※ 自動車マニア向けの専門的な話。
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ターボを使うと、燃費は良くなるか、悪くなるか?
この問題については、通常、次のように説明される。
(1) 昔のターボ
昔のターボは、高出力を狙うだけで、燃費のことなんかまったく考えなかった。その際、高出力化するにともなって、エンジン内が異常に高温になって、部品が溶けてしまう恐れが出たので、ガソリンをぶっかけて、温度を下げようとした。これが「燃料冷却」である。こうすると、燃料は燃焼することなく無駄に消費されるので、燃費は悪くなった。実際、当時のシーマなどは、燃費が 3 km/Lぐらいであったらしい。(ひどいね)
(2) ダウンサイジングターボ
近年のターボは、「排気量を小さくすると同時にターボを使う」という形で、燃費を向上させようとした。その主たる目的は「フリクションロスの減少」である。
ボアやストロークが小さくなれば、フリクションロス(摩擦損失)も低下するから、燃費が向上する……というわけだ。
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とはいえ、フリクションロスなんて、実はたいしたことはない。それよりは、EGR や稀薄燃焼方式を使って、ポンピングロスを減らす方が有効そうだ。上の説明では納得しがたい。
一方で、兼坂弘は、究極のエンジンとして、「ミラーサイクル + 過給器」という形で「過給エンジン」を重視した。それは「過給」ということ自体で(パワーアップよりも)熱効率の向上があると見込んだからだった。
ここで、通常は「ターボは排熱のエネルギーを使うから、エネルギーを無駄にしない」と言われるが、兼坂弘の使おうとしたリショルムコンプレッサーでは、特に「排熱のエネルギーを使うから、エネルギーを無駄にしない」というわけでもなさそうだ。
( ※ 排熱でリショルムコンプレッサーを回す、というわけでもないし。)
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ここで、私が新たに考えた結論は、こうだ。
「オットーサイクルでは、圧縮行程と膨張行程がある。膨張行程では爆発のエネルギーを回転力にするが、その回転力は、圧縮行程で空気を圧縮するために消費されてしまう。
しかるに、あらかじめ過給器で空気を圧縮しておけば、回転力を消費して空気を圧縮するという過程を代替することができる。
特に、早閉じまたは遅閉じで、吸気バルブを開いておけば(= 吸気バルブを閉じなければ)、回転力エネルギーが空気の圧縮のために消費されることがなくなる。
かくて、圧縮過程において回転エネルギーが消費されることをなくすために、過給器による空気圧縮を利用できる」
簡単にまとめれば、こうだ。
「オットーサイクルにおいて、圧縮行程でエネルギーが奪われる分の一部を、排熱を利用したターボで代替する。そのことで、圧縮行程でエネルギーが奪われる量を減らす」
こうして、(圧縮行程における)エネルギー損失が減少するので、全体としてのエネルギー効率が向上する。
これが、「ターボによる熱効率向上」の本質だと思う。
《 補足 》
直感的に理解するために、温度で示すと、こうなる。
2000度で爆発したあと、800度で排気バルブから排気される。この 2000度から 800度の間の熱エネルギーが、エンジンの回転力として取り出される。
800度の排気ガスは、移動しながら 700度まで下がったあとで、ターボに取り込まれて、400度で排出される。この 700度から 400度の間の熱エネルギーが、ターボの回転力として取り出される。さらにその回転力が空気の圧縮に使われるので、エンジンの圧縮行程の回転力を代替することになる。
結局、無駄になっていた 700度から 400度の間の熱エネルギーが、エンジンの圧縮行程のエネルギーに転換したのと同じことである。その分、熱効率が向上する。(捨てられていた熱エネルギーが有効利用されるので。)
※ 例示した温度は、ヤマカンで示したので、事実とは違う。
──
なお、以上のことは、ターボには当てはまるが、リショルムコンプレッサには当てはまらない。熱効率向上のためには、リショルムよりはターボの方が有益だろう。
[ 付記1 ]
「ターボによる熱効率向上」を実現した例は、二つある。
(1) アウディ
アウディは、ターボを使って熱効率を向上させた。
(アウディが)2015年に発表したA4は1.8Lからミラーサイクル+直噴ターボを採用したウルトラと呼ばれる2L、直噴ターボに変更し、11.8:1という過給器付きガソリンターボエンジンとしては高い圧縮比で190psのパワーと燃費を両立。実に33%向上の18.4km/L(JC08モード)を達成している。
( → レクサスUXはSUV界に変革を起こせるのか!? 発売日&価格判明!! )
「ミラーサイクル + ターボ」がこんなところで実現している。そこで大幅な燃費向上を達成しているわけだ。
(2) 学術研究
東大・京大・早慶およびトヨタの合同研究で、熱効率 50%超を達成したそうだ。そこでは稀薄燃焼方式とターボを併用したという。
→ 共同発表:ガソリンエンジンおよびディーゼルエンジンともに正味最高熱効率50%超を「産産学学連携」で達成〜燃焼、摩擦、ターボ過給、熱電変換の技術で環境にやさしい内燃機関へ〜
ここでもたしかに「ターボを使って効率アップ」ということが実際に達成されている。実験室レベルであって、市販車レベルではないが、とにかく実現したことはたしかだ。
トヨタは、カムリで熱効率 41% という世界最高レベルの効率を達成したが、その裏には、こういう研究があったものと見なせる。
「熱効率の向上」という本道を狙って、じっくり産学連携で研究したわけだ。「偉い」と褒めておこう。
[ 付記2 ]
ターボ車は、確かに熱効率の向上を狙えるのだが、ただし、泣きどころがある。「エンジン回転数の変動に弱い」ということだ。
(1) ターボラグがあって、レスポンスが悪い。
(2) ターボの容量が固定的なので、エンジン回転数の変動に対応しにくい。高回転のときにはターボが容量不足になるし、低回転のときにはターボの能力が余ってしまう。(しかもレスポンスが悪い。)……こういう問題を回避するために、「可変容量ターボ」というのも考えられているが、どうも対症療法的であって、根源対策とはなっていない。
ここで、決定的にうまい方法がある。こうだ。
「 e-POWER と併用することで、エンジンの回転数を原則として一定に保つ」(定常回転にする)
これならば、エンジンの回転数は一定なので、上述のようなデメリットはなくなる。
エンジンは、使用頻度が低いときには、回転数を下げるのではなく、エンジンを休止させる。気筒休止システムに発想が似ているが、気筒っを部分的に休止させるのでなく、エンジンを丸ごと休止させることができる。その分、フリクションロスも減る。
というわけで、 e-POWER と併用すれば、ターボの難点はなくなって、利点だけを利用できるわけだ。これで高効率のエンジンとすることができるようになる。
( ※ e-POWER との関係は、前項を参照。)
[ 付記3 ]
本文中で述べたように、昔のターボは「燃料冷却」をするので、燃費が悪かった。
では、今ではどうしているかというと、次の二点が使われる。
第1に、直噴。これによって、ガソリンの気化熱でシリンダ内を冷却する。ここで冷却するので、過熱する度合いが減る。
第2に、EGR だ。これで酸素が減少して、燃焼温度が下がるので、過熱する度合いが減る。
この二点を使うことで、現代のターボでは、極端に燃費が悪化することはない。なお、直噴を使わないターボもあるが、EGR を使わないターボはない。主流は EGR だ。
[ 付記4 ]
ターボで効率が向上することの理由は、本文中で述べたことのほかに、もう一つ考えられる。こうだ。
「吸気側に高い圧力をかけることで、ポンピングロスを減らす」
通常では、吸気過程ではシリンダ内の空気が希薄になって、陰圧が発生する。(気圧が1以下になるので、逆方向から押す力を受けて、抵抗となる。)
しかしターボで加圧すれば、シリンダ内の空気が希薄になりにくいので、陰圧が発生しにくい。ゆえに、抵抗を受けにくい。
その分、ポンピングロスが減る。
かくて、ポンピングロスを減らすという形で、効率を上げることができる。
[ 付記5 ]
ターボで効率が向上することの理由は、本文中で述べたことのほかに、もう一つ考えられる。こうだ。
「空気を圧縮したあと、温度が上がった空気をインタークーラーで冷却することで、気筒内の圧縮比を高めて、最終的な膨張比を高める」
これは、まさしくその通りだが、いちいち書くまでもなく、兼坂弘が示していたことでもある。本項では、基本的知識であると見なして、いちいち説明しなかったが、これもあるのだ。ここで一応補足しておく。
※ ついでだが、直噴エンジンは気化熱で温度を下げる効果もある。これは兼坂弘が「筒内噴射」のかわりに「膣内噴射」と言っていたやつ。( ※ 下品な記事だったなあ。思い出す。)
【 関連項目 】
→ 兼坂弘の教え: Open ブログ

「オットーサイクルにおいて、圧縮行程でエネルギーが奪われる分の一部を、排熱を利用したターボで代替する。そのことで、圧縮行程でエネルギーが奪われる量を減らす」
>こうして、(圧縮行程における)エネルギー損失が減少するので、全体としてのエネルギー効率が向上する。
残念ながらそんなに簡単な話ではありません。
なぜなら圧縮によって吸気温度が上昇する分の熱効率低下、吸気温度と出力増加に伴うシリンダ筒内の焼損防止のための燃料噴射量の増加、タービンによる機械損失が、タービン排気から得るエネルギーの増加より上回るからです。
ターボ加給した場合、熱効率は自然吸気より落ちます。
> なぜなら圧縮によって吸気温度が上昇する分の熱効率低下
インタークーラーを知らないのかな? ホントに?
> 吸気温度と出力増加に伴うシリンダ筒内の焼損防止のための燃料噴射量の増加
本文中で「燃料冷却」と説明済みなのに。よほどのバカでなければ、わかるはずだが。
> タービンによる機械損失
排気が抑えられることの熱損失ならわかるが、機械損失なんてありえない。クランクとつながっているわけじゃあるまいし。
> ターボ加給した場合、熱効率は自然吸気より落ちます。
現実に熱効率が上がっている、という事例を [ 付記1 ] で示しているのに、文字を読めないんだろうか?
あなた、毎度毎度、自分のいいたいことだけを言っていて、本文を読んでいないのね。
ライバルよりも高い熱効率を発揮させたという
エヴィデンスを示してこそなので。
口でいくらあーだこーだ言っても
空しいだけです。
空想をいくら言っても特許になりませんよ。
[ 付記1 ] に記してあるのに。読めないの?
→ http://openblog.seesaa.net/article/435851390.html
ターボはコスパが悪いのでやめておけ、という趣旨。
一方、本項では、コスパはわきにおいておいて、「金をいっぱいかけたときには、ターボの熱効率は上がる」という話。
エヴィデンスとしては全然弱いですね。
自分で買って実燃費の年間推移をアップするくらいで
いいんじゃないでしょうか。
JC08モード は、カタログ燃費というよりは、実用燃費に近い。
また、どちらも同じモードで測定しているのであれば、二つのエンジンの比較で、改善量を測ることは可能だ。モードの問題は無視していい。(モードを変えると逆転する、というわけじゃあるまいし。)
また、兼坂氏は、排気の熱エネルギーを電気エネルギーに変換する場合の可能性にも言及していたと記憶している。
オルタネータの駆動分のエネルギーが減る分、エンジンシステム全体としての効率が上がる。
熱電変換システムについては、兼坂氏を持ち出すまでもなく、本文中の [ 付記1 ]の(2) のリンク先で示されている。
「最大1.3%程度の熱効率相当の性能がある」
と記されている。わずかな効果はあるようだが、それだけだ。
タイムスタンプは 下記 ↓
本項の趣旨は、「ターボで熱効率が上がるか否か」ではない。
ターボ車は自然吸気に比べて、熱効率が上がることもあるし、上がらないこともある。ケースバイケースだ。そんなことは誰でも知っているはずだ。
本項で述べているのは、次のことだ。
ターボでは熱効率を上げることができる場合がある。特にあれこれと条件を満たして、理想的な条件にした場合には、そうだ。
では、そういう理想的な場合には、ターボ付きの方がターボなしよりも熱効率が上がるのは、どうしてか?
つまり、イエスかノーかを問題にしているのではなく、Why を問題にしている。お間違えなく。
( ※ イエスかノーかは、話の最初の取っかかりだけだ。)
思いますよ。
ステップワゴン1.5ターボは
ヴォクシーノア2.0NAと燃費的にはほぼ互角。
アウディのエンジンがどれだけやれるかな?
レスポンスの悪いガスタービンエンジンを
発電機として用いるコンセプトカーは
ありましたね。ターボエンジンも同様に
効果的でしょう。
ではなく、排気で発電タービンを回すほうです。
燃費の話をしたいのなら、ピンポイントでのターボと熱効率云々と言わないほうが良かったでしょう。
ターボと熱効率関係の話をしたかったのなら、燃費の話を持ち出さないほうが良かったでしょう。
ピンポイントの熱効率が高くても、それが燃費に反映するかは微妙な点なのだから。
ダウンサイジングターボも別に熱効率がいいから燃費が良い訳ではないのだし。
ちなみにテーマとは少し違うが内燃機関の熱効率という話では、サイズが桁違いとなるが、ディーゼル船舶用エンジンでは熱効率50%オーバーは普通に運用(稼働)されている。
大型船舶はエンジンも受注生産で、仕様上の燃費に対して実行燃費が少しでも下回ると訴訟騒ぎになる世界。言葉は悪いが、車のように燃費でうそをつけない、熱効率向上についてはある意味、最先端を走っているともいえる。
ミラーサイクルの過給エンジンだが
カタログ燃費がいいのは過給しない領域で
JC08燃費測定をこなしてしまうせい。
ただそれではカタログ上の馬力表示が
悲惨なことになるので、馬力表示を飾るため
だけに燃費が悪くなるのを承知でSC過給している。
過給領域では燃料冷却をやっていると明言している。
このエンジンはノッキング対策を色々こうじて
いるけど、結局ガソリン冷却からは逃げられない。
NAですら逃げられないから当然だが。
で、JC08では避けられる過給領域を実使用では
頻繁に使うことになるので、実燃費は良くない。
日産の可変圧縮比エンジンが大したことないのも
同じ理由。結局実使用では膨張比を下げた状態に
なってしまい効率が悪い。
40年前の兼坂理論を完全に超えていますよ。
結局は膨張比だという結論では同じですが、過給機とか無しでエンジン単体で突破という点で一歩も二歩も先に行っていますね。
もうすぐ発表されるSkyActiv-Xのスペックがどのような数値を叩き出してくるのか楽しみです。
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