2019年05月19日

◆ e-POWER とは何か?

 日産の e-POWER とは何か? これからどうなるのか?

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 e-POWER とは何か?


 日産の e-POWER とは何か? これについて、技術的な解説なら、解説があちこちにいっぱい記してある。しかし本項ではそれとは別に、コスト面から説明しよう。

 e-POWER とは、パラレル方式と対比されるもので、シリーズ方式のハイブリッドだ。この二つの方式は、コスト的にどう違うか?

 パラレル方式なら、エンジンとモーターの双方の力を使える。エンジンが 80ps で、モーターが 50ps なら、合計して 130ps の出力を得る。(実際には、単純に足し算はできないが。)
 ともあれ、双方の出力を合算して取り出すことができるので、無駄がない。

 シリーズ方式なら、そうは行かない。エンジンが 80ps で、モーターが 50ps なら、50ps の出力しか得られない。130ps を取り出せるパラレル方式に比べると、エンジンの出力を使えない分、使える出力の量が少ない。
 「使えるものが使えないのでは、もったいない」
 と思うのが普通だろう。あるいは、
 「使えるものが使えないままでは、システム的に無駄だ」
 とも思うかもしれない。こういうわけで、日本では伝統的にパラレル方式ばかりが採用されてきた。(トヨタも、日産も、ホンダも。)

 ところが、である。よく考えると、パラレル方式では、エンジンとモーターの出力を合算するために、独自のシステムが必要である。
 トヨタの場合には、遊星歯車を使う機械装置が必要となった。(動力分割のために)
  → トヨタのハイブリッドシステムの肝、動力分割機構 "遊星歯車"
 これはこれで優秀だが、そこそこコストがかかる。(ただし、トランスミッションは必要ない。)
 一方、他社のパラレルの場合には、遊星歯車を使えないので、普通に多段トランスミッションが必要となる。また、合算するための機構も必要となる。双方で、大幅にコストがかかる。

 というわけで、パラレル方式は、「使える出力を無駄にしない」という意味では合理的なのだが、「エンジンとモーターの出力を合算する」ということのために、歯車用のコストが大幅にかかかるのだ。

 そこで考え直すと、シリーズ方式には、そういう余計なコストはかからない。たしかに「使える出力を使わない」という点ではもったいないのだが、これは単に「機械を休ませておく」というだけのことだから、何らかの意味で無駄なエネルギーが浪費されるわけではない。むしろ、
 「エンジンの出力が使えないのなら、その分、最初からモーターの出力を大きくしておけばいいだろ」
 という発想が出る。たとえば、ノート e-POWER だと、79ps のエンジンに対して、109ps の大出力モーターがある。この大出力モーターを使えば、エンジンの 79ps を同時に使えない(合算できない)としても、特に問題とはならないのだ。

 要するに、
  ・ 小さなモーター + 出力の合算機構
  ・ 大きなモーター(単体)

 という二通りの道がある。
 前者はパラレルで、後者はシリーズだ。そのどちらも、一定のコストがかかるので、コスト的に見れば、両者はほとんど差はないのだ。また、重量的にも、ほとんど差がない。
 とすれば、機構がシンプルである後者の方が、工業的には作りやすいとも言える。
( ※ 特に前者は、トヨタの遊星歯車のパテントが大変なので、他社には作りにくい。)

 とはいえ、そういうことは最初からわかっていた。それにもかかわらず、シリーズ方式が世の中に出なかったのは、シリーズ方式では「電力損失」という問題があったからだ。「いったん発電してから、それをモーターの駆動力とする」というふうにすると、途中で電力が無駄になってしまうのだ。(電力ロス)
 ところが近年、半導体の性能が向上したので、この電力ロスが減った。だからシリーズ方式が実用化したのである。この件は、前に述べたとおり。
  → 日産ノートのハイブリッド: Open ブログ

 こうしてデメリットが消えたので商品化したら、日産には想定外のことが起こった。電気自動車にも似て、ドライバビリティがとてもいいので、その面で好評になったのだ。
  ・ レスポンスがとてもいい。
  ・ 1ペダルの運転が楽である。

 こういうことは、日産は当初は想定しておらず、e-POWER が人気になるとは思わなかったそうだ。しかしユーザーからは高い評価を得て、馬鹿売れする結果となった。(価格はけっこう高いのに。)

 e-POWER はどうなるのか?


 e-POWER は人気だが、当面はノートとセレナしかない。将来的にはジュークにも搭載されるそうだ。さらに、エクストレイルでは、前後にモーターを搭載した四駆も登場するらしい。
 ここで問題となるのが、「エンジンはどうするの?」ということだ。モーターが二つで、出力が倍になるとすると、(ノートやセレナで使われた) 1.2L の3気筒エンジンでは足りそうにない。
 では、どうする? いくつかの案が考えられる。
  ・ 1.6L 〜2.0L の4気筒エンジンを使う。
  ・ 1.2L の3気筒エンジンにターボを付ける。


 ここで、「ターボを付ける」というのは、コスト的には厳しそうだ。「ターボに 10万円、インタークーラーに 10万円」となると、20万円もコストアップする。一方、1.6L 〜2.0L の4気筒エンジンなら、5〜10万円のコストアップで済みそうだ。
 その意味で、コスト的にはターボを使わない方が本命だ。

 しかし、性能的には違う。
 1.2L の3気筒エンジンにターボだと、かなり大幅な高出力が望める。また、「ミラーサイクル + 過給器」というのは、兼坂弘が強く推奨した方式だ。(あれは過給器にリショルム・コンプレッサーを使う予定だったが。)
 これは兼坂弘の望んだ「究極のエンジン」に近い。いろいろと効率アップの効果がある。燃費はすごく良くなるかもしれない。

 というわけで、私としては、「日産の高出力型の e-POWER は、ターボで過給する」というふうに期待したい。これは、ただの期待なので、予想とは違うが、さて、現実にはどうなることやら。
 エクストレイル e-POWER がどうなるかは、興味を持って見守りたい。



 [ 付記 ]
 実は、ターボと e-POWER は相性がいい。
 ターボは、低回転時には加圧が足りなくて、出力も足りない。また、レスポンスも悪い。そういうふうにいろいろと問題があるのだが、 e-POWER に使うのであれば、そういうデメリットが一切出ないのだ。なぜなら定常回転状態が続くからだ。出力変動についてはモーターが対応して、エンジンは常に同じ回転数で動いていればいい。(ときどき停止するが。)……こういう用途であれば、ターボはぴったりなのだ。
 しかも、排気量が小さいので、フリクションロスやポンピングロスも少なめだ。いろいろと考えると、 e-POWER にはターボエンジンがよく似合う。実現すれば、兼坂弘の霊が感慨に耽るかも。



 【 関連サイト 】

 下記ページがある。
  → 【2020年 新型エクストレイル フルモデルチェンジ最新情報】PHEVやe-POWER設定?
 一部抜粋。
 (エクストレイルは)搭載が噂されている e-POWERはジュネーブショーで公開されたコンセプト「IMQ」のパワートレインが可能性が出てきました。
  ・ 発電用エンジン:1.5リットルのガソリンターボ
  ・ モーター:最大出力340hp、最大トルク71.4kgm
 ノートやセレナに搭載されているシステムより大幅に強化されたものが搭載されている。
新型エクストレイルに搭載されるならばもう少し出力など抑えられる可能性がある

 これもまあ、一つの予想ではある。どうなるかは不明。

posted by 管理人 at 12:07| Comment(4) | 自動車・交通 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 最期に [ 付記 ] を加筆しました。
 タイムスタンプは 下記 ↓
Posted by 管理人 at 2019年05月19日 20:17
兼坂弘・・・ミラーサイクル + 過給器
30年程前にMoterFan誌上で力説していましたな、加給効率についてもルーツブロア方式をぼろくそに言っていた。いや懐かしい。
それはさておき、
筒内噴射・2ストローク・加給ユニフロー掃気方式のガソリンエンジン。
機構的にはディーゼルエンジンで普通にある。効率も高い。
定速回転・定負荷運用が前提の発電用エンジンとしてならばワンチャンあるかもしれない。

Posted by 寿限無 at 2019年05月19日 22:01
トヨタのハイブリッドシステムの肝、動力分割機構 "遊星歯車"
のリンク先が間違ってるようです
https://plaza.rakuten.co.jp/kousuifan/diary/201808140000/
https://plaza.rakuten.co.jp/kousuifan/diary/201808150000/
Posted by 横断中 at 2019年05月19日 23:57
 ご指摘ありがとうございました。リンクを修正しました。
Posted by 管理人 at 2019年05月20日 00:11
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