸ガスを発生しない」という認識があるが、その認識は誤りなのである。
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《 以下の記述には部分的に誤りがあるので、最後の 【 追記・修正 】 を念頭の上で、お読みください。 》
さて。以上のことは、すでに示したことだ。
ここで、さらにじっくり考えたところ、「ケミカルリサイクルは、サーマルリサイクルと比べて、無効であるどころか、逆効果ではないか」という気がしてきた。
なぜか? 次のことがあるからだ。
「高炉の還元剤として使われるコークスは、低品位の石炭で済む。一方、サーマルリサイクルのために使われるプラスチックは、純度の高い(汚れの少ない)プラスチックであることが多いからだ」
これを比喩的に言うならば、こうなる。
「(純度の高い)純金を処理して、(純度の低い)砂金を得る」
これでは、話が本末転倒である。
普通は、「(純度の低い)砂金を精錬して、(純度の高い)純金を得る」というふうにする。これならば、わけがわかる。
一方、その逆にするのは、わけがわからない。これでは、宝を捨ててゴミを得る、というのと同然だ。
そして、それと同じことをやるのが、ケミカルリサイクルだ。なぜなら、次のことがあるからだ。
・ 製鉄用のコークスは、(不純物の多い)低品位の石炭でいい
・ ケミカルリサイクル用の廃プラスチックは、不純物が少ない
なのに、不純物が少ないものを使って、不純物の多いものを節約するのでは、話が逆だ。
──
では、どうするべきか? 当然、こうなる。
・ 製鉄用には、低品位の石炭で済むのだから、低品位の石炭を使えばいい。
・ 高純度の廃プラスチックは、高品位の石炭の代替とすればいい。
これならばわかる。つまり、減らすべきは、(製鉄用の)低品位の石炭ではなく、高品位の石炭なのである。
では、高品位の石炭は、何に使われているか? 主として、発電用である。下記ページでわかる。
→ 世界中の電気の4割を担う石炭火力発電 | J-POWER
そこから画像を転載しよう。

石炭はこれほどにも多く使われている。とすれば、そこにおける石炭の利用を減らせばいいのだ。「高品位の石炭の使用を減らす」という形で。
では、そのためには、どうすればいいか? 廃プラスチックを固形化して、石炭のかわりにすればいいか?
いや、そんな面倒なことをする必要はない。単に「ゴミ発電」を増やすだけでいい。既存の石炭発電所は、そのまま稼働率を下げる( or 稼働中止にする)だけでいい。その一方で、ゴミ発電の工場を新規に建設して、廃プラスチックを燃やして発電すればいい。……そうすれば、結果的に、既存の石炭発電における石炭を、廃プラスチックで代替したことになる。
そして、その方法が「サーマルリサイクル」なのである。
──
結論。
ケミカルリサイクルは、純度の高いプラスチックを無駄に使うので、合理的でない。コストも余分にかかる。
サーマルリサイクルは、純度の高いプラスチックを有益に使うので、合理的である。コストも少なめで済む。
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なお、現状では、ケミカルリサイクルが見かけ上は低コストで済むのは、純度の高いプラスチックを集めるために、多くの人手を無駄に浪費させるからだ。たとえば、「コンタクトケースを集めて、ケミカルリサイクルをする」」というふうな。
→ 汚れたプラスチックの処理: Open ブログ [ 付記 ]
こういうふうに、他人の人生を犠牲にすることで推進するようなエコ運動というのは、泥棒や詐欺と同じで、非常に悪質なのである。
「エコのためであれば(奉仕の形で)他人の人生や時間を奪っていい」
というのは、ほとんど悪魔的な発想である。エコ論者には、このような悪魔的な発想をする人々が多い。その代表が、朝日新聞だ。だまされないように、注意しよう。
( ※ 上記リンクの記事で説明されている。)
【 関連項目 】
→ プラごみを再生するな: Open ブログ
【 追記・修正 】
「高炉の還元剤として使われるコークスは、低品位の石炭で済む」
と記したが、これは正しくなかった。調べたところ、高炉の還元剤として使われるコークスは、高品位であった。逆に、発電用の石炭を使っていた。特に、最新型の石炭発電に使うものは、低品位のものを使っている。(直接燃やさずに、あらかじめ粉末加工するので、低品位のもので済む。)
高炉の還元剤として使われるコークスは、高炉の内部で積層されるために、強い強度を必要とする。その際、灰分は多くてもいいのだが、水分が多いと(強度が弱くなるので)まずい。この水分を減らすために、高品位の石炭を要する。低品位の石炭は水分が多く、高品位の石炭は水分が少ないからだ。
→ 「石炭火力発電」を巡って / 石炭の品位と用途
では、本項で述べたことはまったくの間違いか? そうも言えない。なぜなら、高炉に投入する廃プラは、強度がまったくないので、高炉の内部で積層されるわけではないからだ。つまり、高炉の内部で積層されるコークスのかわりになっているわけではない。あくまで高炉の上部で追加的に投入される石炭のかわりになっているだけだ。そして、ここで追加的に投入される石炭は、高品位のものではないのだ。
→ 製鉄用コークス - J-Stage
したがって、「(一般的な)高炉に使われる石炭」については、「低品位である」という記述自体は間違っているのだが、「廃プラで代用するような、高炉に使われる石炭」に限っては、「低品位である」(低品位であっていい)というふうになる。
一方で、発電用に使われる石炭は、高品位のものではなく、低品位のものであった。この点では、本文中の記述は正しくなかった。訂正してお詫びします。
最終的な結論はどうなるか? 論拠が間違っていたから、結論も間違いか? いや、そうではない。論拠を少し変えることで、最終的な結論はほぼ同じとなる。正しくは、以下の通り。
廃プラスチックの純度は高いので、これをそのまま燃やしてしまうサーマルリサイクルは、廃プラスチックの利用としては正しいあり方である。(原料としては家庭ゴミよりも適している。)
高炉の上部で投入される廃プラスチックは、低品位の石炭のかわりであるので、廃プラスチックの利用としては正しいあり方ではない。
ゆえに、廃プラスチックの利用は、高炉に投入することよりも、サーマルリサイクルに投入することの方が好ましい。
以上のことゆえに、本項の趣旨は全体としては正しい。
ただし、「発電用の石炭は高品位である」というのは間違いだった。発電用の石炭は低品位である。従って、サーマルリサイクルは、「高品位の石炭の使用量を減らす」のではなく、「低品位の石炭の使用量を減らす」というふうになる。……この部分では、論拠がおかしかったので、修正を要する。
結局、石炭の品位を論じた部分は、正しくなかった。石炭の品位は関係なかった。単に「石炭のかわり」と「サーマルリサイクル」とを比較するべきだった。そして、廃プラスチックは、「石炭のかわり」よりは「サーマルリサイクル」の方がいい、ということだ。石炭の品位の話は、余計だった。
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なお、結論を変更するとしたら、次のようになる。
廃プラスチックは、サーマルリサイクルで使うのも、高炉で投入する石炭のかわりに使うのも、どちらも単に燃やしているだけだ。だから両者は、あまり違いはない。
本項では「サーマルリサイクルに使う方がいい」と述べたが、実は、どっちで使っても似たようなものである。
環境保護論者は、「ケミカルリサイクル(高炉投入)に使う方がいい」と述べたが、実は、どっちで使っても似たようなものである。
だから、廃プラスチックの利用法としては、どっちにしても同じようなものだ、と言えるだろう。
※ ただし、「ケミカルリサイクル用の純度の高いプラスチックを集めるために、莫大な人手をかける」というようなことは、明らかに間違いである。このことは、前に別項で述べたとおり。
→ 汚れたプラスチックの処理: Open ブログ の [ 付記 ]
結論に影響ないと思いますが、たぶん発電用のほうが低品位です
発電用石炭灰分は11%弱
製鉄用石炭灰分はおそらく10%以下(9%前後か?)
これを受けて、本文の最後に 【 追記・訂正 】 を加筆しました。
>>高炉の上部で投入される廃プラスチック
微粉石炭、重油、天然ガス、プラスチックなどの補助燃料は下部から約1,000℃の空気とともに吹き込みます。
上から投入する鉄鉱石、コークス、石灰石は全て固塊状(必要に応じて加工)です。
粉上の物、低温(500℃とか800℃とかか?)で溶ける物を上から投入するとうまく操業できません。